2024年12月26日

ハッチング─孵化─

(原題:Hatching)(フィンランド,2022)

なんか気分がどんよりするホラーだわ。

いわゆる「毒親」ってやつですか?ティンヤは,思春期前の女の子。両親と弟の四人家族。理想的な「素敵な家族」をSNSで演出しようとする身勝手な母親に愛されようと,母親の言うことは(どんなに無茶苦茶でも)なんでも肯定し,通っている体操のサークルでは期待通りの選手になろうと必死に練習している。そんな中,森の中で小さな卵を拾う。

この卵がね,だんだん大きくなるのよ。ティンヤの心の内に抑圧された「憎悪」とともに。で,とうとう孵化して中から変な(鳥みたいな)のが出てくるのよ。怖いしキモい。

★★★


2024年12月24日

心理学入門 一歩手前

道又爾 (2009) 勁草書房

心理学という学問のヘンテコさ(怪しさ)について,学部で始めたころからなんとなく感じてはいましたが,意識的には特にこの10年ほど考えてたこと,ここ最近では一般教養の「心理学」の授業で学生に話してること(人間の心を研究すると称する心理学という学問のヘンテコさ)が,ほぼほぼここに書いてありました。

「心理学」は,うちの大学では「A」と「B」がありまして,履修上,学生はどっちから取ることも可能だから,AとBは独立して内容を構成しています。そこで,Aはどちらかといえば広く浅く心理学の射程を紹介する感じで,いわば「心理学概論」的な話。一方,Bはより原理的に狭く浅く,いわば「心理学の哲学」みたいな感じで,心とは何か,他者の心って何か,そういう心を研究する心理学って何か,みたいなところを話しています。「まぁ,まさに『B面心理学』っつうことですね」と,うううん我ながら良い例えだぜ,と悦に入って最初の週に学生に説明していますが,残念ながら今時の学生に「B面」は通じず。

この,「心理学B」で,僕が心理学をずっとやってきて思うところ感じるところ(要するに,違和感や不全感として感じられる学問としてのヘンテコさや怪しさと,しかし,そのヘンテコさ・怪しさ故の学問そのものや人間存在の面白さ)を何とか学生に伝えようとしているのですが,そのヘンテコさと面白さが,分かりやすく書いてありました。あとがきでは「愛想半ば」と書いてますが,まさにその通り。

ああ,道又先生,今までお会いしたことはないですが,同じこと考えてたんだ~,良かった~,僕だけじゃないだ,このモーレツな違和感は~・・・って,あれ?これって,心理学やってる人はみんな思ってることなのかな?


2024年12月23日

シビル・ウォー アメリカ最後の日

(原題:Civil War)(アメリカ/イギリス,2024)

政治的な分断から,連邦政府から複数の州が離脱し,テキサスとカリフォルニアが西部勢力として政府軍との内戦に発展したアメリカ。14か月も雲隠れしている大統領のインタビューをするために,戦闘で破壊され無政府化した街を通ってワシントンD.Cへと向かおうとするジャーナリストのリー(キルステン・ダンスト)とジョエル。そこに,ベテランジャーナリストのサミーと,リーに憧れるジャーナリスト志望の若者ジェシーが加わる。ジャーナリスト目線で見た,戦争することの愚かさ,国民同士が互いに憎しみ合う内戦の愚かさ。

主人公のキルストン・ダンストって,あの『スパイダーマン』(2002)のMJです。年取って,シブい感じの俳優になってて,良いです。

市街戦の戦闘場面だとか,遠景で燃える街だとか,破壊された街だとか,虐殺された死体だとか,リアリティがあると思いました。昨今は,ウクライナ戦争やガザ戦争で,ミサイル攻撃や戦闘場面や破壊された街や被害を受けた市民の様子は連日のように報道されていますが,そうした現実の戦争中の様子がリアルに再現されていて,監督の気概を感じます。アマプラの評価はあんまり高くないですが,良かったです。

戦争は,いかんよ。

★★★


2024年12月21日

イノセンツ

(原題:The Innocents)(ノルウェー/デンマーク/フィンランド/スウェーデン,2021)

こ,怖すぎる。なんかもう,心が痛い。

場所は,とある大きな集合団地。そこに越してきた4人家族。長女アナは知的障害があり,両親はそんな長女につきっきりで,次女のイーダは面白くない。一人で団地の中を歩いていると,友達のいない孤独な少年(おそらく移民で母子家庭)と出会う。この少年が,手を触れずにモノを動かす不思議な力を持っていた。

