2023年3月13日

あなたの隣の精神疾患

春日武彦 2021 インターナショナル新書

春日武彦の本が好きで,昔けっこう読んでいましたが,久しぶりに数年前『鬱屈精神科医,占いにすがる』が出た時に読んだときに,ずいぶんウェットな感じになっていて読む気が失せていました。こんなにベタベタウダウダした人だったっけ?と。

今回この『あなたの隣の精神疾患』を読んだのは,精神疾患について一通り最初からおさらいしたいと思って,いくつか買おうと選んでる中で見つけたからです。

で,結論を言えば,昔の感じに戻ってました。精神疾患という,つかみどころがない,はっきりしない,あいまいな部分のある疾患とその患者に対して,一定の距離を保って(患者にも自己にも客観的に)向き合う感じが非常に安定している(その点が一見冷たく見える)ところが,とても良い。そうそう,こういうドライな感じ。

『鬱屈精神科医・・・・』のころはおそらく,御母堂が亡くなられたころに書かれたのもきっと関係しているのではないかと思います。あるいは,特にテーマのないエッセイ的な感じのものと,こうして「精神疾患について一通り,自分の臨床経験から解説する」というテーマがある場合とでは違うのでしょうかね。


2023年3月8日

モータル・コンバット

(原題:Mortal kombat)(アメリカ,2021)

おもしれー。最初から最後まで飽きさせない展開とアクション。真田広之キレキレ。理屈抜きで楽しいアクション映画。ストーリー上の主人公はコールという総合格闘家だけど,最初と最後の一番の見せ場はハサシ・ハンゾウ(スコーピオン)の真田広之です。ちなみにライデンは浅野忠信。

★★★


2023年3月7日

プロジェクト:ユリシーズ

(原題:Tides)(ドイツ/スイス,2020)

気候変動・伝染病・戦争などで居住不可能になった地球を脱出して,ケプラー209という惑星に移住した人類は,その惑星の環境から生殖機能を失ってしまったため,再び地球に帰還する計画を立てる。それがユリシーズ計画。先に探索のために向かった第一次計画のクルーからの通信が途絶えたため,第二次計画としてポッドで地球に降下する予定のクルー三人だったが,大気圏突入時の事故で海面に不時着時に一人死亡,もう一人も身動きが取れなくなる。一人探索に出るブレイクは,ひたすら続く干潟を歩くが,霧も出てきたのでポッドに戻ろうとする。しかし,そこで「人類」に襲われる。地球に取り残された生存者たちであった。

とまぁ,結果,地球で生き残った人類のコミュニティ(言語がすでに通じない!)に捕えられるのだが,そこから色々と謎が見えてくる。コミュニティを襲うまた別のコミュニティは一体誰なのか。第一次計画のポッドはどこにあるのか。ケプラー209から離れたことで,生殖は可能になるのか。

地球は,(おそらく)海面上昇してほとんどが海になり,干満を繰り返している環境。食料としては,主に甲殻類や貝類が捕れる。全体に湿気と霧で覆われている(気象病の僕には,この環境は見てるだけでつらいですわ)。ただ,なんで移住してたった二世代しか経ってないのに,こんなに言語が通じなくなってるのかよく分からなかったり,そんな遠い惑星に移住できる科学力がある割に着陸したポッドがけっこう今風だったり,そもそも植物が存在しないのになぜ酸素が存在するのかも謎だったり,といろいろ疑問はありますが,それなりに楽しめました。

設定が斬新かな。よくあるのは,環境汚染された地球から脱出,ってのはあるけど,これは,そこでも住めない(人類が絶滅してしまう)から戻ってくる,って設定です。

タイトルの原題は他に,The colonyというのもありました。tideは「潮汐(潮の干満)」って意味ですから,この映画の設定(干満を繰り返す海)になってます。colonyは「居留地」とか「植民地」とかですが,こちらの方が映画そのもののメッセージに近いかも。

★★★


2023年3月6日

カラー・アウト・オブ・スペース ─遭遇─

(原題:Color out of space)(ポルトガル/アメリカ/マレーシア,2019)

