2026年8月12日

吉永進一セレクション第一巻 霊的近代の興隆:霊術・民間精神療法

吉永進一(著)栗田英彦(編) (2024) 国書刊行会

「精神療法」って言っても,現代の心理療法・精神療法とは違います(なお,心理学では「心理療法」,医学では「精神療法」と言いますが,両者は基本的には同じことを指してます)。

この本で言うところの「精神療法」とは,大正期・昭和初期に流行した,いわば「精神力(生命エネルギーのようなものとかいろいろ)によって(他者の)癒しや治療を施す技法」全般のことです。西洋の催眠術とか,日本土着の(神道や仏教などの)民間療法とかが融合合体したもので,「霊術」とも呼ばれていた。

オカルト研究や宗教研究の文脈で語られるテーマで,前にも『近現代日本の民間精神療法』(栗田英彦/塚田穂高/吉永進一 編)も読みましたが,本書はその編者の一人,吉永進一氏没後にまとめられた氏の論文集であり,非常に勉強になりました。

第二巻は『洗脳・陰謀論・UFOカルト』です。これもまた非常に興味深いので,すでに入手済み。そのうち読みます。



プロジェクト・サイレンス

(原題:Project Silence)(韓国,2024)

いやはや,ハラハラドキドキでした。ハングル語のタイトルは”탈출”で「脱出」って意味みたい。手に汗握る映画ってのはこういうやつですね。

空港へ向かう大きな橋の上で,濃霧のために多重追突事故が起き(まぁ,それも,アホな危険系ユーチューバーが起こした事故がキッカケなのだが),たまたま居合わせた軍用車の車列も巻き込まれる。ただ,それは,最高機密の改造軍用犬を秘密裏に処分するために移送中の軍用車だった。

主人公ジョンウォンは,政府の安全保障室の行政官。留学する娘ギョンミンを空港まで送る途中で事故に巻き込まれる。事故発生直後から,上司である安全保障室長のヒョンベク(次期大統領候補)と連絡を取りながら,なんとか機密(=改造軍用犬に関する計画「プロジェクト・サイレンス」)が世間に漏れないよう,なおかつ,無事に帰れるように奔走するが・・・。

★★★


ただ悪より救いたまえ

(原題:Deliver Us from Evil)(韓国,2020)

韓国ノワール・アクション。スピード感があって,見ていてあっという間でした。主人公のインナム(ファン・ジョンミン)も良いけど,敵役のレイ(イ・ジョンジェ)が色んな意味でキレまくってていいわ~。あと,タイトルが良いよね。これ,新約聖書の「主の祈り」(マタイによる福音書6章9節~13節)の一節らしいですね。

元は国家の情報部に所属していたインナムだが,拷問など違法な手法が仇となり部署は解散。逃亡して殺し屋稼業に身を落としていたが,これが最後の仕事と請け負った,日本のヤクザの親分コレエダを東京で暗殺。大金をもらって南の島へと高跳びしようと思っていた矢先,かつての恋人ヨンジュの死を知らされる。さらに,ヨンジュには,行方不明になっている9歳の一人娘がいることも。

娘を探しにタイのバンコクへ向かうが,一方,コレエダの弟であり,狂暴で残忍な殺し屋レイが,兄貴の敵を取るために,執拗に追いかけてくる。

ところで,暗い感じのサスペンス映画やたばこの煙が漂うようなふた昔前の時代設定の映画なんかで「ノワール」ってよく言うけど,「ノワール」って正確にはどういう意味なんだ?と改めて思ったので,調べてみました。

【ノアール(フランス noir)】《ノワールとも》 1 黒。暗黒。 2 多く複合語の形で用い,暗黒の,正体不明の,不正の,などの意を表す。(デジタル大辞泉)

【フィルム・ノワール(film noir)】フランス語で<暗黒映画>の意だが,アメリカの犯罪映画,あるいはハードボイルド映画をさすアメリカの映画用語である。(改訂新版 世界大百科事典)

なるほど~。

★★★


2026年8月5日

クレイジー・リーダー 不条理な世界

(原題:Alpha Male)(ポーランド,2022)

謎映画(笑)。

婚約者のバーシアに言われて一日禁煙セラピーに来たつもりのピョートル。だが迷い込んだその会は禁煙セラピーではなく,なんだか怪しい自己啓発セミナー?陰謀論団体?カルト宗教?だった・・・

この建物はやたらと複雑な構造になっていて,いろんな部屋でセミナーやワークショップなどをやっているカルチャーセンターみたいなところ。入った部屋のセミナー(「アルファ・メイルの会」)は禁煙セラピーの会だと思ってたのに,男性講師と受講生(男性4人)の言ってることがなんだかどうもおかしいので,途中休憩(そもそも「タバコ休憩」だし!)のとき,ロビーにあるパンフレットをよくよく確認してみたら,どうやら入るところを間違えたことに気づく。そこでもう禁煙はひとまず諦めて帰れば良かったのに,帰宅を告げようと電話したら婚約者に「そんな中途半端な気持ちじゃ禁煙は無理ね」なんて冷たく言われたもんだから,ピョートルはまた(食事が豪勢で広々とした部屋の)アルファ・メイルの会に戻ることに(禁煙セラピーの狭い部屋ではなく・・・笑)。いや,なんでそっちに戻るんだよ(笑)・・・と,まぁ,ここからいよいよ話が怪しくなってきます。

