2025年4月23日

西洋の敗北

エマニュエル・トッド(著)大野舞(訳) 2024 文藝春秋

今の世界の情勢を知る上で,これは必読書かもしれない。ハラリの『サピエンス全史』ぐらい,目から鱗でした。

ウクライナ戦争について,ロシアについて,アメリカについて,ヨーロッパについて,そうかそういうことなのか,だからなのかと,いろいろと疑問に思っていたことが氷塊した気分です。物事は,別の角度から見るとこうも違って見えてくる,そのことを改めて思い知らされました。多角的に物事を見ることは良いことだと分かっていても,なかなかそうはできない,特に,フィルターバブルだエコーチェンバーだといった情報環境に生きている我々は,気をつけて公平性を保とうとしたところで,見方が偏ってしまいます。

エマニュエル・トッドの肩に乗って,まったく別の角度から世界を見ることができる,現代の必読書だと,僕は思います。



2025年4月21日

破墓/パミョ

(原題:Exhuma)(韓国,2024)

面白かった。134分,話がどんどん展開する飽きさせない作り。面白かったけど,展開が早すぎて,なんでそうなってるのか細かい理屈がよく分からないところもありました。話が回収されているようなされていないような。だから,世界観というかスケールは一見深そう(大きそう)だけど,そのよく分からなさによって結局,深いのか浅いのか,大きいのか小さいのか,よく分からなくなってます。

しかし,ユ・ヘジンは,いつ見ても,どんな映画でも,やっぱり味があって良いなぁ。あの顔だよなぁ顔。それから,あの,唾を飛ばしながら(実際は飛んでないかもしれないけど)しゃべるしゃべり方。あの顔は,一度見たら忘れられない。

★★★


2025年4月19日

第51回全日本杖道大会(京都)二段の部:準決勝

昨年度の京都での第51回全日本杖道大会,二段の部準決勝の動画がようやくYouTubeにアップされました。白谷・湯川組ーニーマン・藤井組の対戦です。奥が白谷さんと私です。残念ながら結果はここで負けまして,ベスト4でした。




2025年4月18日

未知との遭遇

(原題:Close Encounters of the Third Kind)(アメリカ,1977)

SF映画が好きだとか公言しておきながら,実は今まで観たことがなかった『未知との遭遇』。やっと観ました(笑)。いや,これだけ有名な映画だからもしかしたらどこかで観ているのかもしれないけれど,観た覚えがない。勝手な先入観で,ただ宇宙人がやってくるだけの(ひそかに侵略しにきたり,あからさまに襲ってきたりしない:笑)退屈な映画なんじゃないかと思ってましたが,そうか,こういう映画なのか~。

最初のUFO目撃事件と言われているケネス・アーノルド事件は1947年。『美しい星』(1962)を書いた三島由紀夫も入っていた「日本空飛ぶ円盤研究会」の設立は1955年。宇宙人が謎の飛行物体に乗って地球に飛来している。世界のいたるところでそれは目撃されている。宇宙人はいるに違いない。いつか人類にコンタクトしてくるときが来るはずだ。いや実は,合衆国政府が隠蔽しているだけで,NASAはすでに接触しているのかもしれない。そういう心理がもんもんと醸成されていたであろう1970年代後半に,スティーブン・スピルバーグが,目に見える形で映画にした,という感じでしょうか。

実際,1977年の作品にしては,有名だけあって,よくできてるよなぁ。フワーッと物理法則無視して飛んでくるUFOは,機械的だけど生命感があって,UFOそのものが宇宙人のようにも思える。最後には,お約束のグレイタイプの宇宙人が降りてきましたが,グレイって,一説には『2001年宇宙の旅』(1968)のスター・チャイルドが原型って言われているので,1970年代後半は,すでに宇宙人といえばグレイタイプだったんでしょうね(僕は幼稚園生~小学校低学年ぐらい)。ただ,大人(成長した形の宇宙人?)は,ややタコ型の手足でしたね。タコ型説にも配慮した,ということでしょうか。なお,タコ型の由来は,H.G.ウェルズの『宇宙戦争』(1897)に出てくる火星人という説もありますが,定かではありません。

タイトルの原題は,「第三種接近遭遇」ですが,これは,ジョーゼフ・アレン・ハイネック博士の言うところの,宇宙人(UFOの搭乗者)との接触のことですね。ここで,第一種接近遭遇とは,UFOを近くで目撃すること,第二種接近遭遇とは,UFOによる物・人・動物などへの何らかの物理的影響が確認できることを指しますが,この『未知との遭遇』は,その辺りの手順もちゃんと踏んでいて,第一種接近遭遇と第二種接近遭遇を丁寧に描いています。

世界中で起きてきた謎の消滅・失踪・誘拐事件とも絡めているところ,UFOに憑りつかれた人のどんどん病んでいく(かのように見える)様子やその狂気性を理解できない家族の崩壊の様子を描いているところなんかは,ただの宇宙人飛来ものではないことが,これでようやく分かりました。宇宙人との交信を音(音階)でするところも素敵です。なお,キャトル・ミューティレーションを彷彿とさせる大量の動物(牛,馬,羊)の死骸はなんだったのかはよく分かりません(第二種接近遭遇?)。ま,しかし,とにかく,UFO(宇宙船)が荘厳で綺麗だよね。

★★★★


2025年4月16日

X エックス

(原題:X)(アメリカ,2022)

キモい。怖い。痛い。

時は1979年,アメリカはテキサス州の田舎にある古びた農家。そこに,ポルノ映画を撮影しに来た男女6人。一攫千金を狙うプロデューサー・ウェイン,ポルノ女優マキシーンとボビーリン,ポルノ男優でベトナム帰還兵のジャクソン,自主映画監督のRJと助手(彼女)のロレイン。老夫婦が住むその農家の離れに泊まって,ポルノを撮る6人。その様子を覗く老婆。どうも様子がおかしい。

