(原題:Close Encounters of the Third Kind)(アメリカ,1977)
SF映画が好きだとか公言しておきながら,実は今まで観たことがなかった『未知との遭遇』。やっと観ました(笑)。いや,これだけ有名な映画だからもしかしたらどこかで観ているのかもしれないけれど,観た覚えがない。勝手な先入観で,ただ宇宙人がやってくるだけの(ひそかに侵略しにきたり,あからさまに襲ってきたりしない:笑)退屈な映画なんじゃないかと思ってましたが,そうか,こういう映画なのか~。
最初のUFO目撃事件と言われているケネス・アーノルド事件は1947年。『美しい星』(1962)を書いた三島由紀夫も入っていた「日本空飛ぶ円盤研究会」の設立は1955年。宇宙人が謎の飛行物体に乗って地球に飛来している。世界のいたるところでそれは目撃されている。宇宙人はいるに違いない。いつか人類にコンタクトしてくるときが来るはずだ。いや実は,合衆国政府が隠蔽しているだけで,NASAはすでに接触しているのかもしれない。そういう心理がもんもんと醸成されていたであろう1970年代後半に,スティーブン・スピルバーグが,目に見える形で映画にした,という感じでしょうか。
実際,1977年の作品にしては,有名だけあって,よくできてるよなぁ。フワーッと物理法則無視して飛んでくるUFOは,機械的だけど生命感があって,UFOそのものが宇宙人のようにも思える。最後には,お約束のグレイタイプの宇宙人が降りてきましたが,グレイって,一説には『2001年宇宙の旅』(1968)のスター・チャイルドが原型って言われているので,1970年代後半は,すでに宇宙人といえばグレイタイプだったんでしょうね(僕は幼稚園生~小学校低学年ぐらい)。ただ,大人(成長した形の宇宙人?)は,ややタコ型の手足でしたね。タコ型説にも配慮した,ということでしょうか。なお,タコ型の由来は,H.G.ウェルズの『宇宙戦争』(1897)に出てくる火星人という説もありますが,定かではありません。
タイトルの原題は,「第三種接近遭遇」ですが,これは,ジョーゼフ・アレン・ハイネック博士の言うところの,宇宙人(UFOの搭乗者)との接触のことですね。ここで,第一種接近遭遇とは,UFOを近くで目撃すること,第二種接近遭遇とは,UFOによる物・人・動物などへの何らかの物理的影響が確認できることを指しますが,この『未知との遭遇』は,その辺りの手順もちゃんと踏んでいて,第一種接近遭遇と第二種接近遭遇を丁寧に描いています。
世界中で起きてきた謎の消滅・失踪・誘拐事件とも絡めているところ,UFOに憑りつかれた人のどんどん病んでいく(かのように見える)様子やその狂気性を理解できない家族の崩壊の様子を描いているところなんかは,ただの宇宙人飛来ものではないことが,これでようやく分かりました。宇宙人との交信を音(音階)でするところも素敵です。なお,キャトル・ミューティレーションを彷彿とさせる大量の動物(牛,馬,羊)の死骸はなんだったのかはよく分かりません(第二種接近遭遇?)。ま,しかし,とにかく,UFO(宇宙船)が荘厳で綺麗だよね。
★★★★