2022年8月28日

100の思考実験:あなたはどこまで考えらえれるか

ジュリアン・バジーニ(著)向井和美(訳) 2012 紀伊国屋書店

哲学・倫理学・論理学のさまざまな思考実験が100個。おなか一杯,読み応えあり。どれも考えさせられる。100個全部楽しめました。




2022年8月15日

レリック

(原題:The Relic)(アメリカ,1997)

ブラジルからの貨物船が漂流しているところを発見。乗組員は一人もいないと思いきや,全員死体となって船倉の床下に沈んでいた。一方,夜の博物館で,脳下垂体を抜き取られた警備員の死体が見つかる。

一度どこかで観たか,なんとなく聞き覚えのあるタイトルでしたが,さて,どんな映画だったかまったく思い出せず,観ました。ああ,こういう映画か。見覚えはない。まぁ,今から見れば,造形も想像の域を超えていないし,CGもちょっとしょぼい感じがするし,全体にイマイチ感は高いけど,当時としてはそこそこだったのかなぁ,とは思います。ただ,「脳下垂体だけ抜き取られた死体」の描写はリアルです。

relicは,「遺物」って意味ですね。なお,「レリック ─遺物─」(2020)というホラー映画もありますね。本作とは無関係。

★★


2022年8月12日

1408号室

(原題:1408)(アメリカ,2007)

100分と短い映画ですが,ハラハラしました。原作はスティーブン・キングの短編ホラー『一四〇八号室』。怖い。けっこう怖かった。

「訳あり物件」「事故物件」的な,幽霊目撃・超常現象の噂のあるホテル(ホーンテッド・ホテル)に泊まった体験記で食べている作家のマイク・エンズリン(ジョン・キューザック)に,ある日,「1408号室には泊まるな」とだけ書いたドルフィンホテルの絵ハガキが送られてくる。俄然興味を持ったマイクは,何とかして泊まろうとするが,支配人(サミュエル・L・ジャクソン)は絶対に止めておけと言う。かつてこの部屋で,56名の人が自殺・事故・病死しているという・・・。しかし,その再三の忠告を押し切り,マイクは1408号室に足を踏み入れる。

★★★


ドーン・オブ・ザ・デッド

(原題:Dawn of the Dead)(アメリカ,2004)

ロメロの『ゾンビ』(Dawn of the Dead)のリメイク。監督はザック・スナイダー。今ではアメコミヒーローものを大量に監督・製作してる有名監督だけど,映画監督初作品はこれなのね。

前にも観ましたが,ゾンビ映画をいろいろ観ていて,頭の中で場面やストーリーがあれこれ混ざってしまってるので,「これって確かあれだよな」と確認するついでに,もう一度観ました。100分なので飽きさせない。展開がシャープで無駄がない。

ロメロの『ゾンビ』との決定的な違いは,ゾンビが全速力で走ってくる点。ゆっくりじわじわ襲ってくるロメロゾンビが人間の「貪欲さ」を表しているとすれば,スナイダーゾンビは「凶暴さ」を表している感じでしょうか。前者が餓鬼だとすれば,後者は鬼か悪魔か魔物か。

どっちが怖いかといえば,そりゃ,サバイバルという意味では全力で襲ってくるスナイダーゾンビの方が怖いし厄介だけど,死んでもまだショッピングモールに行こうとする人間の業の深さみたいなものを表現しているロメロゾンビの方がぞっとします。スナイダーゾンビはもはや怪物ですが,ロメロゾンビは「歩く死人」です。

★★★


2022年8月10日

唯幻論始末記

岸田秀 2019 いそっぷ社

私が大学で心理学を専攻しようと思ったきっかけは,1年生のときに読んだ岸田秀の『ものぐさ精神分析』である。1977年刊行(青土社)の本書はロングセラーであり,加筆して1982年に中公文庫で文庫化されている。私が読んだ記憶があるのは文庫版だったので,この1982年版だと思う。

