2024年12月26日

ハッチング─孵化─

(原題:Hatching)(フィンランド,2022)

なんか気分がどんよりするホラーだわ。

いわゆる「毒親」ってやつですか?ティンヤは,思春期前の女の子。両親と弟の四人家族。理想的な「素敵な家族」をSNSで演出しようとする身勝手な母親に愛されようと,母親の言うことは(どんなに無茶苦茶でも)なんでも肯定し,通っている体操のサークルでは期待通りの選手になろうと必死に練習している。そんな中,森の中で小さな卵を拾う。

この卵がね,だんだん大きくなるのよ。ティンヤの心の内に抑圧された「憎悪」とともに。で,とうとう孵化して中から変な(鳥みたいな)のが出てくるのよ。怖いしキモい。

★★★


2024年12月24日

心理学入門 一歩手前

道又爾 (2009) 勁草書房

心理学という学問のヘンテコさ(怪しさ)について,学部で始めたころからなんとなく感じてはいましたが,意識的には特にこの10年ほど考えてたこと,ここ最近では一般教養の「心理学」の授業で学生に話してること(人間の心を研究すると称する心理学という学問のヘンテコさ)が,ほぼほぼここに書いてありました。

「心理学」は,うちの大学では「A」と「B」がありまして,履修上,学生はどっちから取ることも可能だから,AとBは独立して内容を構成しています。そこで,Aはどちらかといえば広く浅く心理学の射程を紹介する感じで,いわば「心理学概論」的な話。一方,Bはより原理的に狭く浅く,いわば「心理学の哲学」みたいな感じで,心とは何か,他者の心って何か,そういう心を研究する心理学って何か,みたいなところを話しています。「まぁ,まさに『B面心理学』っつうことですね」と,うううん我ながら良い例えだぜ,と悦に入って最初の週に学生に説明していますが,残念ながら今時の学生に「B面」は通じず。

この,「心理学B」で,僕が心理学をずっとやってきて思うところ感じるところ(要するに,違和感や不全感として感じられる学問としてのヘンテコさや怪しさと,しかし,そのヘンテコさ・怪しさ故の学問そのものや人間存在の面白さ)を何とか学生に伝えようとしているのですが,そのヘンテコさと面白さが,分かりやすく書いてありました。あとがきでは「愛想半ば」と書いてますが,まさにその通り。

ああ,道又先生,今までお会いしたことはないですが,同じこと考えてたんだ~,良かった~,僕だけじゃないだ,このモーレツな違和感は~・・・って,あれ?これって,心理学やってる人はみんな思ってることなのかな?


2024年12月23日

シビル・ウォー アメリカ最後の日

(原題:Civil War)(アメリカ/イギリス,2024)

政治的な分断から,連邦政府から複数の州が離脱し,テキサスとカリフォルニアが西部勢力として政府軍との内戦に発展したアメリカ。14か月も雲隠れしている大統領のインタビューをするために,戦闘で破壊され無政府化した街を通ってワシントンD.Cへと向かおうとするジャーナリストのリー(キルステン・ダンスト)とジョエル。そこに,ベテランジャーナリストのサミーと,リーに憧れるジャーナリスト志望の若者ジェシーが加わる。ジャーナリスト目線で見た,戦争することの愚かさ,国民同士が互いに憎しみ合う内戦の愚かさ。

主人公のキルストン・ダンストって,あの『スパイダーマン』(2002)のMJです。年取って,シブい感じの俳優になってて,良いです。

市街戦の戦闘場面だとか,遠景で燃える街だとか,破壊された街だとか,虐殺された死体だとか,リアリティがあると思いました。昨今は,ウクライナ戦争やガザ戦争で,ミサイル攻撃や戦闘場面や破壊された街や被害を受けた市民の様子は連日のように報道されていますが,そうした現実の戦争中の様子がリアルに再現されていて,監督の気概を感じます。アマプラの評価はあんまり高くないですが,良かったです。

戦争は,いかんよ。

★★★


2024年12月21日

イノセンツ

(原題:The Innocents)(ノルウェー/デンマーク/フィンランド/スウェーデン,2021)

こ,怖すぎる。なんかもう,心が痛い。

場所は,とある大きな集合団地。そこに越してきた4人家族。長女アナは知的障害があり,両親はそんな長女につきっきりで,次女のイーダは面白くない。一人で団地の中を歩いていると,友達のいない孤独な少年(おそらく移民で母子家庭)と出会う。この少年が,手を触れずにモノを動かす不思議な力を持っていた。

子役たち,演技うますぎ。すっかり飲み込まれました。

★★★


2024年12月5日

鵼の碑

京極夏彦 2023 講談社ノベルズ

ようやく読めました。百鬼夜行シリーズ(京極堂シリーズ)を,『姑獲鳥の夏』からもう一度全部読み直して,ようやく辿り着きました。