(原題:Dashcam)(アメリカ,2021)
なんだこれ。ジェットコースターだな。怖いけどね。気持ち悪い。見ちゃった。見なくて良いかも(笑)。
★★
(原題:28 Days Later...)(イギリス/アメリカ/オランダ,2002)
久しぶりにまた観ました。この次の『28週後...』(2007)に続き,続編の『28年後...』が6/20に公開されるということで,また観ました。やっぱ,よくできてるわ。全速力で走る感染者(ゾンビではない)。最初に見た時の衝撃はすごかったけど,再度見ても,全体に間延びしていない展開で,飽きさせない。
有名な,最初の,誰もいないロンドンの街。あっという間に感染するウィルス。真っ赤な目をした感染者が走ってくる恐怖。逃げ延びて立てこもる軍人たちの狂気。
しかし,これ,2002年公開だったのかぁ。今から20年以上前。もうそんなに経ったのね。ちなみに,今見ると映像が全体に粗いのは,これ,わざとだろうなぁ。以前に見た時はそんなに感じなかったけど,この粗い感じがまた,良い味を出してます。
★★★★
廣田龍平 2024 ハヤカワ新書
これは面白かった。ときどき映画化される元ネタはこれか,というのがいくつかありました。ネット上で語られる怪談や都市伝説がどのように構築されていくか,あるいは,元々は作者のいるホラーが時を経てどのように怪談や都市伝説になっていくかが,よく分かりました。読んでいて飽きない。ま,そもそもこういう話,好きだからね。
(原題:Gonjiam: Haunted Asylum)(韓国,2018)
今ちょうど,『ネット怪談の民俗学』(廣田龍平)を読んでいて,なんとなく,また観てしまった。やっぱこえ~。
こういう,心霊スポット行ってみた的なのって,「オステンション」って言うのね(上記『ネット怪談の民俗学』参照)。でも,ホント,マジで,止めといた方が良いよね~(笑)。えらい目に遭うからね~。やろうと思ってる人,まずはこの映画を観てから考えようね。
★★★★
平尾昌宏 2019 晶文社
倫理学はどう「使う」のかを,分かりやすく,平易な(フランクな?)文章で解説した良書。多くの場合,倫理学の本というと,ものすごく細かいところをものすごく難しい言葉でものすごく厳密に議論してたりして,専門書にしても一般書にしても,しばしば消化不良を起こしますが,この本はまったくそんなことはありません。タイトル通り。
著者の平尾先生が今まで大学で倫理学の講義をしてきて,授業中に学生に賛否や意見を尋ねたり,学生がリアクションペーパーに書いてきたりしたことをときどき紹介しながら,疑問や反論を展開しているところなども,実際に平尾先生の倫理学の授業を受けているような感じもあって,非常に良かったです。こういう授業をする先生って,良いよね。
(原題:Absolutely Anything)(イギリス,2015)
なかなか面白かったわ~。
宇宙を支配するエイリアン(←凶悪そうな4匹)が,1972年に打ち上げられた宇宙探査船パイオニア10号を拾った。さて,この地球なる星をどうするか。地球人が「優秀」な種族でなければ地球丸ごと破壊するが,優秀な種族かどうかは「善」なる種族かどうかで決まることが宇宙の法律で決まっている。ルールに則り,地球人を一人,無作為に選び,10日間,全能の力を与える。この10日間の行動が審査対象となる。
でもって,たまたま選ばれたのが,冴えない高校教師ニール(中年)。自分には何でも叶える力が備わっていることに気づき,さてどうしたものかとあれこれ考えながら,どうでも良いことを実現したり,実現してみては(うまく行かないから)やっぱりキャンセルしたり。果たして地球の運命はいかに!
★★★
(原題:Night Raiders)(カナダ/ニュージーランド,2021)
いやぁ,邦題が悪いよ(笑)。なんのひねりもない,そのまんまのタイトルだもんね。内容をストレートに表現するのも良いけど,ひねろうよ少しは(笑)。確かに近未来のディストピア映画で,とある能力が鍵になるわけだけど,もちっと良いネーミングはなかったかなぁ。例えば,主人公の名前で「ニスカ」とかでも良いよ。先住民のお告げとしての「守護者」でも良いよ。でもそれだと客が何だか分からなくて観てくれないから,これか。でも,この陳腐なタイトルより,全然良いんじゃないかなぁ。原題のNight Raidersも,映画の内容とどう関係してるのか分かんないけどね。「夜の侵入者たち」?うううむ。確かに,子どもたちを奪還するために,夜に侵入するけどね。
世界大戦後の近未来。子どもはすべて政府の所有物として徴集され,徹底した洗脳教育を受け,兵士になる訓練を受けさせられる。常にドローンが飛んでいて,子どもを隠していないか監視している。特権的な市民だけが住むことのできるエリアとそうでないエリアは,高い塀で隔てられている。中でも優秀な子どもは,その特別なエリアでさらなる教育を受けることになる。