子役たち,演技うますぎ。すっかり飲み込まれました。

★★★


2024年12月5日

鵼の碑

京極夏彦 2023 講談社ノベルズ

ようやく読めました。百鬼夜行シリーズ(京極堂シリーズ)を,『姑獲鳥の夏』からもう一度全部読み直して,ようやく辿り着きました。


2024年11月30日

猿の惑星:聖戦記(グレート・ウォー)

(原題:War for the Planet of the Ages)(アメリカ,2017)

不時着した星は,猿(類人猿)の支配する星で,人間は原始的な暮らしをしていて,捕まえられた人間は家畜のように扱われていた・・・。映画『猿の惑星』(1968)は,小さい頃にテレビで見て,身が凍るほど怖かった覚えがあります。今から見れば動きの少ない被り物の猿マスクなんだけど,しかし,服を着て馬を駆り言葉を話す猿マスクが逆に何とも異様で,そんな猿(類人猿)が人間を家畜のように扱うのを見て,尻の穴が縮み上がる怖さを感じました。馬に乗っている兵士のような人が振り返ったらその人は人ではなく猿!うああああ,自分もこんなところに不時着しちゃたらどうしよう・・・って不時着しないけどね。

このマスターピースの設定の背景,つまり,そもそもなぜ地球が類人猿の支配する『猿の惑星』になってしまったのか(あ,ネタバレ)。一体何が起こったのか。この3部作は,その謎を解く話でもありつつ,それぞれにストーリーとしても観ていて面白い。

さて,今年公開された『猿の惑星/キングダム』(2024)ですが,このシーザーの物語3部作から300年後が舞台だそうです。そのうちアマプラで見放題になったら観ます。楽しみ。

★★★


2024年11月28日

猿の惑星:新世紀(ライジング)

(原題:Dawn of the Planet of the Apes)(アメリカ,2014)

人間と類人猿の戦いが始まる。

★★★


猿の惑星:創世記(ジェネシス)

(原題:Rise of the Planet of the Apes)(アメリカ,2011)

久しぶりにまた観ました。面白いね,やっぱり。

『猿の惑星/キングダム』(2024)が公開されたので,もう一度最初から観直してみようかと思いまして。

★★★


2024年11月17日

ムルゲ 王朝の怪物

(原題:Monstrum)(韓国,2018)

1500年代の朝鮮。王の座を狙おうと,疫病と怪物を使う領議政(総理大臣みたいなもの?)。Kモンスター映画。途中で飽きました。


2024年11月10日

シー・フィーバー 深海の怪物

(原題:Sea Fever)(アイルランド/スウェーデン/ベルギー,2019)

海,こえ~。何がいるかわかんね~から,こえ~。

★★★


呪呪呪/使者をあやつるもの

(原題:The Cursed: Dead Man’s Prey)(韓国,2021)

使者をよみがえらせて操って,とある製薬会社の執行部たちに復讐する事件を追いかける,フリーのジャーナリスト・ジニ。

「謗法師」っていう呪術をする少女が味方として出てくるんだけど,なんだか,この映画の前に主人公との間に物語がすでにあるような感じ・・・と思って,映画を観終わってから調べてみたらやっぱり。この映画,『謗法~運命を変える方法』っていうドラマの続編映画でした。やっぱしね~。

操られる死者の演出が良かった。集団激走Kゾンビ。ホラーではなくて,アクション映画だね。

★★★


2024年11月9日

アポカリプスZ:終末の始まり

(原題:Apocalipse Z: The beggining of the End)(スペイン,2024)

人間を凶暴化するウィルスが蔓延しつつある世界。妻を交通事故で亡くしたマネル。一足先にカナリア諸島へ避難した姉(旦那が軍人)から,避難所も危ないからと示唆され,ロックダウンされた街にそのまま居残ることに。やがて食料も尽きかける・・・。

ゾンビ映画の醍醐味の一つは,機能が完全にストップした現代の街でどうサバイブするかにあるわけですが,この映画もそこんところの,機能停止した街の様子やサバイブ具合もまぁまぁな出来。スペインゾンビ。まぁ,ただ,ゾンビ映画によくありますが,何か月も機能停止してるのに,登場人物たちの身なりはずいぶん綺麗です。そこは映画。

それから,最愛の妻を亡くした経緯だとか,かわいがっている猫と逃げるところは,多少のアクセントにはなってるけど,ゾンビサバイバルとはあんまり関係ない(笑)。ゾンビから逃げて生き延びるだけじゃ話としてはよくある話なので,そんなサブストーリーもかませてあるんだろうけどね。だったら,なんかもっと,妻の生前の言葉が九死に一生を得るヒントになるとか,相棒の猫が「ここぞ!」というときに活躍すれば良いのにね。

