2023年9月29日

動物に「心」は必要か 増補改訂版:擬人主義に立ち向かう

渡辺茂 (2023) 東京大学出版会

我々は自律的に動く対象に心を知覚するけれども(これは同種他個体の行動を予測するため),動物に人と同じような「心」を想定する(擬人主義)必要はないし間違ってるよね,という慶応の渡辺先生の本。行動主義の隆盛と衰退,認知科学の勃興,比較認知科学の展開など,心理学史としても勉強になりました。

いろんな動物がいるけれど,人はどの類どの種まで心の知覚をするのかとか,植物は,機械は,という辺りに僕は興味があるのですが,渡辺先生の主旨としてはそういうことを書こうとしている本ではちょっと違うのかもしれないのだけれど,その辺の興味も満たされました。

東京大学出版会の広報誌「UP」連載の評論を書籍化し,かつ,書き下ろしを加えた増補改訂版。こういうのを載せてるUPって,すごいなぁ。




2023年9月26日

スリザー

(原題:Slither)(アメリカ,2006)

エイリアンに寄生されるSFパニック映画。グチャグチャドロドロ。slitherは,「ズルズル滑る,滑るように進む」って意味ですね。まさにそういう映画です。寄生された人たちはゾンビみたいになります。ゾンビゲロ的なのも吐きます。とにかく始終,性的なモチーフだらけ。ストーリーに新味はないけど,なんとなく,最後まで観てしまいました。キモち悪いです。


2023年9月19日

死霊館 悪魔のせいなら,無罪

(原題:The Conjuring:The Devil made me do it)(アメリカ,2021)

実話に基づくウォーレン夫妻の『死霊館』シリーズ第3弾。しかしこの,副題の,「〇〇なら,××」は何だろ,『IT』シリーズのあれですか。まぁ確かに,現代を直訳すれば,「呪術師:悪魔が私にそうさせた」でしょうから,これは悪魔のせいだ,ということであながち遠くはないだけど。なんか,他のホラー映画に被せるのって,恥ずかしくないのかね。売れれば何だって良いのか(笑)。

ホラー映画としては,まぁ,怖い。でも何だろう,いくつも見てると,この悪魔モノって,同じパターンだから,新味はないかもなぁ。結局,シリーズになるぐらいだからこそ期待してる分,引き算されちゃうのかも。

★★


2023年9月18日

スウィング・オブ・ザ・デッド

(原題:The Battery)(アメリカ,2012)

たぶん,私はゾンビ映画が好きです。つい,観てしまいます。これもつい,観てしまいました。

野球の元バッテリー(ピッチャーとキャッチャー)が,ゾンビの蔓延した世界で生き延びる旅を続けるロードムービー。現実を受け止めてしぶとく生きようとするベン(キャッチャー)と,現実を受け止められなくてどこかに救いを求めようとするミッキー(ピッチャー)。

何かすごい展開があるのか,すごい結末があるのかと期待しながら,とりあえず最後まで観てしまった。


2023年9月14日

ゾンビボーダーランド~めざせ!アンデッドのいない国境地帯へ~

(原題:The Last Serb in Croatia)(クロアチア,2019)

B級ゾンビ映画だと思って,軽い気持ちで観始めました。

原題を直訳すれば,『クロアチア,最後のセルビア人』。今はクロアチアとセルビアは国境を接する独立国家同士ですが,歴史を振り返ると複雑で,クロアチアにセルビア人も住んでるし,セルビアにクロアチア人も住んでますが,両者は仲が悪いらしい。ネットで検索してみると,両方ともスラブ系ですが,クロアチア人はローマ・カトリックを信仰していてラテン文字を使用し,セルビア人はセルビア正教を信仰していてキリル文字を使用するらしい。宗教と文字が違うのは大きい。特に仲が悪くなったのは第一次・第二次世界大戦を経て現代に至るまで,いろいろあったから。うううむ,この辺り,複雑でよく分からん。ごめんなさい,不勉強。

とりあえず,この映画は,その辺りの「クロアチア人とセルビア人は歴史的にものすごく仲が悪い」という話を前提に観る必要あり。クロアチアの映画だからクロアチア寄りの映画なのかと思いきや(もしそうだとしたら,クロアチア人によるクロアチア万歳映画になってしまって,ただのゲス映画だから,あり得ないか),クロアチアという国はもうすでに国家破綻しているところから始まるし,クロアチア人は全員ゾンビ化して,最後はアメリカの企業に殲滅されます。だから,クロアチア人がクロアチアを小ばかにしたブラックジョーク映画,なんだよね,きっと。

邦題は,B級ゾンビ映画として,とりあえず観せようとするための,苦し紛れ。別に国境に向かうことはそれほど重要な要素ではないから,ボーダーランドとか国境地帯とか,この映画の本質的な内容とはあんまり関係ないです。とても仲の悪いクロアチア人とセルビア人を描いたブラックジョーク映画,として正しく観れば,まぁ,面白い。

★★


2023年9月8日

こころの違和感 診察室

春日武彦 (2022) 河出新書

最近また春日先生の本をいくつか読むようになって,あんまり綺麗ごとを言わないところや自己客観視しているところが,サッパリしていて読んでいて安心できるし,やっぱり良いです。あの『鬱屈精神科医,占いにすがる』が突出して歪んでただけかもしれない。ものすごくベッチョリしてました。

ただ,ですます調の文章より,である調の方が,春日先生のシニカルなところ(の面白さ)が出やすいんじゃないかと思いました。ですますになることで,強烈な皮肉やブラックジョークが弱まってしまうような気がします。あるいは,年を取って丸くなったのか。