知らずに先に『パール』を観てしまったわけですが,それはそれで良かったかもしれない。あれから60年,パールとハワードは,お互いを労わり愛し合う夫婦をちゃんと続けていました。人を次々に殺しながら。6人が来てしまったのは,二人の住むあの家でした。

第3弾は『マキシーン』。6月6日に日本公開。今回のこの映画の舞台となった時から6年後だそうです。どうなるんでしょう~。

★★★


2025年4月14日

Pearl パール

(原題:Pearl)(アメリカ,2023)

うひょ~怖~。超怖いシリアルキラー映画。

主演ミア・ゴス,監督ダイ・ウェスト。これ,『X エックス』に続くシリーズ第二弾なのね。まだ『X エックス』は観てなかったから,先に観ておけば良かったかも。で,三部作第3弾が『MaXXXine マキシーン』なのね。今度観よう~。

時は1918年,アメリカはテキサス州の田舎にある貧しい農家。スペイン風邪が世界中に大流行する中,結婚したばかりの夫は第一次世界大戦でヨーロッパに出征していて不在,厳格な母親と全身麻痺で車いす生活の父親と暮らすパールは,映画の中の踊り子に憧れ,自分もいつか舞台に立つことを夢見る。しかし,第一次大戦中という時節柄,ドイツ系であることを理由に,目立たぬようひっそりと大過なく過ごそうとする母親に,ことごとく否定される。

最後の,パールの作り笑顔が頭から離れない。怖すぎる。マジで夢に出そう。でもねぇ,彼女のこの著しく抑圧的な境遇だったら,壊れてしまうのも仕方がないところはあるし(だからといって,人を次々に殺しちゃいけないけど),言ってることの筋も通っている(からといって,人を次々に殺しちゃいけないけど)。だから,なんだか可哀想でもある(けど,人を次々に殺しちゃいけない)。

★★★★


2025年4月13日

テラフォーム 侵略

(原題:Risen)(オーストラリア/アメリカ,2021)

なんとなくコンセプトというかアイディア的にはすごく面白そうだったので観ました。

映画は,核となるコンセプトが最も大事。それを生かすも殺すも脚本次第。その独創的なコンセプトをどう肉付けして120分間,観客を惹きつけ続けるか。飽きさせない展開,伏線と謎解き,道具の細かい描写,セリフ,映像,カット,カメラワーク,・・・。なんてことを,映画を観ていて,素人ながらに色々と思うわけです。

この映画,コンセプトは確かにすごく良いんだけど,とにかく最初からずっと全体的に間延びしてます。間延びしてるから,挿入されてる音楽がやたら気になる。音楽でもってなんとか物語を奥深く,重厚に,感動的に,荘厳に,深刻にしようとしてますが,間延びした尺にはただ邪魔なだけ。これは静止した画面を観ながら鑑賞する音楽映画なのか?それにしては大した音楽ではない。無理矢理110分の尺を持たせようとしてるから,前半の1時間をもっとぐっと縮めたらどうでしょう。それから,種明かしを最後にもったいつけてもってくるんじゃなくて,早々に種明かししてそこのところの奇妙な運命をもっと描いたら良いんじゃないかなぁ~。と,素人にさえ色々と改善策を喚起させる,ある意味で,おそらくは映画学科の人には良い問題材料になるのではないかと思える学習映画。


2025年4月12日

アビゲイル

(原題:Abigail)(アメリカ,2024)

踊る吸血鬼。スプラッタホラーのアクション映画です。話に深みがない。吸血鬼バトルを観せたいだけだから,吸血鬼バトルを観たい人には良いと思います。一応,吸血鬼は少女なので,親子愛がテーマに入っていますが,そこはもう,カレーに隠し味の牛乳を少々入れたぐらいで,カレー味であることに変わりはありません。

っていうことは,つまり,カンフー映画はカンフーバトルを観せたい映画だとすると(無論,バトルに至る文脈や背景に面白さや斬新さがあれば映画として味や深みが増すわけですが),そこに至るまでにあんまり味や深みはないことが多いわけで,そうなると,カンフー映画はカンフーバトルを観たい人には良い映画ということですね。

そう思うと,この前,キアヌ・リーブスの『ジョン・ウィック』シリーズの第4弾『コンセクエンス』(共演は真田広之とドニー・イェン!超豪華日中二大アクションスター!!)を観たのですが,途中でつまらなくなって観るのを止めました。というのも,ストーリーというか文脈はもうどうでも良い感じなんですよね(笑)。とにかく,映画が始まってからずっと,キアヌの銃撃と総合格闘技の連続アクションをひたすら観せるためだけの映画です。一番最初の『ジョン・ウィック』(2014)は,ナメ殺映画としても,その奇妙な裏社会のある世界観も,斬新で面白かったけどね~。

★★



2025年4月10日

侍タイムスリッパ―

(日本,2023)

いやぁ,良かったわ~。第67回ブルーリボン賞,第48回日本アカデミー賞最優秀作品賞。自主製作らしいので,全体にチープさはあるけど,コメディでありながら泣かせる,良い映画です。

生真面目な幕末の会津藩士・高坂新左衛門が,密命を受けて京の都で長州藩士・山形彦九郎を闇討ち中に雷に打たれ,現代にタイムスリップしてしまう。気が付くと,そこは140年後の,京都の時代劇撮影所であった!