主人公マネルの武器は,趣味のダイビングで使う銛(もり)です。だからダイビング用のウェットスーツ着用↓。

★★


2024年11月6日

倫理的なサイコパス

尾久守侑 2024 晶文社

面白かった。やっぱり,主観的な思いや考えについて客観的な視点を「いちいち」添えながら書いているのがいい(笑)。主観と客観を行ったり来たり。タイトルは著者本人が考えたということですが,その意味もそういうことのように思います。春日武彦氏の本もそこが良いと思うわけですが,この人の本も,あれこれ買って読んでみようと思いました。

なお,精神分析系の精神科医です。私の認識では,分析系の医師は珍しいのではないかと思いますし,本書の中でもそういうようなことを書いていますので,実際,そうなのだと思います。

しかし,これまでこの人のことを全く知らず,タイトルから何となく面白そうだと思って買ったわけですが,予想外だったのが,34歳と若いことと,詩人でもあることでした。自分がつくづく年を取ったなと思いつつ,詩集も買ってみようと思います。


2024年11月3日

【翻訳しました】マインドフルネスの探究:身体化された認知から内なる目覚めへ

11月1日に,北大路書房より,MBCT(マインドフルネス認知療法)創始者の一人であるジョン・ティーズデールの著書"What Happens in Mindfulness"を私が翻訳した『マインドフルネスの探究』が出ました。

マインドフルネスを実践している人,マインドフルネスを教授している人,マインドフルネスを用いて臨床している人など,マインドフルネスに深く関わっている人に是非読んでもらえたら嬉しいです。

つまり,どちらかというとこの本は,一般書・入門書というよりは専門書であり,特に,マインドフルネスにしばらく携わって,あれこれ考えたり感じたり触れたり気づいたりして,マインドフルネスって何なんだろうと思って,もう少し深いところまで知りたい,という人向けです。


2024年10月25日

マインドフル・ボディ

エレン・J・ランガー(著) 高橋由紀子(訳) 2023 徳間書店

盛沢山。ここで書かれている数多くの知見は,本当にあれこれいろいろあって,一言では言い表せないぐらいたくさんの興味深い研究知見が盛り込まれてます。もちろん,その中にはよく知られているものもたくさん含まれますが,(私も知らなかった,特にランガーらの)新奇で面白い着想の(未公刊も含む)研究がいくつも紹介されてます。あえて一言でいえば,「健康や幸福は心によって作られる」「健康や幸福は考え方次第でいかようにもなる」というところでしょうか。一応,私も感情制御や健康増進をテーマにしてきて,マインドフルネスもやっている端くれとして前からそう思ってますが,このランガーの一連の研究を見通すと,その効果は想像以上に大きい,ということを感じました。たまに「おいおい,これ,ホントかよ(ホントに有意差が出たのかよ)」というような(にわかには信じられないような)研究もいくつか出てきますが,いずれにせよ,ランガーの自由な発想による奔放な研究の数々に驚嘆します。

2024年10月17日

シャーロック・ホームズの護身術バリツ:英国紳士がたしなむ幻の武術

エドワード・W・バートン=ライト(著) 田内志文(訳) 2024 平凡社

『大槻ケンヂさん大推薦!!』


こういうのがあるのは知ってましたが,実際に写真と解説をちゃんと見たのは初めてでした。

SFマンガで倫理学:何が善くて何が悪いのか

萬屋博喜 2024 さくら舎

これは面白い!読んでいてすごく楽しい。SFマンガを題材にして話を進めていくのもそうだし,この先生の文章は分かりやすいので,とっても読みやすい。


2024年10月15日

全日本杖道大会「二段の部」ベスト4

先日の10月13日(日),かの有名な「武徳殿」(日本で最古の演武場)の横にある京都市武道センター主競技場にて,第51回全日本杖道大会が開催されました。「二段の部」に出場しまして,おかげさまでなんとかベスト4に入りました。優秀賞(全日本は,三段までは決勝戦を行わない)まであと一歩でした。

順位的にはあと一歩ですが,まだまだ全く修業は足りません。足りないところだらけです。たぶん,勝ってしまっては増長して稽古もおそろかになりましょうが,負けてますので,足したいところが満載です。課題はたくさんありますから,これでまた,稽古が一段と楽しくなりそうです。早く稽古をしたくてたまりません。

今回ペアを組んだ白谷さん(日本武道館・武道学園)と,試合後に記念撮影。白谷さんとは20歳以上?年が離れてますので,五十路過ぎのオジサンとしては,若者の足を引っ張らないよう,なんとか頑張りました(笑)。しかし,相変わらず,緒戦は緊張します。緊張しすぎてガチガチの引落打。白谷さんの太刀の先にガチンと当たって,危うく空振りするところでした。いやぁ危ない危ない。

