2022年7月31日

タクシー運転手:約束は海を越えて

なんとなくまた観てしまった。光州事件の話だから悲惨な話なのですが,泣ける映画です。やっぱりソン・ガンホは良い。そしてユ・ヘジンがまた良い味出しています。

韓国映画,良いよね。前にも書きましたが,邦画の場合は,日本の俳優がドラマやCMやバラエティに出すぎていて,映画に入り込みにくいのかもしれません。その点,外国映画は出ている俳優が映画だけでしか観たことがない分,物語に入り込みやすい(ような気がします)。

加えて,韓国の場合,近年のK-POPの質の高さからして,エンターテイメント業界の質が高い。K-POPのミュージックビデオ,特にダンスとか歌唱力とか演出とか,圧倒的だもんね。

★★★★


ドラキュラZERO

(原題:Doracula Untold)(アメリカ,2014)

15世紀のワラキア公国の君主ヴラド3世。「串刺し公」の名で知られるヴラドは,攻め入るオスマン帝国軍から国を守るため,自ら「牙の山」に住む魔物から闇の力を手に入れる。

いらゆるブラム・ストーカーの『ドラキュラ』に登場する吸血鬼ドラキュラ伯爵のモデルとなった実在の人物だが,その史実と小説をミックスした話。続編も作ろうと思えば作れる終わり方になってます。で,やっぱり,2の話はあるみたいです。

★★



2022年7月29日

将棋とマインドフルネス

将棋は,マインドフルネスを練習する良い材料になるなぁと,このところつくづく感じています。いや,マインドフルネスを練習する手段ではなく,マインドフルに将棋をすると楽しい,という方が正しいですね。

将棋の対局前,対局中,対局後というのは,いろんなことを思ったり感じたりします。そして,その思考や感情に揺れまくります。引っ張られまくります。これといかに距離を保ちながら対局に臨めるか。思考や感情に囚われずに,次に何を指すかを考えて実行する。

勝ちたい(負けたくない)と思った瞬間に,焦ってミスをする。ミスをしたら腐ってますます悪手を指してしまう。だから,勝ち負けに囚われずに,いかに今その瞬間において自分が考えられうる最善手を選択できるか。

ミスして負けた時は心底悔しいけれど,最善手を尽くして負けた時は案外悔しくない。それは明らかに相手が自分を上回っていたから。そういう場合は,「そうか,そう来るか」「そうか,そういうときはそう受けるのか」「そうか,そういう手があったか」「そうか,そういうときはそうすると良いのか」という気づきがある。だから,負けても悔しくない(いや,多少は悔しいけど:笑)。

なので,いかにマインドフルに指すかが,将棋というゲームを楽しめるかどうかを左右する重要なポイントだと言えます。そんな風に最近思っています。

「負けたらくやしい」ので「負けたくないから対局したくない」と思う時期がありました。ネット将棋の場合,負けたらレーティングや勝率・達成率も下がります。だから,どうしても負けたくない。勝たないといつまでも昇級しないし。だからつい,「勝ちたい」という思いが強くなりすぎてしまいます。

でも,そもそも,お前は昇級することが目的なのか,それとも将棋をする(楽しむ)ことが目的なのか,どっちなんだ!?ああん?まぁ,確かに将棋を楽しむことが目的なんだけれどもさ,やっぱり昇級昇段もしたいじゃないですか・・・。

しかし,あるとき思いました。「負けてもともと」だと。すると,対局前に「負けるかも」というネガティブな予測(心配)が湧かなくなりました。「負けたくない」のならあえて「負けてもともと」だと思って対局することが,バランスとしてちょうどよいのかもしれません。その方が流れに背いていないからでしょうか。

流れに抵抗せず,流れのままに。そういう,中立的な,ニュートラルな気持ちで臨めば,おのずと集中し,盤面全体を観察することができ,ミスも減り,現状の棋力でもって最善手を指せる,そんな気がしています。


2022年7月23日

「おばけ」と「ことば」のあやしいはなし

京極夏彦 (2021) 文芸春秋

京極の講演集。「妖怪」「幽霊」「怪談」「おばけ」の話,概念と言語の話です。<語彙は解像度である>ということで,次のように述べています。まさに最近注目されている「感情粒度」(=感情語彙力)と一致しています。また,構成感情論のリサ・フェルドマン=バレットも同様のことを述べています。


「言葉のバリエーションが豊富であれば,より気持ちを細かく表現できます。語彙が多ければ,自分の気持ちを相手にもっと正確に伝えられる可能性が高くなります。」

「語彙は多ければ多いほど人間関係も潤滑になるし,自分の視野も広がるし,世界も広がるんです。そのためには何をするのが一番いいでしょうか。それはもちろん本を読むことです。」

「私たち人間は,言葉と文字という驚くべき発明によって,自分の頭の中に世界を取り込み,取り込んだ世界を概念に置き換えることで編集し,世界を再構成する能力を獲得したんですね。語彙を増やすということは,取り込む際の,また出力する際の解像度を上げるということです。」


