2025年5月27日

ネット怪談の民俗学

廣田龍平 2024 ハヤカワ新書

これは面白かった。ときどき映画化される元ネタはこれか,というのがいくつかありました。ネット上で語られる怪談や都市伝説がどのように構築されていくか,あるいは,元々は作者のいるホラーが時を経てどのように怪談や都市伝説になっていくかが,よく分かりました。読んでいて飽きない。ま,そもそもこういう話,好きだからね。


2025年5月26日

コンジアム

(原題:Gonjiam: Haunted Asylum)(韓国,2018)

今ちょうど,『ネット怪談の民俗学』(廣田龍平)を読んでいて,なんとなく,また観てしまった。やっぱこえ~。

こういう,心霊スポット行ってみた的なのって,「オステンション」って言うのね(上記『ネット怪談の民俗学』参照)。でも,ホント,マジで,止めといた方が良いよね~(笑)。えらい目に遭うからね~。やろうと思ってる人,まずはこの映画を観てから考えようね。

★★★★


2025年5月19日

ふだんづかいの倫理学

平尾昌宏 2019 晶文社

倫理学はどう「使う」のかを,分かりやすく,平易な(フランクな?)文章で解説した良書。多くの場合,倫理学の本というと,ものすごく細かいところをものすごく難しい言葉でものすごく厳密に議論してたりして,専門書にしても一般書にしても,しばしば消化不良を起こしますが,この本はまったくそんなことはありません。タイトル通り。

著者の平尾先生が今まで大学で倫理学の講義をしてきて,授業中に学生に賛否や意見を尋ねたり,学生がリアクションペーパーに書いてきたりしたことをときどき紹介しながら,疑問や反論を展開しているところなども,実際に平尾先生の倫理学の授業を受けているような感じもあって,非常に良かったです。こういう授業をする先生って,良いよね。


2025年5月12日

2025年5月9日

ミラクル・ニール!

(原題:Absolutely Anything)(イギリス,2015)

なかなか面白かったわ~。

宇宙を支配するエイリアン(←凶悪そうな4匹)が,1972年に打ち上げられた宇宙探査船パイオニア10号を拾った。さて,この地球なる星をどうするか。地球人が「優秀」な種族でなければ地球丸ごと破壊するが,優秀な種族かどうかは「善」なる種族かどうかで決まることが宇宙の法律で決まっている。ルールに則り,地球人を一人,無作為に選び,10日間,全能の力を与える。この10日間の行動が審査対象となる。

でもって,たまたま選ばれたのが,冴えない高校教師ニール(中年)。自分には何でも叶える力が備わっていることに気づき,さてどうしたものかとあれこれ考えながら,どうでも良いことを実現したり,実現してみては(うまく行かないから)やっぱりキャンセルしたり。果たして地球の運命はいかに!

★★★


ディストピア2043 未知なる能力

(原題:Night Raiders)(カナダ/ニュージーランド,2021)

いやぁ,邦題が悪いよ(笑)。なんのひねりもない,そのまんまのタイトルだもんね。内容をストレートに表現するのも良いけど,ひねろうよ少しは(笑)。確かに近未来のディストピア映画で,とある能力が鍵になるわけだけど,もちっと良いネーミングはなかったかなぁ。例えば,主人公の名前で「ニスカ」とかでも良いよ。先住民のお告げとしての「守護者」でも良いよ。でもそれだと客が何だか分からなくて観てくれないから,これか。でも,この陳腐なタイトルより,全然良いんじゃないかなぁ。原題のNight Raidersも,映画の内容とどう関係してるのか分かんないけどね。「夜の侵入者たち」?うううむ。確かに,子どもたちを奪還するために,夜に侵入するけどね。

世界大戦後の近未来。子どもはすべて政府の所有物として徴集され,徹底した洗脳教育を受け,兵士になる訓練を受けさせられる。常にドローンが飛んでいて,子どもを隠していないか監視している。特権的な市民だけが住むことのできるエリアとそうでないエリアは,高い塀で隔てられている。中でも優秀な子どもは,その特別なエリアでさらなる教育を受けることになる。