高坂新左衛門(山口馬木也)の一挙手一投足が,いちいち面白い(笑)。それでいて,人生を命がけで生きてきた幕末の侍が,文明の発達した平和な現代を,豊かになったと喜ぶ半面,時代劇として残っているものの,すっかり忘れられたかつての本当の日本と侍たちを憂う姿は,真に迫っている。

★★★★


2025年4月7日

キャンディマン

(原題:Candyman)(アメリカ,2021)

製作・脚本はジョーダン・ピール他。

クライブ・バーカーの小説『禁じられた場所』を映画化した,1992年の『キャンディマン』と連なる続編。アメリカの人種差別問題が背景にあり,本作も『ゲット・アウト』のジョーダン・ピールが製作・脚本に入っている。これはもう,『キャンディマン』(1992),『キャンディマン2』(1995),『キャンディマン3』(1999)を観てみたいね。

★★★


2025年4月6日

ブライトバーン/恐怖の拡散者

(原題:Brightburn)(アメリカ,2019)

うひょ~。恐ろしいや~。まさに宇宙から降ってきた恐怖の大王。スーパーマンのブラックパロディホラー。そうだよね,そうなるよね,普通,少年がそんな特別な力を持ってたら,そうなってもおかしくないよね~。

<もしもクラーク少年がサイコパスだったら・・・>。本作の主人公の少年ブランドンは,一見おとなしく知的な少年だが,逆に言えば,感情の発露が薄い。共感性が低く,欲望に対して衝動的で,規範や善悪が分からない。サイコパスである。鬼に金棒を与えてしまいました。

最後に流れるビリー・アイリッシュの「バッド・ガイ」が妙に切なくて怖い。90分間,口をあんぐり開けっ放しで見入ってしまった。残酷大魔王降臨。暗黒超人爆誕。

しかし,副題の『恐怖の拡散者』ってのはイマイチだよなぁ,何だよ「拡散者」って(笑)。別に何にも拡散してないし。主題の『ブライトバーン』は舞台となる街の名前だから,これだけじゃよく分からないので,邦題に副題が付いていて良いんだけど,どうせ副題付けるなら,なんかもっと良いのはなかったのかね。ノストラダムスの予言にちなんでシンプルに「恐怖の大王」じゃダメかね?実際,空から降ってくるわけだし。『ブライトバーン/恐怖の大王』。

★★★★


メサイア・オブ・デッド(メシア・オブ・ザ・デッド)

(原題:Messiah of Evil)(アメリカ,1973)

ロメロの『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』は1968年で,『ゾンビ』(Dawn of the Drad)は1978年。

赤い月が昇るとき,その街の住人は目から血を流し,ゾンビと化す。って話だけど,全体にのったりまったりしてて,全然怖くない。



2025年4月4日

偽物論

尾久守侑 2022 金原出版

面白かった。尾久氏自身を含む一群の「偽物クラスタ」(造語)に含まれる人々についての考察。尾久氏の論は,前にも書いたけど,自己(の考察)に対して常に(強迫的に)客観性を保ち続けようとするところが,(自己演出的であれ)滑稽でありまた(自己演出的であるがゆえに)知的であり,面白いです。


2025年3月30日

宇宙の彼方より

(原題:The Color out of Space)(ドイツ,2010)

H.P.ラブクラフトの同名小説の映画化。SFホラー。2019年に,ニコラス・ケイジ主演でも映画化されてます(『カラー・アウト・オブ・スペース ─遭遇─』)。

ドイツの片田舎に謎の隕石が落ちた後から,農作物は奇妙な果実を付け,虫は巨大化し,やがて土地は荒廃し,動物も死に絶え,近くに住むガードナー家も家族が一人また一人と壊れていく。

2019年のニコラス・ケイジの方は,紫色を中心にいろんな原色が気持ち悪く配色されてましたが,こっちの2010年のドイツ映画の方は全編白黒映画。ただし,宇宙からの色だけ紫色。また,こっちの方は,単にガードナー家の不運を描いてるのではなく,過去にあったガードナー家の事件(第二次世界大戦前のドイツ)を事件の目撃者が現在の時点から物語る,という設定。最後の場面で,それに少し味付けも。

★★


2025年3月29日

エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス

(原題:Everything Everywhere All at Once)(アメリカ,2022)

コインランドリー店の平凡な妻エヴリン。ちょっとボケかかった父親ゴンゴン,優しいだけで頼りない夫ウェイモンド,多感な年ごろで反抗的な娘ジョイといった家族とともに,店の経営と納税にあえぎながら汲々と暮らしている。そんなとき,別の並行世界(アルファ・バース)から跳んできて夫に乗り移った”アルファ・ウェイモンド”が,エヴリンに,すべての並行世界に危機が迫っている,その危機を救うのは君だ!!と強引に導こうとする。さっぱり意味が分からないエブリン,さあ,どうする?どうなる?

ってな話で,下ネタも含めたギャグ満載で,人生のあらゆる可能世界(分岐する無数の並行世界)を跳び回りながら,母親と娘の葛藤をテーマに,たぶん時間的にはたったの1日半ぐらいの間に繰り広げられる,壮大な宇宙的戦いを描いた冒険SFカンフー活劇。

母娘の葛藤と夫婦愛・家族愛がテーマですが,まぁ,それはそれとして,いろいろと分かりやすいオマージュ満載で,下ネタが露骨で下品で,ギャグもバカバカしいところはいかにもアメリカB級映画っぽさを出しながら,しかし一方で,映像的には綺麗で,カンフーアクションもキレがあって上質です。そういうギャップもあえてメタに狙っていて,単なる低予算B級おバカ映画ではない,面白い映画でした。が,葛藤と愛のテーマについては,あんまり感動しなかったなぁ。ミッシェル・ヨー主演。

★★★


2025年3月21日

ザ・ドメスティックス

(原題:The Domestics)(アメリカ,2018)

第三次世界大戦?で世界中に毒ガスが振りまかれた後の無政府状態のアメリカ。関係の冷え切った離婚寸前の夫婦が,暴力的な無法者集団(シーツ,ネイラーズ,ギャンブラーズ)の襲撃を掻い潜り,奥さんの実家へと向かう。

アメリカ人にとっては,銃が日常に存在する社会で,けっこうこういうバイオレントな無政府状態はリアリティがあるんだろうなぁ。リアル・マッドマックス。そんなマッドマックスな世界で生き残るために,夫婦は銃をぶっぱなして「適応」していく中で,二人の愛を取り戻す。愛をとりもどせ!!YouはShock!