私が大学に入学した年は,1990年。文庫版が出てから8年も経っている。でも確か,大学の書籍部に置いてあるのを見て,面白そうだと思って買った覚えがある。まぁ多分,早稲田の文学部の書籍部だから,偉大なる(?)先輩の有名なロングセラー本だから,置いてあったのかもしれない。

今はどうか知らないけれど,早稲田(一文)は当時,1年次の成績でもって2年次からの専攻が割り振られた。どうせ割り振られるなら希望したところに割り振られたいと思って,1年次は結構勉強した記憶がある。入学前は漠然と哲学をやりたいと思って,格好つけて哲学本を読んだりしてたが,言葉面を追うだけで本質的にはさっぱり意味が分からず,哲学の授業(確か,伴博という先生だった)も分かったような分からないようなそんな中,『ものぐさ精神分析』を読んで,「これだ!」と衝撃を受けた記憶がある。

でも,心理学って,精神分析じゃないことは,2年に進級してすぐに分かりました。なにせ,主流は,統計やったり実験やったりする学問なのです。これは偏に自分に責任がある。というのも,1年時に一般教養科目の「心理学」を取らなかったのだから。無謀にも,「心理学」を事前によく知ることなく,「精神分析」みたいなものだと思って選んだのです。

ただ,結果的に現在,心理学者をやっているので,あながち間違った選択ではなかったのだろうと思うが,とにかく,そういう意味で,岸田秀の『ものぐさ精神分析』は思い出深い一冊なのである。

その岸田秀の著書は,この『ものぐさ精神分析』から始まり,著書・翻訳書多数,そして本書が自身,人生最後の本としている。なので,これは読まないわけにはいかないと,積読(つんどく)しておいたものをようやく読みました。

これまでいろいろなところで書いていることの総まとめというか総仕上げというか,だから,どこかで読んだことのある話の繰り返しだったりしますが,まぁ,でも,岸田秀ってこういう感じだよな,岸田流精神分析,やっぱり面白いし,説得力あるよな,と思って引き込まれました。

大学で心理学をやろうと思っている人ややっている人は,できれば,精神分析は教養としてでも良いから概要は知っておいた方が良いし,逆に,精神分析を一切毛嫌いする「科学者」顔した心理学徒はあんまり信用できない。そういう人はなんだか余裕や遊びがないような気がする。残念ながら,余裕や遊びのない人が,良い研究をするとは到底思えない。

岸田流精神分析が精神分析の神髄だとは思いませんが,とりあえず,『ものぐさ精神分析』は読んでみても良いんじゃないかんと思います。本書はそのあとで。



2022年8月1日

ムーンフォール

(原題:Moonfall)(アメリカ・中国・イギリス・カナダ,2022)

ディザスターパニック映画。謎の物体によって,月はその軌道が変わり,楕円を描いてやがて地球に落下する。監督は,『インデペンデンス・デイ』『デイ・アフター・トゥモロー』のローランド・エメリッヒ。主人公の宇宙飛行士は,『死霊館』シリーズのエド・ウォーレン役の,パトリック・ウィルソン。

ディザスター映画って,話の粗筋自体(災害発生→滅亡危機→救済→解決)にはあまり変化や幅は利かせにくいだろうと思うので,どういう問題によるどれほどのどういう災害かがその妙味だと思います。加えて,そのときに,観客である私にとってどのくらいリアリティがあるか(別の星の話のような,あまりに現実離れした設定だとついていけない),また,災害が起きた時の人々の危機感と行動がどのくらい切実で真実味があるか,が重要かと思いまいした。

この映画は,発生した問題の背景は観ていただくとして(ここでは明かさず),いずれにせよ,トントンと話が進んでいって(主人公の家族問題なんかも,定型通り,織り交ぜながら),見せ場は月の接近による様々な影響とばかりにその災害の甚大さをリアルに描くことに注力しているためか,結果的に人々のリアリティというか切迫感というか,そういうハラハラ感はあんまりありませんでした。ディザスター映画ファンの人からしたらどういう評価なんだろう。

★★