2022年12月29日

皆殺し映画通信

柳下毅一郎 2014 カンゼン

有料Webマガジン「柳下毅一郎の皆殺し映画通信」の書籍版。「皆殺し」シリーズを読んでみたいと思って,やっぱり一番最初から読んだ方が良いかなと,律儀に1冊目から読み始めました。なので,まずはこれ,2013年の映画が対象です。今年の4月に「ちゃんと」9冊目が出ています。ということは,それが2021年の映画が対象となるので,今でも「ちゃんと」続いていて安心。なぜなら,「皆殺し」というだけあって,辛口批評。この柳下氏の批評に対する賛否両論もあろうから(というか,平凡な映画批評は,その映画を売るために,もっと肯定的だったりするからね),決して柳下氏の批評が世間一般に受け入れられるとは限らない。世間一般というのは,もっとぬるいでしょう。なので,こういう映画批評本が9冊目まで出ていることに,安心。世間も捨てたものではない。

しかし,仕事で映画を観るって大変だ。なにせ,ものすごくとんでもない映画もちゃんと「眠らず」に最後まで見届けなければいけないでしょう。僕のような素人の映画好きからすれば,あまりに下らなければ(観ている時間がもったいないので)途中で観るのを止めても良いわけですが,プロはそういうわけにはいかない。


2022年12月23日

庭仕事の神髄:老い・病・トラウマ・孤独を癒す庭

スー・スチュアート・スミス(著)和田佐規子(訳) 2021 築地書館

園芸(庭いじり,庭仕事)は心を癒す。植物という動かず語らない生き物との対話。マインドフルに没頭すること。草花の美しさや実のおいしさ。農耕や収穫といった人類としての原点への回帰。僕が庭をやるときに感じていたことが,ここに書いてありました。やっぱりね。

日本語訳がちょっとだけ読みにくい。これは自戒を込めて。こなれた読みやすい日本語に訳すのは難しいです。だからこそ,うまい翻訳者は,すごいなと改めて思いました。


2022年12月13日

風刺画が描いたJAPAN:世界が見た近代日本

若林悠 2021 国書刊行会

幕末・明治維新から第二次世界大戦(太平洋戦争)終結まで,世界各国で描かれた風刺画に登場する日本を追いつつ,当時の日本と世界の情勢(特に,日本が植民地化されることを恐れて,世界の列強に並ぼうと極端に軍事国家化していくのと,それを取り巻く諸外国の見方)がつぶさに解説されていて,読みごたえがあります。

特に,著者の若林氏は風刺画の研究家なので,歴史家・歴史学者が書くような専門的な文章ではなく,ときに皮肉のこもったユーモアも込められていて,読んでいて分かりやすかったです。

ちょうど今,ロシアがウクライナを侵略していますが,本書を読めば,日本も歩んできた侵略と戦争のリアリティを多少なりとも感じられます。

でも最近,また日本も敵基地攻撃能力とか反撃能力とか言いながら防衛費という名の軍事費を大幅に増やす算段を政府がしていますが,せっかくの憲法9条が泣いています。また嗤われるぞ。ヤメトケ,ヤメトケ。戦争反対。老子を読め。


2022年12月7日

オカルト化する日本の教育

原田実 2018 ちくま新書

「江戸しぐさ」と「親学」を中心とした,日本の教育界に広まってる疑似科学あるいはオカルト的なナショナリズムを丁寧に解説してます。


2022年12月2日

食の哲学

サラ・ウォース(著)永瀬聡子(訳) 2022 バジリコ

食に関する哲学的考察。味覚は、視覚や聴覚と違って身体的だ。食べてみないと分からない。


2022年11月21日

シン・ウルトラマン

(日本,2022)

早くもアマプラで配信。劇場で観て,配信で観て,内容がより理解できました。『シン・仮面ライダー』が早く観たい。2023年3月。

★★★★


2022年11月15日

ファイナル・デッド・ツアー

(原題:Uncle Peckerhead)(アメリカ,2020)

原題を直訳すれば,『ペッカーヘッドおじさん』。この方が良いだろう。『ファイナル・デッド・ツアー』だと「最後の死のツアー」だけど,本編そもそも,最後じゃなくて最初だぞ。

それに,『ファイナル・デッド〇〇〇』のホラーと言えば,『ファイナル・デスティネーション』シリーズでしょう。間違えます。あ,間違えるのを狙ってるのか。しかし,狙わなくてもいい佳作です。そのまま『ペッカーヘッドおじさん』の方が良い。

3人の売れない素人バンドが,どうしてもプロになりたくて,ツアーを組んで出発することに。しかし,肝心の車が借金の肩代わりに持っていかれてしまい,まずは車を探すことに。大きなバンの持ち主である初老の大男が,運転手として雇ってもらうことを条件に,一緒にツアーに出発することに。男の名前は「ペッカーヘッド(変わった人)」。「ペックと呼んでくれ」と,男。気さくである。良い人なのである。しかしこのペックおじさん,真夜中の12時になると,30分間だけ,人肉を食らう怪物と化す。ツアーバンドの運命やいかに!

★★★


2022年11月13日

ヒトラーを殺し,その後ビッグフットを殺した男

(原題:The man who killed Hitler and then the Bigfoot)(アメリカ,2018)

また観ました。やっぱり良いわ。

★★★★


伊藤真の刑法入門(第6版)

伊藤真 2017 日本評論社

入門シリーズの「法学入門」「憲法入門」「民法入門」そして「刑法入門」を読み終えました。刑法は,今年(2022年,令和4年)6月17日に一部改正されましたが,それは反映されていません。大きいのは,「拘禁刑」の創設でしょうか。改正前は,「懲役」と「禁錮」と別でしたがこれを一つにして,改正後は「拘禁刑」となりました。


2022年11月7日

杖道と空手

この1年半ぐらい,すっかり杖道に精を出しています。空手は膝に来ますが,杖道は来ないので,もっぱら杖道を修行しています。その杖道ですが,これまで空手で稽古してきた身体操作は大いに役立っていると感じています。

呼吸と締めと重心。これが空手の基本であり奥義です。というか,これはたぶん,武術すべての基本であり奥義でしょう。もちろん,杖道の先生方から見れば僕の杖道の技術は全くもって修行が足りないわけですが,稽古をしていて,自分なりに,つながっていると感じてやっています。つながっていると感じるというか,時に今自分が空手をしているのか杖道をしているのか分からなくなることがあります。ですから,空手と杖で全く途切れて別のことをしているというよりは,武術として究極的には一つの同じことをしている感覚です。

もちろん,徒手空拳か武器術かで違いますが,しかし,武具もまた身体の一部と化するわけで,杖道の稽古は,(糸東流)空手の形の分解組手と近いです。呼吸的な感覚はほぼ同じ。


身体の痛みと心

4回目のコロナのワクチンを打った翌日,一日,頭痛と筋肉痛・関節痛様の痛みと倦怠感でなんとも言えない気分でした。翌々日は少し良くなりました。

こういう痛みと倦怠感があると,何もする気が起きない。今回はモデルではなくてファイザーだったからか,副反応は比較的弱かったけれど,うっすらと(しかしそれなりに)痛い状態が続いていると,何もできない(していない)自分,あるいは,時を無駄に過ごしているような状態に,欝々とした気持ちになる。

