内田樹 2021 河出書房新社
内田師の,武道に関する最後の本(とご自身で書いておられる)。けっこう久しぶりに内田師の本を読んだ気がします。様々なことを本で書いておられるので,必ずしも武道関係のことだけではないですから,読んだり読まなかったりでしたが,やっぱり「武道論」と言うタイトルですから,読まないわけにはいかないと思い,読みました。2021年刊ですから,どうやら見落としていたようです。ようやく読みました。
これまでにも各所で語ってこられた武道論,武道的な観点からの教育論・社会論など,の評論集です。とにかく大なり小なり多々影響を受けてきたので,こうしてまた改めて師の考えに触れると,心の奥底が震える気がしました。
しかし,改めてこうして読み通すと,専門の哲学や武道に限らず歴史や社会制度にも博学博識だし,難しい熟語(そんな動詞は僕は普段使わない,っていうような動詞とか!)を頻繁に使うし,別に知識だけが重要じゃないけれど,教養の深さをベースにした思慮深さをつくづく感じました。
こういう,社会に向けて「モノ言う武道家」は,内田師以外あんまりいません(他にいます?管見の限り,知りません)。「モノを言う」ためには教養だけではダメで,たぶん,勇気が要ります。というのも,コンプライアンスへの配慮は当然のことながら,場合によっては「敵」を増やすことにもなりかねません。本書で内田師の言うように,武道家は「天下無敵」(←意味は本書を読んでね)を目指すのならば,「モノを言う」ことは,事によってはそれに逆行しかねない行為でもあります。
内田師の配慮は,そこのところまで含めて,それでもやはり「世のため人のため」になることを言い続けることが自分の使命であると確信しているかのように,ときに(いや常に?)手厳しい社会批判・体制(政治)批判・(学校)教育批判を展開しています。そういう意味では,本当に,極めて貴重な人だと,思います。