★★★


2025年3月20日

きさらぎ駅

(日本,2022)

要するに「世にも奇妙な物語」だね。映画としては,まぁ,どうなのかなぁ。イマイチかな。テレビの単発ドラマとしてなら,まぁ。

★★


三河雑兵心得 拾五 関ケ原仁義(上)

井原忠政 2024 双葉文庫

秀吉薨去。伏見の徳川と大阪の豊臣,いよいよキナ臭くなってきました。茂兵衛,家康の側近として奮闘!

次巻が待ち遠しいなぁ。次はいつ出るんだろう?



2025年3月19日

リバイバル 妻は二度殺される

(原題:The Phone)(韓国,2015)

これは面白かった!韓国SFサスペンス。

逆恨みの絶えない敏腕弁護士のコ・ドンホは,ちょうど一年前,自宅に押し入った強盗に妻のヨンスを殺された。仕事も辞め,犯人探しに明け暮れていたが,中学生の娘のことも考え,そろそろ仕事に復帰することに。そんなとき,まさに妻ヨンスが殺された時間の少し前に「ヨンス」から電話がかかってきた。最初は誰かのいたずらかと思ったが,どうやら,1年前の<過去>から電話がかかっているようだ!そのことに気づいたドンホは,なんとか妻を助けようと必死に状況を説明するが,犯人は執拗に追いかけてくる。

いやぁ,見ている間,ずっとハラハラドキドキ。さてどうなる?この後どうなる?・・・観ていてずっとヒヤヒヤしてました。これは面白かったです。

でも,邦題は良くないな~(笑)。なんだよ「リバイバル」って?(笑)でもって,副題の「妻は二度殺される」って(笑)。ううむ,まぁ,メタに見れば二度殺されるようなことになるわけですが,しかし,そこはこの映画の本質ではないからなぁ。あと,主題の「リバイバル」ってどういう意味で付けてるんだろう。「やりなおし」って意味なのかな?謎です。むしろ,この映画のポイントはスマホの電話だから,原題は「電話」だもんね。強いて言えば,「過去からの電話」だね。

★★★★


2025年3月17日

サンクスギビング

(原題:Thanksgibing)(アメリカ,2023)

スラッシャー映画。復讐の連続猟奇殺人鬼映画。2もやるみたいなので,どんなものかと思って,なんとなく観ちゃいました。

★★


2025年3月14日

フェイクニュースを哲学する

山田圭一 2024 岩波新書

内容はお題の通り。我々は何を信じるべきかを,うわさやフェイクニュース,陰謀論などを題材にして哲学的に考えてみましょう,という本です。分かりやすいです。フェイクニュースそのものに関する政治的な議論というよりは,哲学の認識論(社会認識論)の話ですね。心理学も大いに関係してますから,とても勉強になりました。


2025年3月13日

ドリーム・シナリオ

(原題:Dream Scenario)(アメリカ/カナダ,2023)

主演ニコラス・ケイジ。

進化生物学が専門の,普通の大学教授ポール・マシューズが,突然,不特定多数の人の夢に繰り返し出るようになる。最初はただ突っ立ってるだけだから,みな面白がって,ポールは一躍時の人となるが,やがて,夢に出てくるポール教授は恐ろしい殺人鬼となって夢を見ている人を襲い始める!すると,世の中が打って変わって,ポール教授を避け,非難し,排除し始める。

何も悪いことを一切していない,ただの中年大学教授が,悪夢のせいでどんどん追い込まれていく。嫌われ,誤解され,殴られ,ネット配信で謝罪したら,謝罪コメントが自分勝手だとなじられ,リアル「フレディー」扱いされ,とうとう家族にも見放され,さんざんな目に遭う。ザ・不条理!かわいそう~

ニコラス・ケイジが,きれいな禿げ頭で怪演。

★★★★


2025年3月12日

ザ・クリエイター/創造者

(原題:The Creator)(アメリカ,2023)

面白かった~。

人間とAI(を搭載したアンドロイド)とが共存する世界。しかし,西側(欧米側)は,AIの暴走を危険視して,AIを排除・抹殺する政策を取っている。一方,ニューアジア側は,人間とAIが共生する生活を送っている。

ジョシュア(ジョン=デヴィッド・ワシントン)は,欧米側からニューアジア側に送り込まれた潜入捜査員。AIの創造主「ニルマータ」を捜し出すことがミッションだ。しかし,欧米側の強硬作戦のせいで,ニューアジアで妻となって自分の子どもを宿していたマヤを失ってしまう。

欧米側は,ニルマータの抹殺を目的に,巨大兵器モナドで攻撃を続ける。ニルマータ抹殺作戦には,モナドを破壊する威力を持つとされているニューアジア側の「兵器」の発見も含まれている。ここで,かつて潜入捜査をしていて,ニューアジアに精通しているジョシュアが,再び作戦参加に呼ばれる。マヤが生きているかもしれないという情報をもとに,ジョシュアは作戦に参加する。