身体の(健康)状態が心の(健康)状態に大いに関係している,というか,前者が後者の基盤になっていることは,いろいろな研究や理論や思想から分かっている。身体が健康でないと心は健康になりにくい。

だから,もし慢性的に痛みや倦怠感がある人は,きっとひどく抑うつ的になることは想像に難くない。もしこのコロナワクチン接種翌日のような状態がずっと続くと思うと,なんともいえない暗い気持ちになる。1日でこんなに暗澹たる気持ちになるのだから,慢性化したらさぞや気分は重たくなるにちがいない。


かくいう僕の普段はといえば,コロナワクチンの副反応とは別に,首や肩の痛みが慢性化している,というか,痛みのない日はない。ただ,耐えらえないほどの痛みとか,常時感じる痛みというほどではない。サロンパスを僧帽筋や首に貼って講義をしている僕の姿は,学生にはおなじみではないだろうか(いや,学生もオッサンのそんなところ,誰も気にしてないか)。

膝の痛み(特に左膝)は,だいぶ良くなった。膝皿のマッサージは良いと思う。レントゲンやスキャンでも特に問題(半月板損傷など)は発見されず,整形外科(でヒアルロン酸注入したり)とか整骨院(で電気通したり)とかリハビリ(でマッサージやストレッチングしたり)とかでいろいろとやってもなかなか良くならない方は,膝の皿をマッサージして柔らかくすると,歩くときや動くときに違和感が減るかもしれない。人それぞれ症状は違うので,これが絶対効く,というわけではないけど,試してみると良いかと思う。

なお,膝皿マッサージと,やはり大きいのは,足に合った「靴」である。ようやく自分の足に合った靴が見つかり,今,歩いていて違和感は全くない。もしかしたら,その方が大きいかもしれない。あと,グルコサミン・コンドロイチンの錠剤も飲んでる。10年来左膝の痛みに悩んできたけど,あれこれやって,だいぶ良くなった。うん。

ちなみに,長年やってきた空手や太極拳は膝に来ますが,杖道は膝が痛みません。今はすっかり杖道だけに精を出しています。やはり,中腰や屈伸した状態で姿勢を保つ空手や太極拳の場合は,自分の技術的な稚拙さもそうですが,体形や骨組みの個人差によって,痛みが出る人と出ない人がいるのではないかと思う。


頭痛もち(偏頭痛)の僕は,コロナワクチンの副反応の頭痛は,まぁ,慣れたものだといえば慣れたものだが(偏頭痛の痛みとまた違うけど),やっぱり,痛いものは痛い。あと,筋肉痛・関節痛と倦怠感は,なかなかつらい。重い痛みが慢性化している人の気持ちをちょっとだけ想像する日でした。

身体の健康が心の健康の基盤である。整えていきたい。

2022年11月6日

仮面ライダー BLACK SUN

 『仮面ライダー BLACK SUN』全10話,プライムビデオで観ました。

西島秀俊・中村倫也のW主演。観始めたらとりあえずどういう決着になるのが知りたくて,最後まで観てしまった。まぁまぁかな~。アマゾンズの方が良かったかなぁ~。キャラクター的に一番良かったのは,蝙蝠怪人(音尾琢真)です。総理大臣のルー大柴も良かった。




2022年11月5日

メタファー 心理療法に「ことばの科学」を取り入れる

ニコラス・トールネケ(著)武藤崇・大月友・坂野朝子(監訳) 2021 星和書店

メタファーが臨床でどう使われているか。臨床でメタファーがどう役立つか。メタファーを臨床にどう積極的に使うか。これを,行動分析やACT,特にその理論的背景である関係フレーム理論から紹介・解説している本。


2022年11月4日

伊藤真の民法入門(第7版)

伊藤真 2017 日本評論社

「伊藤真の入門シリーズ」の,「法学入門」「憲法入門」に続き,この「民法入門」を読みました。売買契約などでどういう権利や義務が発生するか,垣間見ることができました。本書の中でも書いているように,まずは最初に概要(全体像)を理解することが重要で,その後により詳しく勉強したい人は他の参考書や教科書に進むと良くて,この本は,僕のようなまったくの素人にとっては,非常に良い入門書だと思います。次は「刑法入門」を読みます。


2022年10月31日

アンホーリー 忌まわしき聖地

(原題:The Unholy)(アメリカ,2021)

生まれつき聴覚障害だったアリスが,ある日突然,話せるようになった。アリスは,「マリア様」の力だと言う。マリア様の声を伝えるのだと言う。その「奇跡」に,やがて人々が集まってくる。奇跡と認定されれば,そこは「聖地」となる。

★★



2022年10月29日

オセロ

1年ほど取り組んで2級までたどり着いた「将棋」ですが,最近はもうすっかり遠のきました,結局,息抜きやリフレッシュや気分転換のためにやる将棋への取り組みがストレスになっては,まさしく本末転倒です。要は,かなりの集中力とエネルギーを使うことと,勝ち負けへのこだわりが捨てきれないことが原因であり,マインドフルネスの良い訓練だと思っていましたが,いやいやもう全然,凡夫の自分には過酷すぎる修行でした(笑)。

一方,最近はまっているのが「オセロ」です。オセロは,将棋にくらべて展開のバリエーションはそれほど多くありません。しかし,セオリーや技はあるので,奥は深く,上級者は基本的に強い。ただ,上級者にまったく勝てないわけではありません。それは,オセロというゲームのシンプルさにあると思います。

8×8のマス目に交互に石を置いていき,挟んだら裏返す。ただこれだけのルールですが,オーソドックスな攻めや受けのセオリーもあれば,駆け引きもあって,面白い。そして何より,マスが埋まれば必ず終わります。僕がやっているのは「オセロクエスト」ですが,互いに持ち時間5分で,時間切れはほぼなく,ゲーム時間はだいたい5~6分です。

こういうゲームだからなのか,将棋のときのあのストレスが,オセロをするときは,ありません。シンプルだけど,いや,シンプルゆえに奥が深い,というのが良いのだと思っています。たぶん,将棋の場合,いかに先まで読むかが要になってくるので,頭の中で複雑な駒の動きのシミュレーションをかなりしなくてはいけない一方,オセロももちろん読みは必要だけれど,やることは白黒の石の挟み方なので枝分かれの数や読む先の手数は,将棋ほど多くなく,そのときそのときで判断していく感じなのではないかと思うのです。だから,頭がそんなに疲れない。ストレスにならない。

でもって,ゲームの性質上,展開がうまくいくとたまに上級者にも勝つことがあるので(偶然や幸運もありますが),気分が良い。負けたら悔しいし残念だと思いますが,毎回が5分そこそこの勝負なので,すぐ次にチャレンジできます。将棋は,長いゲームや考え抜いたゲームをした果てに,一回のミスで負けると,ほんと悔しい(笑)。

