2024年5月2日

ロブスター

(原題:The Lobster)(アイルランド/イギリス/ギリシャ/フランス/オランダ/アメリカ,2015)

なんかすごい映画,というか,ものすご~く変な映画を観てしまった。監督はヨルゴス・ランティモスというギリシャの人。これが長編三作目だそうです。変,って言っても,別に支離滅裂っていうわけではないです。筋はちゃんと通っています。いろいろと寓話や意味がこれでもか!というぐらいいろんなところに込められてます。最後まで釘付けです。

独身が罪となる世界で,妻に離婚された男・デヴィットが連れて来られたところは,風光明媚な湖畔にたたずむ瀟洒なホテル。ホテルには,「独身者」たちが宿泊している(というか,収監されている)。ここで,45日以内に相思相愛のパートナーを見つけなければ,希望する「動物」に換えられてしまう。タイトルの「ロブスター」は,デヴィットが希望する動物だから。なお,ホテル滞在者は毎日,森に逃げ込んで暮らす独身者たちを(麻酔銃で)「狩る」という義務も与えられている。独身者を一人捕獲するたびに,ホテルに滞在可能な日数が一日増える。

まぁしかし,数多あるディストピア映画の中でも,こんな設定は初めてですわ(笑)。過剰管理社会とか出産制限社会とか資源枯渇社会とかエイリアン支配社会とか色々ありますが,だいたい,あまりに突飛すぎる設定は随所に無理が出て,インパクトは最初だけで開始早々に破綻したりして,ご都合主義のオンパレードになり,もう後半はしょうがないからアクションでごまかす,なんてのが多いような気がする。しかしこの映画は,破綻する前に,畳みかけるように設定の細部をどんどん重ねていって,その中に暗喩・明喩の両方絡めて人間社会の本質,夫婦・家族の本質,愛の本質みたいなのを皮肉たっぷりに描いていて,非常に面白い。というか,変。

あまりに突飛な設定なので,これ,作りによっては思いきり空振りする可能性もあっただろうけれど(最初に脚本見せられた出資者は絶対難色示したんじゃなかろうか。「これ,大丈夫?」って),映画全体を通して真面目にキッチリ作られていて,妙な白々しさ,嘘くささは全然感じない。だから怖い。というか,変だわマジで(笑)。よく作ったよ,ホント。

終わり方もね~,良いよね~。愛とは何だ?夫婦って何だ?人間って,何だ~?

★★★★★


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