2026年4月3日

ガタカ

(原題:Gattaca)(アメリカ,1997)

いつか見ようと思っていて,なかなか見られず,ようやく見ることができました。

遺伝子でもって将来の能力や疾患などがほぼすべて分かってしまう社会。そこでは,遺伝子操作で適正な(優秀な)人間だけを選択して産むようになっていた。そんな中,普通の出産でこの世に生を受けた<不適正者>のヴィンセント(イーサン・ホーク)は,いつか宇宙飛行士になるという,叶わぬ夢を見る。やがて青年になり,家を出て,宇宙局ガタカで清掃員として働いていたヴィンセントは,ある裏取引によって,事故に遭って半身不随になった(極めて優秀な遺伝子を持つ)<適正者>のジェローム(ジュード・ロウ)になりすます。取引の条件は,外に出て働けないジェロームが自分の血液,尿,毛髪などを提供する代わりに,ヴィンセントがジェロームを一生養う,というものであった。こうしてジェロームとヴィンセントの,二人一役の危うい生活が始まる。そして,まんまとジェロームになりすましたヴィンセントは,ガタカに入局することに成功する。

だいたいの粗筋はもう,いくつもの映画評論の中でしょっちゅう出てくるのでだいたい分かってましたが,なるほど,こういう映画でしたか。イーサン・ホークとジュード・ロウ,そしてユマ・サーマン。

なぜ「血液,尿,毛髪」かというと,宇宙局ガタカや警察の捜査では,本人確認(すなわち,結果的に,<適正者>か<不適正者>かの確認)を,血液と尿と毛髪によるDNA検査で行う仕組みだからです(その場で即時判定され,IDが確認される)。今であれば,本人確認といえば指紋認証や顔認証,あるいは光彩認証だけれど,この映画では社会全体で本人確認は同時に「遺伝子的に適正か不適正か」の判明になっているところがポイント。

もう一つのポイントは,そもそもヴィンセントは遺伝子的には<不適正者>なのにもかかわらず,ガタカで優秀な成績を上げ,「さすがジェローム」とか言われながら,土星の月タイタンへの宇宙船へ搭乗する飛行士に抜擢させること。人間の可能性は遺伝子で全て決まらない。ここがこの映画のメッセージですね。

この映画が,1997年に作られているところに,おそらくテーマとの関わりがあるでしょう。というのも,いわゆるヒトゲノム(ヒトのDNAの全塩基配列)の解読は,1990年にアメリカで始まり,2003年に完成版が公開されています(ヒトゲノム計画)。つまりちょうど,ヒトゲノム計画の真っただ中であることから,「人間の遺伝子がすべて解読されてしまったらどうなるんだ?」という期待(遺伝的な疾患・疾病の治療法など)と不安(まさにガタカ的世界の到来など)が入り混じった感情があったのだろうと推測されます。そういう近未来社会への時代的不安が投影されたのがまさにこの映画なのでしょうね。

ただね,普通に考えたら,たかだか全塩基配列(配列ですよ配列!)が解読(解読ですよ解読!)されたところで,それが実際のどういう表現型と関連があるのか(予測するのか)は,これまた膨大な研究が必要なわけです。加えて,この映画のメッセージでもありますが,当然ながら人間の能力や性質の形成には環境要因(経験や行動の蓄積による影響)が大きいわけですから,必ずしもDNAによってすべてが予測できるわけがありません。映画の中でも,ヴィンセントは遺伝的には劣っていても優秀な宇宙飛行士として認められているし,ジェロームは遺伝的には極めて優れているのに水泳で銀メダルしか取っていないと嘆いています。

とまぁ,今見ても,思うことがいろいろと浮かんでくる良い映画です。未来世界の描写も良い。自動車は電気自動車だし。

★★★★


2026年4月1日

人生に,上下も勝ち負けもありません。焦りや不安がどうでもよくなる「老子の言葉」

野村総一郎 2024 日経ビジネス文庫

老子(道徳経)の教えに基づいて,精神科医の野村先生がいろんな人生のつまづきや悩みのケースについて考えてみた本。良い本でした。


2026年3月29日

ほんとうのピノッキオ

(原題:Pinocchio)(イタリア,2019)