上級者に勝つことがたまにある一方で,自分が逆の立場になることもあるので,オセロってのはそういうものだと納得できます。つまり,たまに予想外に勝ったり負けたりする,そういう性質のゲームなのです。でも,それなりにセオリーがあるから,基本的には上級者が勝つことが多い(実力に差があれば,偶然勝つことは少ないけど)。世の中には運や偶然性の要素の強いゲームもあり,そういうのが好きな人もいますが,オセロは基本的には経験と技術の勝負である一方,展開によっては負けたり勝ったりする,そういうゲームだと思います。

将棋は,個人的には2~1級の壁のようなものがあって,2級以上はほぼ実力通りの結果になってしまうから,棋力を上げないと全く勝てる気がしません。つまり,この先は,1級から初段を狙うためにギアを上げて努力する人と,できない人(努力しないから勝てない人)の分かれ目なんじゃないかと思います。僕は明らかに後者。

というわけで,シンプルゆえに奥の深いオセロに最近はまっています。気分転換,息抜き,リフレッシュに,ちょうどよい。結局,「初段」を狙うとか,そういう「目的性」をもつことが良くないのだろう(それがストレスの原因となる)ということは,マインドフルネス的にも,また,仏教的にも言えるわけですが,なかなか抜けきれませんでした。その点,オセロはあんまりそういう気分(段級位への強いこだわり)にならないのはなぜか。

日本オセロ連盟が認定する段級位制度はあるものの,そもそもその外部的な段級位へのこだわりがあまり喚起されないからかもしれません。なぜ喚起されないのか。そういう級段位制度が一般に知られていないからでしょうか。ただ一方で,単純に,白黒がひっくりかえるそのシンプルなゲーム性そのものの楽しさが全面に出ているからでしょうか。将棋の場合は,戦場の最前線を模していますが,オセロはもう少し俯瞰的な地形的戦略(陣地取り)を模している気がします(囲碁に近い?)。そこも,将棋の方が1対1の勝ち負けにこだわる,つまり,私と他者の上下関係(強弱関係)に強くこだわってしまう一因なのではないかと思われます。この「なぜ」については,またいずれ考察したくなったら考察します。



伊藤真の憲法入門(第七版)

伊藤真 2022 日本評論社

中学高校の社会,それから大学1年生のときに取った「日本国憲法」以来,「憲法」について久しぶりに学んだ。いろいろと目から鱗でした。知っているようでその本当の(?)意味はよく分かっていないことがいかに多いか。表面的に字面を読むだけでは,その意味を自分の既存の知識だけで読むために,いかに中途半端で偏っていて足りていないことが,つまり,憲法が正しく分からないことが,よく分かりました。

最初からきっちりした教科書を読むよりも,まずはこの伊藤真の入門シリーズを選んで正解なような気がしています。このシリーズは,講義を採録(文字化)して読み物として整えている「講義再現版」なので,講義を聴いているようで読みやすい。


2022年10月18日

伊藤真の法学入門[補訂版]

伊藤真 2017 日本評論社

「法学検定」のベーシック(基礎)コースを受検してみようかと思い,まずは分かりやすそうな本から読み始めてみました。勉強になることが多くて,面白いです。

受検を思い立った理由としては,本務校で,公認心理師科目の「司法・犯罪心理学」を担当しているのですが,本校には法学部もありまして,心理の学生に加えて,法学部の学生にもこの科目の受講を開放しています。そのため毎年,受講生の半分ぐらいは法学部の学生です。それで,専門の心理学的なことを話すにしても,基本的な法学的なことをある程度分かっていたり,背景的な知識や関連する知識をある程度知っていたりする方が,説得力が増すだろうと思いまして,それで「法学検定」を受けてみようかと思ったわけです。

しかし,法学検定の一番簡単なコースである「ベーシックコース」は,<法学部1~2年生程度>というのが基準ですから,法学部でもない私からすれば,実際,かなり難易度が高い。それは,毎年発売されている「問題集」を見て思いました。もちろん,常識的に考えれば正解できる問題もあることはありますが,専門的なことはやっぱり,学んでいなければ分からないものばかり。そりゃそうだ。

そこでまずは,読みやすい入門書や教科書を一通り読んでから問題集に取り組もうと思いました。それで見つけたのがこれ。この「伊藤真の●●入門シリーズ」です。アマゾンのレビューでも,高評価(好評価)が多かったので買いましたが,確かに分かりやすい。

法学検定のベーシックコースは,「法学入門」「憲法」「民法」「刑法」の4分野からなります。まったくのド素人の,法学部でも何でもない私が1年間勉強して受かったらすごいだろうと思うので,飽きずに1年間勉強できれば挑戦します。途中で飽きるかもしれませんが(笑)。


2022年10月16日

牛首村

(日本,2021)

清水崇監督の「村」シリーズ第三弾。心霊スポットにまつわる怪。「犬鳴村」「樹海村」に続く「牛首村」。怖いか怖くないかといえば,怖くないかなぁ。でも,たぶん観ないだろうと思っていつつも結局観たのだから,心の奥では期待してたわけで,その期待がなければもしかしたら十分怖いかもしれない。

で,結局,最初の「犬鳴村」が一番怖いような気がする。シリーズの2つ目や3つ目は,難しいね。期待があるからだろうね。

というか,主演のkoki,さん,父親はご存じキムタクですが,もう,キムタクそっくりです。観ている間,それがずっと気になって気になって。

★★



2022年10月10日

機動戦士ガンダム THE ORIGIN Ⅰ~Ⅵ

(日本,2015~2018)

全6話。シャアの物語。1年戦争の前まで。漫画の『THE ORIGIN』のたしか中ほどの部分だったかな。

★★★



2022年10月8日

どうしても頑張れない人たち

宮口幸治 2021 新潮新書

「ケーキの切れない非行少年たち」の続編。頑張ろうとしてるけど,どうしても頑張れない人たちを,どう支援していくか。



2022年9月28日

錯覚の科学

菊池聡 2020 放送大学教材

菊池先生の,放送大学の科目「錯覚の科学」の教科書。知覚や認知の錯覚から社会心理学的なバイアスまで含めて(さらには絵画芸術との関わりまで含めて),幅広く「錯覚」を解説。菊池先生の研究と本は昔から好きで,何冊か読みましたが,これもたしか,戸田山先生の『教養の書』で紹介されてたから購入したような記憶が。いずれにせよ,これもまたとても勉強になりました。



2022年9月26日

遠野物語remix

京極夏彦・柳田國男 2014 角川ソフィア文庫

京極夏彦が,柳田國男『遠野物語』の中の話を並べ替えて再構成し,(原本をできるだけなぞりつつも京極風に)現代語に変えた,まさにリミックス版。これを読めば,遠野を舞台とする『遠巷説百物語』が『遠野物語』をベースにしていることが分かって,さらにまた楽しい。単行本は2013年発行で,この文庫版には柳田の『遠野物語』も付録でそのまま付いている。



2022年9月21日

ピーターラビットの謎:キリスト教図像学への招待

益田朋幸 (1997) 東京書籍

戸田山先生の『教養の書』で紹介されていたので読みました。西洋美術史の中の「キリスト教図像学」について,楽しく知ることができました。知らないと分からないことがある(知っていると分かって面白いことがある)ことが分かる,非常に良い例だと思いました。