しかし,この話,根本的におかしい。子どもをかき集めてすべて兵士にしてしまったら,やがてその国は滅びてしまうと思うんだけど,その辺は全く説明されてません。大人たちのエゴのために,子どもを国粋主義に教育することは理解できますが,人間はどんどん年を取るし,子どもはすぐに大人になるし,子どもがいなくなれば次の世代の子どもは生まれてこないし,さて,この国はいったいどうやって成り立っているのか,分かりません。国が国として存続するには,さらには高度な文明を維持して存続できる背景には,基礎となる第一次産業や第二次産業の生産と流通と消費を回す経済的な営みが必要であり,市民の大多数はそれを担う必要があるわけで,生まれてくる子どもを片っ端から兵士にしたら,そりゃ,軍事力は一時的に上がるかもしれないけれど,やがて滅ぶよね(笑)。子どもや若者がみな戦争に行ってしまったら,老人だけが残って,国としては存続しないのではないだろうか。
なので,話としては大したことはないけれど,一応,最後はどうなるのか(どういうオチなのか)気になったので,最後まで観ました。親子愛とか先住民のお告げとか,テーマもちんまりとそれなりにあって,まったくの愚作・駄作というわけではないから,何かもっと良い邦題を付けてあげたいよね。
★★
一穂ミチ 2023 光文社
第171回直木賞。これは非常に良かった。大いにお奨めします。コロナ禍に直接間接に関わる短編が6編。出版社のポスターには,「鮮烈なる犯罪小説集」って書いてあるけど,コロナ禍でとんでもない犯罪に手を染めるとか,そういう,人間の根源的な悪に迫る犯罪小説!とかではありません(最初,そういうのかと思ってました)。
未知のウイルスが蔓延して,世界中が右往左往して閉塞感で苛まれる中,人間の本性みたいなものがじわじわと表に出てきて,人と人の間をギクシャクさせる,それが人を追い込んでいく,そんな話が6つ(ただ,最初の1つ目はコロナそのものは直接関係ないけど)。短編が6つ並んでいるわけですが,相互に関係はなく,しかし,時間軸としては,パンデミックの初期から後期へと進んでいく感じ。
どの話も読んでいて息苦しいんだけれど,そんな中で一筋の光というか,救いみたいなものはあって,そんなささやかな希望というか支えを抱いても良いじゃないか,そういう話が6つです(まぁ,必ずしも物語の登場人物が救われてはいない話もありますが,物語をメタに眺める読者としては救いを感じます)。だから,全体的に読後の気分は悪くない。どれもハッピーでお気楽な話ではないけれど,少しだけホッとします(あいや,しかし,救いのない話もあるか・・・。いや,そうではなくて,6話の構成として,だんだん救いのある話になっていってるのか)。
(原題:The order)(カナダ,2024)
実話に基づく話。主演ジュード・ロウ。シブい「おっさん」だなぁと思いきや,一個下でした(笑)。年下かよ。クローネンバーグの『イクジステンズ』(1999)の主人公。色男が25年経つとシブくなってます。こういう年の取り方をしたいものですな。
敵役は,ニコラス・ホルト。この人,どっかで観たよな~どこで観たんだっけな~と,出演映画を見たら,最近観た『ザ・メニュー』(2022)でした。ああ,あの,蘊蓄ばっかりの胡散臭いグルメ野郎か!いやぁ,全然別人だわ(笑)。役者ってすごいなぁ。
国家転覆(暴力革命)を企てている田舎の白人至上主義者の若きカリスマ(ニコラス・ホルト)と,それを追いかける壮年のベテランFBI捜査官(ジュード・ロウ)。「オーダー」は,白人至上主義者たちが参照している「ターナー日記」という本に出てくるテロ組織名で,本作の基になっている実在したネオナチテロ組織。Silent Brotherhoodとも言うらしい。強いて訳せば,「静かなる同胞団」かな。
ジュード・ロウの経験と正義感(ただし,それ故に,家族を犠牲にしていることが暗示されてる)と,ニコラス・ホルトのカリスマ性と狡猾さの攻防。展開のテンポも良くて,飽きさせない。面白かった。
この「ターナー日記」というのは実在する本で,2021年の議事堂襲撃事件でも参照されたことが,映画の最後に字幕で紹介されてます。
★★★★
(原題:Bloodshot)(アメリカ,2020)
いやぁ,けっこう面白かった。これ,もしかしたらアメコミのヒーローものかなと思ったら,やっぱりそうだった。さすがアメコミヒーロー,特殊能力が都合良過ぎて完全無欠過ぎる(笑)。胸にマークあるし(笑)。でも,話としても,アクションも,まぁ,それなりに面白かった。トーキング・ヘッズの「サイコ・キラー」が耳に残るわ。
主演はヴィン・ディーゼル。『ワイルド・スピード』シリーズの人だね。スキンヘッドだし,なんだかブルース・ウィルスに似てる。でも,なんか滑舌が悪いなぁ。こもった声で,なんだか聞き取りにくい。
★★★
(原題:The Bye Bye Man)(アメリカ,2017)
おお,これはなかなか良かった。