いい話でした~。寓意満載。映画ならではの視覚的な造形も全部,良い。

★★★


2026年3月27日

暁に祈れ

(原題:A Prayer before Dawn)(イギリス/フランス,2017)

タイで荒んだ生活をしていた青年ボクサーのビリー・ムーア。ある日,薬物の使用と密売で警察に摘発され,刑務所に収監される。刑務所の過酷な生活に生きる希望を失いつつあるとき,刑務所内のムエタイチームと出会う。

実話(自伝)に基づく映画。ラストに本人が父親役として登場。

★★★


2026年3月23日

となりの陰謀論

鳥谷昌幸 2025 講談社現代新書

非常に勉強になりました。読みやすい文体と,分かりやすい説明です。かつては『ムー』的な「ネタ」として楽しめた陰謀論ですが,昨今では,そうした荒唐無稽な陰謀論を鼻で笑って放置するのがいかに危険か,よく分かりました。


2026年3月22日

関心領域

(原題:The Zone of Interest)(アメリカ/イギリス/ポーランド,2023)

ようやく観ました。ああ,胃が重い。

これもA24映画。

★★★★


2026年3月19日

ねこまた 狸穴素浪人始末

由原かのん 2025 光文社時代小説文庫

面白かった~。荒物屋の防ぎを務める猫矢又四郎と,荒物屋の娘お清の飼い猫である黒猫のかちんの名コンビ。『首ざむらい 世にも怪奇な江戸物語』所収の「ねこまた」の続編。『首ざむらい』の4編とも面白かったし,このまま,ねこまたシリーズにならないかねぇ。


2026年3月12日

おんどりの鳴く前に

(原題:Men of Deeds)(ルーマニア/ブルガリア,2022)

ルーマニアの,牧草地の広がるのどかな田舎の村。引退して果樹園でもやってのんびり暮らしたいと思っている,まったくやる気の欠片もない,独身中年の駐在警察官イリエ。村の警察官はイリエ一人だが,若い新人警察官が来ることに。そんな,何もない片田舎の村で,ある日,殺人事件が起きる。

原題の"men of deeds"は,「まず行動して後から考える人」という意味らしい。Menだからね。複数だ。となると,それは村の人々のことを指してるわけですね。確かにその通りかもしれません。ことごとく場当たり的な,事なかれ主義。

★★★


2026年3月11日

ディック・ロングはなぜ死んだのか?

(原題:The Death of Dick Long)(アメリカ,2019)

バカだね~。ホント,アホだね~。

アメリカの田舎町。人には言えないある理由で,バンド仲間のディックが瀕死の状態に。一緒にいたジークとアールは,ディックを救急病院の前に置き去りにして事なきを得ようとするが,やがてディックは死に,警察が捜査を開始する。必死で証拠隠滅をしようとするけれど,何から何までその場しのぎの短絡的な対処と嘘で,どんどん窮地に追い込まれていくジークとアール。

人間,正直が一番です。A24映画。

★★★


韓国映画から見る,激動の韓国近現代史:歴史のダイナミズム,その光と影

崔盛旭 2025 書肆侃々房

韓国映画から紐解く,韓国の近現代史。観たことのない映画なら観たくなるし,観たことのある映画ならその背景が分かるし,さらには,韓国の近現代史も知ることができて,一石二鳥,一挙両得,一粒で二度おいしい,そんな本です。

全部で44本の映画が紹介されていて,一つ一つについての簡単なあらすじを紹介して,映画としての評論をしつつ,その時代的な背景について解説しています。お隣の国韓国の映画が好きな方,韓国の近現代史に興味がある方には,絶対オススメです。