渡辺謙が,ニューアジアのゲリラのAI司令官ハルンとして出てます。ニューアジアの描写が,主に日本っぽさを中心にして,東南アジア辺りまでごっちゃな感じになっていて,非常に良いです。都市や田舎の風景,巨大兵器モナドの攻撃,アンドロイドの造形や動きなど,どれも綺麗で(クリアで)よくできていて,観ていて気持ちが良い。

★★★★


2025年3月8日

シャッターアイランド

(原題:Shutter Island)(アメリカ,2009)

マーティン・スコセッシ監督,主演レオナルド・ディカプリオ。時は1954年。孤島にある,精神を病む凶悪犯罪者を収容する病院。レイチェルという女性患者がいなくなったため,連邦保安官のテディとチャックが島にやってくる。

なるほど,そういうことか~。これはよくできてるね。映画らしい映画。面白かったです。

★★★★


2025年3月7日

ヤンキー母校に恥じる

河野啓 2024 フォレスト出版

最近,自民党の裏金問題で落選したヤンキー先生「義家弘介」氏。彼が,存在の根幹であるはずの教師をやめて政治家に転身した時に,「え?あれ?そっち?しかも自民党?」と違和感を抱いていましたが,この本を読んでようやく腑に落ちました。やっぱりそういうことだったのね。この3月でとうとう政界を引退するそうです。まぁ,政治家は性に合ってなかったんじゃないですかね。著者の河野氏も感じるところがあるでしょう。


2025年3月5日

朝鮮半島の歴史 政争と外患の六百年

新城道彦 2023 新潮選書

朝鮮王朝建国から現代(南北分断)までの600年の歴史を,政治の主導権争いと周辺諸外国からの侵略という二面から描いた本。文章を書くのが苦手,なんて「あとがき」で書いてますが,何をおっしゃる,非常に読みやすい文章であり,また,単なる事実を順番に羅列するだけの「教科書」的なものではなくて,当事者の心情のようなものも歴史的証拠から挟み込んでいて,読み物として非常に面白かったです。さすが「サントリー学芸賞(思想・歴史部門)」受賞作!非常に勉強になりました。


2025年3月2日

ニューヨーク1997

(原題:Escape from New York)(アメリカ,1981)

監督はジョン・カーペンター。原題を直訳すれば『ニューヨークからの脱出』かな。

時は近未来(1981年からすれば1997年は近未来)。犯罪が激増して収監する囚人が増えたために巨大な刑務所となったニューヨークのマンハッタン島。マンハッタン島に収監されたものは二度と外に出られない。島の中は,犯罪者たちの魔宮と化している。

そんな島に,大統領の乗ったエアフォースワンが墜落。脱出ポッドに乗った大統領は,一命は取り留めたものの行方不明。政府は,新たに収監されることになった凄腕の元特殊部隊,スネーク・プリスキン(カート・ラッセル)と取引をし,罪をすべて恩赦する代わりに大統領を救出することを命じる。

この次の年,ジョン・カーペンターとカート・ラッセルのコンビで,例の『遊星からの物体X』(1982)を作ってますね。同じコンビで,スネーク・プリスキンの続編『エスケープ・フロム・L.A.』(1996)ってのがあります。

今観ると,機械やら装置やら道具やらが古臭くて,全体にモッサリしてるけど,でも,マンハッタン島に住む犯罪者たちの奇妙な服装や行動はパンチが効いています。

★★★


2025年2月27日

ディープ・コンタクト

(原題:The Devil below Shookum Hills)(アメリカ,2021)

地図から消えた炭鉱町。コンセプトは面白そうだったので観ましたが,全体にチープだったなぁ。キャラクター作り,伏線,つじつま,行動の理由,問題の背景,謎の解明,ロケ地,撮影セット,アクション,モンスターの造形など,な~んか全部ぬるくて浅くて中途半端。観なくて良いと思います。


2025年2月19日

一冊でわかる韓国史

六反田豊(監修) 2021 河出書房新社

これは分かりやすかった。韓国・朝鮮の歴史を知りたくて買った一冊。

日本史だって正確にちゃんと分かってるわけじゃないけど,中学高校で習ったことをベースに,まぁ,だいたいの流れは分かってる(つもり)。最近は,NHK大河ドラマ『どうする家康』を観てから,戦国時代が面白くて,時代小説にはまってます。戦国時代とは違うけど,『極楽征夷大将軍』も面白くかつ勉強になりました。まさに「教養としての歴史小説」(今村翔吾)ですね~。最近の高校では「歴史総合」になって,日本も世界もひっくるめたグローバルな歴史理解にシフトしているようで,前に読んだ『教養のグローバル・ヒストリー:大人のための世界史入門』は非常に面白かった。

韓国の映画は面白いし,よくできているから,よく観るわけですが,このとき,テーマとして植民地支配だとか独立だとか民主化だとか南北分断だとかいったことがしばしば出てきます。通り一遍には理解しているつもりでも,分かっているようで分かっていないところもあり,では,もう少し広い(長い)視点で,近現代に至るまでの韓国・朝鮮の歴史を含めて,そもそも韓国・朝鮮ってどんな国なのかを改めて知りたいと思って,何冊か買いました。そのうちの一冊。

この本は,建国神話から現代まで,韓国・朝鮮の歴史を一冊で一挙に読めるのが,たいへん良かった。文章の平易で分かりやすい。しかし,膨大な情報の要点をこうしてコンパクトにまとめるのって,ホントすごいことだよなぁ。韓国・朝鮮史を知りたいと思ったらまず最初に読む一冊として,大正解でした。


2025年2月15日

遊星よりの物体X

(原題:The Thing from another world)(アメリカ,1951)