というのも,邦題では分からないけど,原題の「アルファ・メイル」って「αオス」,つまり,群れの中の一番優位な雄(猿で言えばボス猿)=支配する男・強い男,って意味ですからね(笑)。ポーランド語の方の原題はSamiec Alfaで,これも「アルファ雄」です。そう,実はアルファ・メイルの会は,闇の男性弾圧組織に抵抗するための会員制秘密団体だったのだ!!(会員制なのになんで入れちゃったかは、後から分かります)

ところで,邦題の『クレイジー・リーダー』は,まぁ,内容をそれなりに表してるんだろうけど,この映画の本当の面白さはそこじゃなくて,やっぱり原題通り「アルファ雄」(→転じて,マッチョイズムの男性優位主義な頭の悪い男,って意味も)なので,そこんところ,なんとかならなかったかなぁ。惜しい。

とまぁ,謎の設定の面白ヨーロッパ映画なのが,ただ,最後の落ちがイマイチ良く分からなかったから,全体を振り返りながら,あとで反すうしてよく考えてみます(笑)。

★★★★


2026年8月3日

ベスト・キッド:レジェンズ

(原題:Karate Kid: Legends)(アメリカ,2025)

ダニエルさん(ラルフ・マッチオ)とジャッキーの共演。

話としては,まぁ,『ベスト・キッド』(1984)をほぼ踏襲。もともとジャッキー師父に北京でカンフーを習ってた主人公の高校生が,母親とニューヨークへ引っ越してきて,なんだかんだあって,空手大会に出場することに。そこで,ジャッキー師父は,遠くカリフォルニアの元ミヤギさん家に住む旧友のミヤギさんの弟子ダニエルさんに助っ人を頼むことに。

ジャッキーは,おじいさんの師匠役だからおじいさん風で良いのだけど,ホントにおじいさんになってるなぁとつくづく感じました。

主人公の高校生は,チンピラ三人を超人的なアクションでやっつけたりニューヨークのピザ屋の親父にカンフーを教えたりするぐらい達人なのに,ライバルのバイオレントなブラック高校生に校庭での初対戦で苦戦したり,そのブラック高校生がチャンピオンの空手大会のためにまた一から修行し直したりと,強いのか弱いのかよく分からん(そうなると,図式的には,このブラック高校生がめちゃくちゃ強いことになるわけです)。ダニエルさんは「カンフーと空手は違う!」と強調するけれど(だから「空手大会」に出るには「空手」を体得する必要ありと判断して,ジャッキー師父がダニエルさんを呼んだわけだけど),どこがどう違うのか曖昧だし,実際のところ空手大会と称していても,ほとんど天下一武道会か「鉄拳」か「バーチャ」モドキの格ゲーみたいで,どの辺が「空手」の大会なのかよく分からん。

とまぁ,『レジェンズ』という名の通り,冒頭にはミヤギさん(ノリユキ・パット・モリタ)とダニエルさんの懐かしい場面(たぶん『2』?)があったり,最後には「コブラ会」のあの人がミヤギさん家に一緒にいたり(ドラマ『コブラ会』絡みでしょう),そのミヤギさん家は,『1』のときのものを再現していたり(ただ,20~30年しても,車の位置までほぼそのまんま,ってのも・・・)と,なつかしの同窓会映画ってことですね。ときどき,数十年ぶりの続編映画で,なつかしのキャストが実際に年を取って出演,ってのがありますが,これもそれ。

あとは,やっぱり,ダニエルさんとジャッキー師父では,功夫の蓄積が違うのが,見えちゃうな~(笑)。ラルフ・マッチオは,別に,アクション俳優じゃないしなぁ。そもそも『カラテ・キッド』の面白さは,ド素人が無我夢中で謎の稽古(ワックスがけとかペンキ塗りとか)して,知らない内に強くなっていて,最後には強い奴に勝つ,って話なわけで,そのかつてのダニエルさん(=ド素人)はジャッキー師父(=説明不要のレジェンド・アクション俳優)並みに達人扱いだし,一方で,ニューヨークに来た時点ですでに相当なカンフーができる主人公が,空手大会のために例のジャッキー版『ベスト・キッド』の服を着たり脱いだりする謎稽古を今更繰り返したりと,なんか全体に緩い。ああ,ゆるく懐かしむ映画だったか。

主人公とジャッキー師父がニューヨークで再開する場面では,なぜか師父が自宅に不法侵入していて暗闇の中いきなり主人公に全力で攻撃を仕掛ける,という意味不明の師弟いちゃつき場面も。

ダニエルさんとミヤギさんの『ベスト・キッド』(1984)は,ブルース・リー師父の『ドラゴンへの道』(1972)に並ぶ,僕のベストオブベストな映画だけに,まぁ,言いたいことはたくさんありやす(笑)。

★★




アンティル・ドーン

(原題:Until Dawn)(アメリカ,2025)

なんだか単なるお化け屋敷映画。タイムループもので,設定は良いように思うんだけどね。殺人鬼とかゾンビとか怪物とか魔物とかがてんこもりで出てくるスラッシャー映画,スプラッタ映画。ゲームか何かの映画化?