ラブクラフト原作の『宇宙からの色(異次元の色彩)』の映画化。ラブクラフトは,田辺剛のコミックで(のみ)読んでました。

人里離れた田舎に住む家族5人。ある日,庭に隕石が落ちてくる。それから色々と異変が起こるように。父親はニコラス・ケイジ。少しずつ,しかし確実に,崩壊していきます。そこは見ていて面白かった。まったく頼りにならないオヤジ・ニコラスの制御不能暴走映画ね。そこんところを中心にもっと徹底的に描いた方が良かったんじゃないかなぁ。そう思います。

それに,刃物で人体を切る場面は,あれって,ストーリー上,必要なのかね(二度,あります。母と娘)。生理的な嫌悪感を添えよう,ってことなのかな。要らないでしょう(本筋に影響しない)。人体破壊とかゴア表現とかモンスター化した動物で怖がらせるんじゃなくて,宇宙からの隕石の影響で(本来頼りになるはずの)父親がどんどん狂っていくところがミソ,なのではないかと思うからです。

★★



2023年3月5日

ザ・ヴィジル~夜伽~

(原題:The vigil)(アメリカ,2019)

【vigil】というのは,「寝ずの番,通夜,見張り」という意味ですね(「警戒,用心」という意味のvigilanceってのがありますね)。邦題の【夜伽】(よとぎ)は,「一晩中寝ないでそばにつきそうこと,または,それをする人」「死者のそばで,夜通し寝ないで守ること。通夜」の意味です。

敬虔なユダヤ教徒であったヤコブは,弟を見殺しにしてしまったという「後悔と懺悔の念」を持っている。そのせいで教会からも抜けて独りで暮らしているが,あるとき,教会の人間から,ある故人のshomerを頼まれる。【shomer】とは,ユダヤ教で,a male who watches over the body of a deceased person in the ritual of shemira(shemiraの儀式で亡くなった人の遺体を見張る男性)とあります。このshemiraというのは,ヘブライ語でwatchingやguardingという意味らしい。つまり,死んでから埋葬するまでの間,なくなった人の遺体を見張る,ユダヤ教の宗教儀式のこと。

ヤコブは,就職もままならず,毎日の生活にも困っていたので,交渉して400ドルで引き受けることに。認知症を患っている故人の奥さんもいるが,夜中は寝ているだろうし,明け方までの5時間の我慢だと自分に言い聞かせて,遺体のそばにいることに。しかし,どうもその家の様子がおかしい。

キリスト教の悪魔対決映画はよくありますが,この映画はユダヤ教。ユダヤ教だから,その悪魔(マジキム)ももっとずっと古の昔からいて,後悔と懺悔の念を持つ人間に取り付き,その魂を搾り取る。なかなか怖かった。ストーリーも分かりやすく上手にまとまっていて(変にごちゃごちゃしてなくて),人体破壊とかゴア表現とかで驚かそうとしてなくて,佳作。

★★★



刑事物語

(日本,1982)

久しぶりに,なんとなくまた観ました,武田鉄矢の『刑事物語』。昔,何度も観ているはずなんだけど,ああ,こういうストーリーだったかと,改めて思いました。意外とちゃんと覚えてないもんだなぁ,ストーリー。

武田鉄矢の蟷螂拳とハンガーヌンチャクにばっかり目が行って(まさに「舐めてた相手が実はカンフーマスターでした映画」),ストーリーや役者の芝居をちゃんと観てなかったんだろうけど,けっこう人間描写されてて驚きました。

片山刑事の一本気なところは,心底の正義感と親切心でもあるんだけど,その裏にはエゴも強烈にあって,そういうエゴと暴力性を抱え込むように,普段はおとなしくて優しい男を「演じて」いる。だから,帽子から靴まで全身「白」の服をまとっているのは,その外面的外殻的な純朴さの象徴である。しかし,昔,母親に捨てられた(育てられなくて預けられた)恨みと寂しさがトラウマになっていて,また,見た目のモッサリ感もあって,やたら言葉は多いけど,うまく相手(愛する女性)に本心を伝えられない,そういう矛盾を抱え込んで生きている,青年32歳(武田鉄矢,若い!)。

