2024年6月29日

差別はたいてい悪意のない人がする

キム・ジヘ(著) 尹怡景(訳) 2021 大月書店

名著です。必読書でしょう。差別の問題,マイクロアグレッションの問題について考えたい人は絶対に読んだ方が良い本です。日本語訳も,とても読みやすいです。

これと併せて読むと良いのは,前にも書きましたが,

・中島義道 『差別感情の哲学』

・木村草太 『「差別」のしくみ』

・池田喬/堀田義太郎 『差別の哲学入門』

ですね。いずれも,私たちがいかに「差別をするつもりがなくても,実は差別をしている(助長・強化している)」か,ということに気づかされる良書です。

私たちは,差別はいけないことだと分かっているし,差別のない世界になって欲しいと願っています。しかし,そういうつもりでも,自分の認識の中に深く染み込んだ差別的な社会構造の影が,知らず知らずのうちに滲み出て,他者を意図せず傷つけていることがある,ということに自覚的にならなければなりません。

すべてに気付くことができないかもしれないですが,そういうことがあるという意識をもって常日頃から過ごすことで少しでも差別的な言動を減らすことも必要だし,多くの人がそうしたことに敏感になることが差別的な社会構造を変えていく力になりうると思います。

だからと言って,委縮して自己の言動を抑制するのではなく,自己を俯瞰して眺め,他者に対して謙虚であることが,自覚への第一歩かなと思います。ただそこで,配慮しているつもりがむしろ差別になっているのではないか,ということにもメタに気づいていくことが必要です。

こうした一連の良書を読めば,単に謙虚に配慮しさえすれば良いのではなく,果たしてその言動がどのような影響を他者に及ぼすのか,まさにメタな視点からのセルフモニタリングが大切であることに気づかされます。


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