目的が分からないけれども,そもそも魔物に目的なんかないか(笑)。あいや,しかし,行為には物語がないと説得力が欠けるわけで,現時点では目的を失っているように見えても元々はなんらかの原因・理由がないとダメでしょう。「魔」の発生する原因・理由。それはここでは語られてない。タブーの形式である「魔」だけがある。欧米には,こういう魔物の民話や都市伝説でもあるのかな?ま,似たようなのは,どこの文化にもあるか。そういえば「キャンディマン」もこれに近いね。でも,「キャンディマン」には,差別にまつわる濃厚な物語が背景にありました。
いずれにせよ,こいつの名前を知ってしまって,それを口にすると,口にしたその本人は幻覚を見て凶行に走る。唯一の解決は,こいつの名前を聞いた人間を洗い出し,皆殺しにしなければならない。自分も含めて。
考えれば考えるほど考えてしまう。そう,いわゆる「リバウンド効果」ですね。
★★★
(原題:Zombieland: Double Tap)(アメリカ,2019)
『ゾンビランド』(2009)の続編ね。『ゾンビランド』は面白かったから2回観ました。これもまぁ,面白いけど,やっぱり,2は2だね。難しいよね,2って。期待値が高いからね。
★★
社会部部長 2025 サンマーク出版
これも非常に勉強になりました。エマニュエル・トッドのような独自の視点と研究に基づく考察ではなく,地政学の基本的な考え方から,現在の世界情勢を,特に,ロシア・アメリカ・中国・日本について解説している,非常に分かりやすい本でした。
年齢のせいかのか,昨今の不穏な世界情勢のせいなのか,はたまた『どうする家康』を観て面白かったせいか,昔はまったく興味関心のなかった「歴史」や「世界」にここ数年特に目が行くようになり,いろいろと分からない「なぜ」がありましたが,この本を読んで,なるほど~だからか~,と,一つ一つ非常に納得のいく説明がなされていて,地政学の有用性・重要性を感じました。地形は,想像以上に(つまり,そのときそのときの政治的指導者の思惑云々よりも),通時代的にその国の政治的行動の方向性を規定していることが分かります。
世界の地理と歴史,その中での日本の地理と歴史,これ,トータルにグローバルに見ていくと面白いし,見ていかないと分からない。
(原題:You are not my mother)(アイルランド,2021)
うううむ。怖いけどね。
うつ病の母親がある日,行方不明に。しかし,まもなくして家に帰ってきていた。が,その母親はどうも様子がおかしい。どんどん壊れていく。暴力的に狂っていく。精神も身体も壊れていく。ハロウィーン。あの世とこの世。あっちとこっち。
怖いけどね,根本的なところで理屈がイマイチ分からん。なんで「徐々に」壊れていくんだろうか?それに,この,主人公の女子高生シャーは,じゃあ一体何者だということなのだろうか?
あと,ホントいつも思うけど,なんでカタカナでそのままのタイトルにするんだろうなぁ。もちろん,そのままでもいいんだけどさ,これだと長いしさ,中黒(・)が多いしさ,何かひねった邦題が欲しいよね~。ここの配給会社には,良いコピーライターがいないのかな。日本公開用のポスターも,内容となんか違うしなぁ。
そのポスターには「『ミッドサマー』に続くフォークホラー!」ってあるけど,「ミッドサマー」(2019)はむしろ,ジャンルとしては田舎ホラーだよね。どえらい田舎にある奇妙な風習が残ってる狂気の村に来ちゃいました映画。この「ユー・アー・・・」(ああ,長い!)は,違います。
ちなみに,いつもの母親があるとき中身だけ別人に入れ替わっているかもしれない,という恐怖(妄想)は,小さい頃に抱く恐怖としてはそんなに珍しくないでしょう。これが疾患レベルだと,いわゆる「カプグラ症候群」というやつですね。実際,僕自身も,確か小学生ぐらいの頃,お袋が中身だけ別人になってたらマジで怖いなと,布団の中で震えた記憶があります。もちろん,そんなのは妄想だということは分かってるんですけど。この映画の主人公は思春期の女子高生ですが,そういう恐怖がモチーフになってるよね,たぶん。
★★
(原題: Ted)(アメリカ,2012)
面白かった。テンポが良いよね。小気味よくて気持ちいい。ギャグも下品だけど,よくあるB級アメリカ映画のドストレートな(ひねりのない)下ネタじゃなくて,まぁ,下品だけど全体にスタイリッシュ(笑)。なんでしょう,単に下ネタで観客受けを狙おうとしているのではなくて(つまり小学生が喜びそうなアホな演出ではなくて),テディベアというぬいぐるみの友だち(これがそもそも虚構であって,メタ映画であることの印なわけで)が下ネタを連発するという,下品さやアホさを映画的にメタにいじってる感じ,でしょうか。っていうか,全体にそういう作りの映画だもんね。面白かったから「2」を観よう~。
どうでもいいけど,主人公ジョンを演じてるマーク・ウォールバーグって,マット・デイモンと似てるよね。
★★★
エマニュエル・トッド(著)大野舞(訳) 2024 文藝春秋
今の世界の情勢を知る上で,これは必読書かもしれない。ハラリの『サピエンス全史』ぐらい,目から鱗でした。
