河野啓 2020 集英社
右手の親指以外の指をすべて凍傷で失ってまでエベレスト登頂に何度も挑戦し,最後は滑落死した登山家・栗城史多氏(35歳没)。当時,知名度の割に登山家としての実力が諸方面で疑問視される中,両手の指のほとんどを切断してまで登り続けるこの栗城と言う人を,なんだか痛々しく思った記憶がある。何というか,(登りたくないのに)登らざるを得ない状況に追い込まれている(自ら自分を追い込んでしまってる)んだろうなぁと。それは見栄なのか,称賛欲なのか,名誉欲なのか,あるいは金銭欲なのか,その時は,別に登山そのものには興味がないので,よく分からなかったわけですが,気にはなっていました。
かつて「ヤンキー先生」だったあの義家弘介氏が政治家になってドンドン様子が変わっていくのが不思議だなぁと思っていたわけですが,その義家氏のことを書いた『ヤンキー母校に恥じる』が出て,おおなるほど,そういう背景があったのね,とその取材力と筆力に読みごたえを感じていた,河野啓氏の前作が,これでした。で,即座に購入。ようやく読めました。
今回も,おおなるほど,そういう背景があったのね,と,あっという間に読み切りました。読むにつれ,登山には全然向いてなかったけど,ある意味で稀有な才能を持った栗城氏にはもっと別の人生があったかもと,「たられば」を考えてしまいますが,しかし,でも,たまたま登山であったのではなく,やっぱり登山でなければ世に出て来られなかったかもしれない,とも思いました。義家氏が,「先生」でなければならなかったように。

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