2022年12月29日

皆殺し映画通信

柳下毅一郎 2014 カンゼン

有料Webマガジン「柳下毅一郎の皆殺し映画通信」の書籍版。「皆殺し」シリーズを読んでみたいと思って,やっぱり一番最初から読んだ方が良いかなと,律儀に1冊目から読み始めました。なので,まずはこれ,2013年の映画が対象です。今年の4月に「ちゃんと」9冊目が出ています。ということは,それが2021年の映画が対象となるので,今でも「ちゃんと」続いていて安心。なぜなら,「皆殺し」というだけあって,辛口批評。この柳下氏の批評に対する賛否両論もあろうから(というか,平凡な映画批評は,その映画を売るために,もっと肯定的だったりするからね),決して柳下氏の批評が世間一般に受け入れられるとは限らない。世間一般というのは,もっとぬるいでしょう。なので,こういう映画批評本が9冊目まで出ていることに,安心。世間も捨てたものではない。

しかし,仕事で映画を観るって大変だ。なにせ,ものすごくとんでもない映画もちゃんと「眠らず」に最後まで見届けなければいけないでしょう。僕のような素人の映画好きからすれば,あまりに下らなければ(観ている時間がもったいないので)途中で観るのを止めても良いわけですが,プロはそういうわけにはいかない。


2022年12月23日

庭仕事の神髄:老い・病・トラウマ・孤独を癒す庭

スー・スチュアート・スミス(著)和田佐規子(訳) 2021 築地書館

園芸(庭いじり,庭仕事)は心を癒す。植物という動かず語らない生き物との対話。マインドフルに没頭すること。草花の美しさや実のおいしさ。農耕や収穫といった人類としての原点への回帰。僕が庭をやるときに感じていたことが,ここに書いてありました。やっぱりね。

日本語訳がちょっとだけ読みにくい。これは自戒を込めて。こなれた読みやすい日本語に訳すのは難しいです。だからこそ,うまい翻訳者は,すごいなと改めて思いました。


2022年12月13日

風刺画が描いたJAPAN:世界が見た近代日本

若林悠 2021 国書刊行会

幕末・明治維新から第二次世界大戦(太平洋戦争)終結まで,世界各国で描かれた風刺画に登場する日本を追いつつ,当時の日本と世界の情勢(特に,日本が植民地化されることを恐れて,世界の列強に並ぼうと極端に軍事国家化していくのと,それを取り巻く諸外国の見方)がつぶさに解説されていて,読みごたえがあります。

特に,著者の若林氏は風刺画の研究家なので,歴史家・歴史学者が書くような専門的な文章ではなく,ときに皮肉のこもったユーモアも込められていて,読んでいて分かりやすかったです。

ちょうど今,ロシアがウクライナを侵略していますが,本書を読めば,日本も歩んできた侵略と戦争のリアリティを多少なりとも感じられます。

でも最近,また日本も敵基地攻撃能力とか反撃能力とか言いながら防衛費という名の軍事費を大幅に増やす算段を政府がしていますが,せっかくの憲法9条が泣いています。また嗤われるぞ。ヤメトケ,ヤメトケ。戦争反対。老子を読め。


2022年12月7日

オカルト化する日本の教育

原田実 2018 ちくま新書

「江戸しぐさ」と「親学」を中心とした,日本の教育界に広まってる疑似科学あるいはオカルト的なナショナリズムを丁寧に解説してます。


2022年12月2日

食の哲学

サラ・ウォース(著)永瀬聡子(訳) 2022 バジリコ

食に関する哲学的考察。味覚は、視覚や聴覚と違って身体的だ。食べてみないと分からない。