ピーターラビットは見たことはありますが,読んだことはなく,キャラクターだけ知ってました。この本は,シリーズ最初の絵本である『ピーターラビットのおはなし』に出てくる挿絵の分析を通して,西洋美術,特にビザンティン美術の特徴について解説しています。




2022年9月20日

ホラーマニア VS 5人のシリアルキラー

(原題:Vicious Fun)(カナダ,2020)

人体破壊場面がグロいけど,定番ホラーのパロディでもあって,面白かった。痛快でテンポも良いから,もう一回観たくなる。

マニアックなホラー雑誌のライターをしているジョエルは,鯨飲して寝込んでしまい,本物のシリアルキラーたちの会合に紛れ込んでしまった。適当にごまかそうとするがすぐにバレて,あわや殺されそうになるが。

★★★



FREAKS フリークス 能力者たち

(原題:Freaks)(カナダ/アメリカ,2018)

『Xメン』シリーズもそうですが,「ミュータント」とか「フリーク」とか,超能力を持つ者が一般の人々から恐れられ迫害されるという設定の近未来ものは多い。見たことのあるものでいえば,『PUSH 光と闇の能力者』は,超能力描写とそのバトルの描写が良い。『CODE 8』では,能力者は社会的弱者か反社会的勢力。今回の『フリークス』も,なんとかばれないように隠れて生きる父と娘の話。超能力の描写や設定いずれもグッド。

★★★


2022年9月14日

バッド・ヘアー

(原題:Bad Hair)(アメリカ,2020)

時は1989年。直毛に憧れる黒人女性のアナ。黒人音楽専門のチャンネルを製作しているテレビ局に勤めているが,白人の上司がやってきて番組構成を刷新することに。番組の司会をやりたいと願っていたアナは自分の企画を伝えるが,ウィッグをつけてまるで白人のような黒人女性の上司からも,「サラサラヘア」にすることを暗に迫られる。従わないと会社をクビになる。意を決して紹介された美容室にいき,縮毛矯正ではなく,地肌に直接縫い込むキツいウィッグを「施術」される。

人種と文化。見た目と中身。都市と民俗。美と醜。ホラー映画ですが,いろいろと考えさせられるところはあります。

★★


「トランプ信者」潜入一年:私の目の前で民主主義が死んだ

横田増生 2022 小学館

端から見ればドナルド・トランプとその信者の妄想的な陰謀論は空虚で滑稽であり,分かりやすいほどに虚構的(フェイク,バーチャル)なのですが,しかし,アメリカ合衆国という国はその虚構が現実となっていた(そして今も,そのままなっている)ことを思うと,ものすごく奇妙であるとともにそら恐ろしく感じます。経済力・軍事力ともに大国ゆえに,そのトップが独裁的な陰謀論者となれば,世界規模での平和と安全が揺らぎます。ウクライナでは現実に,隣国である大国のトップの独裁(妄想?)により,その平和と安全が侵害されています。

トランプに話を戻せば,我々日本人からすれば,なぜこれほどまでに明らかな虚偽の陰謀論を語り続ける彼を支持する信者が多数(それもアメリカを二部するほどの多数)いるのか,不思議でなりません。アメリカ人は陰謀論に親和性が高いことは研究者の知見の引用として本書にも書かれていますが(キリスト教的背景と合理主義的背景によって,自分にとっての不合理さを解決する妙案として「闇の政府」などの陰謀論に帰結する),それはそうとして,そもそも「なぜトランプはアメリカ人(の多く)に人気があるのか」の秘密が,本書を読むと分かります。

特には,第七章が重要です。ここを読めば,人気の源泉が分かります。トランプ人気への根本的な疑問が解消されます。ああ,なるほど,だから人気があるのねと,納得できます。あの変わった髪型の攻撃的な暴走老人であるトランプがなぜこれほどまでに根強い人気があるのか,日本人にはイマイチぴんとこないのはなぜなのかの理由が分かります。そもそもの始まりにおいて,長い年月かけて,かなり脚色された虚構を現実だと思い込んでしまっている人が,アメリカ人の中に多数いる,ということですね。これは相当に根深い。

トランプ信者をただの暴徒や狂信者とみなすのではなく(つまり,個人の特性に帰すのではなく),様々なメディア(虚構)による影響がいかに人間の認知や感情を変容させるか,またそうした虚構にすがりたくなる原動力となっている不平や不満がいかに醸造蓄積されているのか,についての壮大な社会実験場となってしまっているアメリカ合衆国という国を,文化的社会的心理的に分析していく必要があるかもしれません。

トランプ禍は,これからも当面続きそうですから,アメリカという国がどこに向かっていくのか,対岸の火事とは思わないようにしつつ,観察を続けたいと思います。


2022年9月13日

WE GO ON ─死霊の証明─

(原題:We Go On)(アメリカ,2016)

死後の世界は存在するのか。幼いころに父親を亡くしたマイルズは,バス以外の乗り物に乗れないし,一人で外も歩けない。自分で車を運転して事故を起こす夢を何度も見る。とにかく死を連想させるものが怖い。そこで新聞広告に「自分に,死後の世界があることを証明することができたら3万ドルの報奨を与える」と出す。

マイルズの母親役は,けっこう年取ってるけど,ずいぶん綺麗な人だなぁと思ったら,この人,昔,「スーパーマンⅢ・電子の要塞」の恋人役やってた人なのね。アネット・オトゥール。

話としては,まぁまぁ悪くなかったけど,ただ1点だけ,決定的な凡ミス。それが気になって頭から放れなくて。あそこであれがなければなぁ・・・。もったいない。話の筋として,ものすごく重要な,肝心なところであの凡ミスは痛い。編集してて気が付かなかったのかなぁ。

★★


2022年9月6日

私はあなたのニグロではない

(原題:I am Not Your Negro)(アメリカ/フランス/ベルギー/スイス,2016)

ジェームズ・ボールドウィン(1924-1987)の『Remenber This House』を基にしたドキュメンタリー映画。ナレーションは,サミュエル・L・ジャクソン。公民権運動指導者のメドガー・エバース,マルコムX,マーティン・ルーサー・キングについての回想を通して,アメリカにおける黒人差別問題の本質を見せる映画。

★★★


将棋は面倒くさいゲームである

将棋は面倒くさいゲームである。

とりあえず,将棋を始めて,日本将棋連盟公認の2級まではたどり着きました。初段まではと思って,何冊も定跡書を読んだり,棋譜並べをしたり,詰め将棋をしたりして,それなりに指せるようにはなったと思います。

しかし,将棋は勝負のゲーム。勝ち負けを競うボードゲームなので,勝つときもあれば,必ず負けます。これまで何度もこのブログに書いてきましたが,やっぱり負けると悔しい。勝ち負けよりもいまここの駒のやりとりに集中する(ことを楽しむ)マインドフルネスの良い練習だと思うけれど,結局,負けるとトホホな気分になります(笑)。