ウクライナ戦争について,ロシアについて,アメリカについて,ヨーロッパについて,そうかそういうことなのか,だからなのかと,いろいろと疑問に思っていたことが氷塊した気分です。物事は,別の角度から見るとこうも違って見えてくる,そのことを改めて思い知らされました。多角的に物事を見ることは良いことだと分かっていても,なかなかそうはできない,特に,フィルターバブルだエコーチェンバーだといった情報環境に生きている我々は,気をつけて公平性を保とうとしたところで,見方が偏ってしまいます。
エマニュエル・トッドの肩に乗って,まったく別の角度から世界を見ることができる,現代の必読書だと,僕は思います。
(原題:Exhuma)(韓国,2024)
面白かった。134分,話がどんどん展開する飽きさせない作り。面白かったけど,展開が早すぎて,なんでそうなってるのか細かい理屈がよく分からないところもありました。話が回収されているようなされていないような。だから,世界観というかスケールは一見深そう(大きそう)だけど,そのよく分からなさによって結局,深いのか浅いのか,大きいのか小さいのか,よく分からなくなってます。
しかし,ユ・ヘジンは,いつ見ても,どんな映画でも,やっぱり味があって良いなぁ。あの顔だよなぁ顔。それから,あの,唾を飛ばしながら(実際は飛んでないかもしれないけど)しゃべるしゃべり方。あの顔は,一度見たら忘れられない。
★★★
昨年度の京都での第51回全日本杖道大会,二段の部準決勝の動画がようやくYouTubeにアップされました。白谷・湯川組ーニーマン・藤井組の対戦です。奥が白谷さんと私です。残念ながら結果はここで負けまして,ベスト4でした。
(原題:Close Encounters of the Third Kind)(アメリカ,1977)
SF映画が好きだとか公言しておきながら,実は今まで観たことがなかった『未知との遭遇』。やっと観ました(笑)。いや,これだけ有名な映画だからもしかしたらどこかで観ているのかもしれないけれど,観た覚えがない。勝手な先入観で,ただ宇宙人がやってくるだけの(ひそかに侵略しにきたり,あからさまに襲ってきたりしない:笑)退屈な映画なんじゃないかと思ってましたが,そうか,こういう映画なのか~。
最初のUFO目撃事件と言われているケネス・アーノルド事件は1947年。『美しい星』(1962)を書いた三島由紀夫も入っていた「日本空飛ぶ円盤研究会」の設立は1955年。宇宙人が謎の飛行物体に乗って地球に飛来している。世界のいたるところでそれは目撃されている。宇宙人はいるに違いない。いつか人類にコンタクトしてくるときが来るはずだ。いや実は,合衆国政府が隠蔽しているだけで,NASAはすでに接触しているのかもしれない。そういう心理がもんもんと醸成されていたであろう1970年代後半に,スティーブン・スピルバーグが,目に見える形で映画にした,という感じでしょうか。
実際,1977年の作品にしては,有名だけあって,よくできてるよなぁ。フワーッと物理法則無視して飛んでくるUFOは,機械的だけど生命感があって,UFOそのものが宇宙人のようにも思える。最後には,お約束のグレイタイプの宇宙人が降りてきましたが,グレイって,一説には『2001年宇宙の旅』(1968)のスター・チャイルドが原型って言われているので,1970年代後半は,すでに宇宙人といえばグレイタイプだったんでしょうね(僕は幼稚園生~小学校低学年ぐらい)。ただ,大人(成長した形の宇宙人?)は,ややタコ型の手足でしたね。タコ型説にも配慮した,ということでしょうか。なお,タコ型の由来は,H.G.ウェルズの『宇宙戦争』(1897)に出てくる火星人という説もありますが,定かではありません。
タイトルの原題は,「第三種接近遭遇」ですが,これは,ジョーゼフ・アレン・ハイネック博士の言うところの,宇宙人(UFOの搭乗者)との接触のことですね。ここで,第一種接近遭遇とは,UFOを近くで目撃すること,第二種接近遭遇とは,UFOによる物・人・動物などへの何らかの物理的影響が確認できることを指しますが,この『未知との遭遇』は,その辺りの手順もちゃんと踏んでいて,第一種接近遭遇と第二種接近遭遇を丁寧に描いています。
世界中で起きてきた謎の消滅・失踪・誘拐事件とも絡めているところ,UFOに憑りつかれた人のどんどん病んでいく(かのように見える)様子やその狂気性を理解できない家族の崩壊の様子を描いているところなんかは,ただの宇宙人飛来ものではないことが,これでようやく分かりました。宇宙人との交信を音(音階)でするところも素敵です。なお,キャトル・ミューティレーションを彷彿とさせる大量の動物(牛,馬,羊)の死骸はなんだったのかはよく分かりません(第二種接近遭遇?)。ま,しかし,とにかく,UFO(宇宙船)が荘厳で綺麗だよね。
★★★★
(原題:X)(アメリカ,2022)
キモい。怖い。痛い。
時は1979年,アメリカはテキサス州の田舎にある古びた農家。そこに,ポルノ映画を撮影しに来た男女6人。一攫千金を狙うプロデューサー・ウェイン,ポルノ女優マキシーンとボビーリン,ポルノ男優でベトナム帰還兵のジャクソン,自主映画監督のRJと助手(彼女)のロレイン。老夫婦が住むその農家の離れに泊まって,ポルノを撮る6人。その様子を覗く老婆。どうも様子がおかしい。
