2023年3月5日

ザ・ヴィジル~夜伽~

(原題:The vigil)(アメリカ,2019)

【vigil】というのは,「寝ずの番,通夜,見張り」という意味ですね(「警戒,用心」という意味のvigilanceってのがありますね)。邦題の【夜伽】(よとぎ)は,「一晩中寝ないでそばにつきそうこと,または,それをする人」「死者のそばで,夜通し寝ないで守ること。通夜」の意味です。

敬虔なユダヤ教徒であったヤコブは,弟を見殺しにしてしまったという「後悔と懺悔の念」を持っている。そのせいで教会からも抜けて独りで暮らしているが,あるとき,教会の人間から,ある故人のshomerを頼まれる。【shomer】とは,ユダヤ教で,a male who watches over the body of a deceased person in the ritual of shemira(shemiraの儀式で亡くなった人の遺体を見張る男性)とあります。このshemiraというのは,ヘブライ語でwatchingやguardingという意味らしい。つまり,死んでから埋葬するまでの間,なくなった人の遺体を見張る,ユダヤ教の宗教儀式のこと。

ヤコブは,就職もままならず,毎日の生活にも困っていたので,交渉して400ドルで引き受けることに。認知症を患っている故人の奥さんもいるが,夜中は寝ているだろうし,明け方までの5時間の我慢だと自分に言い聞かせて,遺体のそばにいることに。しかし,どうもその家の様子がおかしい。

キリスト教の悪魔対決映画はよくありますが,この映画はユダヤ教。ユダヤ教だから,その悪魔(マジキム)ももっとずっと古の昔からいて,後悔と懺悔の念を持つ人間に取り付き,その魂を搾り取る。なかなか怖かった。ストーリーも分かりやすく上手にまとまっていて(変にごちゃごちゃしてなくて),人体破壊とかゴア表現とかで驚かそうとしてなくて,佳作。

★★★



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