特に「トホホ」な気分になるのは,集中しきれずに自らのミスで自滅するとき。そう,将棋は集中力がものすごく必要なゲームなのです。ちょっとしたスキマ時間や仕事の合間の気分転換にぼんやりしたいときなどに,直感的にサクサクやるような反射神経重視のゲームではない,極めて高度な認知的処理を要する,ものすご~くエネルギーを使うゲームなのです。

(これはたぶん,勝ちたい,あるいは,負けるとしてもミスはしたくない,という思いが強いからだと思います)

さて勝負するぞと,気合を入れて盤に(タブレットやスマホに)臨み,一手一手集中して指す。最上手を指そうと思って考えすぎると時間切れになるので,残り時間との(つまり自分との)勝負でもある。これは疲れます。気分転換にと思って,あるいは,合間の時間つぶしにと思ってやるゲームではありません。そうやってぼんやり集中せずにやれば,だいたいミスをして負けます。負けると気分は当然良くない。気分転換に不愉快になるという,最悪の循環。時間を無駄遣いした気分。

ちゃんとやろうとすればエネルギーをかなり必要とし,一方,適当にやればミスを連発して負ける。これじゃ,右に行っても左に行ってもなんだかよろしくない。だから,このところ,将棋は確かに娯楽であり単なるゲームなんだけど,これってあんまり生半可にやるもんじゃないような,そんな気がしてきました。

世の中,将棋愛好家はたくさんいます(600万人ぐらいらしい!)。みなさん,いろんな気分で将棋を指しているんだろうと思いますが,その中でも,高段者(もちろんアマ)の人って,本当にすごいと思います。確かに僕は将棋に不向きで,世の中もっと簡単に昇級昇段していくのかもしれませんが,どうやったら一体,初段になるのか,まったく想像がつきません。なぜなら,相当な集中力を相当な時間注ぐための時間とエネルギーが必要であると,つくづく思うからです。

人間,得意不得意はあるでしょうね。何事も,それなりの努力にそれなりのポジティブなフィードバックがあることで,継続できるし,さらなる工夫や努力を重ねることができます。なかなかフィードバックがなかったり,フィードバックがネガティブであれば,やがてその行為から離れていくのが自然です。なんだってそうだと思います。

このとき,「それなりの努力」として注ぐエネルギーが,現状の様々な活動の中でどのくらいを占めるか,の問題でもあります。必要なエネルギーの分量は個人の力量(得意不得意)と比例関係にあるでしょう。プロでない限り,誰しも仕事やそのほかの活動がある中で,それに注げるエネルギーは限られているわけです。将棋は,その限度を超えるような気がする。少なくとも自分の場合は。

つまり,要するに,最近改めて「将棋って,面白んだけど,面倒くさいゲームだなぁ」と思い始めています。その面倒くささって何だろうなぁと思って,上記の通り,分析してみました。

「だったら,遊びだと思って,適当にやればいいじゃん,ゲームなんだし,単なる暇つぶしでしょ」というご助言があるとすれば,それはまさにその通り。でもね,繰り返しますが,適当にやるとミスをして負けるんですよ(笑)。面白くないんですね,勝敗を競うゲームだけに。負けを見込んでやるゲームって,やる意味ありますかね。


このように,面倒くさいゲームなのですが,ではなぜエネルギーを要するかというと,当然ながら,将棋は盤上の駒の展開がものすごく複雑だからです。だからこそ,様々な囲いや戦型が考案されているのであって,その戦い方もいろいろです。その割に,自分ぐらいのレベルだと,まだまだどうしても固定的な(つまり,得意な)囲いや戦型でしか勝負できず,ついワンパターンになりがちです。ならば,定跡書を読んだり棋譜並べをしてもっと研究すればいいじゃん,新しい戦型を覚えればいいじゃん,となりますが,結局,そういう努力をするために,またさらに時間と労力がかかります。

あと,スポーツと一緒で,数日間やらないだけで勘が鈍ります。それは自分が年を取ったからかもしれないですが,展開や読みは,常日頃(つまり毎日それなりに)やっていないと,それこそ上達は見込めません。ここまでやってきたのだからと思って,なんとなく離れにくいのも(コンコルド効果!),こりゃ面倒くさいゲームだなと思う一因です。

要するに,深すぎるんスよ,将棋って。深すぎ。


ならば,気分転換にちょうど良いゲームってないかなと思って,最近,オセロを始めました。オセロも奥が深いと思いますが,オセロの良さは,マスが埋まれば必ず終わるし(時間が読める),やってみる限り定跡も将棋ほど複雑ではないしょう(きっと)。適当に直感的な打ち方をしてもそれなりに楽しめるし,集中して打てば展開によっては上級者にも勝てる場合もありそう(まぁ,相当にうまい相手にはそんなうまくはいかないと思いますが)。

将棋でうんうん悩むよりも,いっそ,オセロに鞍替えした方が良いんじゃないの?そんな風に感じております。

でも,まぁ,好きこそものの上手なれ,って言いますからね。高段者の人は,やっぱり,心底好きなんでしょうね~,このゲームが。僕ももちろん将棋は好きですが,それほどじゃないってことなのかもしれません。好きであることとエネルギーを注ぐことって,比例してるでしょうからね。

追記:オセロもやっぱり,ある程度のところまで行くとなかなか勝てません。というか,やっぱりオセロも奥が深いわ。



2022年9月2日

教養のグローバル・ヒストリー

北村厚 2018 ミネルヴァ書房

戸田山先生の『教養の書』で紹介されていた本書。副題は,「大人のための世界史入門」。読んで感動しました。自分が知ってる断片的な世界史の知識(それも,けっこうあいまいな断片的知識)が,グローバル・ネットワークという観点から一つにまとまっていく面白さ。ほほう,なるほど,そういうことか,ははん,そういう風につながるのね,これはこれと関係があったのか,などなど発見多数。

カバーにはこう書いてある。

「高校世界史Bの教科書にある内容をもとに,地域や文化をつなぐネットワークを俯瞰したグローバル・ヒストリーの通史。日本史,西洋史,東洋史の枠組みを突破し,世界中が結びあう歴史を学ぶ。地図や図版を多数収録,大人が学び直すための世界史入門」

まさにこの通りです。今の高校は「歴史総合」という科目になって,こういうグローバルな歴史学習が当たり前の時代になっているようですが,30~40年前の自分が中学や高校のときに習った歴史に関する拙い知識が新たな視点と新たな情報で結びついていく快感は,なかなかのものなので,今時の中学生や高校生がとってもうらやましい。こうやって教わってたら,もうちょっと歴史が面白いと感じられたかもなぁ。


エクストロ

(原題:Xtro)(イギリス,1983)

変な映画を観てしまった。夢に出てきそう。いろいろと気持ち悪いし,グロいし,不気味だし。エイリアン的なもの,ゾンビ的なもの,超能力的なもの,なんかいろいろてんこ盛り。

★★


サマリタン

(原題:Samaritan)(アメリカ,2022)

清掃員のスミスじいさん(シルベスター・スタローン)は,実は死んだとされているスーパーヒーローなのではないか?と勘繰る少年サム。ヒーローの復活を願うサムは,しつこくまとわりつく。