と思ったら,やっぱりそのようでした。プレステのゲームでした。なんだかゲームっぽいと思いました。

★★


ワンドゥギ

(原題:Punch)(韓国,2011)

障がいを持つタップダンサーの父,その父を心から慕う知的障がいの叔父ミング(血はつながってない)と,三人で貧乏暮らしの高校生ワンドゥクは,毎日鬱屈しているケンカっ早い問題児。その担任教師で,破天荒だが正義感は強いドンジュ。ワンドゥクは,ドンジュのしつこいおせっかいを煙たがる。教会に行っては神様に,「糞ドンジュを殺してくれ!」と祈り続ける。ある日,ワンドゥクはドンジュから,いないと思っていた母親はフィリピン人で,今も元気に暮らしていることを知らされる。

中でも,イイ味を出しているのは,キックボクシングジムの館長と,隣人の変なオッサン。館長はもう,めちゃくちゃ厳しい人。ワンドゥクに一切容赦しません(が,ワンドゥクに目をかけてます)。「チクショウ」が口癖の隣人のオッサンはとにかく,変人ぶりが際立ってます(首にいつも変な細い紐?包帯?を巻いている:笑)。

不器用な父。優しい叔父。破天荒な担任教師。厳しい館長。みんな,ワンドゥクのことが好きなのです。

ハングルのことはよく分からないですが,主人公の名前はワンドゥクなのに,映画のタイトルはワンドゥギです。これは,名前の後に付く愛称?か何かで発音が少し変わるらしい。

あと,映画の中で,教師のドンジュも,字幕では「糞ドンジュ」となったりしますが,ほとんど「ドンジュ」にしか聞こえません。「教師に糞を付けるな!」と怒ったりしてるから,発音が若干変わるんだと思うのですが,まったく聞き分けられません(笑)。

★★★


2026年7月31日

ロードハウス/孤独の街

(原題:Roadhouse)(アメリカ,1989)

こちらは1989年版の,最初の方の『ロードハウス/孤独の街』。ジェイク・ギレンホールはこれのリメイク。なので,こっちも見てみました。

街道沿いにある,バンドのライブもやってる酒場の雇われ用心棒ダルトンが,街の利権を我が物としている成金から店を守る,ってストーリーは同じ。

だけど,まぁ,こっちは30年以上前の映画だし,全体にファッションやアクションやカメラワークがモサッとしてるかなぁ。

やっぱり連想するのは,『ドラゴンへの道』(1972)だよね。主人公のダルトン,途中で上半身裸で太極拳の稽古するし,どう考えても,リー師父を意識してないはずはない(下記ポスター参照)。しかしそこは,洗練されたリー師父のジークンドーにはかないません。

★★


スマイル2

(原題:Smile 2)(アメリカ,2024)

『スマイル』(2022)の続編。笑いながら破壊的な自殺をする者を見た者が再び,笑いながら人前で破壊的に自殺する連鎖。それは魔物の仕業であり,その者のトラウマ的な恐怖を食い尽くすまでじわじわと幻覚を見続けさせ,やがて狂気のあまりに自殺に追い込んでいく。

主人公のスカイ・ライリー(ナオミ・スコット)は人気歌手。1年前に自らのドラッグ絡みで大事故を起こしてからの復帰ツアーに向けて準備中,事故の後遺症の腰痛をごまかすために,強い鎮痛剤をもらおうと昔の友人(ドラッグの売人)に接触。そこで魔物に寄生されてしまう。

第一作目のアイディアそのままでの続編であり,当たりか外れかどっちかだろうと思ってましたが,まぁまぁ当たりでしたね。どこまでが幻覚でどこまでが現実かが分からなくなる設定が良い。

★★★


2026年7月30日

ロードハウス/孤独の街

(原題:Road House)(アメリカ,2024)

また観ました。3回目か。やっぱし,かっこいいなぁ。主演ジェイク・ギレンホール。

★★★★


2026年7月26日

NOPE/ノープ

(原題:Nope)(アメリカ,2022)

なんとなくまた観てしまった。ジョーダン・ピール監督,ダニエル・カルーヤ主演。改めて見ると,第一種接近遭遇(未確認飛行物体の目撃)から第二種接近遭遇(電子機器等の誤作動や動物の反応など)といった,未知との遭遇セオリーにちゃんと沿ってるんだなと思いました。ただし,第三種接近遭遇について,これがこの映画のオリジナリティになってきます。しかし,怖い。

(ただ,今回もアマプラで見ましたが,やっぱり,アマプラって,再度見放題になるときに編集して短くしてませんかね?最初のオリジナル通りじゃないよね。なんとなく,あれこれ場面がカットされてる気がします)