また,「心」は,概念として「ある」けれども実体としては「ない」点で,「妖怪」と同じ,なんて話もしています。まさにその通りですね。



2022年7月18日

燃えよ剣

(日本,2020)

司馬遼太郎の『燃えよ剣』原作の映画。映画化・ドラマ化が何度もされている。本作は新選組副長・土方歳三を岡田准一が演ずる。原作は読んでないので何とも言えないといえば何とも言えないのですが,まぁ,全体に悪くはないけど,セリフがなんて言ってるのかイマイチよく聞こえませんでした。自分の耳が遠くなったのかもしれん。京極夏彦の『ヒトごろし』が映画化されたら面白いかも。

★★



2022年7月16日

ウィリーズ・ワンダーランド

(原題:Willy’s Wonderland)(アメリカ,2020)

田舎道でパンクして立ち往生しているところに,運よく自動車修理のレッカー車が来て修理してくれることに。しかし,現金しか受け付けない。カードしか持っていない男は,あるところでのアルバイトを勧められる。それはかつての遊園地「ウィリーズ・ワンダーランド」。遊園地を再開したいオーナーが言うには,一晩そこで掃除をしたら,翌日修理した車を返してくれるとのこと。他に選択肢もないのでその約束に応じた男は,ウィリーズ・ワンダーランドのTシャツに着替えて,もくもくと掃除を始める。・・・と,おもむろにキャラクターのロボット人形が動き出す!

ああ,観てしまった。これは癖になる。ニコラス・ケイジ炸裂。ホラー映画だけど,ただのホラーではありません。

【追記】翌日また観てしまった。

★★★



2022年7月11日

フロッグ

(原題:I see you)(イギリス,2019)

いやいやいや,久しぶりにゾッとする映画を観ました。これは全く読めなかった。二人の少年が行方不明になる事件が起こる。担当となった刑事のグレッグは,相棒のスピッツとともに捜査を開始するが,二人が解決した15年前の同様の手口の連続誘拐事件を思い出す。しかし,犯人は逮捕されて刑務所にいるはず。するとほどなくして,グレッグの自宅で不可解なことが起こり出す。テレビが突然ついて事件を報道する番組が流れたり,不在の時にいないはずの「娘」が修理屋を家に招き入れていたり,突然レコードが鳴ったり,クロークに閉じ込められたり・・・,壁に飾ってある写真が少しずつ消えていったり・・・。

刑事とその家庭,ぎくしゃくする夫婦仲,妻と息子の不仲,原因は妻のかつての不倫・・・。しかし,途中で急展開する。あれ,なんだこれは?どういうこと?話が突然輻輳し始める。しかし,混線していたもつれが少しずつ解けていく。ああ?そういうこと!?うへぇ。げげげ。

サスペンス映画として,とても出来が良いと思いました。邦題の「フロッグ」の意味は,途中で分かります。

★★★



2022年7月10日

ふだん使いの言語学:「ことばの基礎力」を鍛えるヒント

川添愛 (2021) 新潮選書

川添氏の『言語学バーリトゥード ラウンド1』は面白かった。この本は,理論言語学の観点から現代日本語におけるディスコミュニケーション,誤解曲解,間違い勘違いを取り上げ,どうすればそれに気づくか,どうすればうまく運用できるか,などを分かりやすく書いたもの。これも面白かった。

『言語学バーリトゥード』のラウンド2を期待してますし,できればプロレスに関する本も期待しています。しかし川添氏は多才です。小説も書いてますし,AIに関する本も書いてます。今度,小説やAI本も読んでみようと思います。



2022年7月6日

アルカディア

(原題:The Endless)(アメリカ,2017)

10年前,山奥でコミューン生活を送っているカルト集団「キャンプ・アルカディア」から脱出した兄弟が,再びキャンプを訪れる。10年ぶりに訪れて再会したかつての仲間は,質素だが十分な食事と穏やかな時間の中で,楽しそうに暮らしていた。

キャンプを脱出した兄弟は,人間関係も仕事もうまく行かず,脱カルトプログラムのカウンセリングを受け続けている。兄のジャスティンは我慢強く日々生活しているが,弟のアーロンはキャンプにいたころを美化して帰りたがっている。そんなとき,古い型のビデオテープが郵送されてくる。そこには,かつての仲間が映っていた。帰りたくない兄と帰りたい弟。1日だけという理由で帰ることにした兄弟は,キャンプで次々と奇妙な体験をする。

監督は,主人公兄弟のアーロン・ムアヘッドとジャスティン・ベンソン(本名が役名になってますね)。”田舎のカルト集団”だから,いわゆる「田舎ホラー映画」だろうと思って観始めましたが,狂信的なカルト集団や古い慣習に縛られた村人たちが襲ってくるような,ありがちなスプラッタ・ホラーではありません。一見の価値あり。

「アルカディア」とは,ギリシャ南部のペロポネソス半島中央にある地方の名称で(現在は県名らしい),いわゆる「理想郷」の代名詞ですね。

★★★