2021年12月31日

コンスタンティン

(原題:Constantine)(アメリカ,2005)

キアヌ・リーブス主演の悪魔払い(エクソシスト)の映画。天国と地獄と,それに挟まれた人間界のバランスが崩れつつある。末期の肺ガンで余命1年のコンスタンティン(キアヌ)は,刑事アンジェラとその謎を追う。死にたくないのか死にたいのが,ガンなのにもう,ひっきりなしにタバコを吸ってます。

とにかくキャラクターがどれも良い。天使のガブリエルも,悪魔のバルサザールも,元祈祷師のバーのオーナーであるパパ・ミッドナイトも,みんな味がある。その中でも一番良かったのは,最後に登場するサタン(ルシファー)。ものすご~く良い味。その顔,動き,声。目が離せない。ずっと観ていたい。何度も観たい。そう思える良い味。

★★★

トロール・ハンター

(原題:Troll Hunter)(ノルウェー,2010)

トロール(トロル)とは,「北欧の伝説に登場する妖精。巨人または小人の姿で描かれる」(デジタル大辞泉)とあります。

僕はこの映画,好きです。モキュメンタリーのPOV映画。まぁ,ド直球のフェイクドキュメンタリー映画なので賛否両論ありそうですが,トロールの生態と描写が深くて凝っていて,観ていてワクワクしました。

★★★

ヨンガシ 変種増殖

(原題:Deranged)(韓国,2012)

最近,韓国映画が面白くて良く観てる。この映画も,面白い。すると,だんだんと韓国の俳優さんの顔を覚えてきた。あ,あの映画のあの人だ,なんてのがときどきあります。

ヨンガシ=ハリガネムシ。腸に張り付いて成長する寄生虫の変異種が発生し,韓国内大パニック。このパニックで,仕事ばかりで家族を顧みない男が,家族への愛を取り戻す。デジャブか?このパタン,韓国映画の定番?でも,まぁ,分かりやすくて良い。

★★

セラピーのためのポリヴェーガル理論

デブ・デイナ(著)花丘ちぐさ(訳) 2021 春秋社

トラウマ臨床には必要な知識と,クライアントとのいくつもの具体的な実践技法が,繰り返し繰り返し,手を変え品を変え,書かれている。トラウマの研究や臨床をしている人は,絶対に読んでおく必読書だと思います。


2021年12月14日

バッド・マイロ!

(原題:Bad Milo!)(アメリカ,2013)

ホラー?ホラーですね。ホラーコメディ。仕事や家庭・家族で色々とストレスを抱えて,このところ著しく腹の調子が悪く,毎日90分もトイレに入っているダンカン。ある日,猛烈な腹痛に襲われると,気絶している間に,なんとお尻(肛門)から何かが出てきて,ストレスの元であるダメな同僚を惨殺してしまった。やがてこの小さいけど凶暴な怪物は,ダンカンのストレスが頂点に達すると腹痛とともに出てきて,ストレスの原因を次々と殺戮していく。

なにせお尻から出てくる「あれ」ですから,汚くてアホな映画ですが,そのアホらしさが面白い。要するに無意識の願望達成の具現化であり,人間の攻撃性の体現であるお尻の怪物。翻れば,誰もが怪物を飼っているけど,なんとかそれを抑制している。けど,抑制も限界を超えると,外に出てくる。出てくる前に,上手にその攻撃性と付き合っていかなければならない。そういう,徳の高~い映画です。

★★


2021年12月13日

タイチー

映画『太極』を観たので,ずいぶんやっていなかった太極拳(タイチー)をやってみました。やっぱり,気の流れる感じは心地よい。

膝(特に左膝)を悪くしてもう随分経ちます。膝を曲げる方向が良くなかったのか,稽古をすればするほど膝の痛みが悪化したので,タイチーをやらなくなっていました。

久し振りに動いてみて,まぁ,ぼちぼち動けました。でもまた膝の痛みが悪化するのは嫌だなぁと思いつつ・・・。

ただ,いつもはナイファンチばかりやっていましたが,先月ぐらいからパッサイもやってみたところ,意外と猫足立ちの締めが内転筋に効いて,それでいて膝の痛みも悪化せず,なんとなく良い感じでした。だから,つま先の膝の方向さえ気をつければ,タイチーもできるかもしれません。

僕はかなりO脚なので,つま先を外側に開くよりは締めた方が良いのかもしれません。タイチーの師匠のスティーブが,外側に開けと言うので結構開いてやっていましたが,そこが良くなかったのかも。

一方で,内側に向けるサンチン立ちもまた結構膝に来ます。だから,ちょうど良いところを探らないといけないことは確か。難しい。ナイファンチも,サンチンのように絞りすぎると膝にチリチリと電気が走ります。

しかしながら,膝の調子の良さは,もしかしたら杖道のおかげかもしれません。杖道を始めて半年ほど経ちますが,全体的に良い方向に行っている気がしています。武術で膝を悪くして,整形外科(のヒアルロン酸)でも理学療法科(のリハビリ)でもあんまり効果がなかったのですが,結局,武術が効くというのは皮肉なものです。

いやいや,もしかしたら,靴のせいかもしれません。長年,靴が合わなくて悩んでいましたが,比較的合う靴が見つかって,それで外出時の歩行に無理がなくなって,膝への負担が減ったのかもしれません。

また悪化するかもしれないので,身体と対話しながらですが,那覇手よりも首里手の形の方が,僕の膝には合ってるのかもしれません。タイチーも,気の流れを感じるのは心地よいので,ぼちぼち対話しながらやれれば良いかなと思います。


太極(TAI CHI)ゼロ

(原題:Tai Chi Zero)(香港,2012)

超シンプルで分かりやすい,アニメ的なカンフー映画。主人公は,おでこに角のある異形の男・楊露禅。生まれつきの戦闘能力で天理教の戦士として重宝されていたが,軍医からは死が近いことを告げられ,体内の気の流れを調えるべく,陳家溝に伝わる秘拳「陳家拳」を学べと諭される。なんとか陳家溝に辿り着くが,秘拳ゆえ誰も露禅に拳法を教えてくれない。宗家・陳長興に弟子入りすべく,粘りに粘る露禅。果たして・・・というお話。

楊露禅は,実在する人物であり,「楊家太極拳」の創始者。諸説ありますが,楊露禅が陳家溝に伝わる拳法を学び,それをもとに編み出したのが,いわゆる「太極拳」です。だから,現在でも「陳家太極拳」というのがありますが,厳密に言うとあれは「陳家拳」であり,楊露禅の創始した拳法を「太極拳」というのが正しい・・・という説です。

実際,陳式と楊式は,確かに似ていますがいろいろと違います。一般的に知られていて,多くの人がやっている二十四式簡化太極拳は,主に楊式の動きに基づいていますから,「陳式(陳氏,陳家)太極拳」というのは,ちょっと違ったニュアンスの太極拳です。まぁしかし,一般の方から見ればほとんど同じですが(笑)。

僕がハワイで習ったのは楊式です。楊露禅の孫・楊澄甫の弟子,董英傑の弟子であるT.Y.Pangがハワイで太極拳や八卦掌を教えたのですが,そのときの弟子の一人がスティーブ・ヤング。この人が僕のタイチーの師です。

ただ,この映画で出てくる陳家溝の秘拳は,もう全然,すっかり楊式です。陳式っぷりは全くありません。その方が一般的に分かりやすい太極拳だからだと思うし,タイトルも「太極(タイチー)」だし。

★★


2021年12月11日

キャビン

(原題:The Cabin in the Woods)(アメリカ,2011)

なんだこれ(笑)。ありがちなホラー映画の文法通りに始まるこの映画。都会の若者達(大学生)が湖畔にある小屋(キャビン)に遊びに行く。現地到着前にガソリンを入れようと立ち寄るスタンドの親父は暗示めいたことをしゃべって怪しい。辿り着いた先は,森の中にたたずむおどろおどろしい古ぼけた小屋。まぁでもいっか,とにかく湖へGO!でも,観てるこっちからすると,この映画,ちょっと何か違うぞ。何かハイテクな研究所然としたところで,何かが同時に進行している。

というわけで,観てもらえればすぐ分かるわけですが,コンセプトとなるアイディアは良かったし,前半部分の物語構造でもってもっと徹底的に突き詰めてもらいたかった。なんとなく尻すぼみ感は否めない。映画は,どう風呂敷を畳むかが難しいし,そういう意味で最後のクライマックスはやっぱり重要だと思います。なんでクライマックスってドタバタになることが多いんだろうなぁ。最後の最後で,シガニー・ウィーヴァー。これはこれでメタ的に確かに面白いけど,ここは黒スーツを着たトミー・リー・ジョーンズが良かったんじゃないか?

話としては,いわゆるメタ映画で,そこは面白い。クライマックス前まで存分に笑える。だから,タイトルもThe Cabin in the Woodsで,題字もいかにもホラー映画。謎がはっきり明かされるところまで良い。でも,その後はもうスッチャカメッチャカ。なお,ホラー映画のメタ視点で言えば,『タッカーとデイル 史上最悪にツイてないヤツら』も面白かったね。

★★


ランボー ラスト・ブラッド

(原題:Ranbo: Last Blood)(アメリカ・スペイン・ブルガリア,2019)

「ランボー」シリーズの第5弾で,たぶん最後の作品。御大シルヴェスター・スタローンは1946年生まれなので,公開時はなんと76歳!!そうか~,76歳でこのアクションか~。信じられん。

シリーズ最初の作品『ランボー』は,邦題こそ「ランボー」だが,そもそもの原題は「First Blood」。だから今回の副題は「Last Blood」。first bloodは直訳すれば「最初の血」という意味ですが,これはボクシング用語で”Who drew first blood?”(最初の血を引き出したのは誰だ?→先に手を出したのはどっちだ?)から来ているみたいです。『ランボー』が,まさにそういう話ですからね。先にちょっかいを出したのは警察の方だ,というわけです。実際,映画の中でも"They drew first blood, not me"と言っています。

今回のラスト・ブラッドも,せっかくアリゾナの牧場で静かに暮らしてたのに,子ども(孫?)同然の娘をメキシカンマフィアに誘拐されたジョン・ランボー老人は,娘奪還に突入するわけです。

老人だと言っても,数々の受勲歴を持つ最強の元陸軍特殊部隊(グリーン・ベレー)。ただの老人だとなめてたメキシカンマフィアの末路は悲惨です。映画としても,観る側はもう,よくよく知っているランボーですから,とにかく,そこんところを徹底的に描いています。人体破壊殺戮描写が半端ない。

★★


死霊館 エンフィールド事件

(原題:The Conjuring 2)(アメリカ,2016)

