2021年6月29日

ドニー・ダーコ

(原題:Donnie Darko)(アメリカ,2001)

変な映画を観てしまった。「ドニー・ダーコ」。ドニー・ダーコは,主人公の高校生の名前。映画は,高校生ドニーが山腹の道ばたで裸足・寝間着姿で起きるところから始まる。オープニングから奇妙奇天烈です。

ドニーはどうやら夢遊病のようであり,精神的な不安定さから,精神科医のカウンセリングも受け,薬も処方されている。夜な夜なある声に起こされて無意識に外へ出ると,不気味なウサギの着ぐるみをした「フランク」という男が現れ,世界の終わりまであと,「28日と6時間と42分と12秒」だと告げられる。

まったく目が離せませんでした。全体に奇妙ではありますが,まったく筋が通っていないわけではありません。この世の中は大人の都合と欺瞞ばかり。自分が狂気なのか世界が狂気なのか。色んな事が伏線(縁起)となって,ドニーを翻弄します。

世界が終わると告げられたドニーはやがて,タイム・トラベルに惹かれていきます。未来を知り,過去に戻るタイム・トラベル。28日後にどうなるのか。世界が終わる時まであと○○日,とカウントダウンされていくので,果たしてどうなるのか,結末はどうなるのか,すっかり目が離せませんでした。

★★★


2021年6月28日

ブレイド

(原題:Blade)(アメリカ,1998)

ちょっとスカッとしたアクション(何にも考えないで観ていられそうな映画)を久しぶりに見てみたいなと思って,ブレイドを観ました。ブレイドというキャラクター(ヒーロー)は知ってましたが,そういえば,ちゃんと映画を観たことなかったなと思ったので,ちゃんと最初から最後まで観ました。

アクションはキレがあって無駄がない。もっとアクションの尺を伸ばしても良いと思うぐらい。ストーリーは,まぁ,アクションを見せるために作ってるようなものでしょうか。深くはありません。

すでに「2」や「3」もありますが,きっと話を深めるというよりは,いかにブレイドのキレのよいアクションを深めるかで,シリーズ化してるんだろうなと予測。ウィズリー・スナイプスのしぐさや動きや決めポーズはかっこいい。

アクションが見たくなったときには,機会があったら「2」や「3」も見てみたいと思います。


JIDAIさんの新刊

BABジャパンから,JIDAIさんの新刊を送っていただきました。タイトルは,『再創造する天性の「動き」!』(BABジャパン,税込1540円)。

JIDAIさんについては,身体表現や身体技法やボディーワークの業界ではもはや説明の必要もないぐらいですが,ご存じでない方にご紹介すると,とにかく超絶的に「すごい人」です。世の中,「すごい人」というのがときどきいるわけですが,「すごい人」,あるいは達人や名人のような人は自身の感覚や努力を言語的に説明できないイメージがあったりするかもしれません。なぜなら,身体的な感覚は,究極的には言語で説明することを拒むというか,どれだけ精緻な言葉を使っても言葉で伝達しようとした時点で微妙にズレるからです。

JIDAIさんは天才ですが,しかし,努力の人でもあります。学生の頃,ひたすら黙々と練習に打ち込むJIDAIさんを見ていましたから,この人は天才的な努力家なのだと思うわけです。

そしてこうして世にJIDAIさんが望まれる理由は,その天才的な身体性を言葉とイラストを尽くして説明しようとするその姿勢だと思います(イラストはすべてJIDAIさん本人によるもの)。その辿り着いた身体観を少しでも他者に伝えようという熱い思い(本人は極めて物静かで温厚な人ですが)が,これまでの著書から伝わってきます。

もうかれこれ5年ほど前ですが(2016年),日本感情心理学会の年次大会にて,マイムの先輩後輩のよしみで,講演とワークショップをしていただきました。JIDAIさんの提唱する,「エモーショナル・ボディワーク」を,大会に参加された会員のみなさんと一緒にやりました。それは,いつになく(子どもの頃以来の?)新鮮な体験だったことを今も覚えています。

