ユヴァル・ノア・ハラリ(原案・脚本)ダヴィッド・ヴァンデルムーレン(脚本)ダニエル・カザナヴ(漫画)安原和見(訳) 2020 河出書房出版社
『サピエンス全史』の中の,人類(ホモ・サピエンス)がアフリカから出て世界中に広がるところまでを,分かりやすい漫画とセリフで解説したもの。『サピエンス全史』をそのままただ絵にしたわけではなく,ハラリ自身が登場して,いろいろな人や世界や時代を巡りながら解説をしていくスタイル。なので,『サピエンス全史』の内容をもう一度おさらいしつつ,ポイントを絞って分かりやすく語り直しているので,とても面白かった。
カラーだし,絵も良い味出してるし,ときにさりげなく皮肉も込められていたりして,漫画自体,面白い。「人類の誕生編」とあるので,きっと次回作もあるんだろうと思ってたら,「文明の正体編」がこの秋に出ましたね。早速買って読もう。
もちろん,『サピエンス全史』があまりにも良い内容だったものだから,当然,この漫画も良いだろうと思うのは早合点で,翻訳書は「訳者」がやっぱり半分は命です。翻訳者の日本語のセンスがイマイチだと,せっかくの良書も悪書に変わる。もちろん,悪書を良書にすることもあるだろうけど,そのケースは希でしょう。起こりうる可能性が高いのは,訳者が良書を悪書にしてしまうケースだと思います。
本書の日本語訳は,非常に良かった。一点の引っかかりもなかった。漫画のキャラクターにあった言葉を選んでいて,読みやすかった。日本語のセンスが良いのでしょう。人のことをどうのこうの言うのは簡単です。自分も,翻訳するときはそういう日本語選びを心がけたいものです。