『死霊館』の続編。エドとロレインのウォーレン夫妻の心霊調査を描いた第二弾。監督は同じくジェームズ・ワン。この「死霊館」はスピンオフというか,違う監督による派生話がいくつも出ていて(ジェームズ・ワンは製作・原案などで関わってる),それぞれ人気のようです。その中でも,ジェームズ・ワン本人が監督した作品が,これと,あと『死霊館 悪魔のせいなら,無罪』(2021)。この邦題,どっかで聞いたことのあるリズムと思ったら,やっぱり。同じワーナーブラザーズジャパンでしたね。

心霊研究家なので,決して教会の神父ではないから,悪魔払いはできない。つまり,二人はエクソシストではない。映画の中では,スタンスとしてはあくまで教会に依頼された事前調査をする,もしくは個人的に依頼のあった場合に調査をして教会に悪魔払いを進言する,という感じです。

ポルターガイスト現象は世界各地で起きていて,たいがいは何らかの自然現象が関係していたり,建物の構造上の問題だったりして,物理的客観的に説明できたりする。そのことは前作でも今作でも触れられています。だから,そういう物理的説明を越えて,何らかのはっきりした具体的証拠(音声や映像,写真など)が得られれば,悪魔払い(エクソシスト)が来てお祓いをしてくれる,というシステムになっている。

そういう状況だから,この「エンフィールド事件」と呼ばれるポルターガイスト現象も,当時,マスコミで取り上げられ,科学者(心理学者)からはでっち上げ(狂言)だと指摘される。現実は,確かにその通りだし,まぁ,僕でもそうすると思います。

が,しかし。それが映画。悪魔は本当にいるのです。人間を欺き,人間を少しずつ貶めていく邪悪な存在は,確かに存在するのです。そういう映画です。だから怖い。

★★★


2021年11月29日

死霊館

(原題:The Conjuring)(アメリカ,2013)

「死霊館」としてシリーズ化するほどになる,その第一弾。怖いわ~,怖い。こりゃシリーズ化するわ。監督はジェームズ・ワン。本シリーズ(死霊館ユニバース)とか,「ソウ」シリーズとかもやってるわけね。と思ったら,「アクアマン」とか「ワイルド・スピード」とかもやってるのね。最近だと「モータル・コンバット」も。うううむ,幅が広い。

田舎の家に越してきた家族(夫婦と娘5人)に,奇っ怪な出来事が何度も起こる。妻は,超常的な事件を解決する心霊研究家(心霊探偵?)の夫婦(エドとロレインのウォーレン夫妻)になんとか頼み込んで,家を観てもらうことに。敵は悪魔なので目に見えないし,どこからいつ襲ってくるか分からない。ジワジワくるけど,やがて本性を見せてものすごいパワーで攻撃してくる。果たして,狙われた家族,そして心霊探偵の夫婦は,悪魔に勝てるのか。

原題のconjuringは,手品(師)とか魔術(師)って意味のようです。実話に基づくということで,最後に当時の家族や本物のウォーレン夫妻の写真や記事などが流れました。映画の中でもウォーレン夫妻が,聴衆から自分たちの肩書きを聞かれて,(字幕では)「悪魔の研究者」「幽霊ハンター」「心霊調査委員」あるいは「変人」「イカレポンチ」と自虐的に言っています。実話なのか作話なのか,虚構なのか現実なのか。なので,タイトルは皮肉でしょうね。

心霊ホラーとしても,映画としても,レベルが高いと思う。ホント怖い。2時間あっという間。

★★★


悪人伝

(原題:The Gangster, the Cop, the Devil)(韓国,2019)

マ・ドンソクがヤクザの親分扮し,正義感あふれる刑事と協力して,無差別連続殺人犯を追い詰める。マ・ドンソクのマッチョぶりも存分に活かされていて面白かった。敵役の連続殺人犯をもっと嫌なヤツに魅せても良かったかも。あと,「悪人伝」って日本語タイトル(ハングルもそういう意味なのかな)から,なんかものすご~く悪い人を演ずるのかと思ったら,そうでもなかった。

連続殺人犯の手口は,人気のない場所と通りで,運転する車をわざと追突させ,降りてきた相手をメッタ刺しするというもの。その日はたまたま,ヤクザの親分チャン・ドンス(マ・ドンソク)が狙われた。が,狙った相手がまずかった。マ兄貴,いやチャン親分である。ちょっとやそっとじゃ死にません。やられた相手は必ず見つけてやりかえす。兄弟分との抗争もある中で,殺人犯を追い詰める。

「犯罪都市」は良かったし,「新感染」も良かったし,何より「ファイティン!」が良かったし,この「悪人伝」も,まぁ,良かった。謎のシェフ「スタートアップ!」が観たい。

★★


杖道「1級」合格

全剣連の「杖道」を始めて約半年。先日,11月14日(日)に,千葉市武道館で,1級の審査を受けまして,無事合格しました。杖道には,基本十二本と形十二本がありますが,1級審査は,基本の1~3(本手打,逆手打,引落打)と形の1~3(着杖,水月,引提)。

1級はとりあえず,杖と太刀を扱う基本中の基本を見るだけで,ちゃんとやれば,普通は落ちることはないと思います(もちろん,程度の問題はあるでしょうけれど)。杖道を始めたことは前にもこのブログで書きましたが,1級を取って,千葉県の剣道連盟に登録されたので,自信を持って「杖道を始めました」と言える気がするようになりました。

杖道は,見た目はシンプルで動きも激しくないですが,奥が深いです。実際に杖と太刀で打ち合うという二人稽古の形式も,合気を感じることができて良いです。

剣道は防具の扱いがたいへんそうだし,竹刀で打ち合うのにも全く魅力を感じませんので,昔も今も一切やりたいと思いません。杖道と同じく刀を使う点では広い意味で剣術(刀法)の体系に含まれるのだと思うのですが,剣道の面白さと杖道の面白さはだいぶ違うと思います。その点,居合道は,シンプルですが奥が深く,動きも激しくないので,じっくりと身体に向き合って稽古できるところは,杖道に近いです。20年前ぐらいに初段まで取りました。ただ,大きく違うのは,居合道は一人稽古です。また,居合道も,刀の扱いに手間がかかることと,稽古の時の服装(いわゆる「和装」)が運動に向いていない気がしてやりにくく,要するにこれも手入れがいろいろ面倒でした。

杖道はその点,道具や服装(剣道着)の扱いがそれほど面倒でなく,一人稽古をすれば身体と向き合えるし,太刀と杖で打ち合う二人稽古をすれば間合や合気を感じられます。そういう意味で,自分にとってはちょうどバランスの良い武道だと思っています。

次は初段です。空手の段位をいただいていますし,特に昇段が目的というわけではないですが,区切りとして昇段審査があるのも,メリハリがあって良いですね。


2021年11月28日

新敬語「マジヤバイッす」 社会言語学の視点から

中村桃子(2020)白澤社

「・・・ッス」と,発言の最後にふわっと付けるこの「ス」について,社会言語学的に様々な材料(質問サイトのやりとり,大学生の会話,CM,マンガなど)から分析した良書。「社会言語学」という学問領域がどうやって問題に迫っていくか(解析していくか)を知る上でも非常に良い本だと思いました。勉強になりました。

「ス」は,僕も使いますね。時と場合によって。この,<時と場合>をあれこれ分析して,これに含まれる意味や機能を解いていく。著者の中村先生の語り口も柔らかいし,分かりやすい。関東学院大学の先生ですが,こんな先生の授業を聞きたい。きっと毎週楽しいだろうなぁ~。学生がうらやましい。そんな本です。


2021年11月17日

感情の哲学 入門講義

源河亨 2021 慶應義塾大学出版会

感情とは何かという問題,そして,感情にまつわる問題について,神経科学や心理学などの知見を元に解説している本。「感情の哲学」なんだけど,感情だけをテーマにしたら(講義する順番はともかく)僕ならほぼ同じような話をすると思うので,「感情の心理学」の本だとも言えます。大学での授業をベースに作っている,ということで,一般教養科目として大学生1・2年生対象の入門レベル。基本的には,感情に関する問題にまつわる標準的な理論や考え方,立場を紹介している内容なので,一つのテーマに踏み込んだものではないし(著者もそのようなものではないと宣言しているし),感情といえばこういう話があるよね,という基本事項をさっとなぞるには良い本です。

感情に興味があれば,こういう問題群があります,という意味で,心理学や神経科学をやりたい人は読んでおくと良い本だと思います。逆に言えば,この辺りを全然押さえないで自分のテーマだけの感情研究をやってる心理学者や神経科学者がいるとしたら,それは専門家としてちょっとどうかと思うので,感情研究者だと自負するならこのぐらいは知っておいた方が良い,そういう本でもあります。だから,テーマの網羅性という点でも,有意義な本と思います。

ただ,文末に「でしょう」が多くて,それがちょっと気になりました。


2021年11月15日

ミッドサマー

(原題:Midsommer)(アメリカ・スウェーデン,2019)

「ヘレディタリー」のアリ・アスター監督作品。「ヘレディタリー」がものすごく怖かったので,大いに期待してたけど,うううむ,なんだか全体的に「映画のセット」感というか「作り物」感がありすぎて,全然入れなかった。こういう因習もの?民俗もの?って,リアリティが肝なんじゃないかと思うんだけど,スウェーデンの奥,ヘルシングランドに住むホルガという共同体のリアリティがなさすぎる。

もしかしたら意図的にリアリティのないぐらい吹っ飛ばして作ったのかもしれないけど,もしそうなら,それが逆に裏目に出てる感じな気がします。期待してた分,あんまり面白くなかった。もっと逆なでするような怖さがグイグイ迫ってくるのかと思いきや,なんかのっぺりしてるし,共同体の儀式とか動作や行為のわざとらしさが鼻についてしょうがなかった。アリ・アスターの名作的な評価もあるけど,これ,けっこう失敗作なのではないかと思います。賛否両論あるでしょうね。

夏至祭だからみんな労働もせず,祭りを祝ってる,って設定も分かるけどね。村全体に生活感がなさすぎる。どうやって成り立ってんのよ,この村(むろん,映画内のセリフに説明はあるけどね)。なんか全部,小道具感高すぎて,もうちょっと何とかならなかったのかなぁ。