★★★


2026年7月25日

自滅帳

春日武彦 2025 晶文社

面白かった。国内外の小説作品を題材に,連想される謎の思い出で前後を挟む構成。春日武彦ファンとしては,もう,延々とこのパタンでいいから,あと数冊,出し続けて欲しい。1951年生まれだから,僕より20歳上。70代半ばか~。博学だし,文章が上手いし,よくまぁ色々とあれこれ怪しい記憶を連想するよなぁと感心します。


2026年7月20日

第38回東京都杖道大会(三段の部)準優勝

7/18(土)に,第38回東京都杖道大会がありました。三段の部に出場し,結果は準優勝でした。昨年(第37回大会)はおかげさまで優勝できましたので,いわば「ディフェンディング・チャンピオン」だったわけですが,残念ながら,決勝で1-2で負けました。

決勝の相手は,二段の部で2年連続優勝をしているペアであり,当然想定していた通り。その二段の部で一昨年,決勝戦で負けました。昨年はこのペアのお二人がまだ二段でしたので,なんとか三段の部で優勝できましたが,今年はお互い三段ですので,決勝戦でこのお二人と対戦すること,そして「あわよくば」いや「なんとかして」勝つことを目標に一年間,時間と労力と工夫を重ねて,最大限,精一杯,稽古をしてきました(つもりでした)。

しかし,負けました

いやはや,なかなか壁は高かったなぁ・・・。私個人で見れば,都大会では3年連続決勝に進んでいますが,負けてるのは唯一,このお二人のペアのみ・・・どうしても勝てません。

ただ,0-3の完敗でなかったのが唯一の救いでした。今回は,自分にできる最大限の努力を一年間してきましたので,少しバーンアウトぎみです(笑)。これまでなら,とりあえず,どんな結果でも,大会後はあれこれ考えが浮かび,さあ,次にどうしよう,稽古で何を工夫しよう,もっとここをこうしようああしよう,と思い浮かぶのですが,今回はそんな気分になれず,ただ疲れました。

私たちのペアは(もちろん相手のペアも),決勝まで,すべて3-0で勝ち上がってきています。ですので,今までやってきたことは,決して間違っているわけではありません。

しかし,特に決勝の動画を見返すに,やはり,相手のペアは上手です。私はとにかく全体にまだまだ。まさに,負けに不思議の負けなし(松浦静山)。相手と比較すれば,とにかく技が全体に小さい。私の方が身長が高いのに,技が小さい。これまでにもいろんな先生に同じ指摘を受けるので,自分では大きくなるよう意識して稽古しているつもりなのですが,動画を見ればやっぱり小さい。特に引落打が小さい。杖も太刀も,もっとキレが必要。真半身とやや半身の切り替えも鈍いし不明瞭。開始線に戻るときのすり足もイマイチ。妙なところで相手に動きを合わせていてぎこちない・・・あれ?書いている内に,課題がまたいろいろと見えてきました(笑)。

言語化は重要ですね

教えていただいている先生方からは,自らの動画を見るように,とご指導いただきます。そこで色々と気づきがあります。鏡で見るのとは違って,他者の視点から見ることで,より客観的に課題が見つかります。これに加えて,自らの言葉で言語化することによって,課題がさらに明確になりますね。言語化は大事です。

実は,大会の翌日(7/19),前々からこのお相手のペアの方にお誘いいただいていまして,夜な夜な,稽古してきました。このお相手のペアは,所属団体は違いますが,ずっと仲良くしていただいている杖友なのです。もうホント,疲れ切っているのに翌日稽古する阿呆,お互いに「杖道バカ」です(笑)。このとき稽古を見ていただいた先生から早速,引落打についてご指導いただきました。ありがたい。本当にありがたいです。感謝。

9月末には,今度は,全日本大会が横浜であります。ぼちぼちまた,工夫を重ねて,磨いていきたいと思います。



藤崎興朗先生と記念撮影


2026年7月17日

陰謀論と排外主義:分断社会を読み解く7つの視点

黒猫ドラネコ・山崎リュウキチ・藤倉義郎・選挙ウォッチャーちだい・清義明・古谷経衡・菅野完 2025 扶桑社新書

現代日本の陰謀論系の個人・団体の活動の様子が非常によく分かる本でした。なかなか著者ら選挙ウォッチャーなどのウェブサイト(有料だったりする)をまめに見るのはたいへんなので,こうしてときどき書籍にしてもらえるとありがたい。


2026年7月10日

私が間違っているかもしれない

ビョルン・ナッティコ・リンデブラッド他(著) 小島修(訳) 2025 サンマーク出版

感銘を受ける言葉や話がいくつもありました。

特には,タイトルにもなっている「私が間違っているかもしれない」(自分が正しいと思うな)もそうだし,全体を通してなされる,自分の思い通りにコントロールしないこと,あるがままを受け入れることなど(そうすれば,楽になりますよ),という話は,まさに老荘に通じる東洋の智慧だと,改めて思いました。

だからやはり,インド発祥の仏教が中国で受け入れられたのはタオイズムがあったからというのが通説ですが,まさにそうであることをつくづく感じるし,それが結果,日本において禅(Zen)として結実するのは必然であったように思います。

「ナッティコ」は,「智慧の中で成長する者」という意味だそうです。優しい,良い響きです。


2026年7月5日

動物界

(原題:The Animal Kingdom)(フランス,2023)

人間が突如,徐々に動物になる奇病が各所で発生。動物の種類は様々。「新生物」と呼ばれる人々は,囚われ,施設に入れられることに。妻が新生物になってしまったフランソワは,高校生の息子のエミールとともに,妻の入所する南仏の施設のそばで暮らすことを選択するが,施設への移送車が途中で事故に遭い,妻の行方が分からなくなる。森の中を懸命に探すフランソワだが,やがて,息子のエミールにも奇病の兆候が・・・。

★★★


2026年7月2日

ロングレッグス

(原題:Longlegs)(アメリカ,2023)

ニコラス・ケイジ!!!!!