最後,犯人の居場所に乗り込むとき,片山刑事は同僚刑事にこういう。「憎むんですよ。憎むと人間の力は二倍にも三倍にもなるんです」。そう。片山刑事の心の中には憎しみがある。ただのずんぐりむっくりで朴訥な優しいだけの男ではなくて,その裏には,憎しみを原動力として生きるエゴと暴力性が住んでいる。

回想シーンから,昭和30年に少年(小学2~3年生?)だった設定だから,戦後まもない復興期に生まれたことになる。だから憎しみは,社会に対する憎しみであり,貧困に対する憎しみがあり,自分の生きてきた境遇への憎しみであり(預けられた警察官の親には感謝していて,だから今,自分も警察官になっている),孤独への憎しみであり,そこに,愛憎入り混じった実母への思慕,うまく女性と付き合えない自分に対するふがいなさなども複雑に絡んでいる。

今見ると,連続殺人事件の裏で暗躍する組織のやり口は荒唐無稽なところがありますが,武田鉄矢の強烈な芝居で,32歳の刑事・片山元がとがっていて,良いです,やっぱり。シリーズは5まであります。

★★★★


2023年3月3日

ガール・オン・ザ・サード・フロア

(原題:Girl on the third floor)(アメリカ,2019)

古い家に引っ越してくるため,夫が先に来て家の改築に。相当古くて改築もうまく行かないし,妙なことも起こる。すると,妙な若い女が現れる。

うううん。微妙だなぁ。とりあえず最後まで観たけど。

★


2023年3月1日

水怪 ウォーター・モンスター

(原題:Water Monster)(中国,2019)

人を襲って頭を食べる,沼に住む怪物。10年前に父親を殺された青年・水生は,怪物との戦いに挑む。

要するに,半魚人ですね。中盤で早々に,明るいところで姿を見せて,その気持ち悪さと不気味さをさらけ出すのはたいへん潔くて良いですが,そのせいで後半は見慣れてしまって,よくできたライダー怪人にしか見えなかった。

しかも,途中,マトリックスばりに水生らの攻撃をかわすライダー怪人。いったいどっちがメインなんだか。

★★


2023年2月28日

リトル・モンスターズ

(原題:Little Monsters)(イギリス/オーストラリア/アメリカ,2019)

園児たちが遠足に行った先でゾンビに襲われる。キャロライン先生と,下心から遠足に付き添ったデヴィッド(園児の一人フェリックスのおじさんで,売れないロッカー)は,園児たちを守るために奮闘する。

★★★


2023年2月20日

リピーテッド

(原題:Before I go to sleep)(アメリカ/イギリス/フランス/スウェーデン,2014)

原題を直訳すれば,『眠ってしまう前に』でしょうか。その方が良いような気もします。いや確かに,『リピーテッド』でも内容を表してはいますが。

過去20年ぐらいの記憶を喪失してしまい(逆行性健忘),毎日起きてから寝るまでの1日しか記憶が続かない(前向性健忘),40歳ぐらいのクリスティーン(ニコール・キッドマン)。毎朝目が覚めると,過去20年分の記憶を失っている状態で目が覚める。隣には見知らぬ男が寝ている。彼は,夫のベンだという。ベンは,自分がクリスティーンという名前で,どういう症状なのかを説明する。

ベンが出勤すると,電話がかかってくる。医師のナッシュという男から,クローゼットの奥にしまってあるカメラの動画を見ろと言われる。そこには自分がカメラに向かって語る姿が映っていた。

設定は面白い。『メメント』に近いか(『メメント』のように複雑に時間が逆行しないから,そこまでややこしくはない)。ループ設定という点では『オール・ユー・ニード・イズ・キル』にも近い。真犯人は誰だ。

★★