ちなみに,原題の「midsommer」はスウェーデン語でミッドソンマルと読むそうです。「夏至」って意味ですね。

【追記】あとから思い返して思ったのが,本作は,わざと全体に「(舞台)演劇的」にやってるのかも。例えば,主人公のダニーが泣き叫ぶ場面で村の娘達が一緒になって泣くのだが,そのときのカメラワークと娘達の位置が演劇的(テレビドラマ的)。俳優さん達の顔や演技が全部ちゃんとカメラに写るように,カメラ側に俳優がいない。映画なのに不自然。若者たちを村に迎えるときの迎え方。生活感のないミュージカル風な俳優の動き。儀式のときの村人達の立ち位置。部屋から部屋へ移動するときのカメラワーク。カメラは壁を無視して(横切って)移動。スタジオセット感まるだし。だから,建物がハリボテ感満載だったり,共同体の風習を描く絵画が安っぽかったり,死体がオモチャっぽかったりするのは,もしかして意図的なのかな?いやきっと,そうにちがいない。これは実際に存在する村ではなく,虚構ですよ,という暗示。虚構の中で問う家族とは何か人間とは何か生死とは何か。そういうことでしょうね,きっと。

★★


2021年11月12日

気にする心,気にしない心

つくづく思うに,私たちは,ほんとに色んな「べき」とか「ねばならない」といった思考に縛られている。実際はそうでもないのに,あるいは,もともとしたくて始めたことなのに,いつの間にか強く自分を縛っている。自分で作り上げた規則や義務に雁字搦めになっている。

だから,「べき」と思ってることや「ねばならない」と思ってることをあっさり捨ててみると,とっても楽である。身も心も楽になる。

でもなかなか簡単に捨てられないのは,他人にどう思われるか心配だからだ。ただ,他人に迷惑がかからない範囲ならどう思われても構わないと考えれば,捨てるところは捨ててしまった方が,明らかに楽である。

結局,人間は社会(他者)に縛られている。しかし,そう思っているのは私という個なのであって,思いというのは私という個が作っているのである。社会の中でこうありたいという思い(承認欲求)に動かされた思い(私的規則,私的義務)である。

意外と他人は私のことなど気にしてない。どうとも思ってないのが現実。だから,評価懸念なんてのは,詰まるところ,意識過剰なのだ。

人様に迷惑をかけない範囲の全てを手放したい。そう思って今までいろいろ手放してきたつもりだけど,まだまだ全然足りない。色んな思いがくっついてしまって離れない。

2021年11月。今月でとうとう50歳。この世に半世紀。けっこう長い。自分が50年も生きるとは思ってなかった。というわけで,これを機に,もっといろいろと手放せたら,もっと楽チンなことは明らかなので,楽な方へ楽な方へ,どんどん向かっていくことにします。

と,結局こうしてブログに書いてること自体,人にどう思われるか気になっている証拠(笑)。そもそもブログなどの発信メディアが,意識過剰ですね。他人を想定したメディアですからね。とても自己愛的で自己顕示的な行為。つくづくそう思います。

だから,書評だって映画評だって,つい悪いようには書かないようにと気にしながら書いてしまうわけです。これは疲れる。気を遣うから。だから,これからはあんまり気にせず,どう思われようが構わず,書きたいように書こうと思います。

もう50歳ですからね。人の評判気にしてたら,残りの人生モッタイナイ。ああ,こうして老害満点のジジイになってくんだなぁ。ジジイ道入門。これからは立派なジジイになりたいと思います。


2021年11月3日

樹海村

(日本,2021)

清水崇監督「犬鳴村」に続く「村」シリーズ(?)第二弾。富士の樹海には,自殺して死にきれなかった人が暮らす村がある。都市伝説をモチーフにした作りは,前作「犬鳴村」と同じ。「犬鳴村」は古い因習がテーマでしたが,今回もそうした因習も若干は含みつつ,中心は霊感の強い家系が引き寄せてしまう呪い,です。

こうして「樹海村」を観てみて「犬鳴村」と比べてみると,どちらかというと「犬鳴村」の方が面白かったかもしれません。「樹海村」も悪くはないですが,痛そうなのは嫌いです。刃物で切るようなやつ。

もう少し妹(ひびき)の方があれこれと巻き込まれていくのかと思いきや,だんだん姉(めい)の話になっていくのも,分かりにくかったし,その姉の恋人友人関係になぜいつも妹がくっついているのか(普通,姉の交友関係に妹が加わることはないでしょう),しかも姉妹が出だしから仲が悪いのはなぜなのか,分かりにくかったかも(その辺の理由があんまり説明されてない感じがしました)。

怖いかと言えば,うううん,あんまり怖くありませんでした。痛そうでした。思い起こせば,「犬鳴村」の方が怖かった。村シリーズ第3段「牛首村」というのも近々公開されるようですね。ううううううん,もう観ないかも。どうだろう。


2021年10月30日

寅さんの「日本」を歩く 寅さんの聖地探訪大事典

岡村直樹 2019 天夢人

「男はつらいよ」シリーズが好きな人は,最初から最後まで読み飽きません。著者は,映画評論家ではなくて,旅行作家(旅に関する著述家?)です。なので,全体としては著者の旅行記(日本各地の訪問記)なのですが,寅さんが映画の中で訪れた先について,映画の中のシーンと著者自身の知識とが絡んで,単なる映画解説に留まらない内容になっています。

旅行作家が本業とは言っても,「寅さん」ファンならず評論家として深い知識とデータを持っているので,映画シリーズそのものの情報から,映画に出てくる時代背景やアイテムに関する情報まで,ふんだんに込められています。

僕も「男はつらいよ」シリーズは昔から好きで,映画館には行ったことはないのですが,テレビで放映しているときは結構好んで観ていました。ここ最近はBSテレ東が土曜日の夜に全作放映しているので,撮りためては観たりしています。それでも,今回,この本を読んで,ああ,この作品はまだ観てないな,というのが数本ありました。48作もあれば,そりゃ,抜けてるのもありますよね。そんな,「まだ観てない」寅さんを,いずれ観たいと思っています。



2021年10月26日

ディレクターズカット/ブレード・ランナー 最終版 

(原題:Blade Runner: The Director's Cut)(アメリカ,1992)

1982年公開の「ブレード・ランナー」は,いくつかのバージョンがありますが,このディレクターズカット版が,リドリー・スコット監督の描きたかったバージョンだということで<最終版>となってます。他には,<完全版>とか<ファイナルカット>とかありますね。この<最終版>は,主人公デッカード(ハリソン・フォード)のモノローグを削除,デッカードの見るユニコーンの夢の挿入,エンディングの変更,などが他のバージョンとの違いです。

なぜブレード・ランナーを突然久し振りに観たかというと,今やっている後期の授業「心理学的映画論」の課題映画にしているからです。今週の授業で取り上げるので,改めて観てみた,というわけです。



2021年10月18日

1手ずつ解説!さばきの感覚が身につく棋譜並べ上達法 振り飛車編

佐藤慎一 2020 マイナビ出版

振り飛車の感覚というか,全体的な流れの感覚を掴みたくて買いました。タイトル通り,1手ずつ一言説明が付いていて,初心者にとっては非常に親切な本です。今の棋力の自分にはちょうど良い振り飛車解説書でした。

そもそもなぜこれを買おうと思ったかというと,いわゆる「棋譜並べ」というのが楽しそうだなと思って,実際に,NHKの「将棋講座」を買ってNHK杯の一局の棋譜並べをしてみたら,これが予想通り楽しかったために,であれば,振り飛車の棋譜集でも買ってみようと思ったのが始まりです。

もう一つ,定跡の解説書だと,どんどん枝分かれしていって,こうなったらこう,ああなったらこうと解説されていく,あの説明方法に疲れてしまいます。ある程度は知っておかないとそもそも将棋が分からないので,いくつかは読みました。ただ,人間は物理的に並列処理はできません。著者が定跡の分岐をいろいろと説明しようと思ったらその並列的な分岐を直列でしか説明できないわけで,こればっかりは仕方がありません。その点,棋譜並べは当然一本で流れていくので,行ったり来たり分かれたりしません。棋譜並べは好き嫌いがあるようですが,現段階の私はこれの方が好きです。将棋は趣味なので,強くはなりたいですが,無理して頑張るのも本末転倒なので,好きな方法で勉強しようと思うわけです。

それで,いきなり格好を付けて,鈴木大介プロの『中飛車名局集』なんぞを買ってみましたが,字は小さいわ(老眼にはきつい),解説は専門的だわ(初心者にはきつい)で,かなり手強かったので,まずは初級中の初級,1手ずつ説明しているこの棋譜集に辿り着いた,という次第です。棋譜並べをしてみたいけど,あまりにも専門的な本は読みづらい,という方にはオススメだと思います。

なお,同じ佐藤プロによる前著『1手ずつ解説!将棋の筋が良くなる棋譜並べ上達法』というものもあります。こちらは特に戦法を特定していませんので,まだ買っていません。とりあえず,振り飛車を徹底的に勉強したいなと思っています。とにかく初心者ですから,一つ戦法を決めて,それで色々と将棋のイロハを勉強するのが良いかなと思うからです。

戸辺プロの攻める中飛車が見ていてとっても気持ちよい戦い方なので,これは良いぞ!と最初,ある程度勉強してやってみましたが,思うに,攻める先手中飛車は,高度だと思います。差しこなすのは難しい。あれは中級者以上でしょう。各交換型の振り飛車なので,相手に攻め込まれるし,逆に手持ちの角をどう使って攻めたら良いかも見極めが難しいので,実際にアプリ(CPU)相手に指しても,なかなかうまくいきません。

これに対して,やっぱり,角交換しない振り飛車,ノーマル(クラシック,ベーシック)振り飛車が,初心者には向いていると思います。角交換はせず,無難にまずは美濃囲い。しっかり囲ってから,飛車を振った筋からじっくり崩していく。まずはやっぱりこれだと思って,今は「四間飛車」を勉強しています。

ああ,強くなりたいね~。将棋。


2021年10月15日

瞑想でたどる仏教:心と身体を観察する

箕輪顕量 2021 NHK出版

「NHKこころの時代:宗教・人生」のテキスト。テレビ番組のテキストなので(その番組自体は見ていないですが),分かりやすい文章と,それほど多くない分量で,読みやすかったです。

ブッダが起こした仏教の歴史に沿って,様々な時代,様々な地域で行われた仏教実践を,「心身の観察」という視点で読み解いた本です。結論としては,時代と地域で変容は遂げつつも,究極的には,いつのどこの仏教実践も様々な形で「止」や「観」が行われてきた,というものです。



2021年10月8日

1手ずつ解説する四間飛車

西田拓也 2020 マイナビ出版

「1手ずつ解説する先手中飛車」と同じシリーズ(「四間飛車」の方が先)。だいたい1ページ2~4手ずつ進めて1手ずつ意味を説明するので,非常に分かりやすい。将棋の手はすべて意味があるわけで,意味のない手はない!(無論,相手の出方を見たり,間を取ったりする手として戦局にほとんど関係の無い手を指すことはあると思いますが,それとて,「出方を見る手」「間を取る手」であり,意味があります)。