キモコワ。奇人(怪人?)ロングレックス。いやぁ,恐ろしい。

直観力(超能力?)に優れた若いFBI捜査官リー・ハーカー。その直観力を買われて,ある奇妙な連続殺人事件の捜査に加えられる。リーの推理によって,少しずつ事件が解明されていくが,そこにはどうも,浅からぬ縁があった。

出てる俳優が誰か知らずに見始めたところ,オープニングに,ん?「NICOLAS CAGE」・・・ニコラス・ケイジ?ほほう,どこで出てくるんだろうね。なんて思いつつ見ていたところ,なかなか出てこない・・・と思っていたら,そ,そうか,ロングレックスその人ね(笑)。もうホント,奇人変人をやらせたら,今や,ニコラス・ケイジしかいないでしょう,という円熟の鉄板キモコワ怪演。ヤバすぎる,ニコラス・ケイジ。

★★★★


パンチラインの言語学

川添愛 2025 朝日新聞出版

面白かった。なぜ川添愛氏の本が面白いといつも思うのかと考えてみたが,まず本質的にはそもそも,文章が軽妙でリズムが良いし,言葉が平易で分かりやすいという,川添氏の筆力と言語学的な解説の面白さはありますが,これに加えて,おそらく年が2つ違い(私より2つ年下)でほぼ同世代なために,出てくるネタがことごとくツボに入るからであろうと思いました。今回,特に思いました。


2026年6月29日

三河雑兵心得18 退き口仁義

井原忠政 2026 双葉文庫

茂兵衛,とうとう官位官職を授かる!


2026年6月24日

2026年6月21日

杖道1級審査会

本日(6/21),午後13:15から,国士舘大学MCHにて,東京都剣道連盟杖道部会の3~1級審査会(実際は全員1級審査)が行われました。

白鴎大学杖道会(古武道杖術愛好会)からは,2名受審して2名とも合格!良かった。安堵。おめでとうございます!

これで今回,2名が杖道部会の会員になりましたので,白鴎大学杖道会として部会員は(私自身を入れて)合計「10名」になりました。


虚空門 GATE

(日本,2019)

そっかそっか,そっち系の人なんだけど,しかし,その手の分かりやすい人か~。そっち系じゃなくても,たま~に,いるよね,このタイプの人。目が共通してる。

ドキュメンタリー映画の問題作。いや怪作か。見たいと思っていて,やっと見ることができました。今ならアマプラで見られます。

言葉,行為,しぐさ,人との関わり方,そうした事実を映像で淡々と積み重ねることで,この人物の人となりが徐々に浮き上がってきて,やがて揺るぎないものになる,良いドキュメンタリーになっています。だから話題になるわけだ。人間という生き物の悲しさ。周りの人の優しさ。ビリーバーの人の純粋さ。

★★★


The Boys

シーズン5まで見終わりました。いやぁ,長かったけど,面白かった。風刺が効いてて最高でした。アメリカ人(の半分)はこれを見て,何を思うのか。そして,こういう作品が作られ,人気を博すところに,アメリカにもまだ救いがあるような気がしました。


2026年6月18日

全文完全対照版 老子 コンプリート

野中根太郎(訳) 2026 誠文堂新光社

原文と書き下し文と現代語訳と,語の注釈付きで,見た目にも分かりやすい道徳経でした。


2026年6月13日

増補新装版 オカルト・クロニクル

松閣オルタ 2022 二見書房

不思議な事件の真相究明。面白かったです。ただ,個人的には,海外の古い話よりは,日本の事件の方が面白かった。というのも,「海外の」&「古い」話は,松閣氏が調べようにも限界があるわけですが,日本の事件の場合は,例えば,過去の文献情報もそれなりに入手しやすいだろうし,さらには,現地に赴くだとかインタビューするだとか,(たとえ徒労に終わろうと)補足の調査も可能であるからして,より綿密に真摯に究明されてる感じがするからです。

加えて,海外の古い話はすでに固定化された「歴史」の一部な感じがするので,今更究明しても新しい情報はそんなにないでしょうと思うものの,日本の事件は「歴史」以前のまだ生々しい日常性を残していて(そういう事件を取り上げていることが多いので),さて,真相はいかに!と謎解きしていく感じは,とても面白いと思えるからです。

先日出た(4/20),第二弾『オカルト・クロニクル暗黒録』も,目次を見る限り,海外の「事件」が入ってる様子。日本については「グリコ・森永事件」で3章使っているので,それが中心っぽい。