さて,今回の新刊『再創造する天性の「動き」!』のテーマは,「身体=感情」であり,これまでの著書よりも「エモーショナル・ボディーワーク」について多く書かれています。とりあえず,送ってもらったので早速,<宣伝>がてら書いていますが,これからゆっくり読ませていただきます。

みなさんも,身体や感情に興味関心がありましたら,こういう身体技法やボディワークの本も読んでみると良いかと思います。心理学の人は心理学の本しか,武術の人は武術の本しか読まなかったりするわけですが,こういう,違う分野や領域の本も読んでみると,ときに発見があろうかと思います。是非。


2021年6月22日

沖縄島建築:建物と暮らしの記録と記憶

岡本尚文・普久原朝充 2019 トゥーヴァージンズ

沖縄の建物は独特なわけですが,それがなぜなのか知りたくて買いました。その期待に十分応えてくれる本であるとともに,そこに住む人々の思いや,沖縄の歴史(特に昭和~現代にかけての,戦争や米軍との関わりの歴史)が垣間見える本でした。また一つ勉強になりました。そして,また沖縄に行ってみたくなりました。



好きにならずにいられない

(原題:Fusi / Virgin Mountain)(アイスランド/デンマーク,2015)

肥満でハゲてて髭ずらの40歳過ぎの中年男フーシ。図体はでかい割にオドオドしていて,同僚からもいじめられている。趣味は,ジオラマを使った戦争ごっこ。得意なものは,機械いじり(でかいけど手先は器用)。家ではしょっちゅうシリアルに牛乳をかけて喰い,おもちゃ屋でラジコン買って走らせている40代独身男。母親と暮らしている。

ただ,母親には彼氏がいて,二人がフーシをダンスに行かせる。家と職場の往復じゃ,出会いもなかろうということで,カントリーダンスの教室のレッスンチケットをプレゼントする。仕方なく教室に行くが,レッスンには加われず,駐車場でため息をついていると,吹雪で教室から帰れなくなった女性シェヴンに出会う。家まで乗せていってくれ,というわけ。

見た目もパッとしなくてモテないオタクな四十男が,女性に恋をして必死に奔走するお話。ハッピーエンドではないですし,そんな中でけなげさと不器用さが涙を誘いますが,空港で働きながら一度も飛行機に乗ったことのない男が,最後,飛行機に乗って旅立つ,その心境の変化と成長が心を打ちます。始終オドオドしているフーシが,最後の最後,少し笑みを浮かべるところが救いです。

なお,日本用の映画宣伝ポスターは,あんまり良くない。なんていうか,実際はもっと真面目な?落ち着いた映画です。決してコメディではありません。

★★


ザ・ファブル

(日本,2019)

今ちょうど,第2作目が上映中ということで,第1作の方を観ました。日本映画はあまり観ないのですが,岡田師範のジークンドーが観られるアクションコメディということで,気楽に観てみました。

原作は漫画のようなので,検索したら,原作漫画の主人公の顔の方がグッと来ます。こっちの方が良い。岡田師範はやっぱりジャニーズだから顔が整いすぎていて,もともと善良な人に見えてしまいます。漫画の方は,やっぱり殺し屋の非情さ・冷酷さが顔に滲み出ていて,そのギャップとして「殺さない」「普通に過ごす」設定が面白いのでしょう。

むしろ,この映画でやっぱりすごいなぁと思ったのは,柳楽優弥氏の演技です。その狂犬ヤクザっぷりがものすごく怖い,というか,狂ってる(としか思えない演技)。対して,仮面ライダーフォーゼ・福士蒼汰氏も悪役(殺し屋)で出ていましたが,狂気を演じている感じがしてイマイチ。