と偉そうなことを書いていますが,なるほど,この本を読めばそういう意味があるのかといろいろと発見がありました。一見関係なさそうだったり,意味が分からなかったりする手も,こうして丁寧に説明されると良く分かります。四間飛車というのがどういう方向性と戦略をもった形なのか,その入口が分かりました。

数手ずつの説明でもなかなか難しかったですが,何冊か読んでいる内に,盤上で駒を並べなくても段々分かるようになってきました。とポジティブに感じるのですが,しかし,それはもしかしたら,これの前に読んだ同シリーズ「先手中飛車」(戸辺誠著)の方がただ単に難しかったのか(中級者向け?),それとも,一般論として四間飛車の方が中飛車よりも分かりやすいのか,その辺はよく分かりません。

ただ,子どものように,とにかく何局も指して実戦で感覚を養うというパワーはないので,定跡書や棋譜並べや詰将棋で地道に勉強しながら少しずつ棋力を上げていく方が五十歳にはちょうど良いし,これがまた妙に面白い。

ちなみに,解説しているのは,角交換しないノーマルな(クラシックな,ベーシックな)四間飛車です。初心者である僕はまずここから。



2021年10月5日

1手ずつ解説する先手中飛車

戸辺誠 2021 マイナビ出版

戸辺流中飛車の戸辺誠プロの,先手番中飛車の本。2~5手ずつページが進み,その1手ずつ解説しているので,その点は初心者には親切。ただ,初心者にとっては,3手以上進むだけで盤上の駒運びが分からなくなるから,難しいときがある。1手1ページ解説が一番親切なんだろうけれど,そうすると,購買層が本当に自分のようなずぶの素人ばかりで売り上げが伸びない。となると,それなりに指せる中級者ぐらいまで手応えのある本を,と考えるとこのぐらいが限界でしょうか。

なので初心者にとっては,内容的には濃い。相手の出方によって何通りにも分岐するので,それを理解して展開を追いかけるのもなかなか至難の業。ただし,序盤から中盤までの展開の解説であって,「この辺までは先手優勢なので,あとは上手いこと優位に進めてね」というところまで。

とりあえず,まずは分かりやすそうな中飛車から手順や定跡をざっくり覚えて,この後,振り飛車(特に四間飛車)を勉強してみようと思っています。展開によって両方使えるように。



2021年10月2日

攻めて強くなる戸辺流中飛車

戸辺誠 2017 ルーク

「戸辺攻め」戸辺誠プロの中飛車解説本。DVD付き。というか,DVDがメインと言っても良いです。とりあえず,私のような初心者でもそれなりに指せる戦型はないかと色々と模索した結果,振り飛車でも特に「中飛車」はやりやすいかもしれない(なぜなら,振り飛車の場合,囲いは美濃囲いで手数が掛からないし,飛車先を伸ばして攻め崩す戦略はシンプルだけど破壊力があるから),という結論に至り,その中飛車で有名な戸辺プロの本書を買ってみました。

DVDがメインなので,初心者にはものすごく分かりやすくて良いです。というのも,本を読みながら理解するよりも,戸辺プロが大盤で説明しながら進めるので,具体的な駒の動きも記憶に残りやすく,分かった感じがするからです(「分かった感じ」と書いたのは,やっぱり,さすがに一度観ただけでは身につかないわけで,何度も見直す必要があることは確かです)。

なお,本の方も1手から3手の問題形式で並んでいて分かりやすいですが,「超」初心者である私にとっては,3手予想するだけでも結構負荷が高いので,本の方はとりあえず,DVDで学んだことの復習(確認)程度の扱いで良いのではないかと思います。

中飛車はすでに色々と攻略法が研究されているので,将棋を知っている人相手には,私のようなビギナー中飛車はなかなか通用しないと思いますが,それでも,戸辺プロや鈴木大介プロのような,中飛車を極めてプロでも活躍する人がいるわけですから,それなりに使いこなせば通用するのではないかと,そんな未来を描いています。ただ,そうは言っても,たぶん中飛車にこだわり過ぎると自滅するので,今は,他の振り飛車(三間飛車,四間飛車)の戦法も勉強して,臨機応変に使えるようになれば,と思っています。

(居飛車は,矢倉に囲んだりしてる内に,モタモタしてやられてしまうという,なんとも歯がゆい思いを繰り返してすぐ頭打ちになったので,自分のせっかちな性格として,まずは「攻め重視の振り飛車」を身に付けようかと,そんなことを目論んでいます)

というわけで,この本も,「超」初心者向けの良書(良DVD)ということで,オススメです。



全戦法対応 将棋・基本定跡ガイド

長岡裕也 2017 マイナビ出版

最近将棋を本格的に(?)やり始めたのですが(もちろん,始めたばかりなので,まったく全然まだ強くありません),本書は,基本的な戦型(居飛車,振り飛車)の,それぞれの序盤の駒組みの流れを知る上で,ものすごく分かりやすい本です。一手形式の問題集の形になっているので,その一手の意味や説明(なぜこの順番で駒組みするのか,もし相手がこう来たらこうする,とか)が,丁寧に書かれています。

私のような,小学生以来,久し振りに将棋を指し始めました(並べ方や動かし方ぐらいしか知らない),という人には,たいへん価値のある,良い本です。

というのも,他にも戦型や定跡を解説した本はいくらでもあるのですが,展開が数十手まとめて書いてあったり(この場合,まず棋譜並べ的に手をなぞらないと良く分からないし,なぞった上で読んでも,何をどう打ったか忘れてしまってイマイチ要点が飲み込めない),盤上の位置(筋と段)を表す数字ばかりが並んでいたり,専門用語(?)ばかりでちんぷんかんぷんだったり,と言う本が結構多い,と思うからです。やっぱり,「超」のつく初級の私のような「超」初心者は,まずは,こういう,初手から一手ずつ懇切丁寧に説明している解説書が,とっつきやすいと感じています。

この本を読んで,序盤をどう進めていったら良いか,そしてそれぞれの戦法の方向性や思想が,おおまかに分かりました。「超」初心者にオススメです。



2021年9月20日

ヴェノム

(原題:Venom)(アメリカ,2018)

宇宙で捕獲されて地球に降り立った地球外生命体シンビオート。地球にシンビオートを持ち帰ったライフ財団の宇宙船は事故で不時着したため,4体のうち1体は逃走したが,財団は残りの3体を研究し,その能力を利用して宇宙への移民を実現するため,人体実験を繰り返していた。その人体実験とは,シンビオートを人間に寄生させる非人道的な実験であった。

ライフ財団はこれまでにも非人道的な人体実験を繰り返してきたという噂を嗅ぎつけた,体当たり取材で人気のエディ・ブロックは,ライフ財団創設者ドレイクにこの噂をぶつける。ライフ財団は巨大な企業であり,この無謀な取材でエディは即座にクビ。しかし,非人道的な人体実験に悩んだライフ財団の研究者は,エディに真実を伝えるため,財団の研究所内に導く。そこで見たものは人体実験をされている知り合いのホームレスのマリア。彼女を助けようとするが,逆に,彼女に寄生していたシンビオートがエディに乗り移ってしまう。

シンビオートは,宿主に寄生して生きる肉食の凶悪なエイリアン。エディは,「ヴェノム」と名乗るシンビオートと融合し,スーパーパワーを得る。やりたい放題のヴェノムだが,やがて,エディと奇妙な信頼関係が築かれていく。

マーベルでは,ヴェノムはスパイダーマンの宿敵。映画『スパイダーマン3』で出てきた,黒いスパイダーマン。このときは,スパイダーマンと同じ模様が付いていましたが,今回の映画『ヴェノム』にはスパイダーマンは出てこないので,目だけがスパイダーマン的なだけで,後は真っ黒。凶悪でやりたい放題だが,けっこう素直にエディの言うことを聞くし,エディに協力的なところが憎めない。映像的にはスピード感があって,観ていて飽きさせない展開が良かった。続編の『ヴェノム:レット・ゼア・ビー・カーネイジ』(2021)が公開されていますね。

★★


2021年9月19日

老子の毒 荘子の非常識

大野出 2009 風媒社

『老子』と『荘子』から一言二言取り上げて,それについて簡単な解説・コメントを付ける,という形式の,読みやすい本です。「毒」「非常識」とあるので,老荘を読むことは毒になる老荘を読むと非常識になる,みたいな内容かと勝手に想像していたのですが,全然そうではありません。老子は毒を吐くよ,荘子は非常識だよ,というストレートな意味でした。

中日新聞(懐かしい!)の文化面「ひもとく」というコーナーで2005年の平日(月~金)に掲載された記事をまとめたのが本書です。だから,小難しい解説というよりも,分かりやすい一言解釈が,味わい深い一冊になっています。読もうと思えば1時間ぐらいで読めてしまいますが,老荘の言葉を味わいながら読む方が良いでしょう。

これを読んで,『老子』と『荘子』を読んでみようと思ったら,著者の思惑通り。


2021年9月18日

ライフ

(原題:Life)(アメリカ,2017)

各国の優秀な科学者が集まる国際宇宙ステーションで,火星探査機によって採取された火星の土から,人類史上初の「地球外生命体」を発見。このニュースを聞いて歓喜に沸く地球では,その生命体に「カルヴァン」と名づける。国際宇宙ステーションのクルーは,試行錯誤しながらその成長を見守るが,装置の故障で動かなくなってしまう。焦ったクルーは,試しに軽い電気ショックを与えてみるのだが,これに対して突如,カルヴァンは恐ろしい力とスピードで反撃。凶暴なカルヴァンを危険と判断したクルーは駆除を開始するが,カルヴァンはことごとくかわし,次々とクルーを抹殺し始める。

映画『エイリアン』と同型の宇宙船閉鎖パニックホラー。”火星”からやってきたということで,タコ型であることがまた憎い(ペタペタヌルヌルと気持ち悪い)。最初はミドリムシみたいな状態から,どんどん成長し,人間はすぐに歯が立たなくなり,あっという間にやられてしまう。酸素と肉をひたすら欲するが,宇宙空間でもある程度は生きられる。とんでもない生命力。これが地球に入ってしまったら,人類は滅亡するかもしれない。絶対に地球に入れてはならない。残されたクルーのミッションは,カルヴァンの駆除,駆除が無理なら隔離,隔離が無理ならもろとも宇宙の藻屑となることを選ぶ。

真田広之が,日本人クルー「ショウ・ムラカミ」として出演。主人公はジェイク・ギレンホール。この垂れ目の疲れた(憂いのある)顔,どっかで見たことあるなぁ,確かこの人,『ミッション:8ミニッツ』(アメリカ,2011)の主人公コルター大尉では?と思ったら,やっぱりそうでした。そしてこの人なんと,あの『ドニー・ダーコ』(アメリカ,2001)の主人公ドニー(←高校生役)でした!いやはや,こんなところで,つながった。確かにあの垂れ目の疲れた顔は若いときも一緒。