2026年6月8日

「杖道研究会」立ち上げ

新しく会を立ち上げました。

名称はとりあえず「杖道研究会」としました。これまで数か月間,野田杖道会の杖友,TさんとIさんと私で月曜日の昼間にやっていた稽古会を,日曜日の午前にもってきました。なので,要するに,同好の士による稽古会です。高段者の先生に教わる会ではありません。お互いに全剣連制定杖道を研究・練磨するのが目的です。個人的には,もう一つ目的というか願いがあります。それは,所属剣連や所属団体を超えて,杖友の輪が広がること。

ですが,しかし,急には増えませんから(いやずっと増えないかもしれないですが:笑),まずは,野田杖道会のみなさんをお誘いしています。野田杖道会は,毎週土曜日だけ稽古ですので,もう少し稽古したいという方のために,藤崎先生のお許しを得て,日曜日の朝に稽古できるよう,立ち上げました。

ただ,野田杖道会のみなさんだけに限らず,どなたでも参加できた方がもっと楽しいなと思って,所属剣連・所属団体に関係なく,門戸を開いています。いつでもウェルカム!(なお,参加ご希望の場合,一応,ご自身の先生にご許可を得てからが良いかと思います)

加えて,土曜日は仕事や家庭の都合で野田杖道会に来るのをためらっていた方も,日曜日なら来られるということであれば,これも杖友を増やす機会になります。そういう初心者(杖道未経験者)の方にも,門戸を開いています。いつでもウェルカム!!(継続ご希望の場合,どこに登録するかは要相談)

とにかく,杖道の普及発展のため,私に今できることを最大限したいと思っています。杖道は非常に独特で魅力的な武道です。こんな面白いものを人に広めないのはもったいない


【杖道研究会】

場所:野田市春風館道場・柔道場

時間:日曜9:00~12:00 (不定期)


夢想権之助(刀剣ワールド)

2026年5月31日

吉里吉里人

井上ひさし 1981 新潮社

いやぁ,やっと読み終えました。

日本の三文小説家・古橋健二の大冒険。ものすごい話でした。目くるめく展開。いちいち微に入り細を穿つ説明。脱線に次ぐ脱線。事件に次ぐ事件。上下二段組みで834ページ。井上ひさし氏の頭の中は一体どうなってるのかね。


2026年5月25日

The Boys,それから吉里吉里人

ふと見ると,1ヵ月も更新してませんでした。これには理由がありまして,最近,映画を見ずに,前から観たいと思っていたドラマを観てました。The Boysをシーズン1から観てます。やっと今,シーズン2に入ったところ。これからまだ,シーズン5(完結?)まで先は長いです。


それから,先月,岩手県大槌町で大規模な山林火災がありました。住民の方はたいへんな思いをされたかと思います。今でもまだ復旧していないところも多々あって,不便な生活をされていたり,仕事がままならなかったりされているかと思います。早く生活が元通りに戻ることを祈っております。

ところで,そのときに「吉里吉里」という地区名が報道されていました。それで,井上ひさしの『吉里吉里人』(1981)を思い出しました。あまりの長編大作で以前に途中で読むのを止めたので,ふと今,もう一度読み直しています。これが実に長くて,まだ読み終わってません。京極の弁当箱シリーズに匹敵するかそれ以上です。吉里吉里語をじっくり堪能しながらなので,けっこう時間がかかってます。


2026年4月27日

28年後…

(原題:28 Years Later)(イギリス/アメリカ,2025)

『28日後...』『28週後...』に続く第三弾。やっと見ることができました(アマプラで)。いやはや,あの『28日後...』(2002)の衝撃と,その後の『28週後...』(2007)の戦慄に続く,第三弾はいかほどかと思いつつ見ましたが,これもやっぱり衝撃と戦慄でした。

ゾンビではないですよ。レイジ・ウィルス。全速力で襲ってくる「俊足」と,這いながら近づいてくる「スローロー」。28年も経ってるから,もはや,服着てなくて,どれも全裸です。そうした感染者たちは,もはや別生物として森に生息してます。そして,そんな中でも,ウィルスがステロイド的に働いて,でかく,強く,賢くなってる「アルファ」。う~ん,とっても怖いぞ。なかなか死なないし。

やっぱり,いわゆるゾンビもののキャラクター造形の枠組みというか常識というか発想というか,そういうのに縛られてない設定が,オリジナリティ高いんだろうなぁ。重ねて言いますが,ゾンビじゃないからね。死体(死人)ではないです。

★★★★


気にしないコツ:感情に振りまわされない禅の教え42

枡野俊明 2025 総合法令

禅語の紹介とそれに基づく禅的な生活のススメ。今ここ。


2026年4月19日

2026年4月4日

DEADMAN 消された男

(原題:Dead Man)(韓国,2024)

サスペンス。まぁ,普通。あんまり心に残るような映画じゃないけど,まぁ,最後までそれなりに見れました。

★★


2026年4月3日

ガタカ

(原題:Gattaca)(アメリカ,1997)