ジョン・キャンベルの短編小説『影が行く』の映画化。

北極基地の近くに墜落した飛行物体から,氷漬けになった物体を持ち帰るアメリカ隊。やがて氷が解け,その物体(the thing)が逃げ出し,ソリ用の犬や隊員の科学者を襲う。それは植物型宇宙人であり,種子はイヌやヒトの血液で増殖する。

形はほとんどフランケンシュタインで,服も来てます。今観ると,まぁ,あんまり怖くはない。それから,1950年代の白黒映画は,始終セリフで埋まっている。情緒も間もあったもんじゃない。全員がものすごいマシンガントークで,間断なく誰かが必ず何かを早口でしゃべってる。観客を飽きさせないための演劇的な工夫なのかな。あるいは,もしかしたら,ラジオで流しても分かるように作ってるのかな。今度調べてみよう。

しかし,やっぱり,ジョン・カーペンター監督の『遊星からの物体X』(主演:カート・ラッセル)だよね~。幼体が動物や人間に寄生する宇宙生物。成長するまでの間は,その動物や人間を乗っ取って操るから,誰が寄生されているのか分からない疑心暗鬼。変形され破壊される人体のスプラッタ・ホラー,宇宙生物のキモさ,そして,誰が敵なのか分からないサスペンス・スリラー,通信不能の北極基地という閉鎖性が,映画の味わいを極上にしています。

★★


2025年2月14日

ダークスカイズ

(原題:Dark Skies)(アメリカ,2013)

怖え~。

ある一家を次々と襲う謎の怪奇現象。荒らされる家。謎のオブジェ。消失する写真。動物の異常行動。アレルギー。記憶喪失。失神。身体に残る痣。幾何学模様の火傷跡。謎の人影。物理的には理解も説明もできない。近隣は父親を変人扱い,病院は両親のDVを疑う。家族はどんどん追い込まれていく。その理由は・・・。

★★★


2025年2月10日

ザ・メニュー

(原題:The Menu)(アメリカ,2022)

いやぁ,変な映画を観てしまった。

孤島にある超高級レストラン。映画俳優と愛人,有名料理評論家と編集者,成金マフィアの幹部たち,金持ち老夫婦,そしてグルメ気取りのウンチク男に誘われてついてきた,すれっからしな女マーゴ。レストランに到着すると,一糸乱れぬ調理人たちを統率する料理長スローヴィクが,謎の料理の長講釈をしながら一品ずつ振る舞い始める。

ホラー映画です。怖いです。皮肉たっぷりのサスペンス・コメディ・ホラーです。

ちなみに,変な映画でパッとすぐ思い出すのは『ロブスター』(2015)ですが,あれも皮肉たっぷりのサスペンス・コメディ・ホラー映画ですね。あれほど変ではなかったけど,この『ザ・メニュー』も良かった。

★★★


ハプニング

(原題:The Happning)(アメリカ,2008)

おお,怖い。これは怖い。

ある朝突然,自殺者が急増。ニューヨークのセントラルパークで人々が次々に自らの命を絶ち始めた。やがてその異変は周辺へと広がっていく。

原因は不明。神経毒を使った化学テロか,原子力発電所の物質が漏れたか,はたまた政府の陰謀か。高校教師のエリオットは,恋人のアルマと,友人のジュリアンとその娘ジェスとともに,フィラデルフィアへと向かう列車に乗るが,途中の田舎駅で止まってしまう。ジュリアンはプリンストンに残した妻を探しに,ジェスをエリオットとアルマに託して行ってしまう。エリオットとアルマとジェスは,親切な夫婦とともに車に乗って逃げることに。

エリオットは,様々な状況から分析するに,おそらく原因は植物ではないか,植物が発する何らかの化学物質が原因で神経がやられて異常行動を始めるのではないか,という説に落ち着く。しかもそれは,人が多く集まるところで反応するようである。とにかく,人のいないところ,いないところへ逃げるべし。だがしかし・・・

脚本・監督は,M・ナイト・シャマラン。この人は,奇想天外な映画作るよね。『ノック 終末の訪問者』(2023),『ヴィジット』(2015),『シックス・センス』(1999)。

★★★


2025年2月9日

林檎とポラロイド

(原題:Apples)(ギリシャ/ポーランド/スロベニア,2020)

なるほど,そういうことね。

ここ最近,突然記憶を失い,救急車で運ばれる患者が急増している。原因は不明。IDなどを携帯していたり,家族親族が捜索願を出していたりする場合は,やがて元の家に戻ることができるが,そうでない場合,「身元不明者」として入院生活を余儀なくされることになる。そこで政府は,「『新しい自分』プログラム」なる治療プログラムを目下,2つの病院に開設し,「身元不明者」に治療を試みることにした。

主人公の男は,バスに乗っているときに記憶を失って入院。「記憶喪失」の「身元不明」者ということで,アパートの一室を与えられ,この『新しい自分』プログラムを受けることに。このプログラムでは,定期的に送られてくるカセットテープに吹き込まれた医師からの指示(ミッション)に従って行動し,それをポラロイド写真に撮ってアルバムにしていく,という作業をひたすら行う。

男の好物は林檎。だから,邦題は「林檎とポラロイド」。

「ああ~なるほど,そういうことね」って具合にそれまでのシーンや展開がパッとひっくり返る(あるいは意味合いが変わる,意味が分かる)のがあると,とっても<映画らしい>と,個人的には思うわけだが,だからこれ,とっても映画らしい映画。全体のトーンも落ち着いていてセンスが良い。オススメ。

★★★★


2025年2月8日

レッド・グラビティ

(原題:The last journey / Last Journey of Paul W.R.)(フランス,2020)