スタローンのアクションもキレがあって良い。

★★★


2022年8月28日

100の思考実験:あなたはどこまで考えらえれるか

ジュリアン・バジーニ(著)向井和美(訳) 2012 紀伊国屋書店

哲学・倫理学・論理学のさまざまな思考実験が100個。おなか一杯,読み応えあり。どれも考えさせられる。100個全部楽しめました。




2022年8月15日

レリック

(原題:The Relic)(アメリカ,1997)

ブラジルからの貨物船が漂流しているところを発見。乗組員は一人もいないと思いきや,全員死体となって船倉の床下に沈んでいた。一方,夜の博物館で,脳下垂体を抜き取られた警備員の死体が見つかる。

一度どこかで観たか,なんとなく聞き覚えのあるタイトルでしたが,さて,どんな映画だったかまったく思い出せず,観ました。ああ,こういう映画か。見覚えはない。まぁ,今から見れば,造形も想像の域を超えていないし,CGもちょっとしょぼい感じがするし,全体にイマイチ感は高いけど,当時としてはそこそこだったのかなぁ,とは思います。ただ,「脳下垂体だけ抜き取られた死体」の描写はリアルです。

relicは,「遺物」って意味ですね。なお,「レリック ─遺物─」(2020)というホラー映画もありますね。本作とは無関係。

★★


2022年8月12日

1408号室

(原題:1408)(アメリカ,2007)

100分と短い映画ですが,ハラハラしました。原作はスティーブン・キングの短編ホラー『一四〇八号室』。怖い。けっこう怖かった。

「訳あり物件」「事故物件」的な,幽霊目撃・超常現象の噂のあるホテル(ホーンテッド・ホテル)に泊まった体験記で食べている作家のマイク・エンズリン(ジョン・キューザック)に,ある日,「1408号室には泊まるな」とだけ書いたドルフィンホテルの絵ハガキが送られてくる。俄然興味を持ったマイクは,何とかして泊まろうとするが,支配人(サミュエル・L・ジャクソン)は絶対に止めておけと言う。かつてこの部屋で,56名の人が自殺・事故・病死しているという・・・。しかし,その再三の忠告を押し切り,マイクは1408号室に足を踏み入れる。

★★★


ドーン・オブ・ザ・デッド

(原題:Dawn of the Dead)(アメリカ,2004)

ロメロの『ゾンビ』(Dawn of the Dead)のリメイク。監督はザック・スナイダー。今ではアメコミヒーローものを大量に監督・製作してる有名監督だけど,映画監督初作品はこれなのね。

前にも観ましたが,ゾンビ映画をいろいろ観ていて,頭の中で場面やストーリーがあれこれ混ざってしまってるので,「これって確かあれだよな」と確認するついでに,もう一度観ました。100分なので飽きさせない。展開がシャープで無駄がない。

ロメロの『ゾンビ』との決定的な違いは,ゾンビが全速力で走ってくる点。ゆっくりじわじわ襲ってくるロメロゾンビが人間の「貪欲さ」を表しているとすれば,スナイダーゾンビは「凶暴さ」を表している感じでしょうか。前者が餓鬼だとすれば,後者は鬼か悪魔か魔物か。

どっちが怖いかといえば,そりゃ,サバイバルという意味では全力で襲ってくるスナイダーゾンビの方が怖いし厄介だけど,死んでもまだショッピングモールに行こうとする人間の業の深さみたいなものを表現しているロメロゾンビの方がぞっとします。スナイダーゾンビはもはや怪物ですが,ロメロゾンビは「歩く死人」です。

★★★


2022年8月10日

唯幻論始末記

岸田秀 2019 いそっぷ社

私が大学で心理学を専攻しようと思ったきっかけは,1年生のときに読んだ岸田秀の『ものぐさ精神分析』である。1977年刊行(青土社)の本書はロングセラーであり,加筆して1982年に中公文庫で文庫化されている。私が読んだ記憶があるのは文庫版だったので,この1982年版だと思う。

私が大学に入学した年は,1990年。文庫版が出てから8年も経っている。でも確か,大学の書籍部に置いてあるのを見て,面白そうだと思って買った覚えがある。まぁ多分,早稲田の文学部の書籍部だから,偉大なる(?)先輩の有名なロングセラー本だから,置いてあったのかもしれない。

今はどうか知らないけれど,早稲田(一文)は当時,1年次の成績でもって2年次からの専攻が割り振られた。どうせ割り振られるなら希望したところに割り振られたいと思って,1年次は結構勉強した記憶がある。入学前は漠然と哲学をやりたいと思って,格好つけて哲学本を読んだりしてたが,言葉面を追うだけで本質的にはさっぱり意味が分からず,哲学の授業(確か,伴博という先生だった)も分かったような分からないようなそんな中,『ものぐさ精神分析』を読んで,「これだ!」と衝撃を受けた記憶がある。

でも,心理学って,精神分析じゃないことは,2年に進級してすぐに分かりました。なにせ,主流は,統計やったり実験やったりする学問なのです。これは偏に自分に責任がある。というのも,1年時に一般教養科目の「心理学」を取らなかったのだから。無謀にも,「心理学」を事前によく知ることなく,「精神分析」みたいなものだと思って選んだのです。

ただ,結果的に現在,心理学者をやっているので,あながち間違った選択ではなかったのだろうと思うが,とにかく,そういう意味で,岸田秀の『ものぐさ精神分析』は思い出深い一冊なのである。

その岸田秀の著書は,この『ものぐさ精神分析』から始まり,著書・翻訳書多数,そして本書が自身,人生最後の本としている。なので,これは読まないわけにはいかないと,積読(つんどく)しておいたものをようやく読みました。

これまでいろいろなところで書いていることの総まとめというか総仕上げというか,だから,どこかで読んだことのある話の繰り返しだったりしますが,まぁ,でも,岸田秀ってこういう感じだよな,岸田流精神分析,やっぱり面白いし,説得力あるよな,と思って引き込まれました。

大学で心理学をやろうと思っている人ややっている人は,できれば,精神分析は教養としてでも良いから概要は知っておいた方が良いし,逆に,精神分析を一切毛嫌いする「科学者」顔した心理学徒はあんまり信用できない。そういう人はなんだか余裕や遊びがないような気がする。残念ながら,余裕や遊びのない人が,良い研究をするとは到底思えない。

岸田流精神分析が精神分析の神髄だとは思いませんが,とりあえず,『ものぐさ精神分析』は読んでみても良いんじゃないかんと思います。本書はそのあとで。



2022年8月1日

ムーンフォール

(原題:Moonfall)(アメリカ・中国・イギリス・カナダ,2022)

ディザスターパニック映画。謎の物体によって,月はその軌道が変わり,楕円を描いてやがて地球に落下する。監督は,『インデペンデンス・デイ』『デイ・アフター・トゥモロー』のローランド・エメリッヒ。主人公の宇宙飛行士は,『死霊館』シリーズのエド・ウォーレン役の,パトリック・ウィルソン。

ディザスター映画って,話の粗筋自体(災害発生→滅亡危機→救済→解決)にはあまり変化や幅は利かせにくいだろうと思うので,どういう問題によるどれほどのどういう災害かがその妙味だと思います。加えて,そのときに,観客である私にとってどのくらいリアリティがあるか(別の星の話のような,あまりに現実離れした設定だとついていけない),また,災害が起きた時の人々の危機感と行動がどのくらい切実で真実味があるか,が重要かと思いまいした。