いつか見ようと思っていて,なかなか見られず,ようやく見ることができました。

遺伝子でもって将来の能力や疾患などがほぼすべて分かってしまう社会。そこでは,遺伝子操作で適正な(優秀な)人間だけを選択して産むようになっていた。そんな中,普通の出産でこの世に生を受けた<不適正者>のヴィンセント(イーサン・ホーク)は,いつか宇宙飛行士になるという夢を見る。しかし,<不適正者>というだけで不条理な就職差別に甘んじなければならない。やがて青年になり,家を出て,宇宙局ガタカで清掃員として働いていたヴィンセントは,ある裏取引によって,事故に遭って半身不随になった(極めて優秀な遺伝子を持つ)<適正者>のジェローム(ジュード・ロウ)になりすます。取引の条件は,外に出て働けないジェロームが自分の血液,尿,毛髪などを提供する代わりに,ヴィンセントがジェロームを一生養う,というものであった。こうしてジェロームとヴィンセントの,二人一役の危うい生活が始まる。そして,まんまとジェロームになりすましたヴィンセントは,ガタカに入局することに成功する。

だいたいの粗筋はもう,いくつもの映画評論の中でしょっちゅう出てくるのでだいたい分かってましたが,なるほど,こういう映画でしたか。イーサン・ホークとジュード・ロウ,そしてユマ・サーマン。

なぜ「血液,尿,毛髪」かというと,宇宙局ガタカや警察の捜査では,本人確認(すなわち,結果的に,<適正者>か<不適正者>かの確認)を,血液と尿と毛髪によるDNA検査で行う仕組みだからです(その場で即時判定され,IDが確認される)。今であれば,本人確認といえば指紋認証や顔認証,あるいは光彩認証だけれど,この映画では社会全体で本人確認は同時に「遺伝子的に適正か不適正か」の判明になっているところがポイント。

もう一つのポイントは,そもそもヴィンセントは遺伝子的には<不適正者>なのにもかかわらず,ガタカで優秀な成績を上げ,「さすがジェローム」とか言われながら,土星の月タイタンへの宇宙船へ搭乗する飛行士に抜擢させること。人間の可能性は遺伝子で全て決まらない。ここがこの映画のメッセージですね。

この映画が,1997年に作られているところに,おそらくテーマとの関わりがあるでしょう。というのも,いわゆるヒトゲノム(ヒトのDNAの全塩基配列)の解読は,1990年にアメリカで始まり,2003年に完成版が公開されています(ヒトゲノム計画)。つまりちょうど,ヒトゲノム計画の真っただ中であることから,「人間の遺伝子がすべて解読されてしまったらどうなるんだ?」という期待(遺伝的な疾患・疾病の治療法など)と不安(まさにガタカ的世界の到来など)が入り混じった感情があったのだろうと推測されます。そういう近未来社会への時代的不安が投影されたのがまさにこの映画なのでしょうね。

ただね,普通に考えたら,たかだか全塩基配列(配列ですよ配列!)が解読(解読ですよ解読!)されたところで,それが実際のどういう表現型と関連があるのか(予測するのか)は,これまた膨大な研究が必要なわけです。加えて,この映画のメッセージでもありますが,当然ながら人間の能力や性質の形成には環境要因(経験や行動の蓄積による影響)が大きいわけですから(あと,意志や情熱も),必ずしもDNAによってすべてが予測できるわけがありません。映画の中でも,ヴィンセントは遺伝的には劣っていても優秀な宇宙飛行士として認められているし,ジェロームは遺伝的には極めて優れているのに水泳で銀メダルしか取っていないと嘆いています。

もう一つの対比は,ガタカ内で起きた殺人事件を捜査する警察の刑事二人。上司は若い(おそらく)<適正者>で,部下はベテランの(おそらく)<不適正者>。足と経験(勘)で捜査を進めるベテランの部下と,理屈と効率で進める若い上司。

とまぁ,今から約30年前の映画ですが,今見ても,思うことがいろいろと浮かんでくる良い映画です。近未来社会の描写も良い。自動車が電気自動車だし。

★★★★


2026年4月1日

人生に,上下も勝ち負けもありません。焦りや不安がどうでもよくなる「老子の言葉」

野村総一郎 2024 日経ビジネス文庫

老子(道徳経)の教えに基づいて,精神科医の野村先生がいろんな人生のつまづきや悩みのケースについて考えてみた本。良い本でした。


2026年3月29日

ほんとうのピノッキオ

(原題:Pinocchio)(イタリア,2019)

いい話でした~。寓意満載。映画ならではの視覚的な造形も全部,良い。

★★★


2026年3月27日

暁に祈れ

(原題:A Prayer before Dawn)(イギリス/フランス,2017)

タイで荒んだ生活をしていた青年ボクサーのビリー・ムーア。ある日,薬物の使用と密売で警察に摘発され,刑務所に収監される。刑務所の過酷な生活に生きる希望を失いつつあるとき,刑務所内のムエタイチームと出会う。