知らずに先に『パール』を観てしまったわけですが,それはそれで良かったかもしれない。あれから60年,パールとハワードは,お互いを労わり愛し合う夫婦をちゃんと続けていました。人を次々に殺しながら。6人が来てしまったのは,二人の住むあの家でした。
第3弾は『マキシーン』。6月6日に日本公開。今回のこの映画の舞台となった時から6年後だそうです。どうなるんでしょう~。
★★★
(原題:Pearl)(アメリカ,2023)
うひょ~怖~。超怖いシリアルキラー映画。
主演ミア・ゴス,監督ダイ・ウェスト。これ,『X エックス』に続くシリーズ第二弾なのね。まだ『X エックス』は観てなかったから,先に観ておけば良かったかも。で,三部作第3弾が『MaXXXine マキシーン』なのね。今度観よう~。
時は1918年,アメリカはテキサス州の田舎にある貧しい農家。スペイン風邪が世界中に大流行する中,結婚したばかりの夫は第一次世界大戦でヨーロッパに出征していて不在,厳格な母親と全身麻痺で車いす生活の父親と暮らすパールは,映画の中の踊り子に憧れ,自分もいつか舞台に立つことを夢見る。しかし,第一次大戦中という時節柄,ドイツ系であることを理由に,目立たぬようひっそりと大過なく過ごそうとする母親に,ことごとく否定される。
最後の,パールの作り笑顔が頭から離れない。怖すぎる。マジで夢に出そう。でもねぇ,彼女のこの著しく抑圧的な境遇だったら,壊れてしまうのも仕方がないところはあるし(だからといって,人を次々に殺しちゃいけないけど),言ってることの筋も通っている(からといって,人を次々に殺しちゃいけないけど)。だから,なんだか可哀想でもある(けど,人を次々に殺しちゃいけない)。
★★★★
(原題:Risen)(オーストラリア/アメリカ,2021)
なんとなくコンセプトというかアイディア的にはすごく面白そうだったので観ました。
映画は,核となるコンセプトが最も大事。それを生かすも殺すも脚本次第。その独創的なコンセプトをどう肉付けして120分間,観客を惹きつけ続けるか。飽きさせない展開,伏線と謎解き,道具の細かい描写,セリフ,映像,カット,カメラワーク,・・・。なんてことを,映画を観ていて,素人ながらに色々と思うわけです。
この映画,コンセプトは確かにすごく良いんだけど,とにかく最初からずっと全体的に間延びしてます。間延びしてるから,挿入されてる音楽がやたら気になる。音楽でもってなんとか物語を奥深く,重厚に,感動的に,荘厳に,深刻にしようとしてますが,間延びした尺にはただ邪魔なだけ。これは静止した画面を観ながら鑑賞する音楽映画なのか?それにしては大した音楽ではない。無理矢理110分の尺を持たせようとしてるから,前半の1時間をもっとぐっと縮めたらどうでしょう。それから,種明かしを最後にもったいつけてもってくるんじゃなくて,早々に種明かししてそこのところの奇妙な運命をもっと描いたら良いんじゃないかなぁ~。と,素人にさえ色々と改善策を喚起させる,ある意味で,おそらくは映画学科の人には良い問題材料になるのではないかと思える学習映画。
★
(原題:Abigail)(アメリカ,2024)
踊る吸血鬼。スプラッタホラーのアクション映画です。話に深みがない。吸血鬼バトルを観せたいだけだから,吸血鬼バトルを観たい人には良いと思います。一応,吸血鬼は少女なので,親子愛がテーマに入っていますが,そこはもう,カレーに隠し味の牛乳を少々入れたぐらいで,カレー味であることに変わりはありません。
っていうことは,つまり,カンフー映画はカンフーバトルを観せたい映画だとすると(無論,バトルに至る文脈や背景に面白さや斬新さがあれば映画として味や深みが増すわけですが),そこに至るまでにあんまり味や深みはないことが多いわけで,そうなると,カンフー映画はカンフーバトルを観たい人には良い映画ということですね。
そう思うと,この前,キアヌ・リーブスの『ジョン・ウィック』シリーズの第4弾『コンセクエンス』(共演は真田広之とドニー・イェン!超豪華日中二大アクションスター!!)を観たのですが,途中でつまらなくなって観るのを止めました。というのも,ストーリーというか文脈はもうどうでも良い感じなんですよね(笑)。とにかく,映画が始まってからずっと,キアヌの銃撃と総合格闘技の連続アクションをひたすら観せるためだけの映画です。一番最初の『ジョン・ウィック』(2014)は,ナメ殺映画としても,その奇妙な裏社会のある世界観も,斬新で面白かったけどね~。
★★
(日本,2023)
いやぁ,良かったわ~。第67回ブルーリボン賞,第48回日本アカデミー賞最優秀作品賞。自主製作らしいので,全体にチープさはあるけど,コメディでありながら泣かせる,良い映画です。
生真面目な幕末の会津藩士・高坂新左衛門が,密命を受けて京の都で長州藩士・山形彦九郎を闇討ち中に雷に打たれ,現代にタイムスリップしてしまう。気が付くと,そこは140年後の,京都の時代劇撮影所であった!