大会の様子です。京都市武道センターは,今回初めて行きました。東京武道館よりも狭かったですね。けっこう古い昭和な建物でした。

試合(大会)は,飽くまで,日々良い稽古をするための単なるキッカケに過ぎません。せっかく出るわけですから無論,勝つように稽古します。ここでいう「勝つ」というのは,単に対戦相手との優劣を競って,少しでも相対的に優れることを求める,ということではなく,杖道として正しい動作や正しい理合を体現するという武道的な理想へと少しでも近づく,ということを意味します。ですので,勝とうが負けようが本質的にはどうでもよく,試合まで,そして試合後に,いかに良い稽古,充実した稽古を日々送れるかが重要です。なので,都大会に続き,今回の全日本大会も,とても良いキッカケになりました。

来年は埼玉だそうです。是非また出たいと思います。

2024年10月8日

うつ病になってマンガが描けなくなりました 退院編

相原コージ 2024 双葉社

「発病編」「入院編」に続く「退院編」。完結。うつ病の人が感じている自分や世界を知る上で貴重な資料だと思います。


2024年10月1日

八本目の槍

今村翔吾 2022 新潮文庫

吉川英治文学新人賞受賞。「賤ケ岳七本槍」一人一人の物語から紡ぐ,石田三成の物語。豊臣秀吉の小姓組だった,才気と個性あふれる七人の登場人物たちが語る,八人目の男・石田三成という男の生き様。


2024年9月23日

人工知能に哲学を教えたら

岡本裕一朗 2018 SB新書

人工知能(AI)が,どのくらい人間と同じように振る舞えるかについて,色々なテーマから探ってみた感じ。その中で,哲学の有名な思考実験を絡めて紹介しているので,人工知能をテーマにした哲学入門的な本になってます。2018年の本なので,AI,ディープラーニング,インターネットから解いてます。なので,ここ数年の対話型AIなど各種AIの発展は考察の材料に含まれていない。

岡本先生は1954年生まれらしいのですが(現在69歳),仮に6年前の2018年出版だとしても,カバーの写真は若すぎるぞ(笑)。


2024年9月17日

ドント・ウォーリー・ダーリン

(原題:Don't Worry Darling)(アメリカ,2022)

ああ,なるほど。一応,分かりました。

時は60~70年代のアメリカ。豪華な家とスマートな夫のいる優雅な生活を送る主婦のアリス。ビクトリー社に勤める夫を送り出し,家事をこなした後は,奥様たちとプールサイドでおしゃべり。夜はパーティ。そんなある日,隣の奥様の様子がおかしい。漠然と感じる違和感。あるとき,気晴らしにバスに乗っていると,プロペラ機が立ち入り禁止区域の山の向こうに墜落するのを目撃。心配になって見に行くと,丘の上に奇妙な建物が立っていた。

以下,ど~しても気になるので,ややネタバレ。もし良かったら,観てから読んでね。面白い映画ですから。

-------------

そもそも,これは何のために?誰得?ボランティアじゃないんだから,装置のシステムと身体的な衛生・栄養の維持管理のための予算もそこそこかかるでしょう?国家予算レベルとまでは言わないけど,大富豪レベルの予算は必要ではないか。まぁ,しかし,そういう偏った思想に基づいた狂気の実験計画,ってことなんだろうね。近未来だから技術的な面から予算もそれほど掛からないってことかね。技術的なギミックや方法はあえてショボく作ってるみたいだけど。

あと,話の転換のキッカケとなる「飛行機の墜落事故」はなんで起きたんだろう?世界は完璧じゃなかったのか?やっぱり完璧ではない?それから,ときどき揺れるのは何だろう?壁が迫ってくる幻覚は?システム障害なのか?それともバグなのか?寝返りしてるから?何の伏線なんだ?いや,これはすべて,要するに,作りものの世界であるという,この話そのものの伏線なんだね。

そうだとして,複数の人間で世界が共有されてるようだけど,それは一体どうやって?そういうシステムと言ってしまえばそれまでだけどねぇ。それから,時間的な尺は同じなのか違うのか?尺が同じなら,やっぱり予算がそれなりにかかるんじゃないかなぁ。同じだとすると予算的にも身体的にも(衛生とか栄養とか)続かないでしょう,この実験計画だと。それから,男は昼間の仕事中,何やってることになってるんだ?やることないから暇なんじゃないか?いや,そうじゃないのか・・・うううむ。つまり,一時的には成立するかもしれないけれど,継続性を考慮していない,根本的に破綻した計画なんじゃないかと思うわけですよ。時間的な尺が全く違う「胡蝶の夢」なのであれば成立すると思うけど,そうだとしたら,この実験の狂気性は薄らいでしまうわけで(その場合は,『トータル・リコール』のリコール社みたいなもんでしょう)。