フランスSF。近未来,資源が枯渇した地球に赤い月が接近し,人類はその月から「ルミナ」というエネルギーを得てしのいでいたが,やがてその月が軌道を変えて地球に向かってきた。赤い月を破壊できるのは人類でただ一人。なぜなら,その男は唯一,赤い月を覆う磁場の影響を受けないから。男の名はポール。しかし,ポールは破壊計画から抜け出して,追われる身に。

原題は,「最後の旅」か「ポールの最後の旅」。そっちの方が良いんじゃないかなぁ。「レッド・グラビティ」って,「赤い重力」って意味だけど,この話,「重力」関係ないんだよね(笑)。関係あるのは「磁場」。ポールは,訳あって,赤い月を壊したくなくて,それを証明するために,昔見た「イメージ」の森が現実に存在することを確かめようとする(自分は狂っていないことを証明するため)。って話なんだけど,ラストの意味も含めて,ところどころ意味がよく分からなかったぞ(笑)。まぁ,「イメージ」は予言(未来予知)ってことなんだろうけど,どういう理屈で雨?まさか,カルト映画と化すか!?

途中途中の追っかけっこや,一緒に逃げる少女も怪しい兄貴も良かったけど,ストーリーやシーンでなんで?どうして?どういう意味?ってのが結構あって,よく分からん,というのが観てすぐの感想。ただ,反すうしてると少しずつ分かるところもあるから,それなりに良い映画なのだと思う。「ルミナ」開発と赤い月破壊計画のボスは,ポールの父親で,ジャン・レノでした。ここでもやっぱり丸メガネ。

★★★


ソフト/クワイエット

(原題:Soft & Quiet)(アメリカ,2022)

ああ,胸糞悪い映画を観てしまった~。途中,何度も観るのを止めようと思ったけど,結局,どうなるかを観たくて観てしまった~。あああ,気分が悪い。全然救われない。観るんじゃなかったかもしれない。

90分,全編ワンカット。分断・格差・差別という現代のアメリカ社会の現実を描いているという意味で意義深い映画だと思うけど,吐き気がするほどものすごく気分が悪いので,閲覧注意。そのくらい,よくできてると言えばよくできてる。リアリティと緊張感がえげつないほど出てるのは,ワンカット撮影の効果だね。

映画としては星3つでも良いと思うんだけど,えげつな過ぎて二度と観たくないから星2つ。でも,まぁ,世に出していくべきだよね,こういう映画。

★★


2025年2月2日

オーウェル『動物農場』を漫画で読む

ジョージ・オーウェル(文)ベルナルディ・オディール(編・絵)田内志文(訳) 2024 いそっぷ社

『動物農場』そのものは読んだことがなく,しかし,『1984』と同様に有名な作品なので,漫画ならすぐ読めそうだと思って読みました。『1984』は映画になってるので,こちらは映画で観ましたし,このシリーズの漫画も読みました。この『動物農場』の方は,1954年にアニメで映画化されてるようです。


2025年2月1日

その怪文書を読みましたか

梨・株式会社闇 2023 太田出版

『行方不明展』の前の展覧会を書籍化したもの。「怪文書」というから,何かしら政敵を貶めたり,特定人物を誹謗中傷したりするような文書で,関係者に出回ったもの,だと思ったら,ほぼすべて,個人宅や町中の張り紙やネット掲示板などで表明された,(おそらく)統合失調症の人の妄想に基づく訴え(例えば,監視されている,嫌がらせを受けているなど)や,同じ考えや悩みを持つ人を募る文章でした。これは,「怪文書」というより,「了解が困難な内容の文書」ということですね。

なお,これも『行方不明展』と同様にすべてフィクションだそうです。そういう意味では,非常によくできていると思いました。


2025年1月31日

2月1日早朝,ミャンマー最後の戦争が始まった。

フレデリック・ドゥボミ(脚本)ラウ・クォンシン(作画)ナンミャケーカイン(翻訳) 2024 寿郎社

2021年2月1日,ミャンマーで起こった軍事クーデターによって,再び軍部による独裁体制に舞い戻ってしまったミャンマーの様子を描いた漫画。クーデターから,明日でちょうど丸4年が経つ。

知り合いにミャンマーの人がいて(大学院のときの先輩),たしか大学院当時も軍政下でしたが,非常に優秀だったので国費留学か何かで大学院に留学に来ていました。そのときから,国に自由に帰ったり,家族と自由に連絡を取ったり,というのはできなかったように覚えています。その後,アウンサンスーチー氏率いるNLDに政権が委譲されて民主化したときには,本当に良かったと思っていました。これで自由に帰ったり連絡を取ったりできると,他人事ながら安堵というか嬉しさというか,そんなものを感じていました。「アジア最後のフロンティア」と呼ばれて,経済的な発展も右肩上がりでした。外国人の行き来も自由になって,観光客も多数訪れていたでしょう。たしか,ヒロシの『迷宮グルメ 異郷の駅前食堂』でもミャンマーロケがあったから,ミャンマーもずいぶんオープンになったなぁ,良かったなぁと思っていました。しかし,それからまもなく,またこの軍事クーデターでもって,もとの軍事独裁政治に戻ってしまいました。もうすぐ80歳になるアウンサンスーチー氏は今,どこに収容されているのかさえ明らかにされていません。私の知り合いの気持ちを思うと,心が痛いです。

ミャンマーの近年の繁栄は明らかに民主化のおかげであって,その繁栄を我が物にしようとクーデターによって軍事独裁に戻してしまったら経済は停滞して衰退してしまうわけで,軍部はそんなことも予測できなかったのかと不思議に思います。いや,それでも権力を握りたいのか。