高坂新左衛門(山口馬木也)の一挙手一投足が,いちいち面白い(笑)。それでいて,人生を命がけで生きてきた幕末の侍が,文明の発達した平和な現代を,豊かになったと喜ぶ半面,時代劇として残っているものの,すっかり忘れられたかつての本当の日本と侍たちを憂う姿は,真に迫っている。
★★★★
(原題:Candyman)(アメリカ,2021)
製作・脚本はジョーダン・ピール他。
クライブ・バーカーの小説『禁じられた場所』を映画化した,1992年の『キャンディマン』と連なる続編。アメリカの人種差別問題が背景にあり,本作も『ゲット・アウト』のジョーダン・ピールが製作・脚本に入っている。これはもう,『キャンディマン』(1992),『キャンディマン2』(1995),『キャンディマン3』(1999)を観てみたいね。
★★★
(原題:Brightburn)(アメリカ,2019)
うひょ~。恐ろしいや~。まさに宇宙から降ってきた恐怖の大王。スーパーマンのブラックパロディホラー。そうだよね,そうなるよね,普通,少年がそんな特別な力を持ってたら,そうなってもおかしくないよね~。
<もしもクラーク少年がサイコパスだったら・・・>。本作の主人公の少年ブランドンは,一見おとなしく知的な少年だが,逆に言えば,感情の発露が薄い。共感性が低く,欲望に対して衝動的で,規範や善悪が分からない。サイコパスである。鬼に金棒を与えてしまいました。
最後に流れるビリー・アイリッシュの「バッド・ガイ」が妙に切なくて怖い。90分間,口をあんぐり開けっ放しで見入ってしまった。残酷大魔王降臨。暗黒超人爆誕。
しかし,副題の『恐怖の拡散者』ってのはイマイチだよなぁ,何だよ「拡散者」って(笑)。別に何にも拡散してないし。主題の『ブライトバーン』は舞台となる街の名前だから,これだけじゃよく分からないので,邦題に副題が付いていて良いんだけど,どうせ副題付けるなら,なんかもっと良いのはなかったのかね。ノストラダムスの予言にちなんでシンプルに「恐怖の大王」じゃダメかね?実際,空から降ってくるわけだし。『ブライトバーン/恐怖の大王』。
★★★★
(原題:Messiah of Evil)(アメリカ,1973)
ロメロの『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』は1968年で,『ゾンビ』(Dawn of the Drad)は1978年。
赤い月が昇るとき,その街の住人は目から血を流し,ゾンビと化す。って話だけど,全体にのったりまったりしてて,全然怖くない。
★
尾久守侑 2022 金原出版
面白かった。尾久氏自身を含む一群の「偽物クラスタ」(造語)に含まれる人々についての考察。尾久氏の論は,前にも書いたけど,自己(の考察)に対して常に(強迫的に)客観性を保ち続けようとするところが,(自己演出的であれ)滑稽でありまた(自己演出的であるがゆえに)知的であり,面白いです。
(原題:The Color out of Space)(ドイツ,2010)
H.P.ラブクラフトの同名小説の映画化。SFホラー。2019年に,ニコラス・ケイジ主演でも映画化されてます(『カラー・アウト・オブ・スペース ─遭遇─』)。
ドイツの片田舎に謎の隕石が落ちた後から,農作物は奇妙な果実を付け,虫は巨大化し,やがて土地は荒廃し,動物も死に絶え,近くに住むガードナー家も家族が一人また一人と壊れていく。
2019年のニコラス・ケイジの方は,紫色を中心にいろんな原色が気持ち悪く配色されてましたが,こっちの2010年のドイツ映画の方は全編白黒映画。ただし,宇宙からの色だけ紫色。また,こっちの方は,単にガードナー家の不運を描いてるのではなく,過去にあったガードナー家の事件(第二次世界大戦前のドイツ)を事件の目撃者が現在の時点から物語る,という設定。最後の場面で,それに少し味付けも。
★★
(原題:Everything Everywhere All at Once)(アメリカ,2022)
コインランドリー店の平凡な妻エヴリン。ちょっとボケかかった父親ゴンゴン,優しいだけで頼りない夫ウェイモンド,多感な年ごろで反抗的な娘ジョイといった家族とともに,店の経営と納税にあえぎながら汲々と暮らしている。そんなとき,別の並行世界(アルファ・バース)から跳んできて夫に乗り移った”アルファ・ウェイモンド”が,エヴリンに,すべての並行世界に危機が迫っている,その危機を救うのは君だ!!と強引に導こうとする。さっぱり意味が分からないエブリン,さあ,どうする?どうなる?
ってな話で,下ネタも含めたギャグ満載で,人生のあらゆる可能世界(分岐する無数の並行世界)を跳び回りながら,母親と娘の葛藤をテーマに,たぶん時間的にはたったの1日半ぐらいの間に繰り広げられる,壮大な宇宙的戦いを描いた冒険SFカンフー活劇。
母娘の葛藤と夫婦愛・家族愛がテーマですが,まぁ,それはそれとして,いろいろと分かりやすいオマージュ満載で,下ネタが露骨で下品で,ギャグもバカバカしいところはいかにもアメリカB級映画っぽさを出しながら,しかし一方で,映像的には綺麗で,カンフーアクションもキレがあって上質です。そういうギャップもあえてメタに狙っていて,単なる低予算B級おバカ映画ではない,面白い映画でした。が,葛藤と愛のテーマについては,あんまり感動しなかったなぁ。ミッシェル・ヨー主演。
★★★
(原題:The Domestics)(アメリカ,2018)
第三次世界大戦?で世界中に毒ガスが振りまかれた後の無政府状態のアメリカ。関係の冷え切った離婚寸前の夫婦が,暴力的な無法者集団(シーツ,ネイラーズ,ギャンブラーズ)の襲撃を掻い潜り,奥さんの実家へと向かう。
アメリカ人にとっては,銃が日常に存在する社会で,けっこうこういうバイオレントな無政府状態はリアリティがあるんだろうなぁ。リアル・マッドマックス。そんなマッドマックスな世界で生き残るために,夫婦は銃をぶっぱなして「適応」していく中で,二人の愛を取り戻す。愛をとりもどせ!!YouはShock!