しかし,この話,根本的におかしい。子どもをかき集めてすべて兵士にしてしまったら,やがてその国は滅びてしまうと思うんだけど,その辺は全く説明されてません。大人たちのエゴのために,子どもを国粋主義に教育することは理解できますが,人間はどんどん年を取るし,子どもはすぐに大人になるし,子どもがいなくなれば次の世代の子どもは生まれてこないし,さて,この国はいったいどうやって成り立っているのか,分かりません。国が国として存続するには,さらには高度な文明を維持して存続できる背景には,基礎となる第一次産業や第二次産業の生産と流通と消費を回す経済的な営みが必要であり,市民の大多数はそれを担う必要があるわけで,生まれてくる子どもを片っ端から兵士にしたら,そりゃ,軍事力は一時的に上がるかもしれないけれど,やがて滅ぶよね(笑)。子どもや若者がみな戦争に行ってしまったら,老人だけが残って,国としては存続しないのではないだろうか。

なので,話としては大したことはないけれど,一応,最後はどうなるのか(どういうオチなのか)気になったので,最後まで観ました。親子愛とか先住民のお告げとか,テーマもちんまりとそれなりにあって,まったくの愚作・駄作というわけではないから,何かもっと良い邦題を付けてあげたいよね。

★★


ツミデミック

一穂ミチ 2023 光文社

第171回直木賞。これは非常に良かった。大いにお奨めします。コロナ禍に直接間接に関わる短編が6編。出版社のポスターには,「鮮烈なる犯罪小説集」って書いてあるけど,コロナ禍でとんでもない犯罪に手を染めるとか,そういう,人間の根源的な悪に迫る犯罪小説!とかではありません(最初,そういうのかと思ってました)。

未知のウイルスが蔓延して,世界中が右往左往して閉塞感で苛まれる中,人間の本性みたいなものがじわじわと表に出てきて,人と人の間をギクシャクさせる,それが人を追い込んでいく,そんな話が6つ(ただ,最初の1つ目はコロナそのものは直接関係ないけど)。短編が6つ並んでいるわけですが,相互に関係はなく,しかし,時間軸としては,パンデミックの初期から後期へと進んでいく感じ。

どの話も読んでいて息苦しいんだけれど,そんな中で一筋の光というか,救いみたいなものはあって,そんなささやかな希望というか支えを抱いても良いじゃないか,そういう話が6つです(まぁ,必ずしも物語の登場人物が救われてはいない話もありますが,物語をメタに眺める読者としては救いを感じます)。だから,全体的に読後の気分は悪くない。どれもハッピーでお気楽な話ではないけれど,少しだけホッとします(あいや,しかし,救いのない話もあるか・・・。いや,そうではなくて,6話の構成として,だんだん救いのある話になっていってるのか)。


2025年5月8日

オーダー

(原題:The order)(カナダ,2024)

実話に基づく話。主演ジュード・ロウ。シブい「おっさん」だなぁと思いきや,一個下でした(笑)。年下かよ。クローネンバーグの『イクジステンズ』(1999)の主人公。色男が25年経つとシブくなってます。こういう年の取り方をしたいものですな。

敵役は,ニコラス・ホルト。この人,どっかで観たよな~どこで観たんだっけな~と,出演映画を見たら,最近観た『ザ・メニュー』(2022)でした。ああ,あの,蘊蓄ばっかりの胡散臭いグルメ野郎か!いやぁ,全然別人だわ(笑)。役者ってすごいなぁ。

国家転覆(暴力革命)を企てている田舎の白人至上主義者の若きカリスマ(ニコラス・ホルト)と,それを追いかける壮年のベテランFBI捜査官(ジュード・ロウ)。「オーダー」は,白人至上主義者たちが参照している「ターナー日記」という本に出てくるテロ組織名で,本作の基になっている実在したネオナチテロ組織。Silent Brotherhoodとも言うらしい。強いて訳せば,「静かなる同胞団」かな。

