2021年1月21日

トータル・リコール

(原題:Total Recall)(アメリカ,2012)

1990年のシュワルツェネッガー主演(ヴァーホーヴェン監督)のリメイク版。原作はフィリップ・K・ディックの1966年出版の小説『We Can Remember It for You Wholesale』。日本語タイトルは『追憶売ります』(1978,深町真理子訳)。原題をそのまま訳せば,「私たちはあなたのために卸値でそれを思い出せます」だから,「追憶売ります」か~。いやぁ,上手だなぁ。

シュワルツェネッガー版はもう何度も観ました。地球に住むごく平凡な労働者が実は記憶を改ざんされた凄腕諜報員だった,という話は痛快であり,ヴァーホーヴェンの容赦ない殺戮アクションがこれを後押しして,何度観ても面白い映画になってます。

かたや,このコリン・ファレル版はどうかというと,これもまた単に前作をなぞっただけのリメイクではないところが面白くて,また観てしまいました。まず,地球と火星(の植民地)という前作の対比を,ヨーロッパ(ブリテン連邦)とオーストラリア(コロニー)にして,地球のど真ん中を貫通する高速の「フォール」という乗り物で行き来する,という世界がそそります。化学戦争でもって,その他の地域はもう人が住めなくて,慢性的な過密状態になってる,そういう状況です。都市や乗り物などの描写もリアリティがあります。

別の人生を体験させる「リコール社」を訪れるところから話が展開するのは両作とも同じ。この設定は1978年に少年ジャンプで連載開始の『コブラ』(寺沢武一)も同じですね。ちょうど『追憶売ります』が1978年に出版されていますので,作者の寺沢武一氏がディックの原作を読んでいたか日本語版を読んだかして,『コブラ』がディックの設定を使ったんでしょうね。僕自身は先に『コブラ』を読んでいたものだから,シュワ版を観たときに「同じじゃ~ん!」と思ったわけですが(笑)。ちなみに,『ロボコップ』(1987)が『宇宙刑事ギャバン』(1982~1983年)と「同じじゃ~ん!」と思ったのとちょっと似ています。そう。『ロボコップ』の監督もヴァーホーヴェン。

「リコール社」に行ってから展開する下りは,シュワ版の方は違和感はなかったですが,ファレル版はちょっと端折りすぎてる感は否めません。改ざんされた記憶とリコール社の提供する商品(記憶)との一致と混濁(現実と虚構の混乱)という醍醐味をもう少し丁寧にストーリーに入れ込んでくれた方が奇妙な話になって面白いなと思うので,そこは惜しいです。

★★★


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