★★★
(原題:The Phone)(韓国,2015)
これは面白かった!韓国SFサスペンス。
逆恨みの絶えない敏腕弁護士のコ・ドンホは,ちょうど一年前,自宅に押し入った強盗に妻のヨンスを殺された。仕事も辞め,犯人探しに明け暮れていたが,中学生の娘のことも考え,そろそろ仕事に復帰することに。そんなとき,まさに妻ヨンスが殺された時間の少し前に「ヨンス」から電話がかかってきた。最初は誰かのいたずらかと思ったが,どうやら,1年前の<過去>から電話がかかっているようだ!そのことに気づいたドンホは,なんとか妻を助けようと必死に状況を説明するが,犯人は執拗に追いかけてくる。
いやぁ,見ている間,ずっとハラハラドキドキ。さてどうなる?この後どうなる?・・・観ていてずっとヒヤヒヤしてました。これは面白かったです。
でも,邦題は良くないな~(笑)。なんだよ「リバイバル」って?(笑)でもって,副題の「妻は二度殺される」って(笑)。ううむ,まぁ,メタに見れば二度殺されるようなことになるわけですが,しかし,そこはこの映画の本質ではないからなぁ。あと,主題の「リバイバル」ってどういう意味で付けてるんだろう。「やりなおし」って意味なのかな?謎です。むしろ,この映画のポイントはスマホの電話だから,原題は「電話」だもんね。強いて言えば,「過去からの電話」だね。
★★★★
山田圭一 2024 岩波新書
内容はお題の通り。我々は何を信じるべきかを,うわさやフェイクニュース,陰謀論などを題材にして哲学的に考えてみましょう,という本です。分かりやすいです。フェイクニュースそのものに関する政治的な議論というよりは,哲学の認識論(社会認識論)の話ですね。心理学も大いに関係してますから,とても勉強になりました。
(原題:Dream Scenario)(アメリカ/カナダ,2023)
主演ニコラス・ケイジ。
進化生物学が専門の,普通の大学教授ポール・マシューズが,突然,不特定多数の人の夢に繰り返し出るようになる。最初はただ突っ立ってるだけだから,みな面白がって,ポールは一躍時の人となるが,やがて,夢に出てくるポール教授は恐ろしい殺人鬼となって夢を見ている人を襲い始める!すると,世の中が打って変わって,ポール教授を避け,非難し,排除し始める。
何も悪いことを一切していない,ただの中年大学教授が,悪夢のせいでどんどん追い込まれていく。嫌われ,誤解され,殴られ,ネット配信で謝罪したら,謝罪コメントが自分勝手だとなじられ,リアル「フレディー」扱いされ,とうとう家族にも見放され,さんざんな目に遭う。ザ・不条理!かわいそう~
ニコラス・ケイジが,きれいな禿げ頭で怪演。
★★★★
(原題:The Creator)(アメリカ,2023)
面白かった~。
人間とAI(を搭載したアンドロイド)とが共存する世界。しかし,西側(欧米側)は,AIの暴走を危険視して,AIを排除・抹殺する政策を取っている。一方,ニューアジア側は,人間とAIが共生する生活を送っている。
ジョシュア(ジョン=デヴィッド・ワシントン)は,欧米側からニューアジア側に送り込まれた潜入捜査員。AIの創造主「ニルマータ」を捜し出すことがミッションだ。しかし,欧米側の強硬作戦のせいで,ニューアジアで妻となって自分の子どもを宿していたマヤを失ってしまう。
欧米側は,ニルマータの抹殺を目的に,巨大兵器モナドで攻撃を続ける。ニルマータ抹殺作戦には,モナドを破壊する威力を持つとされているニューアジア側の「兵器」の発見も含まれている。ここで,かつて潜入捜査をしていて,ニューアジアに精通しているジョシュアが,再び作戦参加に呼ばれる。マヤが生きているかもしれないという情報をもとに,ジョシュアは作戦に参加する。
渡辺謙が,ニューアジアのゲリラのAI司令官ハルンとして出てます。ニューアジアの描写が,主に日本っぽさを中心にして,東南アジア辺りまでごっちゃな感じになっていて,非常に良いです。都市や田舎の風景,巨大兵器モナドの攻撃,アンドロイドの造形や動きなど,どれも綺麗で(クリアで)よくできていて,観ていて気持ちが良い。
★★★★
(原題:Shutter Island)(アメリカ,2009)
マーティン・スコセッシ監督,主演レオナルド・ディカプリオ。時は1954年。孤島にある,精神を病む凶悪犯罪者を収容する病院。レイチェルという女性患者がいなくなったため,連邦保安官のテディとチャックが島にやってくる。
なるほど,そういうことか~。これはよくできてるね。映画らしい映画。面白かったです。
★★★★
河野啓 2024 フォレスト出版
最近,自民党の裏金問題で落選したヤンキー先生「義家弘介」氏。彼が,存在の根幹であるはずの教師をやめて政治家に転身した時に,「え?あれ?そっち?しかも自民党?」と違和感を抱いていましたが,この本を読んでようやく腑に落ちました。やっぱりそういうことだったのね。この3月でとうとう政界を引退するそうです。まぁ,政治家は性に合ってなかったんじゃないですかね。著者の河野氏も感じるところがあるでしょう。
新城道彦 2023 新潮選書
