一穂ミチ 2023 光文社
第171回直木賞。これは非常に良かった。大いにお奨めします。コロナ禍に直接間接に関わる短編が6編。出版社のポスターには,「鮮烈なる犯罪小説集」って書いてあるけど,コロナ禍でとんでもない犯罪に手を染めるとか,そういう,人間の根源的な悪に迫る犯罪小説!とかではありません(最初,そういうのかと思ってました)。
未知のウイルスが蔓延して,世界中が右往左往して閉塞感で苛まれる中,人間の本性みたいなものがじわじわと表に出てきて,人と人の間をギクシャクさせる,それが人を追い込んでいく,そんな話が6つ(ただ,最初の1つ目はコロナそのものは直接関係ないけど)。短編が6つ並んでいるわけですが,相互に関係はなく,しかし,時間軸としては,パンデミックの初期から後期へと進んでいく感じ。
どの話も読んでいて息苦しいんだけれど,そんな中で一筋の光というか,救いみたいなものはあって,そんなささやかな希望というか支えを抱いても良いじゃないか,そういう話が6つです(まぁ,必ずしも物語の登場人物が救われてはいない話もありますが,物語をメタに眺める読者としては救いを感じます)。だから,全体的に読後の気分は悪くない。どれもハッピーでお気楽な話ではないけれど,少しだけホッとします(あいや,しかし,救いのない話もあるか・・・。いや,そうではなくて,6話の構成として,だんだん救いのある話になっていってるのか)。
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