・・・と,細かいところの整合性や意味を考えたら色々と疑問が湧きますが,まぁ,面白かった。細かいところに目を瞑って,表面的に見れば(深く考えなければ),とても面白い設定です。近未来SFです。

★★★


2024年9月15日

人狼ゲーム 夜になったら,最後

(原題:Werewolves Within)(アメリカ,2021)

面白かった。

森林保安官(レンジャー)として,雪深い村ビーバーフィールドに赴任してきたフィン。のどかな村は,豊かな森林を伐採してパイプラインを引くか引かないかで揉めている。そんなとき,村の発電機が鋭い刃物のようなもので破壊され,村人の飼っている犬が行方不明になり,蒸発したとされていたホテルの主が床下から死体で見つかる。

この中に「人狼」がいる,っていう人狼ゲームを映画化?だそうですが,この『○○たら,●●』って副題はもう,読んでて恥ずかしい。止めようよ,これ。『人狼ゲーム デスゲームの運営人』って日本映画が2020年に公開されているので,副題を付けたんだと察しますが,例のやつの二番煎じっスよね。このパタンで,例のやつより前のものもあるのかね。

まぁ,でも,ホラーコメディとして,セリフ回しのテンポも良く,観てて飽きないです。

★★★


2024年9月13日

思考実験入門

前田圭介 2024 星海社新書

有名どころの思考実験20題と,現代的な問題14題。分かりやすい。すぐ読めます。


2024年9月12日

ファイブ・ナイツ・アット・フレディーズ

(原題:Five Nights at Freddy's)(アメリカ,2023)

人気ホラーゲームを映画化,だそうです。テイスト的に,ニコラス・ケイジ主演の『ウィリーズ・ワンダーランド』そっくり。制作会社も監督も違うけど,関係あるのかな?どうやら『ウィリーズ』もゲームがあるみたいけど,ゲームが映画の後っぽいんだよね。

妹アビーの親権を維持するためにも何とか仕事に就かないといけないマイクは,廃墟と化したピザ・レストランの警備の仕事を請け負うことに。しかし,その廃墟レストランでは,アトラクションの電気仕掛け人形たちが夜な夜な動き出す・・・って,『ウィリーズ・ワンダーランド』だろ(笑)。ただ,設定は似てても,『ウィリーズ』の斬新な方向性とは違って,こっちの『フレディーズ』は正統派といえば正統派。

ま,でも,それなりに面白かった。

★★


2024年9月10日

ドアーズ

(原題:Doors)(アメリカ,2021)

突如,砂鉄で覆われてるような不気味な壁が世界中のいたるところに出現する。多くの人間がこれに引き寄せられ,引き込まれ,帰ってこない(ごくたまに生還する人もいる)。人類はこれを「ドアーズ」と呼び,調査を開始する。この物体は一体なんだ。

この未知の物体「ドアーズ」をテーマに,短編4つでつなげた映画。Lock Down / Knockers / Lamaj / Interstitialsの4編。悪くない。設定は面白い。でも,最初のLock Downが実はちょっとイマイチ。ここで観るのを止めないで,もう少しだけ見続けると,まぁそこそこ面白い。

どうでも良いようでどうでも良くない気がするのが,この最初のLock Downの主人公の高校生がずっと口を開いていて(まぁ,そういう顔なのか,そういう演技なのか,よく分からないけど),それがどうしても気になってしかたがない。口を開けていると,これから何かをし始めるのかとか,何かを言おうとしているのかと思ってしまう。でも全然何かをするわけではない。話と関係ないところでは,是非,口は閉じよう。

ちなみに,ポスターからは,何か近未来SFのような,あるいは,宇宙での惑星もののようなイメージを与えますが,全然違います。でかでかと中央に描かれてる人や,振り向いてる人なんか,特に主人公ってわけでもないし(笑)。

★★


2024年9月8日

文庫版 邪魅の雫

京極夏彦 2009 講談社文庫

この話,粗筋をほとんど覚えてませんでした。たぶん,いや,絶対,読んでるはずなんだけど。新書版は2006年ですから,今から18年前か~。


2024年9月6日

INFINI/インフィニ

(原題:Infini)(オーストラリア,2014)

うーん。地球からはるか遠くに離れた宇宙の果てにある基地に転送する設定。転送にはどうも副作用があるよう。一方で,その宇宙の果てで採掘しようとした鉱物は寄生する生命体のよう。うーん。原因をどっちにしたいんだ?