あと,映画冒頭のファブル(岡田師範)の大量暗殺場面で,白い線がヒュンヒュン出るの,あれ,やめておいた方が良かったんじゃん?たぶん,不評なんじゃないかなぁ,あれは(笑)。

というわけで,岡田師範の武術と柳楽氏の強烈な演技を観たい人は,楽しめると思います。


ブルー・リベンジ

(原題:Blue Ruin)(アメリカ/フランス,2013)

ビーチでホームレス生活をしている中年男ドワイド。ねぐらは青い古びた車。ある日,警察署に呼ばれて,知り合いの警官からこう告げられる。「10年ぶりにあの男が釈放される」。

原題を直訳すれば,「青い廃墟」でしょうか。この映画を通して,この青いボロ車を使い続けているから,たぶん,タイトルはこの車のことだと思います。しかし,この映画,原題タイトルやオープニングからは,いったいどういう映画なのか全くつかめないからか,邦題は「ブルー・リベンジ」つまり「青い復讐」となっています。

そう。この映画は復讐映画なのです。10年ぶりに釈放される男は,両親を殺したにっくき犯人。気の弱そうな主人公のドワイドは,復讐を果たそうと計画を練り始める。ただ,ここまでは映画のまだまだ冒頭部分。ここからいろいろと多難な道を突き進んでいきます。

ストーリーとしては複雑ではないですが,どうにも抜け出せない運命のような流れに主人公が翻弄される様子が描かれていて,それなりに面白いです。

★★


2021年6月15日

近現代日本の民間精神療法:不可視なエネルギーの諸相

栗田秀彦・塚田穂高・吉永進一(編)(2019)国書刊行会

ここでいう「精神療法」というのは,19世紀後半から20世紀前半(明治から第二次世界大戦終戦)にかけて発展・流行した「霊術・療術」のことです。系譜としては,呼吸法・催眠術・ニューソートなどが入り交じった諸技法であり,洋の東西を往復して混交していく様子がありありと伝わってきます。なるほどそういう歴史があったのか。

10編の論文と,このテーマに関わる人物史とその詳細な著作ガイドが載っていますので,研究書として非常に価値が高いです。このテーマに興味関心のある人,特に身体技法・心身技法をやっている人は,読んでおいた方が良いでしょう。私も非常に勉強になりました。

今でこそマインドフルネスとか瞑想とかが比較的一般にも浸透していますが,これを語る上では,我が国における大きな歴史的流れとして,この辺りの代替医療(非現代西洋医学的なアプローチ)の歴史も踏まえておいた方が良いと,改めて思いました。


第9地区

(原題:District 9)(アメリカ/ニュージーランド,2009)

だいたい宇宙人ものは,超高度な科学技術を備えた宇宙人が地球にやってきて,地球の軍隊や最新メカや特殊能力者なんかが,人類の運命を賭けて知恵と勇気を振り絞って戦う,というのが定番ですね。エイリアン=侵略者。

この映画はまず,ここから違います。やってきたのは南アフリカ共和国のヨハネスブルグ。ニューヨークやロンドンや東京ではない,ってところから(侵略にしては)すでに外している(と冒頭でディスられます)。しかも,ヨハネスブルグ上空に巨大な宇宙船でやってきた宇宙人たちは,何かの事故か不具合でもって全員栄養失調状態。人道的な判断から難民扱いにして,ヨハネスブルグ近郊を難民キャンプに指定。これが「第9地区」。ここに宇宙人たちは住むことになるわけだが,街に出ていろいろ悪さをしたり,面倒を起こしたりして,地球人(南アフリカ人)たちからは煙たがられる。

宇宙人の見た目は「エビ」。だから,「エビ」とディスられる。そんな中,犯罪の温床となっている第9地区を一掃するため,ヨハネスブルグからずっと遠い「第10地区」への移送計画が実行されることに。

主人公は,この移送計画の遂行を任された男。ただし,奥さんの父親のコネによる大抜擢であって,決して能力が評価されたわけではない。ただのおしゃべりの文化系事務系男が,ハードな移送計画を遂行しようと四苦八苦するが・・・。