この映画は,発生した問題の背景は観ていただくとして(ここでは明かさず),いずれにせよ,トントンと話が進んでいって(主人公の家族問題なんかも,定型通り,織り交ぜながら),見せ場は月の接近による様々な影響とばかりにその災害の甚大さをリアルに描くことに注力しているためか,結果的に人々のリアリティというか切迫感というか,そういうハラハラ感はあんまりありませんでした。ディザスター映画ファンの人からしたらどういう評価なんだろう。

★★



2022年7月31日

タクシー運転手:約束は海を越えて

なんとなくまた観てしまった。光州事件の話だから悲惨な話なのですが,泣ける映画です。やっぱりソン・ガンホは良い。そしてユ・ヘジンがまた良い味出しています。

韓国映画,良いよね。前にも書きましたが,邦画の場合は,日本の俳優がドラマやCMやバラエティに出すぎていて,映画に入り込みにくいのかもしれません。その点,外国映画は出ている俳優が映画だけでしか観たことがない分,物語に入り込みやすい(ような気がします)。

加えて,韓国の場合,近年のK-POPの質の高さからして,エンターテイメント業界の質が高い。K-POPのミュージックビデオ,特にダンスとか歌唱力とか演出とか,圧倒的だもんね。

★★★★


ドラキュラZERO

(原題:Doracula Untold)(アメリカ,2014)

15世紀のワラキア公国の君主ヴラド3世。「串刺し公」の名で知られるヴラドは,攻め入るオスマン帝国軍から国を守るため,自ら「牙の山」に住む魔物から闇の力を手に入れる。

いらゆるブラム・ストーカーの『ドラキュラ』に登場する吸血鬼ドラキュラ伯爵のモデルとなった実在の人物だが,その史実と小説をミックスした話。続編も作ろうと思えば作れる終わり方になってます。で,やっぱり,2の話はあるみたいです。

★★



2022年7月29日

将棋とマインドフルネス

将棋は,マインドフルネスを練習する良い材料になるなぁと,このところつくづく感じています。いや,マインドフルネスを練習する手段ではなく,マインドフルに将棋をすると楽しい,という方が正しいですね。

将棋の対局前,対局中,対局後というのは,いろんなことを思ったり感じたりします。そして,その思考や感情に揺れまくります。引っ張られまくります。これといかに距離を保ちながら対局に臨めるか。思考や感情に囚われずに,次に何を指すかを考えて実行する。

勝ちたい(負けたくない)と思った瞬間に,焦ってミスをする。ミスをしたら腐ってますます悪手を指してしまう。だから,勝ち負けに囚われずに,いかに今その瞬間において自分が考えられうる最善手を選択できるか。

ミスして負けた時は心底悔しいけれど,最善手を尽くして負けた時は案外悔しくない。それは明らかに相手が自分を上回っていたから。そういう場合は,「そうか,そう来るか」「そうか,そういうときはそう受けるのか」「そうか,そういう手があったか」「そうか,そういうときはそうすると良いのか」という気づきがある。だから,負けても悔しくない(いや,多少は悔しいけど:笑)。

なので,いかにマインドフルに指すかが,将棋というゲームを楽しめるかどうかを左右する重要なポイントだと言えます。そんな風に最近思っています。

「負けたらくやしい」ので「負けたくないから対局したくない」と思う時期がありました。ネット将棋の場合,負けたらレーティングや勝率・達成率も下がります。だから,どうしても負けたくない。勝たないといつまでも昇級しないし。だからつい,「勝ちたい」という思いが強くなりすぎてしまいます。

でも,そもそも,お前は昇級することが目的なのか,それとも将棋をする(楽しむ)ことが目的なのか,どっちなんだ!?ああん?まぁ,確かに将棋を楽しむことが目的なんだけれどもさ,やっぱり昇級昇段もしたいじゃないですか・・・。

しかし,あるとき思いました。「負けてもともと」だと。すると,対局前に「負けるかも」というネガティブな予測(心配)が湧かなくなりました。「負けたくない」のならあえて「負けてもともと」だと思って対局することが,バランスとしてちょうどよいのかもしれません。その方が流れに背いていないからでしょうか。

流れに抵抗せず,流れのままに。そういう,中立的な,ニュートラルな気持ちで臨めば,おのずと集中し,盤面全体を観察することができ,ミスも減り,現状の棋力でもって最善手を指せる,そんな気がしています。


2022年7月23日

「おばけ」と「ことば」のあやしいはなし

京極夏彦 (2021) 文芸春秋

京極の講演集。「妖怪」「幽霊」「怪談」「おばけ」の話,概念と言語の話です。<語彙は解像度である>ということで,次のように述べています。まさに最近注目されている「感情粒度」(=感情語彙力)と一致しています。また,構成感情論のリサ・フェルドマン=バレットも同様のことを述べています。


「言葉のバリエーションが豊富であれば,より気持ちを細かく表現できます。語彙が多ければ,自分の気持ちを相手にもっと正確に伝えられる可能性が高くなります。」

「語彙は多ければ多いほど人間関係も潤滑になるし,自分の視野も広がるし,世界も広がるんです。そのためには何をするのが一番いいでしょうか。それはもちろん本を読むことです。」

「私たち人間は,言葉と文字という驚くべき発明によって,自分の頭の中に世界を取り込み,取り込んだ世界を概念に置き換えることで編集し,世界を再構成する能力を獲得したんですね。語彙を増やすということは,取り込む際の,また出力する際の解像度を上げるということです。」


また,「心」は,概念として「ある」けれども実体としては「ない」点で,「妖怪」と同じ,なんて話もしています。まさにその通りですね。



2022年7月18日

燃えよ剣

(日本,2020)

司馬遼太郎の『燃えよ剣』原作の映画。映画化・ドラマ化が何度もされている。本作は新選組副長・土方歳三を岡田准一が演ずる。原作は読んでないので何とも言えないといえば何とも言えないのですが,まぁ,全体に悪くはないけど,セリフがなんて言ってるのかイマイチよく聞こえませんでした。自分の耳が遠くなったのかもしれん。京極夏彦の『ヒトごろし』が映画化されたら面白いかも。

★★



2022年7月16日

ウィリーズ・ワンダーランド

(原題:Willy’s Wonderland)(アメリカ,2020)

田舎道でパンクして立ち往生しているところに,運よく自動車修理のレッカー車が来て修理してくれることに。しかし,現金しか受け付けない。カードしか持っていない男は,あるところでのアルバイトを勧められる。それはかつての遊園地「ウィリーズ・ワンダーランド」。遊園地を再開したいオーナーが言うには,一晩そこで掃除をしたら,翌日修理した車を返してくれるとのこと。他に選択肢もないのでその約束に応じた男は,ウィリーズ・ワンダーランドのTシャツに着替えて,もくもくと掃除を始める。・・・と,おもむろにキャラクターのロボット人形が動き出す!