エイリアンとの戦いになったら,あとはもうどうサバイバルするか,この小さいけど賢くて素早くて凶暴なタコ型とどうやって戦うか,それが見所。宇宙空間で未知の生物と戦ったらこうなる。

★★


2021年9月8日

ヴィジット

(原題:The Visit)(アメリカ,2015)

15年前に家出同然で駆け落ちした実家の両親から,自分をネットで見つけたと連絡があり,孫(つまり自分の娘と息子)と会いたいということになって,子ども二人で実家の両親に会いに行くことに。子ども二人は当然,初めて会う祖父母。電車で着いた田舎の駅まで車で迎えに来てくれた祖父母の家に,1週間お泊まりすることに。しかし,どうも祖父母の行動がおかしい。この二人,何か変だ。そのことをそれとなく尋ねると,「老人だからね。いろいろ病気があったり体調が悪くなったりするんだよ。だから許しておくれ」としか返ってこない。でもやっぱりちょっと尋常じゃない・・・。

『シックス・センス』『サイン』の監督M.ナイト・シャマランのサスペンス・ホラー映画。いやぁ恐かった。90分強の短い映画ですが,家に到着してほどなく,妖しさ全開で迫ってきます。ナイト・シャマランですから,話は簡単ではありません。だからこそ怖い。家族,老人,兄弟,親子などなど,テーマという意味でいろいろ要素は含まれていますが,そういうのとはまた全然種類の違った要素がじんわりと絡まっています。

15歳の娘(姉)のビデオカメラと13歳の息子(弟)のカメラの動画機能で撮る,全編ほぼPOV形式の映画です。POV形式を成立させるためにか,最初,主人公二人の母(つまり,舞台となる実家を家出した娘)が,駆け落ちした夫(つまり,子ども二人の父)との話を,娘がビデオカメラでインタビューしているところから始まります。だから,なんでビデオでインタビュー?どういう理屈でビデオ撮ってるんだ?と思いますが,そこんところは,映画全体を通して,徐々に分かってきます。

★★★


認知バイアス:心に潜むふしぎな働き

鈴木宏昭 2020 講談社ブルーバックス

「認知バイアス」という視点から,心理学の,特に認知心理学と社会心理学の研究を,分かりやすく読みほぐした本です。一般の人が読んでも面白いだろうし,私のような心理屋が読んでも面白い内容でした。世の中,一般向けの読みやすい「心理学」の本はたくさん出ていますが,人間の心の癖のようなものが心理学(で語られるもの)だとすれば,たぶん,この本がそれをそのままストレートに取り扱っている気がします。だから面白い。

ところで,著者の鈴木先生(青山学院大学)は認知科学会フェローという雲の上の存在でありますが,果たして「認知科学者」なのか「心理学者」なのか,どっちでもあって,どっちでもないのか(ご自身の認識はどうなのか)。というのも,世の中に認知科学会というのがありますように(私も一時期入っていましたが,入った割には何となく自分のやりたいことと違うなと思って,入ってすぐに辞めてしまいました),世の中には「認知科学」という学問領域があります。しかし,本書に書いてあることは基本的にすべて「心理学」の知見です。では,「認知科学」は「心理学」なのか,「心理学」であるならばなんでわざわざ「認知科学」というのか。

認知科学とはどんな学問領域かという定義的なものは,学会のウェブサイトなりウィキペディアなり見ればなんとなく分かります。でも,なんとなく,です。「心理学」だと学際的にできないから「認知科学」にして,いろいろ学際的に展開したいから,という思惑も分かります。

でも,それって,薬屋を薬局に入れ替えたり,床屋を理髪店に入れ替えたり,スーパーマーケットをショッピングストアに入れ替えたり,ただ単に言葉を変えただけではないのだろうか。扱ってる商品や客層は全く同じ。そう考えると,現代心理学が基本的に人の認知を扱うとすれば,両者はほぼ同じ意味だと思うんですよね。というのも,実際,認知科学のいう「認知」の射程ってかなり広いし(なんでも「認知」),なんでも「心理」の心理学とほぼ同じなのではないかと思うんです。

そんなことを前から思っていたのですが,当の認知科学者の人からすれば,両者の違いは自明であって,外野の無知な私が不勉強のために知らないだけで,今更問うことがナンセンスなのか,あるいは両者の違いは全くはっきりしていないのか,さてどうなんでしょう。

仮に両者は同じなのだとすれば,「認知科学」と「心理学」を区別する必要はありませんから,要するに現存する認知科学会という団体は,全日本プロレスである心理学会に対する新日本プロレスのようなものですね。だから,まぁ,存在してもいいですが,そこに格闘スタイルの違いを望みたい。うちはストロングスタイルです,とか。

一方で両者は違うのだとすれば,何がどう違うのか。認知科学の心理学でない面というのはどういう部分,どういう性質なのだろうか。逆に,心理学の認知科学でない面というのは何なのか。専門家(=特に自称「認知科学者」の人)に聞いてみたい。難癖とかではなくて,純粋な好奇心からです。誰か教えてください。

しかし,そういうことは置いておいて,いずれにしましても,本書は間違いなく良書です。



2021年9月6日

将棋

スマホのアプリでCPU相手に将棋(詰将棋や対局)をするのは,けっこう前から暇つぶしにやっていたのですが,ここ数年の藤井聡太九段の登場で,小学生のとき以来,将棋の対局番組(ABEMA)を観るようになりました。

観るのは,ただ観るだけじゃなくて自分でもやるからであって,当初はスマホアプリでCPU相手にやっていたのですが,欲が出てきて,最近とうとう,ネットの「将棋倶楽部24」に入って,知らない方々とネット対戦しています。

ネットゲームで対戦,なんていう世代では全くないアラフィフですので,見知らぬ人とネット上でやり取りすること自体経験がないですから(恐ろしいですから),最初,本当にドキドキしました。始めて間もない頃,画面上の操作が覚束ないのでモタモタしていると(未だにすべて把握していないですが),将棋倶楽部24にはチャット機能がありまして,なんと,見知らぬ人からチャットで話しかけられてしまってドギマギしてしまいました。

チャットで変な展開になるのも嫌だし,かといって何も返事しないのもきっとご気分を損ねるだろうと思って,当たり障りのないことを書いて,アタフタしながら退室しました。焦った。

その後,少しずつですが慣れてきて(しかし,未だに緊張します),20局ぐらいやりましたが,チャットで話しかけてくる人(つまり,おそらく,感想戦をしたい人)は,いません。「感想戦」なんて,やれるほど将棋の戦術を心得ているわけではないですから,やっても無駄なので,こんな初心者の素人に感想戦なんて恐れ多いので誘わないでもらいたいのですが,長く続けてるといつか,見知らぬ人と感想戦なんてしちゃうんでしょうか。そんな自分を想像すると,恐ろしい。

勝負事の緊張感は,ゲームですが,やっぱりそれなりに心地よいものです。勝つと気分良く,負けるとどんよりした気分になりますが,スポーツが好まれる理由の一つはここ(感情の振幅)にあるでしょう。普段,勝負事自体が好きではない分,縁がないと思っていたのですが,小学校以来の新鮮な緊張と興奮です。ただ,ネットで見知らぬ人との対戦ですから,トラブルにならないよう,気をつけたいと思います。

そのうち,ある程度打てるようになったら,街の将棋道場にでも行ってみようかとも思っています。そういえば,昔,親父も今の自分と同じぐらいの年のころ,囲碁にはまって毎週囲碁道場に通ってたことを思い出しました。親子なんてのはやっぱり,似たくなくても似るものなんでしょうかね。

そういえば一つ,ふと改めて,「ああ」と身体的に感じたことがありました。盤上は,常に全体を俯瞰しないとダメですね。初心者なのでついつい一点だけ見ちゃうわけですが,そうすると,だいたい,やられます(笑)。これはもう,全く以て,沢庵和尚が『不動智神妙録』に書いてある通りそのままです。




2021年9月3日

屋根裏の殺人鬼 フリッツ・ホンカ

(原題:the Golden Glove)(ドイツ,2019)

第二次世界大戦敗戦の影をまだ残した1970年代前半のドイツはハンブルグ。フリッツ・ホンカは,近所の安いバー「ゴールデン・グローブ」で日々,飲んだくれている。自宅は安アパートの最上階にある狭い屋根裏部屋。冴えない容姿のフリッツは,抑えきれない性欲を抱えてゴールデン・グローブで娼婦(売春婦)を漁るが,誰からもまともに相手にされず,誘いに乗るのはいつも「熟女」というよりもむしろ「老女」の娼婦ばかり。自宅に誘って事をなそうとするのだが,フリッツは不能で,結局,何もできない。やりたくてもできないフリッツは,酒にくらんで誘いに乗って部屋までやってくる老娼婦を,カーッとなって次々と殺しては,始末に困った末に,切り刻んで(屋根裏部屋の)屋根裏に隠していた。

ヤバい映画を観てしまった。これ,実在した連続殺人鬼の映画です。始終アルコールで息が荒く汗をかいているフリッツ・ホンカは,強い猫背で,斜視で,遠視用眼鏡をかけていて,前頭部がはげ上がっていて,鼻が大きくて,歯並びが悪くて・・・と,とにかく見た目がひたすらよろしくない。絶対にもてないであろう孤独な男の部屋には,壁中にびっしりヌードポスターが張ってあることから,かなり強い性欲がうかがわれる。部屋は酒瓶だらけで,トイレは使うのがはばかられるぐらい汚い。それでも一度,車にはねられて大怪我をしたのを機に改心して,酒を断ち,仕事も変えたのだが,気に入った女を前にやっぱりまた飲んでしまう。

エンドロールで本物のフリッツ・ホンカの顔や部屋の写真,屋根裏部屋の見取り図,犠牲となった娼婦の顔写真,実際のバーの写真などが流れますが,二度見したくなるほど極めて再現度が高い。映画本編を見終わった後,エンドロールでこの再現度を知るわけですが,余計に気持ち悪くなりました。性欲と狂気に満ちた連続殺人鬼フリッツ・ホンカを演じるヨナス・ダスラーのメイクと演技に脱帽。ヤバいです。

★★★


2021年9月2日

スーサイド・スクワッド

(原題:Suicide Squad)(アメリカ,2016)