異文化摩擦と人種差別,難民と人道支援,人間の欲望,そんな重いテーマをブラックジョークで描く分かりやすい映画ではありますが,宇宙人の造形や動きが非常によくできていて,違和感なくリアルに観ることができます。主人公も,本当に軽薄な男で,その軽薄さ故にしくじって,そこからとんでもなく大変な目に遭いますが,最後の最後は男気を見せます。

★★★


ボーダー 二つの世界

(原題:Border)(スウェーデン/デンマーク,2018)

ずっと観たいと思っていた映画。ようやく観ることができました。そして,期待した通りの,いや,それ以上の映画でした。

容姿が特徴的な女性ティーナ。彼女は,港の税関職員として働いている。異常に「鼻が効く」。文字通り,違法な持ち込みをしているかどうかを「匂いで察知できる」特殊な能力を活かし,摘発に貢献していた。特徴的な容姿,いわゆる醜女のために,蔑みにも耐えて過ごす,やや中年に差し掛かった孤独な女性。人を避けるように,自宅は森の奥深くにある。

寂しさを紛らわすために,一人の男性と暮らしている。居候と言えば聞こえは良いが,要するにヒモ男で,趣味のドッグショーに明け暮れている。それでも,いないよりはマシだから,住まわせているし,好き放題させている。

そんなある日,いつもと同じように税関業務に「鼻を効かせている」と,いつもと違う匂いがする。すると,自分となんとなく容姿の似た男性が税関を通る。果たしてこの男は誰なのか。

この映画は観て損はない。いや,観た方が良い。差別や偏見はもとより,価値観や常識,人類の歴史,人間の醜悪さと残酷さ,生と死,孤独,愛,自然など,色々と感じられると思います。映像も良いし,演技も良いし,展開も間延びしていない。男が現れることで揺れる主人公ティーナの心とその解放。悲しいけど暖かい話です。

★★★★


2021年6月9日

世界の心理学 50の名著

T・バトラー=ボートン(著)米谷敬一(訳) 2019 ディスカバー・トゥエンティワン

現代心理学に大きな影響を与えている,あるいは,心理学に関連して一般に広く売れている本を,著者の観点から50冊,紹介している本です。各本とも,著者の略歴,社会的な位置づけや評価,味噌を押さえた内容の解説,心理学的な位置づけや評価と,コンパクトにまとめられていて,飽きさせません。

要するにブックガイドなのですが,数ページでまとめるには難しいであろう本を,社会的学問的位置づけととともに上手にまとめられていると思います。600ページもある分厚い本ですが,読んでいてホント,飽きませんでした。

たぶん,日本語訳が良いのだと思います。誤字脱字はありませんでしたし,日本語としてもこなれていて,翻訳であることを忘れる,良い訳でした。訳書は本当に,訳者の力量が重要です。

なお,50冊を選んでいるわけですが,心理学における重要な本がたったの50冊であるわけはなく,あくまで著者の独断です。選んでいる基準は,上にも書きましたが,研究上大きな影響を与えている本か,ベストセラーなど一般に売れている本です。僕なら,今思いつくだけでも,アントニオ・ダマシオとか,ポール・エクマンとか,ジョン・カバット=ジンとかの本も入れても良いと思いますが,入ってません。

ざっと,有名どころの本をなぞるには,良い本です。

【追記】研究室の本棚を見ると,おや?同じようなタイトルの本が・・・。2008年に『世界の心理学 50の名著 エッセンスを学ぶ』というのが同社から出ていました。つまり,10数年前に同じものを買って読んでました(笑)。面白そうだと思う本は片っ端から買っているので,ときどきこういうことがありますね。中身を見ると,内容は同じですが,新しい方は紹介している本の並べ方を変えて,内容ごとにまとまりを作っていました。確かにこの方が読みやすいです。