2023年1月25日

キャメラを止めるな!

(原題:Coupez!/Final Cut)(フランス,2022)

上田慎一郎監督の『カメラを止めるな!』のリメイク。オリジナルと何か違うものが加わってるのかと期待して観ましたが,やっぱりオリジナル版のインパクトがありすぎて,あのアイディアを超えて面白いところはありませんでした。そういう意味で,オリジナルを尊重したリメイク。

★★


2023年1月24日

テネット

(原題:Tenet)(アメリカ,2020)

期待してようやく観たクリストファー・ノーランのパズル映画。しかし,どうなんでしょう,これ(笑)。『メメント』とか『インセプション』とか『インターステラー』は面白かったけど,これ,長いし,理屈がよく分からんし,説明のわりに辻褄が合っていないような気もするし,話が壮大なわりにものすごく個人的な悪だし。賛否両論あると思うよ。要するに,「逆行」がやりたかっただけなんじゃないかね。

理屈については「あんまり考えるな」って作中でも言ってるから,要するに,考えないで観てね,映像的な「逆行」アクションを楽しんでね,ってことなんだろうね,きっと。しかし,やっぱり,科学的物理的にナンセンスでも,作中世界では辻褄が合ってないとね。いや,もしかしたら辻褄は合ってるのかもしれないけれど,いろいろ考えるだけ疲れます。あんまり考えるなかれ。

★★


2023年1月22日

風刺画とジョークが描いたヒトラーの帝国

若林悠(著)芝健介(監修) 2020 現代書館

ナチスの台頭から第二次世界大戦までを,風刺画とジョークでなぞった本。風刺画は作者から掲載年まで正確に情報が明記されてますが,随所に出てくるジョークについては出所が不明。風刺画はリアルな絵であり現実に存在しているわけですが,ジョークってどこまで本当に当時そう言われていたのか,後世になって(つまり,現代に)作られたネタなのか,区別がつかず,なんとなくリアリティがない。だからむしろ,文頭や文中に挿入されてる「ジョーク」は邪魔でした。同著者の『風刺画が描いたJAPAN』は良かった。この本も,風刺画の解説部分は,ナチスやヒットラーのリアルを知る良い歴史資料になっていて良いと思いました。

プーチン・ロシアによるウクライナ侵攻が始まって間もなく1年ですが,隣国の領土を奪おうとするロシアの今を知る上で,戦前の日本がどうやって戦争に向かっていったか,ドイツがどうやって他国へ侵攻していったか,そのときロシア(ソ連)などのヨーロッパ諸国はどうだったかを垣間見るのは,良い手掛かりになると思いました。


2023年1月18日

マインドフルネスのはじめ方:今この瞬間とあなたの人生を取り戻すために

ジョン・カバットジン(著)鈴木孝信(訳) 2017 金剛出版

改めて勉強になりました。マインドフルネスは,実践こそが重要だから,実践また実践とただひたすらするわけですが,ときに,たまに,マインドフルネスや禅について書いた本を読むことで,改めて心新たに,つまり,「初心者の心になって」実践できるから良いと,つくづく思います。この本に限らず,ときどきやっぱり,読み直すことが,読むときの自分の局面の違いによって,違ったところにハタと心打たれたり,違ったことを連想したり,違った発見があったりして,新鮮な思いにかられます。

逆に,読んでみても,よく分からないところはよく分からない。全然響かない箇所もあるし,何を言っているのかさっぱり分からない部分もけっこうある。それは今の自分にそれを理解する準備が整っていないからだとも考えられます。ただなんとなくスルーしてしまう部分も,別のときに読めば,おお,と思える言葉や表現かもしれない。

言葉も人も出来事も,この世の中すべて,そういうものかもしれません。


2023年1月7日

精神科治療学 37巻7号

2022 星和書店

「精神科診療におけるたとえ話の効用」という特集だったので読みました。案の定,巻頭言で,トールネケの『メタファー:心理療法に「ことばの科学」を取り入れる』(星和書店)からの企画であることが書かれていた。出版社が同じでしたね。

精神科の臨床現場で語られる,たとえ話(メタファー)。それぞれ筆者(医師)の経験から育まれていて,なるほどと思えるメタファーを読むと,その疾患(とその治療課程)のニュアンスが少し読み取れて,勉強になりました。

かれこれもう20年以上前に,余語さん,サトケンさん,大平さん,河野さんと筆記開示(筆記療法)の研究を始め(嗚呼,あの頃は若かった!),最近また言語の重要性が,特に「構成感情理論」や「感情粒度」などからも高まってきて,改めて「ことば」のもつ力を認識し直しています。


2023年1月5日

ドクター・スリープ

(原題:Doctor Sleep)(アメリカ,2019)

『シャイニング』の続編。40年後のダニーの話。スティーブン・キングの原作小説『シャイニング』は1977年発表で,この『ドクター・スリープ』の原作小説は2013年。

映画『シャイニング』はキューブリックのオリジナリティが濃すぎて,原作とだいぶちがっていることにキングが怒り心頭,みたいなことがよく語られますが,今回の『ドクター・スリープ』は(キングの原作は読んでないから分からないけれど,ウィキを読む限り全体的には踏襲していて),映画『シャイニング』へのオマージュもたっぷりありつつ,これはこれで別の物語として,「シャイニング」をキング原作の通り正しく(?)描写していて,続編として非常に良かったです。

★★★★


2023年1月4日

LAMB/ラム

(原題:Lamb)(アイスランド・スウェーデン・ポーランド,2021)

ヤバい。ものすごく変な映画を観てしまった。シュールだわ。夢に出そう。

[追記(翌日)]ヤバい。頭から離れない。

★★★


2023年1月3日

守護教師

(原題:Ordinary People / The villagers)(韓国,2018)

2023年一本目は,マ・ドンソク兄貴の「守護教師」。

話は,とある田舎(?)の女子高校に新任体育教師として赴任してきたボクシングの元・東洋チャンピオン。正義感と腕っぷしだけはやたら強いが不器用。

この高校の生徒(スヨン)の一人が行方不明になっているのだが,学校も警察も「ただの家出」と取り合わない。親友のユジンが一人,チラシを配って捜索するが,高級キャバクラや暴力団,悪徳警官が関係しているようで,加えてなにやら変態美術教師も絡んでいる様子。徐々に解けていく謎。

英語の原題は,訳せば「普通の人々」「村人たち」でしょうか。いわゆる「田舎サスペンス」にマ兄貴のパンチ炸裂映画です。

★★★