スーパーマン無き後,ゴッサムシティに降りかかるメタヒューマンの脅威を,悪党で結成したチームで対抗しようという特殊部隊,タスクフォースX。

主人公的位置づけのデッドショット(ウィル・スミス)が,どこからどう見てもやっぱり「ウィル・スミス」なので悪党感がほとんどない。残念。代わりに,ジョーカー(ジャレット・レトー)とハーレイ・クイン(マーゴット・ロビー)が光ってました。ジョーカーの気持ち悪さとハーレイ・クインの阿呆っぽさが分かりやすくて痛快です。

DCやマーベルは,ストーリーを楽しむというよりはキャラクターを楽しむものだと思うので,話としては平凡です。マーゴット・ロビー演ずるハーレイ・クインのキャラが抜群に良かったので,「ハーレイ・クイン 華麗なる覚醒(Birds of Prey)」(2020)として続編?が出たのは納得できました。「ザ・スーサイド・スクワッド ”極”悪投,終結」(2021)も公開されましたね。

主流よりも傍流,中心よりも周辺,直球よりも変化球,だからホラー・アクション・SFなど,ちょっと奇妙だったり変だったりする映画が好きなので,『映画秘宝』愛読者です。ただ,最近少し気になっているのが,このところ,DCやマーベルのアメコミ推しがやや目立つ気がします。推すから面白いのかと思って観ました。きっとアメコミファンには堪らないのだと思います。悪くは無いけど,単調かな。


2021年8月30日

ヒトラーを殺し,その後ビッグフットを殺した男

(原題:The man who killed Hitler and then the Bigfoot)(アメリカ,2018)

その白髪のじいさんは後悔していた。名前はカルヴィン(サム・エリオット)。自分の人生を深く悔いていた。

帽子屋を営んでいた彼は,第二次世界大戦中,ロシアから徒歩で単独ドイツに侵入し,ナチス総統ヒトラーを暗殺するという特殊任務を母国アメリカ政府から受け,従軍する。何カ国語も操る高い知能と語学力,着実にターゲットを捜し出す根気と情報収集力,そしてどんな環境でもサバイブする勇気と行動力で,見事に任務を完遂した。彼は,実質的に第二次大戦を終結させアメリカを勝利に導いた伝説的暗殺兵となったが,しかし,そのために最愛の人と離ればなれになり,生涯独身のまま,冴えない人生を送っている。白髪頭を鏡でみる度に,自分が老いたことをつくづく痛感し,自分は一体何のために生きてきたんだと,昔を思い出しながら後悔していた。

物語は,老人となった現在,若い頃の過去(最愛の人との思い出と第二次世界大戦での従軍)を回想して,今と昔を行ったり来たりしながら進んでいく。あのとき従軍してヒトラーを暗殺したことで最愛の人と一緒になれなかったと,ガッツリ後悔し続ける。

そんなカルヴィン老人に突然,アメリカのCIAとカナダ政府の特使がやってくる。「ビッグフットを狩ってくれ」。理由は,カナダの森に生息するビッグフットが致死性の病原体を保菌していて,鳥類以外の動物がことごとく死滅しているからだ。ワクチンができるまでに国家的な壊滅状態になりかねない。アメリカに侵入しそうな場合には,カナダに核を落とすことになっている。軍保管の血液情報から,カルヴィンにはこの病原体への免疫があることが分かり,かつ,ヒトラーを暗殺したレジェンドであることから,白羽の矢が立ったのだ。

今更そんなことを依頼されてもと断るカルヴィン。「人間はそうそう変われないのだ」と,弟のエドに諭されるカルヴィン。さて,どうする?

冒頭から何度も右足の靴に何かが引っかかっているのが気になってしょうがないのだが,どうしても取れない。でも,映画の最後,気になっていたそれがやっと取れる。

ヘンテコなタイトルだから,マニアックなB級映画を覚悟して,つまらなかったら途中で観るのを止めればいいやと思って観始めましたが,全体にスタイリッシュな映像で,無駄がなく,割と良い映画でした。

★★★


2021年8月28日

なぜ武道によって心が調うのか

以前にもご紹介した通り,本日(8月28日)発売の月刊『武道』2021年9月号に,私の書いた文章が載りました。「武道の可能性を探る」というコーナーの第149回で,「なぜ武道によって心が調うのか」というタイトルで書きました。

武道はマインドフルネス瞑想だという従来の私の主張なのですが,古くも新しくも身体が重要だという議論や,マインドフルに武道を稽古するとはどういうことかと言ったことを交えて,コンパクトに書いています。良かったら是非,ご一読くださいませ。



月刊『武道』↓

https://www.nipponbudokan.or.jp/shupan/budou


2021年8月26日

園芸

園芸なんて,一体何が楽しいのかと小さい頃は意味不明だったし,そんなことに時間を費やすなんてと若い頃はバカにしてましたが,小さな庭を持つようになって,子どももある程度大きくなって,さらにこの1年半はコロナになったものだから,以前よりも庭いじりをしています。

まず,庭いじりは,マインドフルネス瞑想ですね。

土を掘り起こしたり,雑草を抜いたり,新しく買った苗を植えたり,水をやったり,枯れた葉を取り除いたり,伸びた枝を刈ったり,落ち葉を除いたり,虫対策に木酢液をまいたり,場所によっては除草剤をまいたり,アリ退治の薬をまいたりするのは,自然と向き合いながら,人間(自分)の住みやすいようにバランスを保とうとする営みとして,黙々とできる作業です。あんまり難しくないけど,終わりのない作業だからだと思います。

蚊にさされないように夏でも長ソデ長ズボンを着て,虫除けスプレーを吹き付け,かつ,蚊取り線香を焚いて作業します。汗と二酸化炭素に誘われた蚊に,速攻で刺されますからね。

気がついたら1時間ぐらいあっという間です。コロナで運動不足ですから,良い運動にもなります。

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しかし,こういう園芸は,若い頃は面白さが分からないのに,なんで年を取るとやる人はやるのかね。ただ,やらない人は年を取ってもやらないだろうから,好みの問題なんだろうけど,自分でなぜ面白いのか説明しようとしても,うまく説明できません。なんとなく面白い。

あえて言えば,おそらく,自然を制御あるいはちょうど良いところで調和する感覚なのかもしれません。自然の営みと人間の営み。人間の営みもまた自然の一部だとすれば,自分が自然の営みの一部になる感覚でしょうか。野菜を植えれば食べられますから,その点は実益にかなっているわけですが,食べたければスーパーに売っているのだから効率的とは言えません。妻が野菜や花を植えたいのでそれを一緒に楽しんでますが,私自身は,木だとかグランドカバーといった景観(と言うほど広くない庭ですが)を調えるのが面白い。調える快感,でしょうか。

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最近はグランドカバーをやり始めました。元々は芝生だったのですが,芝生はしょっちゅう刈り込みしないと綺麗に調いません。これはかなり面倒なので,早々にやらなくなりました。もちろん伸び放題です。数年前に,義母からイワダレソウを分けてもらったので植えたのが始まりで,駐車スペースの一角に植えたらあっという間に増え,庭もあっという間に埋め尽くしました。

イワダレソウは,踏まれるところは葉が小さくて綺麗だし,花も小さくて綺麗なんですが,伸びるとちょっと背が高くなって,ボリュームが出てきてしまいます。グランドカバーとしては,ちょっと足元が埋もれて鬱蒼となる感じ。駐車スペースの方はコンクリートの上に伸びているので制御できていますが,庭の方がちょっと制御しきれなくなってきたので,思い立ってグランドカバーを変えることにしました。

その前に,まずはイワダレソウを一旦全部抜くことに。これが大変でした。イワダレソウは地下茎で伸びるので,結構深いところまで入ってます。地表だけ刈り取っても,やがてまた生えてきますから,まずは土を掘り起こしながら根っこまで引き抜くことに。でも,こういう作業が楽しい。芽を見つけたら,指で土の中をさぐり,できれば根ごと引き抜く。もちろん,途中でちぎれてしまうこともありますが,根ごとすっぽり抜けたときは快感です。

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新しく植えたグランドカバーは4つ。

まずは,クラピア。結局,イワダレソウ系統なんですが,イワダレソウよりも背は低いということで,メインはこれにしました。クラピアはホームセンターでは売ってませんので,ネットで購入。

次に,クリーピングタイム。匍匐性のハーブですね。小さな花がたくさん咲きます。もともと,ロンギカウリスタイムを植えていたので,似たような感じで増えてくれるとありがたい。触わると良い香りがします。多少踏まれても大丈夫なようなので,庭の入口付近に植えました。

庭に植えたクリーピングタイム

そして,ペニーロイヤルミント。これも触ると良い匂い。ホントにミントの匂いがします(当たり前ですが)。ただ,ペニーロイヤルミントは,ホームセンターで見つけて,安かったので衝動買いしてきたのですが,花が出る頃に,結構高く伸びることが判明(「雑草っぽい」という評判も)。通常は匍匐性バッチリで横に伸びていくんですが,年に一度,縦ににょっきり伸びるようです。ですので,庭の奥の方の,あまり邪魔にならないところに植えました。

最後に,ダイカンドラ。これは,庭の一角に半日陰のところがあって,どうしてもデッドスペースになっていたので,半日陰でも育つと言われているダイカンドラを植えてみました。この先どうなるか分かりませんが,頑張ってもらいたいところです。なお,その近くには,これも以前に義母にもらったリュウノヒゲが広がっています。ただ,リュウノヒゲは成長がものすごいゆっくりなので,庭をすぐに覆うことは期待できません(ただし,リュウノヒゲは強いので,ゆっくり着実に陣地を増やしています)。ダイカンドラは柔らかい葉っぱなので,ちょっと弱そうですが,半日陰のデッドスペースを埋めてくれるとうれしい。ネットで購入しました。

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こういう,いろんな植物が今,ネットで購入できるし,購入前の検討として,ネットでいろんな情報があって,本当に便利な世の中になりました。義母のように昔の人は実経験から豊富な知識を蓄積していますが,私のような都会育ち(?)の現代人は経験がない分,知識のなさをネットで補っている感じです。

いずれも植える時期がちょっと遅かったので(たぶん,ベストは5月ぐらいから7月ぐらいまで),冬を越せるか分かりませんが,なんとか頑張ってもらって,来年の春から夏にかけて,各々,陣地を増やしてもらいたいです。楽しみです。

そういえば,「園芸」じゃなくて今時は「ガーデニング」か。ま,どっちでも良いか。


2021年8月25日

レッド・ファミリー

(原題:Red Family)(韓国,2013)

北朝鮮のスパイとして,韓国に潜入して情報収集や暗殺を行う工作員4名。彼らは,祖父,夫婦,娘の4人家族を装って暮らしている。隣の家族も,祖母,夫婦,息子の4人家族。工作員の「娘」のミンジは,隣の息子チャンスと同じ高校に通っている。