ああ,観てしまった。これは癖になる。ニコラス・ケイジ炸裂。ホラー映画だけど,ただのホラーではありません。

【追記】翌日また観てしまった。

★★★



2022年7月11日

フロッグ

(原題:I see you)(イギリス,2019)

いやいやいや,久しぶりにゾッとする映画を観ました。これは全く読めなかった。二人の少年が行方不明になる事件が起こる。担当となった刑事のグレッグは,相棒のスピッツとともに捜査を開始するが,二人が解決した15年前の同様の手口の連続誘拐事件を思い出す。しかし,犯人は逮捕されて刑務所にいるはず。するとほどなくして,グレッグの自宅で不可解なことが起こり出す。テレビが突然ついて事件を報道する番組が流れたり,不在の時にいないはずの「娘」が修理屋を家に招き入れていたり,突然レコードが鳴ったり,クロークに閉じ込められたり・・・,壁に飾ってある写真が少しずつ消えていったり・・・。

刑事とその家庭,ぎくしゃくする夫婦仲,妻と息子の不仲,原因は妻のかつての不倫・・・。しかし,途中で急展開する。あれ,なんだこれは?どういうこと?話が突然輻輳し始める。しかし,混線していたもつれが少しずつ解けていく。ああ?そういうこと!?うへぇ。げげげ。

サスペンス映画として,とても出来が良いと思いました。邦題の「フロッグ」の意味は,途中で分かります。

★★★



2022年7月10日

ふだん使いの言語学:「ことばの基礎力」を鍛えるヒント

川添愛 (2021) 新潮選書

川添氏の『言語学バーリトゥード ラウンド1』は面白かった。この本は,理論言語学の観点から現代日本語におけるディスコミュニケーション,誤解曲解,間違い勘違いを取り上げ,どうすればそれに気づくか,どうすればうまく運用できるか,などを分かりやすく書いたもの。これも面白かった。

『言語学バーリトゥード』のラウンド2を期待してますし,できればプロレスに関する本も期待しています。しかし川添氏は多才です。小説も書いてますし,AIに関する本も書いてます。今度,小説やAI本も読んでみようと思います。



2022年7月6日

アルカディア

(原題:The Endless)(アメリカ,2017)

10年前,山奥でコミューン生活を送っているカルト集団「キャンプ・アルカディア」から脱出した兄弟が,再びキャンプを訪れる。10年ぶりに訪れて再会したかつての仲間は,質素だが十分な食事と穏やかな時間の中で,楽しそうに暮らしていた。

キャンプを脱出した兄弟は,人間関係も仕事もうまく行かず,脱カルトプログラムのカウンセリングを受け続けている。兄のジャスティンは我慢強く日々生活しているが,弟のアーロンはキャンプにいたころを美化して帰りたがっている。そんなとき,古い型のビデオテープが郵送されてくる。そこには,かつての仲間が映っていた。帰りたくない兄と帰りたい弟。1日だけという理由で帰ることにした兄弟は,キャンプで次々と奇妙な体験をする。

監督は,主人公兄弟のアーロン・ムアヘッドとジャスティン・ベンソン(本名が役名になってますね)。”田舎のカルト集団”だから,いわゆる「田舎ホラー映画」だろうと思って観始めましたが,狂信的なカルト集団や古い慣習に縛られた村人たちが襲ってくるような,ありがちなスプラッタ・ホラーではありません。一見の価値あり。

「アルカディア」とは,ギリシャ南部のペロポネソス半島中央にある地方の名称で(現在は県名らしい),いわゆる「理想郷」の代名詞ですね。

★★★



2022年6月30日

将棋2級

「NHK将棋講座」の「次の一手」に5か月間応募して,将棋連盟公認の2級取得することができました。前回の5か月間で5級,今回の5か月間で2級。将棋を始めてどのくらい経ったかもうよく分かりませんが,たぶん,1年以上は経ってます。ようやく2級にたどり着きました。現在,「将棋ウォーズ」で2級,「将棋クエスト」で5級なので,実力的にも棋力は2~3級ぐらいですと自称しても構わないのではないかなぁと,そう思っています。どうでしょう?

まぁ,でも,「将棋クエスト」は級位者にすでに強い人たくさんいるし(「ウォーズ」じゃ段位者でしょう,って強さの人,いますよ),「将棋倶楽部24」なんてもう級位者がめちゃくちゃ強いので(「クエスト」や「ウォーズ」じゃ高段者クラス),とにかくネット将棋で段位もってる人なんて,恐ろしいほど強い雲の上の人たちです(なお,「百鍛将棋」は簡単に昇段してしまうのでまったく参考になりません)。

レジャー白書2021によれば,将棋人口は530万人(囲碁人口は180万人)らしいので,そりゃもう,強い人がわんさといるわけですね。現在の日本の人口が1億2493万人らしいので,単純に計算して人口の4%が将棋やってることになります。なんと25人に一人!ざっくり見積もって杖道人口が2万人と言われてるので,えらい違いです。そりゃそうか。

とりあえず将棋連盟公認の初段が目標。「将棋ウォーズ」は将棋連盟公認なので段級位がもらえます。なので「クエスト」で修業しつつ,今後は「ウォーズ」で初段を目指そうかと思っています。初段までまだ道のりは長いですが,「負けてもともと」と思って,日々,精進しております。なりたいな~初段。



人はなぜ宇宙人に誘拐されるのか?:自我を形作る「意識」と「無意識」の並列システム

エリエザー・J・スタンバーグ(著)水野涼(訳) 2017 竹書房

「目の見えない人は夢で何を”見る”のか?」「ゾンビは車で通勤できるのか?」「起きていないことを思い出すことはできるのか?」「人はなぜ宇宙人に誘拐されるのか?」「統合失調症患者にはなぜ声が聞こえるのか?」「催眠術で人を殺させることはできるのか?」などなど,突飛な,しかし,非常に興味をそそる<謎>を設定して,そこから人間の意識と脳の関係について探る,非常にエキサイティングな本です。

他にもいくつか章があるのですが,一連の流れの中で章と章の問がつながっていたり展開していたりして,単にテーマがオムニバス的に並んでいるだけではない,流れの面白さもあって,とても読みやすいです。

翻訳の日本語も非常にこなれていて,奇妙な直訳調の文章もなく,読みやすかったです。翻訳論として,原語に忠実に訳すか,翻訳する言語に近づけて訳すかは,議論があるところですが(どちらが優れているとか劣っているとかではなく),自分が訳すときは原語のニュアンスを残しつつこなれた訳を目指そうとする折衷派(といえば聞こえが良いが,要するにどっちつかず)。でも,読者の立場だとこなれた日本語を求めてしまう自己矛盾。

脳は,思考や記憶などの認知的な過程において,材料に欠落があると,適当に見繕って物語を構築してしまう。そんな「都合の良く」「うまいことやろうとする」脳の巧妙さと健気さに触れることができます。



2022年6月20日

ガキ帝国

(日本,1981)

1967年(昭和42年)大阪。ケンカに明け暮れる少年たち。島田紳助・松本竜介主演。井筒和幸監督の代表作。有名な作品なので,どんな感じの映画なのか観てみたくて,ようやく観ました。