とまぁ,設定は面白いんだけど,なんかまとまりがない。途中,お互いが殺し合うのも,尺を稼ぐためか,アクションでハラハラさせたいのか,やたら長いし。必要以上に焦らせるセリフ回しだったりして,ただハラハラさせたいための小手先の演出のように思えるし。そもそも,転送先の基地の動力が止まってマイナス70度で凍ってました,って状況はどういう意味があったんだろう?

設定の面白さをもっと深めればいいのにね~。


2024年8月26日

ウェア ─破滅─

(原題:Wer)(アメリカ,2013)

現代に生きる狼男の話。グロい。とりあえず最後まで観たけど,話に深みとか哀愁とかないなぁ。なぜかときどきドキュメンタリータッチとかPOVとか監視カメラ視点。その他,いろいろ疑問点も多い。邦題の副題もなぜこれを付けてるのか不明。ウェア(Wer)はwerwolf(狼男,狼人間)のwerね。


2024年8月22日

マッシブ・タレント

(原題:The Unbearable Weight of Massiive Talent)(アメリカ,2022)

原題を直訳すれば,「とんでもない才能の持ち主の耐え難い重荷」でしょうか。ニコラス・ケイジが超人気映画俳優ニコラス・ケイジを演じるメタ映画。まぁまぁ面白い。

★★★


三河雑兵心得 拾四 豊臣仁義

井原忠政 2024 双葉文庫

惣無事令のもと,茂兵衛は小田原城周辺で跋扈する山賊(北条侍残党)を駆逐。京では,太閤秀吉が甥であり養子でもある関白秀次と揉め,秀次は切腹。豊臣家,崩壊への道。17歳で村を出た茂兵衛ももう48歳。

2024年8月現在,今のところ,この14巻が最新刊。次(第15巻)はいつでるのか,楽しみ。


2024年8月21日

三河雑兵心得 拾参 奥州仁義

井原忠政 2023 双葉文庫

徳川は江戸に移封。奥州再仕置。茂兵衛は,井伊直政隊とともに九戸政実討伐へ。


2024年8月19日

三河雑兵心得 拾弐 小田原仁義

井原忠政 2023 双葉文庫

北条征伐。茂兵衛,山中城と韮山城を攻める。


2024年8月18日

犯罪都市 THE ROUNDUP

(原題:The Roundup)(韓国,2022)

最初から最後までマ兄貴全開映画。悪を退治する兄貴の剛拳にスカッとしたい方は是非どうぞ。

★★★


2024年8月16日

隣人 ─The Neighbors─

(原題:The Neighbors)(韓国,2012)

死んだ娘が毎晩家に帰ってくる。

団地の一室に住む殺人鬼。女の子が狙われて殺される。ひょんなことでそのことに気が付いた守衛も殺される。死体遺棄に使われたカバンは自分の店で買っていった男のものではないかと疑うカバン屋の親父。10日ごとにピザを頼む102号室の住人の怪しさに何かおかしいと思うピザ屋のお兄ちゃん。殺された昼番の守衛を,夜番の守衛が代わりに勤めることになるが,どうも訳あり。この訳あり守衛も102号室の不審さに気付く。そして,はめられるヤクザの男(←マ・ドンソク兄貴!まだ若い!)。

ホラーサスペンスか。とにかく,色々と出てきて話に引き込まれるけれど,そもそも中学生の女の子がまず殺される時点でちょっと気分は滅入ります。その子が毎夜,自宅に帰ってくるというホラーなのですが,これは映画の最後にも関係してます。

ちなみにマ兄貴,やっぱし,殺人鬼野郎をボコスコにしてくれます。

★★★


クローブヒッチ・キラー

(原題:The Clovehitch Killer)(アメリカ,2018)

ふとしたきっかけで実は自分の父親がかつての猟奇的な連続殺人事件の犯人かもしれないと疑い始めた高校生のタイラー。

父親のドンは,敬虔なクリスチャンであり,ボーイスカウトの団長もしている,善良で家族思いの街の名士。タイラーはまさかそんな自分の父親が10年前の連続殺人鬼だとは信じられない。いや,信じたくない。しかし,調べれば調べるほど,父親が犯人である可能性が高まっていく。

実在した(現在,10回の終身刑で服役中の)「BTK絞殺魔」デニス・レイダーをモデルにしてるらしい。10人を殺したこのデニス・レイダーも実際,所属する教会の評議会の議長だったり,ボーイスカウトの団長もしてたりした。マジかー。吐きそ。