隣の韓国人家族は,毎日のように夫婦喧嘩をしていて,見かねて息子とも揉めて親子喧嘩に発展し,最後は祖母がなだめる毎日。それを見て工作員の偽家族は,「資本主義の末路だ」と毒づく。

工作員としての任務は,情報収集から脱北者の暗殺と幅広いが,暗殺は心が痛むやりたくない仕事だ。しかし,任務を遂行しなければ,国に残してきた家族の身の安全は保証されない。非情になって殺しを実行する。国の家族を思って,人を殺す。この矛盾に苦しみながら,だんだんと韓国の家族や暮らしの「人間らしさ」に憧れるようになっていく。胸を刺す悲しい話です。

基本的には「コメディ」なのだと思うけれど,しかし,南北問題は切実かつリアルな問題なのだろうと思います。それは,韓国に住んでいる韓国人でないと分からない感覚なのだろうと思うので,この映画を韓国の人たちはどういう風に見ているのだろうかと,少し思いをはせました。

★★


2021年8月22日

デッド・ドント・ダイ

(原題:The Dead Don't Die)(アメリカ,2019)

映画の中で流れるカントリー調の陽気な歌は,本物のカントリー歌手スタージル・シンプソンが歌う"The Dead Don't Die"。南極の掘削工事で地軸が微妙にずれたためか,世界各地で奇妙な現象が起き始める。田舎町のセンターヴィルも同様,屍体が動き出すゾンビ化が起こり,じわじわと町中がパニックに落ちていく。

しかし,なんだこのグダグダな感じは。署長のクリフ(ビル・マーレイ)と巡査のロニー(アダム・ドライヴァー)は,まったりとパトロールしながら,「もう夜なのに,明るすぎないか?」「コーヒーとドーナツ買って帰るか?」「もう夜だし,寝れないからコーヒーはやめとく」とか,のんきにどうでも良い話をしている。翌日,ダイナーで二人の惨殺屍体を見て,ロニーが「これはゾンビの仕業だ」と断言するところから,ヘンテコな話になっていく。

少年院の子ども達だとか,森に住むホームレスだとか,葬儀屋の怪しい女主人(ティルダ・スウィントン)だとか,都会からドライブに来た若者達だとか,いろいろ関係あるようなないようなエピソードが散りばめられつつ,いずれも回収されないグダグダな感じは,これ,わざとなんだろうなぁ。つまり,現実に起こったらこんなもんでしょう,世の中,基本的には関係のないことが同時並列的に起こっていて,それがときどき交錯するわけで,映画のような整合性のある因果関係ばかりじゃない,せいぜい緩やかな縁でつながってる,ってことなのかな。いや,分からないけど(笑)。

ロニー(アダム・ドライヴァー)が『スター・ウォーズ』のスター・デストロイヤーのキーホルダーを自分の車の鍵に付けていて,それを葬儀屋の女主人が「あなた,スター・ウォーズのファンなのね」と指摘して,ロニーが「ああ,そのとおり」と答える場面で,これはメタ映画なんだとはっきりしました。

でも,なんでこんな映画撮ったんだろう。ただ撮っただけ?撮りたかった?豪華俳優と豪華メイキャップと豪華CGと豪華主題歌による,詰めの甘い高校生脚本の自主映画,って感じです。


2021年8月16日

実験哲学入門

鈴木貴之(編著) 2020 勁草書房

実験哲学。まずもってなんとも甘美な名前である。なにせ,実験する哲学なのだから。そして,本書を読んでその魅力に震えました。これは面白い。

通常(伝統的には),哲学的な問題を考えるに辺り,様々な事例に関する思考実験における「直観」を頼りに論を進めることが多いわけですが(こういう方法論を「事例の方法」と言うそうです),この哲学者の「直観」はそもそも信頼の置けるものなのか。つまり,我々一般人の直観と同じものなのかどうか,言い換えれば,哲学者の直観に一般性はあるのか,ということですね。こういう素朴な疑問に真正面からアタックしたのが,実験哲学(の始まり)というわけです。

知識や自由意志や行為や道徳といった問題に関する実験哲学は,主に質問紙調査を用いた研究なので,基本的に,我々心理学者には馴染みやすい。近年では,実験的手法や神経科学的な手法も採用されているようで,今後の展開が期待されます。

2000年代に入ってから盛んになってきた分野なので,教科書や専門書の類いは,我が国では本書が最初です。哲学が好きな心理学者は,是非一度読んでみると良いと思います。ワクワクすること必至。きっとこれから類書が出てくると思うので,実験哲学は追っかけていきたい。


2021年8月15日

火山高

(原題:Volcano High)(韓国,2001)

どこで観たか覚えていないのですが(テレビか?),チラッと見たサイキックバトルが面白そうで,しかし,そのときはチラッと観ただけで,いつか最初からちゃんと観たいと思っていた,韓国の奇天烈学園サイキック映画『火山高』。ようやく観ることができました。

漫画『男組』の世界よろしく,とんでもない能力やパワーを持った生徒(各部活の主将)たち(と教師)が校長の持つ秘伝書「師備忘録」を求め,高校ナンバーワンの座を狙い,しのぎを削る。と,そんな癖の強いワルたちの巣窟である火山高に転校してきた男,キム・ギョンス。実はギョンスは強力なサイキックパワーの持ち主だが,そのために数々の高校を退学になってきた。こんどこそ退学しないために,その超能力を封印して静かに高校生活を送ろうとおとなしくしているのだが,剣道部主将の美女チェイの気持ちに応えようと,結局,争いに巻き込まれていく。

最強のサイキックである茶道部主将ハンニムが罠に嵌まり,パワーリフティング部の主将チャン・リャンがナンバーワンの座を奪うが,そこから高校は大混乱に。高校支配を目論む教頭は,これを打開するため,問題解決サイキック教師集団”掃除人”の5人を呼び寄せる・・・

とまぁ,ファンタジーとロマンの溢れる中二病的学園サイキックバトル映画です。オープニングもエンディングも,ノリは最高。とにかく,全体に,よく分かってる人が作ってる。今からもう20年以上も前の映画だから,当時としては良く出来てると思います。ストーリーとか,展開とか,そういう細かいことはとりあえず置いておいて,こういう奇天烈な世界観を深く考えず味わうのは,ときに面白い。『男組』とか読んでた小学生の頃,超ワクワクしたもんなぁ。

願わくば,もっと最初から,主人公を含めたサイキックバトルをもっと盛り込んでいても良かったかも。主人公の我慢を,ちょっと引っ張りすぎで,やや欲求不満。

★★


2021年8月14日

空手の形競技

今回の東京オリンピックで,空手の形競技をご覧になった方も多いと思います。空手の形競技がなんとなくああいうものだと知っていた人もいれば,初めて見たという人もいるでしょう。

あれを見て,一般の人はどう思うのだろうか。特には,初めて見た人があれを見てどう思うか,とても興味があります。

知っている人や既にやっている人は,慣れてしまって当たり前に思っているだろうから何とも思わないのかもしれませんが,私はやっぱりどうしても生理的に拒否してしまいます。

まず,演武を始める前に,形の名前を独特なイントネーションで絶叫する点。絶叫することが武術的だとはどうしても思えない。もちろん,「やー!」とか「えい!」とか,技とともに気合いを入れることは,呼吸法として,あるいは,気の鍛錬として意味はあると思います。でも,それはあくまで鍛錬であって本質ではない。気で押す,という面もあるにはあると思います。ただ,声を出すことそのものは武術的に本質的なことではない。むしろ武術的には呼吸を悟れないよう静かにしていた方が敵に勝てる確率は高まるでしょう。

それは,形の演武中にもしょっちゅう気合いを入れる点でも同じです。あんなに怒鳴り過ぎたら,声が嗄れたりするでしょうね。そして,その絶叫するときの表情がまた凄まじい鬼の形相です。あの顔芸は武術的に必要でしょうか。もちろん,顔にビビって相手が怖じ気づく,という効果は現実的にも多少はあろうかと思います。でも,それは武術的に本質的なこととは,やっぱり,思えない。

それから,特に女子選手に見られましたが,なぜ,特別な「化粧」をしたり,髪型を特別に調えたりするのか。化粧は武術に必要なのでしょうか。技の優劣を競っているのだとしたら,普段通りの格好で競技をすれば良いのに,なぜ見た目を装飾するのでしょうか。

と,ここまで書きましたが,理由ははっきりしているので,あえて意地悪に書いています。理由は,「競技」だからですね。競技はスポーツですから,審判がいて,判定をします。判定する審判は,<見た目>で判定します。だから,見た目で分かることをしないと勝てないわけです。その結果,声を出す,表情を出す,化粧をする,ということになります。目と耳ではっきり分かることをしないと,審判に伝わらないからです。それが,絶叫や顔芸や化粧という結果になるわけですね。

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空手という沖縄伝統の武術は本来,絶叫したり顔芸したり化粧したりする術ではありません。呼吸とともに身体を操作し,最小最短の力で敵を制する術です。その術の結晶が形です。形を運用するためには,無駄な力を抜いて,柔らかく動かなくてはいけません。ときに絶叫したり力んだりすることもあるかもしれませんが,たぶん,本当の達人は絶叫したり力んだりしないはずです。静かに敵を制するはずです。それが「君子の拳」だと思います。

オリンピックの形競技を見て,ああいうのをやってみたいなぁと思う人は,「スポーツ空手」「競技空手」の道場や教室に行けば,やれます。普通の町道場はどこもスポーツ空手(競技空手)です。

沖縄の伝統的な武術である空手はやってみたい,特に形をやってみたいと思うけど,絶叫したり顔芸したりしなくちゃいけないのは嫌だなぁ(競技はしたくないなぁ)と思った人は,我が稔真門にお越しください。稔真門代表(総師範)の小林真一先生が,本来の糸東流空手術としての形を,ゆっくり丁寧に教授してくれます。

「糸東流空手術 稔真門」公式ウェブサイト

https://www.jinshinmon.jp/

道場は今(2021年8月現在),コロナ禍のために,柏市の旭町道場(JR柏駅から徒歩15分ほど)でしか開いていませんが,コロナが収まれば,上野などでもやっています。お近くの方,通える範囲の方,是非一度,体験に来てください。いつでも大歓迎です。

形をじっくり丁寧に練る,そして,その形の運用方法(糸東流では「分解」と言います)をじっくり丁寧に練る,そういう道場は私の知る限り,ほとんどありません(ほぼ皆無と言っても良いかもしれません)。世の中の大半の道場が,オリンピックでもご覧になった「スポーツ空手」「競技空手」です。その点,我が稔真門は,沖縄の伝統武術としての空手を稽古する「武術空手」「武道空手」「古流空手」という位置づけになろうかと思います。空手という武術の本質を,ゆっくり味わってみたいという方には,稔真門が合うと思います。

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もちろん,スポーツや競技を否定するつもりはありません。スポーツ一般は大好きで,アスリートという存在には尊敬の念を抱きます。その特定のスポーツという枠組みの中で自己の身体を最適になるよう鍛え上げ,勝負に勝つために精神を集中し,互いに技を競い合うその美しさは,神々しささえ感じます。そして,空手の形競技では,男子は喜友名選手が金,女子は清水選手が銀を取ったことは,とても素晴らしいことだと思います。しかし,それはあくまでスポーツ競技の中のアスリートとして尊敬するということであって,一方で,あの競技としての形が空手の本質を体現したものだとはどうしても思えない,ということです。

いろいろ意見や観点があって然るべきであり,何が正しくて何が間違っているという絶対的な話ではなく(だから,間違いを正すべきだとかそういう話ではなく),おそらく,あくまで主義あるいは価値観の違いだと思います。私は,空手に関してはこういう風に思います,ということを書きました。この辺り,詳しくは拙著『空手と禅』に書いていますので,ご興味のある方はご一読ください。

さて,みなさんはどう思われますか?