2025年1月30日

行方不明展

梨/株式会社闇/大森時生 2024 太田出版

「行方不明」にまつわる,張り紙,物,手紙,動画などの展覧会を書籍化したもの。ここに展示されているものをあえて分類すれば,

・行方不明になった(と思しき)人の手紙あるいは物(遺留物)など

・家族が行方不明になった(と思しき)人が行方不明者の捜索協力を求める張り紙など

です。このとき,後者の場合,本当に行方不明になっているケースと,もしかしたら妄想かもしれないと推測されるケースがあります。

それから,ここで出てくる「行方不明者」には,行方不明になりたい願望(意思),あるいは,「異世界」へ行きたい,今いるこの世界から消えて別の世界に行きたい願望(意思)のようなものも醸し出されてます。そして,それにまつわる「都市伝説」的なものも含まれます。そこで浮かび上がるポイントは,「死にたい」ではなく「行方不明になりたい」ところです。

と,「行方不明」に関する様々なオブジェで構成された展覧会であって,たいへん興味深かった。そして,これらが全部,フィクションであり,その一つ一つがとてもよく作られていることにも感心しました。つまり,「行方不明」をテーマにした現代アートの展覧会,というわけですが,いろいろ感じるところがありました。


2025年1月12日

シャザム!

(原題:SHAZAM!)(アメリカ,2019)

久しぶりにまた観ました。続編の『シャザム!神々の怒り』(2023)を観ようと思って。やっぱり面白い。観ていて飽きない展開。

ところで,最後に続編を匂わせるエンディングになってますが,続編が公開されるのにちょっと時間が経ってるのは,もしかしたらコロナのせいかね。

★★★


2025年1月11日

フランキー 不完全な男

(原題:Bad Frank)(アメリカ,2017)

うううむ,どうなんだろう。微妙だなぁ。

昔,相当に危ないブチギレ野郎だったけど,断酒会で知り合った看護師のジーナと出会い,更正して真っ当な暮らしをしていたフランク。両親とは絶縁状態だが,5年の断酒生活で,ようやく父親と会って話ができるように。そんなときにふと,昔の悪党仲間ミッキーと出会ってしまう。

なんか中途半端なんだよね。監督は,このフランクという,自己制御できない幼稚なブチギレ野郎を,どう描きたかったんだろうか。いっそ,ナメ殺映画にしてしまえば良かったんじゃないか。せっかく真っ当に生きてたのに,悪党にちょっかいかけられて,どうにも我慢できなくて,酒飲んでスイッチオン,とかで良かったんじゃない?酒飲む前から,ときどき小ギレするし,とうとうバーのあんちゃんをボコスコにしちゃうし,いやいや正体明かすのまだ早いでしょ,ここで中途半端にスイッチオンしたら,後半の盛り上がりをどう持っていくのさ,と観ながら心配してたけど,案の定,なんとなく微妙な終わり方。

邦題のサブタイトルは何なんだろうね。『不完全な男』ってどういう意図で付けたんだろう。原題のBad Frankは,良いタイトルだよね。「悪いフランク」です。真っ当に暮らしてる表の「善いフランク」の内側に潜む裏の「悪いフランク」。まともな人間になりたかったんだ,俺は。

途中,薬を2種類飲んでいる,っていう下りがある。2つとも頭痛薬だとフランクは言うけれど,看護師のジーナはなんで頭痛薬が2種類なの?と疑問に思う。ただ,冒頭で,この薬が切れるんだよね。診察も再来週にしか受けられないから手に入らない。すると,イライラがだんだん表に出てくる。何らかの抗精神病薬とか,そういう意味なのかね。

★★


六月のぶりぶりぎっちょう

万城目学 2024 文芸春秋

直木賞受賞作『八月の御所グラウンド』に続くシリーズ第二弾。面白かったです。京都に住みたいねぇ。


2025年1月9日

オールドマン

(原題:Old Man)(アメリカ,2022)

これはなかなか面白かった。思わず見入ってしまった。

山奥の掘っ建て小屋に一人で住む老人。そこに,道に迷った一人の青年が訪れる。孤独な老人は極端に疑り深い。青年は,そんな老人に殺されるんじゃないかと気が気でない。それでも,奇妙な話をし続ける老人と少しずつ打ち解け始め,お前はどこで生まれた,なぜここに来たかとあれこれ尋ねる老人に,青年は怯えながらも自分の身の上話を始める。

主演は,『ドント・ブリーズ』のスティーヴン・ラング。基本的に全編,老人と青年の二人芝居。何なんだこの話は?一体どうなるんだ?と,始終,目が離せません。アマプラの評価はなぜか低いけど,僕は好きだなぁ,こういう映画。筒井康隆的ブラックSF。

★★★


2025年1月3日

マン・オブ・スティール

(原題:Man of Steel)(アメリカ,2013)

前にも観たけど,また観ました。続編(?)の『バッドマンVSスーパーマン:ジャスティスの誕生』を観ようかなと思って。

★★★


2025年1月2日

寄生獣 / 寄生獣 完結編

(日本,2014)

超有名な漫画『寄生獣』(岩明均,アフタヌーンKC)の映画化。漫画の方は,読んだような読んでないような(たぶん,最初の方だけ読んだんだろうなぁ)感じだったので,映画の方を観ました。面白かったです。

そもそも,エイリアンなの?漫画の方は,空から降ってくるんだよね(なんとなく覚えてる)。しかし映画の方は,降ってきてないよね?(海からぶくぶく出てきたぞ)

そこんところが,まぁ,あれか。大気や海洋を含めた地球上の環境を汚染する人間の活動が生み出した,的な?あくまで,地球圏内の出来事として,循環システムの中で生じてることなんだよ,的な?

今度,時間があったら漫画の方の冒頭も観てみよう。

★★★



八月の御所グラウンド

万城目学 2023 文芸春秋

第170回直木賞受賞作。万城目ワールド。京都に住みたいなぁ。