「クローブヒッチ」とは,ロープの結び方の一つ。連続殺人事件の犯人は,自身の犯行であることを誇示するがごとく,犯行現場にクローブヒッチ(巻き結び)をしたロープを必ず残していったために,「クローブヒッチ連続殺人事件」と呼ばれていた。

私もかつて小学生の時にカブスカウト(ボーイスカウトの弟分みたいなやつ)をやってましたが,毎週日曜日に集まって一体何をしていたのかほとんど記憶の彼方であり,せいぜいロープ結びをやっていたことぐらいしか思い出せない。他には,よく飯ごう炊飯やってカレー食ったなぁ(笑)。

★★★★


2024年8月15日

ロード・ハウス/孤独の街

(原題:Road House)(アメリカ,2024)

主演ジェイク・ギレンホール。かっちょえー!

観光で成り立ってる海に囲まれた島・グラスキー。島の中心のロード・ハウス(街道筋にある酒場)のオーナーは,このところ店を荒らしに来るチンピラを撃退するために,元UFCファイターで今はすっかり落ちぶれたダルトンを用心棒として雇う。

んん?これって『ドラゴンへの道』(1972)じゃね?タンロン!(そもそもこの映画は1989年の映画『ロード・ハウス/孤独の街』のリメイク)

ジェイク・ギレンホール,ほんと色々やるなぁ。1980年生まれ。『ドニー・ダーコ』(2001)で気弱な高校生。『ミッション:8ミニッツ』(2011)で特殊任務に就く兵士,この前見た『ナイトクローラー』(2014)で痩せたサイコ野郎,それから『ライフ』(2017)で宇宙飛行士。今回はムキムキマッチョのUFCファイターだもんね~。とにかく顔が特徴的。あのギョロ目とニンマリした口。

★★★★


鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎

(日本,2023)

結局,最後まで観てしまった。鬼太郎はミイラ男と幽霊女の子どもだったんじゃなかったっけ?話と違うぞ。と思いきや,エンドロールの後,最後はなんだかそんな感じになってました。

★★


2024年8月14日

明日の記憶

(日本,2005)

主演・渡辺謙,樋口可南子。広告代理店のバリバリのやり手部長,佐伯雅行49歳。最近物忘れと頭痛がひどくなってきた。何度も同じものを買ってくる夫を心配して,妻は一度病院に行って診てもらうよう促す。検査の結果,若年性アルツハイマー病であることが判った。やがて仕事にも支障を来すようになる。

なんというか,他人事ではないな。本人も奥さんも,その絶望感たるや,想像を超えてるだろうなぁ。心が痛い。

★★★


ナイトクローラー

(原題:Nightcrawler)(アメリカ,2014)

主演ジェイク・ギレンホール。ケチな窃盗でなんとか食ってる無職の男ルイス・ブルーム。ふとしたきっかけで,特ダネ映像を売り込むフリーのカメラマンになったが,生来の無神経さ,冷酷さ,計算高さから,事件映像を撮って売るのは天職とばかりに警察無線を傍受して事件を追っかけるようになる。さらにはテレビ局の女性ディレクターを脅してスカして操って自分を高く売り込むようになる。

ジェイク・ギレンホールの顔がまた,目玉ギョロギョロと気持ち悪いし,変な猫背で怪しいし,人に対してまったく共感せず,車で追いかけるときもスピード出し過ぎの乱暴な運転で,ペラペラとよくしゃべり,ただただ自分の出世のみを考えている,まさしくこれぞサイコパス野郎です。

この映画も,観るまでこういう映画だとは思わなかった。仕事一筋の特ダネカメラマンが事件に巻き込まれる(でもって犯人扱いされる)とか,そんな平凡なサスペンス映画を想像してました。とんでもない。開いた口が塞がらないサイコパス映画でした。早く観ておけば良かった。

★★★


2024年8月9日

ジョジョ・ラビット

(原題:JoJo Rabbit)(ドイツ/アメリカ,2019)

今日は,79年前に長崎に原爆が投下された日。

昨今,ヨーロッパや中東のみならず,世界全体がなんとなくギスギスしてキナ臭くなっているような気がしますが,とにかく,何にせよ,戦争はいかんです。

★★★


2024年8月8日

ザ・ハント

(原題:The Hunt)(アメリカ,2020)

そう来たか~。これは予想外だった。これは早く観れば良かった。

目が覚めると,森の中。なぜか猿轡をされている。他にも同じような人が何人かいるようだ。なぜか各種武器とコブタ。武器を取った途端,遠くから狙撃されたり爆破されたりして,無残に次々と殺される人々。どうやらこれは超金持ちたちが,庶民を誘拐して楽しんでいる人狩ゲームのようだ。が,しかし!