実話(自伝)に基づく映画。ラストに本人が父親役として登場。

★★★


2026年3月23日

となりの陰謀論

鳥谷昌幸 2025 講談社現代新書

非常に勉強になりました。読みやすい文体と,分かりやすい説明です。かつては『ムー』的な「ネタ」として楽しめた陰謀論ですが,昨今では,そうした荒唐無稽な陰謀論を鼻で笑って放置するのがいかに危険か,よく分かりました。


2026年3月22日

関心領域

(原題:The Zone of Interest)(アメリカ/イギリス/ポーランド,2023)

ようやく観ました。ああ,胃が重い。

これもA24映画。

★★★★


2026年3月19日

ねこまた 狸穴素浪人始末

由原かのん 2025 光文社時代小説文庫

面白かった~。荒物屋の防ぎを務める猫矢又四郎と,荒物屋の娘お清の飼い猫である黒猫のかちんの名コンビ。『首ざむらい 世にも怪奇な江戸物語』所収の「ねこまた」の続編。『首ざむらい』の4編とも面白かったし,このまま,ねこまたシリーズにならないかねぇ。


2026年3月12日

おんどりの鳴く前に

(原題:Men of Deeds)(ルーマニア/ブルガリア,2022)

ルーマニアの,牧草地の広がるのどかな田舎の村。引退して果樹園でもやってのんびり暮らしたいと思っている,まったくやる気の欠片もない,独身中年の駐在警察官イリエ。村の警察官はイリエ一人だが,若い新人警察官が来ることに。そんな,何もない片田舎の村で,ある日,殺人事件が起きる。

原題の"men of deeds"は,「まず行動して後から考える人」という意味らしい。Menだからね。複数だ。となると,それは村の人々のことを指してるわけですね。確かにその通りかもしれません。ことごとく場当たり的な,事なかれ主義。

★★★


2026年3月11日

ディック・ロングはなぜ死んだのか?

(原題:The Death of Dick Long)(アメリカ,2019)

バカだね~。ホント,アホだね~。

アメリカの田舎町。人には言えないある理由で,バンド仲間のディックが瀕死の状態に。一緒にいたジークとアールは,ディックを救急病院の前に置き去りにして事なきを得ようとするが,やがてディックは死に,警察が捜査を開始する。必死で証拠隠滅をしようとするけれど,何から何までその場しのぎの短絡的な対処と嘘で,どんどん窮地に追い込まれていくジークとアール。

人間,正直が一番です。A24映画。

★★★


韓国映画から見る,激動の韓国近現代史:歴史のダイナミズム,その光と影

崔盛旭 2025 書肆侃々房

韓国映画から紐解く,韓国の近現代史。観たことのない映画なら観たくなるし,観たことのある映画ならその背景が分かるし,さらには,韓国の近現代史も知ることができて,一石二鳥,一挙両得,一粒で二度おいしい,そんな本です。

全部で44本の映画が紹介されていて,一つ一つについての簡単なあらすじを紹介して,映画としての評論をしつつ,その時代的な背景について解説しています。お隣の国韓国の映画が好きな方,韓国の近現代史に興味がある方には,絶対オススメです。


2026年3月8日

希望の灯り

(原題:In  the Aisles)(ドイツ,2018)

アウトバーン沿いの巨大スーパーマーケットで働く,東西統一後の旧東ドイツの人たち。新人の若者クリスティアン(フランツ・ロゴフスキ)は寡黙で真面目な男。しかし,袖と襟から覗くタトゥーは,それまでの彼の人生を物語っている。ちょっと訳ありそうな同僚のマリオン(ザンドラ・ヒュラー)に心を寄せつつ,懸命に働くクリスティアンは,同僚から少しずつ信頼を得ていく。

東西の格差。あからさまな貧富の差。旧東ドイツの人たちの厳しく貧しい暮らしぶり。日々暮らしていくために,思い通りにいかない人生,耐え忍ぶ人生。酒とたばこで紛らわす日々。マーケットで廃棄される高級な食べ物をこっそり漁る。寒空のクリスマスイヴでも,仲間と集まって喜びを分かち合う。刹那的な快楽に逃避する人。人生に絶望する人。それでも生きていかねばならない。リフトを降ろす音が,波の音に聞こえる。

マリオン役のザンドラ・ヒュラーは,『アイム・ユア・マン 恋人はアンドロイド』に出てた,アンドロイド会社の案内役の人だね。『関心領域』(←未見)のヘートヴィヒ・ヘス役。

★★★


MaXXXine マキシーン

(原題:Maxxxine)(アメリカ,2024)

『X エックス』『Pearl パール』に続く三部作完結。ホラー・サスペンス。6年前の田舎の一軒家での惨劇を命からがら逃れたマキシーン。ポルノ女優として身を立てているが,ハリウッドでの成功を夢見てホラー映画のオーディションを受け,見事合格。一方,ロサンジェルスでは連続殺人犯・通称「ナイトストーカー」による事件が続発。マキシーンの周辺も次々に殺されていく。時を同じくして,なぜかマキシーンの過去を知る者から付け狙われることに。犯人は誰だ?

まぁしかし,一番怖かったのは『Pearl パール』だなぁ。あの最後のミア・ゴスの作り笑顔はトラウマ級です。A24映画。

★★★