2023年5月21日

9つの脳の不思議な物語

ヘレン・トムスン(著)仁木めぐみ(訳) 2019 文芸春秋

非常に稀な神経・精神症状を呈している患者自身に,どのような感じなのかをインタビューしたり,その患者の主治医やそうした症状の専門家にインタビューして,疾患の謎に迫る科学読み物。単に科学的な追求ではなく,その本人がどのようにその世界を生きているかに注目しているところが新鮮でした。オリバー・サックスとか,ヴィラヤヌル・ラマチャンドランとか,最近だと,『私はすでに死んでいる──ゆがんだ<自己>を生み出す脳』のアニル・アナンサワスーミーとか,その線の話です。面白かったです。勉強になりました。


2023年5月3日

ロスト・ボディ ~消失~

(原題:A perfect enemy)(スペイン/ドイツ/フランス,2020)

原題を直訳すれば,「完璧な敵」でしょうか。それだと本作の内容がイマイチよく分からないから「ロスト・ボディ~消失~」にしているわけですが(何をもってこのタイトルにしたかは,見終わる頃には分かりますが),それでもやっぱり,この邦題だとさらによく分からない(笑)。一体,どんな映画なのか,タイトルからはさっぱり。じゃ,どんなタイトルが良いかと言われればそれも難しいけど。

著名な建築家のジェレミーは,パリでの講演後にタクシーに乗るが,空港までの渋滞に巻き込まれる。途中,同じく空港に行くという若いアバズレ女を乗せてやることに。結果的に予定していたワルシャワ行の飛行機には乗れず,ラウンジで時間をつぶすことに。すると,その女がラウンジにやってきて,あれこれ絡んできて,離れない。でもって,勝手に色々話し出す。なんだこの変な女は。

この変な女のキモさが謎で,最初はなんだか恨みを持ったヤツにストーカーされる話かと思って,観るのを途中で止めようかと何度か思ったけど,最後まで観ることができました。嫌いではない話。

まぁだから,ものすごく特徴的なのはこの二十代のキモい女の存在なのであって,全編,基本的に,この女との空港と回想での二人劇なわけだから,やっぱり,タイトルは,この女にちなんだ方が良いでしょう。「空港女」とか,どうでしょう?(笑)邦題は,結局,種明かしっていうかネタバレっていうか核心っていうか,「ああ,そういうことね」という話なので,だからやっぱり良くないよね,タイトルにするのは。

ただしかし,なぜ「女」なのかね。「男」だと,絡んできた時点でケンカになっちゃうか警察に通報されるだけだからかね。若い女,ということで,ラウンジで絡んでくることを許容させている仕掛けになってるってことか。あと,なぜ「アバズレ」なのか。これもやっぱり,しつこく何度も絡んでくる必要があるから,まっとうな若い女性や淑女では駄目なんだね。でも,一見まともな人がラウンジで病的にしつこく絡んでくるのも,それはそれでキモいと思うけど。

一番最初の場面で,この女,自分でタクシーのドアを開けました。ここは,厳密さを追求するために,ジェレミーが開けないといけないと思う。惜しい。

★★


2023年5月2日

ウルフマン

(原題:The Wolfman)(アメリカ,2010)

ユニバーサル映画。「狼男」。主演は,ベニチオ・デル・トロ。この濃い顔,どこで見たっけなぁと思って検索してみましたが,『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』のDJぐらいでした。でも,一度観たら忘れられない濃さです。父親役は,アンソニー・ホプキンス。追いかける警部役は,『マトリックス』のヒューゴ・ウィービング。まぁ,話としては凡作。狼男への変身シーンも,結局,CGだから,何とでもなっちゃうし,それだけ何だか嘘くさいというか空々しいというか。ただ,殺戮場面は非常に生々しい。

やっぱり,狼男と言えば,僕らの年代だと,『狼男アメリカン』(アメリカ,1981)でしょう。あの特殊メイクのリアルさには感動しました。最後に流れるMECOの「ブルー・ムーン」は泣かせます。また観たいなぁ。

★★