このポスターの絵はあんまり内容を表してないね~。不条理状況でキャーキャー逃げ惑う,単調なホラー映画じゃありません。いわゆるアレです,「ナメ殺」です。

★★★★


八月納涼歌舞伎

歌舞伎座の「八月納涼歌舞伎」を観に行ってきました。京極夏彦脚本の『狐花』です。夜の6:15開演。

歌舞伎座は東銀座駅を降りてすぐ(直結)。歌舞伎座には初めて,そもそも,歌舞伎を生で観るのも初めて。ああ,こういう規模のこういう雰囲気のところで,客はこうふう風に観るのか,花道ってのはこういうことか,舞台はこういう風に色々と演出がなされるのかと,すべて初体験でした。

テレビや映画やインターネットがない時代,こりゃ確かに人気の娯楽だと改めて感心。舞台がせり上がったり回転したり,横から花道を通って出てきたり,上から降ってきたり煙が出たりと,観客を飽きさせない演技と装置。役者さんも,主役級はかっこいいもんね~。

しかし,役者さんは,それも主役級は,昼の部の別の芝居にも出ていて,しかもこれを1ヶ月続けるわけでしょ?いやぁ,ハードだわ。すごいわ。

今度はいつか,伝統的な古典歌舞伎を観てみたい。


三河雑兵心得 拾壱 百人組頭仁義

井原忠政 2023 双葉文庫

鉄砲隊百人組を率いることになった茂兵衛。弓隊と槍隊と荷駄隊含めて総勢三百名。植田家の郎党も五十名ほどに。すごいな茂兵衛。ただし身分は足軽大将。百姓あがりと未だ揶揄され,侍大将にはなれず。本多平八郎の娘お稲が,真田源三郎の正室として嫁ぐことに。これまた表裏比興ノ者・真田昌幸とあれこれあります。

このシリーズ,ホント面白いです。


2024年8月2日

東京都杖道大会「二段の部」準優勝

7月27日(土)に東京武道館で開催された東京都杖道大会で「二段の部」に出場し,準優勝しました!

ペアを組んだ山田剛士さん(東都日経杖道会・桃林杖道会)(左)と記念撮影

杖道の試合は,「仕杖」と「打太刀」の二人で行う形(かた)を演武して優劣を競い合います。優劣は主審1名と副審2名が判定します。

試合の様子(東京武道館)

武道は,稽古が主で試合は副だと,拙著で何度も繰り返し訴えている通りです。ですから試合はあくまで普段の稽古の成果を披露する場であり,勝ち負けは重要ではありません。一つの区切りであり,稽古の成果を高段者(主に七段・八段の先生)である審判のお三方に見てもらい,対戦している相手とどちらがよく稽古できているかを判定してもらう場と言えるかと思います。

ですから,試合における勝敗は極めて相対的なものであり,絶対的なモノサシではありません。自分たちより稽古している組と当たれば負けるし,そうでなければ勝ちます。これはスポーツと同じですね。だから,よくよく考えてみても,武道にとって,勝敗はやっぱり本質的には重要ではありません。武道は,術を習い,身体を練る,そこに喜びを見出すマインドフルな営みです。ですから,勝敗を競う試合はあくまで副,稽古の一部です。

ただ,それでも単純に,勝てば嬉しく,負ければ悔しい。人間は,同種他個体の他者から高評価を得たいという珍しい種です。特に銭金のような報酬ではない他者からのそうした評価は,その営みへの動機づけを内発的に高める誘因になりえます。この辺りは,最近出しました拙著『武道家の稽古・鍛錬の心理学』(BABジャパン)に書きましたのでご参照ください。

いずれにしても,武道は普段の稽古が主ですから,これを機に,また稽古がより一層楽しくなりそうです。決して試合のために稽古をするのではありません。そこのところを履き違えると,武道は即座にスポーツになってしまって,武道稽古の面白味(味わい)が半減してしまいますから。

狐花 葉不見冥府路行

京極夏彦 2024 角川書店

歌舞伎座の八月納涼歌舞伎「狐花 葉不見冥府路行」の脚本。京極夏彦×歌舞伎のコラボで,講演と同時発売!でもって,その八月納涼歌舞伎を観に行くことにしたので,早速,観る前に読みました。怖い。そして陰陽師・中禅寺洲斎(京極堂の曽祖父)の憑き物落とし。