ジュード・ロウの経験と正義感(ただし,それ故に,家族を犠牲にしていることが暗示されてる)と,ニコラス・ホルトのカリスマ性と狡猾さの攻防。展開のテンポも良くて,飽きさせない。面白かった。

この「ターナー日記」というのは実在する本で,2021年の議事堂襲撃事件でも参照されたことが,映画の最後に字幕で紹介されてます。

★★★★


2025年5月7日

ブラッドショット

(原題:Bloodshot)(アメリカ,2020)

いやぁ,けっこう面白かった。これ,もしかしたらアメコミのヒーローものかなと思ったら,やっぱりそうだった。さすがアメコミヒーロー,特殊能力が都合良過ぎて完全無欠過ぎる(笑)。胸にマークあるし(笑)。でも,話としても,アクションも,まぁ,それなりに面白かった。トーキング・ヘッズの「サイコ・キラー」が耳に残るわ。

主演はヴィン・ディーゼル。『ワイルド・スピード』シリーズの人だね。スキンヘッドだし,なんだかブルース・ウィルスに似てる。でも,なんか滑舌が悪いなぁ。こもった声で,なんだか聞き取りにくい。

★★★



バイバイマン

(原題:The Bye Bye Man)(アメリカ,2017)

おお,これはなかなか良かった。

目的が分からないけれども,そもそも魔物に目的なんかないか(笑)。あいや,しかし,行為には物語がないと説得力が欠けるわけで,現時点では目的を失っているように見えても元々はなんらかの原因・理由がないとダメでしょう。「魔」の発生する原因・理由。それはここでは語られてない。タブーの形式である「魔」だけがある。欧米には,こういう魔物の民話や都市伝説でもあるのかな?ま,似たようなのは,どこの文化にもあるか。そういえば「キャンディマン」もこれに近いね。でも,「キャンディマン」には,差別にまつわる濃厚な物語が背景にありました。

いずれにせよ,こいつの名前を知ってしまって,それを口にすると,口にしたその本人は幻覚を見て凶行に走る。唯一の解決は,こいつの名前を聞いた人間を洗い出し,皆殺しにしなければならない。自分も含めて。

考えれば考えるほど考えてしまう。そう,いわゆる「リバウンド効果」ですね。

★★★


ゾンビランド:ダブルタップ

(原題:Zombieland: Double Tap)(アメリカ,2019)

『ゾンビランド』(2009)の続編ね。『ゾンビランド』は面白かったから2回観ました。これもまぁ,面白いけど,やっぱり,2は2だね。難しいよね,2って。期待値が高いからね。

★★


2025年5月3日

あの国の本当の思惑を見抜く地政学

社会部部長 2025 サンマーク出版

これも非常に勉強になりました。エマニュエル・トッドのような独自の視点と研究に基づく考察ではなく,地政学の基本的な考え方から,現在の世界情勢を,特に,ロシア・アメリカ・中国・日本について解説している,非常に分かりやすい本でした。

年齢のせいかのか,昨今の不穏な世界情勢のせいなのか,はたまた『どうする家康』を観て面白かったせいか,昔はまったく興味関心のなかった「歴史」や「世界」にここ数年特に目が行くようになり,いろいろと分からない「なぜ」がありましたが,この本を読んで,なるほど~だからか~,と,一つ一つ非常に納得のいく説明がなされていて,地政学の有用性・重要性を感じました。地形は,想像以上に(つまり,そのときそのときの政治的指導者の思惑云々よりも),通時代的にその国の政治的行動の方向性を規定していることが分かります。

世界の地理と歴史,その中での日本の地理と歴史,これ,トータルにグローバルに見ていくと面白いし,見ていかないと分からない。