朝鮮王朝建国から現代(南北分断)までの600年の歴史を,政治の主導権争いと周辺諸外国からの侵略という二面から描いた本。文章を書くのが苦手,なんて「あとがき」で書いてますが,何をおっしゃる,非常に読みやすい文章であり,また,単なる事実を順番に羅列するだけの「教科書」的なものではなくて,当事者の心情のようなものも歴史的証拠から挟み込んでいて,読み物として非常に面白かったです。さすが「サントリー学芸賞(思想・歴史部門)」受賞作!非常に勉強になりました。
(原題:Escape from New York)(アメリカ,1981)
監督はジョン・カーペンター。原題を直訳すれば『ニューヨークからの脱出』かな。
時は近未来(1981年からすれば1997年は近未来)。犯罪が激増して収監する囚人が増えたために巨大な刑務所となったニューヨークのマンハッタン島。マンハッタン島に収監されたものは二度と外に出られない。島の中は,犯罪者たちの魔宮と化している。
そんな島に,大統領の乗ったエアフォースワンが墜落。脱出ポッドに乗った大統領は,一命は取り留めたものの行方不明。政府は,新たに収監されることになった凄腕の元特殊部隊,スネーク・プリスキン(カート・ラッセル)と取引をし,罪をすべて恩赦する代わりに大統領を救出することを命じる。
この次の年,ジョン・カーペンターとカート・ラッセルのコンビで,例の『遊星からの物体X』(1982)を作ってますね。同じコンビで,スネーク・プリスキンの続編『エスケープ・フロム・L.A.』(1996)ってのがあります。
今観ると,機械やら装置やら道具やらが古臭くて,全体にモッサリしてるけど,でも,マンハッタン島に住む犯罪者たちの奇妙な服装や行動はパンチが効いています。
★★★
(原題:The Devil below Shookum Hills)(アメリカ,2021)
地図から消えた炭鉱町。コンセプトは面白そうだったので観ましたが,全体にチープだったなぁ。キャラクター作り,伏線,つじつま,行動の理由,問題の背景,謎の解明,ロケ地,撮影セット,アクション,モンスターの造形など,な~んか全部ぬるくて浅くて中途半端。観なくて良いと思います。
★
六反田豊(監修) 2021 河出書房新社
これは分かりやすかった。韓国・朝鮮の歴史を知りたくて買った一冊。
日本史だって正確にちゃんと分かってるわけじゃないけど,中学高校で習ったことをベースに,まぁ,だいたいの流れは分かってる(つもり)。最近は,NHK大河ドラマ『どうする家康』を観てから,戦国時代が面白くて,時代小説にはまってます。戦国時代とは違うけど,『極楽征夷大将軍』も面白くかつ勉強になりました。まさに「教養としての歴史小説」(今村翔吾)ですね~。最近の高校では「歴史総合」になって,日本も世界もひっくるめたグローバルな歴史理解にシフトしているようで,前に読んだ『教養のグローバル・ヒストリー:大人のための世界史入門』は非常に面白かった。
韓国の映画は面白いし,よくできているから,よく観るわけですが,このとき,テーマとして植民地支配だとか独立だとか民主化だとか南北分断だとかいったことがしばしば出てきます。通り一遍には理解しているつもりでも,分かっているようで分かっていないところもあり,では,もう少し広い(長い)視点で,近現代に至るまでの韓国・朝鮮の歴史を含めて,そもそも韓国・朝鮮ってどんな国なのかを改めて知りたいと思って,何冊か買いました。そのうちの一冊。
この本は,建国神話から現代まで,韓国・朝鮮の歴史を一冊で一挙に読めるのが,たいへん良かった。文章の平易で分かりやすい。しかし,膨大な情報の要点をこうしてコンパクトにまとめるのって,ホントすごいことだよなぁ。韓国・朝鮮史を知りたいと思ったらまず最初に読む一冊として,大正解でした。
(原題:The Thing from another world)(アメリカ,1951)
ジョン・キャンベルの短編小説『影が行く』の映画化。
北極基地の近くに墜落した飛行物体から,氷漬けになった物体を持ち帰るアメリカ隊。やがて氷が解け,その物体(the thing)が逃げ出し,ソリ用の犬や隊員の科学者を襲う。それは植物型宇宙人であり,種子はイヌやヒトの血液で増殖する。
形はほとんどフランケンシュタインで,服も来てます。今観ると,まぁ,あんまり怖くはない。それから,1950年代の白黒映画は,始終セリフで埋まっている。情緒も間もあったもんじゃない。全員がものすごいマシンガントークで,間断なく誰かが必ず何かを早口でしゃべってる。観客を飽きさせないための演劇的な工夫なのかな。あるいは,もしかしたら,ラジオで流しても分かるように作ってるのかな。今度調べてみよう。
しかし,やっぱり,ジョン・カーペンター監督の『遊星からの物体X』(主演:カート・ラッセル)だよね~。幼体が動物や人間に寄生する宇宙生物。成長するまでの間は,その動物や人間を乗っ取って操るから,誰が寄生されているのか分からない疑心暗鬼。変形され破壊される人体のスプラッタ・ホラー,宇宙生物のキモさ,そして,誰が敵なのか分からないサスペンス・スリラー,通信不能の北極基地という閉鎖性が,映画の味わいを極上にしています。
★★