(原題:Chaos walking)(アメリカ/カナダ,2021)
これはなかなか面白かった。良かった。
西暦2257年。人類は地球から遠く離れた惑星「ニュー・ワールド」に入植した。しかし,この惑星では,理由は分からないが,男だけ思考が外に漏れ出てしまう。思考は音声化(言語化)されたり映像化(視覚化)されたりする。だから男は昼も夜も騒々しく,頭の周りには常に何か七色の煙のようなものが立ち込めている。
青年トッドの住む村に女は一人もいない。なぜなら,この惑星の先住民スパクルにことごとく殺されたからだ。あるとき,地球から来た宇宙船から出発した偵察船(先発隊)が,大気圏突入時の事故で,トッドの住む村の近くに不時着する。生き残ったのは一人の女性(ヴァイオラ)。トッドが彼女を見つける。
主演は『スパイダーマン:ホームカミング』のトム・ホランド,監督は『オール・ユー・ニード・イズ・キル』のダグ・リーマン。原作は,パトリック・ネスの『心のナイフ(原題:The knife of Never Letting Go)』。
ここで「思考が漏れる」というのは,自分の考えていることが他者に知られてしまい,他者の考えていることが分かってしまう,ということである。まさに統合失調症の症状である「思考化声」や「思考伝播」のような状態であり,これはかなり生きづらい。想像以上に生きづらい。
Never Letting Goという原作のタイトルも,思考(心)とは「手放せないもの」という意味もあるかと思います(それを手放していこうとするのが,マインドフルネス瞑想であり,仏道修行ですね)。
先住民スパクルとの関係も考えさせられるものがあります。映画も,単なる異形の野蛮な怪物ではなく,入植者である人類との関係を考えさせるように描いています。
★★★★
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