IT/イット THE END ”それ”が見えたら,終わり。

(原題:IT: Chapter Two)(アメリカ,2019)

27年前の田舎町デリー。”ルーザーズ”の少年たちは勇気を振り絞り,団結してペニーワイズを倒した。今度またペニーワイズが現れたら必ず戻ってきて倒すと約束したルーザーズ。27年経ち,デリーに残ったマイクから,かつてのルーザーズたちに電話が入る。「あれ(IT)が再び現れた」。かつての事件はすっかり忘れて大人になったルーザーズの面々は再会を喜ぶが,それぞれの仕事や家庭もあって,再び現れたITの恐怖におののき,逃げ出したくなる。

キモい。もう,キモ描写は,前作を上回ってます。グロいとかおぞましいというよりは,「キモくて恐い」がぴったりでしょう。非日常的なピエロ(クラウン)が日常では不気味で薄気味悪いのはその通りであり,テレビシリーズを編集した1990年の『IT』はそういう不気味さが秀逸だったわけで(一度観たら忘れられない),前作の『IT/イット』(2017年)もどちらかというとそういう不気味さを踏襲していたと思います。しかし,今回の”第2章”は,それに「キモさ」をこれでもかというぐらい盛った作品になってます。

キモさは,魔物の造形,魔物の動き,登場の仕方などなど,とにかく色々とキモい。ゴア描写とか人体破壊とかはほとんどない。現実がどこで非現実となるのか,その境目は曖昧だ。お化け屋敷は恐いけど,出てくるお化けが本物だったり,ビックリ仕掛けが現実だったりしたら,とんでもなく恐い。そんな,リアルお化け屋敷と化した故郷で,ルーザーズの面々はそれぞれ,自分の昔の(思い出したくない)記憶を辿る。

ただ,ペニーワイズは恐いんだけど生身の人間も恐いんだよというメッセージなのか,デリーという田舎町の閉鎖性を示唆するメッセージなのか,魔物とは(ほぼ)関係なく,人が人を襲う要素が2つ入っている。個人的には,これは必要ないかもしれない(この要素を排除して編集したものを観ることはできないので,なんとも言えないですが)。

あと,最後は当然ペニーワイズと対決するわけですが,そこんところは凶悪な魔物との最終決戦ということでドタバタのアクション映画風になってしまっているのは,クライマックスとしてどうしても避けがたいんでしょうね。それがダメだというわけではないですが,せっかくキモい描写てんこ盛りのキモ映画として良い感じで来たのだから,最後の最後までキモさで勝負して欲しかった。

★★★


2021年8月9日

杖道

最近,「五十の手習い」で,杖道(じょうどう)を始めました。楽しいです。これです↓。神道夢想流杖術をベースにして作られた,基本十二本と形十二本からなる現代武道です。

いつまで続くか分からないですが,ぼちぼち続けていきたいと思っています。


月刊「武道」9月号

月刊「武道」9月号(8月28日発売)に,私の記事が載ります。

シリーズ「武道の可能性を探る」の第149回として,「なぜ武道によって心が調うのか」というタイトルで書きました。

要するに,いつも私が書いている<マインドフルネス瞑想としての武道>の話なのですが,もしよければご覧ください!

月刊「武道」(日本武道館)↓

https://www.nipponbudokan.or.jp/shupan/budou




2021年8月7日

エクストリーム・ジョブ

(原題:Extreme Job)(韓国,2019)

コメディ。笑えます。度重なる失態で,解散寸前の麻薬捜査強行班。ライバルの班長からの情報で,大物麻薬王の内偵を始める。しかし,なかなかうまく内偵が進まない中,ターゲットの事務所の向かいのフライドチキン店が店じまいすることになり,店ごと買って作戦本部さながら四六時中見張ることにする。そのうち出前の注文が来たら,中に潜入できるだろうという目算。

店にときおり客が訪れる度に追い返していたが,何度も追い返すのは逆に怪しまれると言うことで,とりあえず,フライドチキンを作っておいて,客が来たら売ることにしようとしたのが事の始まり。たまたま班員の一人マ刑事の作ったチキンが激うまで,あっという間に人気店に!(笑)見張りはそっちのけで,商売繁盛の大忙し(笑)。

激うまチキンを作るマ刑事は,チン・ソンギュ。マ・ドンソク主演の『犯罪都市』に出てくる敵の凶悪な手下。この作品ではもう,顔が狂気というか凶器。でも,今回(も,顔ネタはいじられるけれど),むしろコメディなので恐い顔とギャグのギャップが効いて,妙に面白い。

★★★


LUCK-KEY/ラッキー

(原題:Luck-Key)(韓国,2016)

これは面白かった。一体どうなるのか,ニヤニヤしながら観つつ,最後まで楽しめました。

凄腕の殺し屋ヒョンウクは,いつもの通りの手際よい仕事のあと,手首に付いた血痕を洗い流すため,たまたま通りかかった銭湯に入る。が,石鹸で見事に転倒し頭を強打。そのまま昏倒し,病院に運ばれる。しかし,気がつくと自分が一体誰なのか分からない記憶喪失となっていた。唯一,服に入っていた請求書から,名前と年齢と住所が判明。しかしその服は実は,鍵をすり替えられていた銭湯のロッカーに入っていたもの。鍵をすり替えたのは,売れない貧乏役者ジェソン。売れない故にいっそのこと自殺しようと最後の銭湯に来た彼は,高級腕時計をしていたヒョンウクが昏倒したのを良いことに,鍵をすり替えて,ロッカーの中身をくすねようとしたのだ。

主演はユ・ヘジン。ものすごく特徴的な顔なので,見覚えがあったのですが,『タクシー運転手』で主人公を最後まで命がけで手助けする光州市の運転手の人ですね(全然違う雰囲気ですが。さすが俳優)。

いやしかし,とっても話が面白いし,よくできてるなぁと思いましたが,これ,邦画『鍵泥棒のメソッド』(内田けんじ監督)のリメイクなのですね。リメイクするぐらいなので,話は確実に面白いわけで,あとはどうリメイクするか,というところです。それで,もともとの『鍵泥棒』を観てみようと思って観始めたのですが,冒頭の広末涼子演じる登場人物の奇妙な(不自然な)設定で,急いで観るのを止めました。たぶん,リメイク版のこっちの方が面白いのではないかと推測して,むしろ観ない方が良い,と思ったからです。なお,『鍵泥棒』の方は香川照之(殺し屋)と堺雅人(役者)のコンビでした。

★★★


ポスターは何パターンかありますが,個人的にはこっち↓の日本公開時のポスターがいい。


男はつらいよ お帰り 寅さん

(日本,2019)

第1作から50周年となる2019年に製作された,第50作。大人になって小説家になった満男は,数年前に亡くなった妻の法事の日,なぜか初恋の人・泉のことを夢見る。すると,自分の著書のサイン会の会場(本屋)で偶然,泉と再会することに。

亡き妻のこと,娘のこと,初恋の人のことを思うたびに,かつて,いつでも自分の味方になってくれた頼もしいおじさん,寅次郎のことを思い出す。

満男の記憶は寅さんシリーズを見てきたファンの記憶であり,さくらや博や満男とともに年を取ったファンは,まるで家族や近所の人のように,一緒に寅さんの生きていた昔を懐かしむ。

『男はつらいよ』は,全作は見てませんが,好きでそこそこ見てます。自分が生まれた年(1971年)とだいたい重なっているので,時代背景や風景やセットやテーマなどを懐かしめます。そんな「寅さん」なので,ようやく本作を見ることができました。

★★★


2021年7月31日

ジョーカー

(原題:Joker)(アメリカ,2019)

第79回ベネチア国際映画祭金獅子賞。第92回アカデミー賞主演男優賞・作曲賞。いつかコメディアンになることを夢見る中年男アーサー(ホアキン・フェニックス)は,クラウン(ピエロ)のアルバイトで日銭を稼ぎ,病弱な母と二人で暮らしている。テレビでは大好きな人気番組「マレー・フランクリン・ショー」が今日もやっている。

アーサーは(脳の機能障害で,おそらくストレスがかかると)本人の意図に反して突然笑い出して止まらなくなるという発作があり,そのためにたびたびトラブルに巻き込まれる。何種類も薬を処方されているが,行政の予算削減から福祉的な支援も打ち切られる。生活はいっぱいいっぱいで,身も心もボロボロだ。人生は悲劇(tragedy)か喜劇(comedy)か...。ある日,芸人仲間から「護身用だ」と拳銃を手渡される。これがアーサーの人生を大きく変えるきっかけとなる。

アーサーの,発作の時の痙攣的な笑い。誤字だらけの折れ曲がったネタ帳。ひっきりなしに吸っているタバコ。くすんだ色の服。骨の浮き出た痩せこけた身体。いつも左肩が前に出ている。狂気と退廃で満ちたアンバランス。しかしジョーカーとなったアーサーは,原色のスーツに身を包み,颯爽と背筋を伸ばし,身体のバランスを取り戻して,軽やかに舞う。笑いももはや発作的ではない。

評判通り,良い映画でした。もう一度観たくなる映画です。

★★★★


2021年7月30日

レッド・プラネット

(原題:Red Planet)(アメリカ,2000)

2050年,地球は環境汚染でまもなく住めなくなるので,人類は火星に移住するために,火星の地球化を進めていた。火星の極地の氷河を破壊して二酸化炭素を発生させ,同時に藻類を送り,その二酸化炭素でもって酸素を発生させるという計画である。順調に藻類は増え,酸素レベルも上がっていたが,突然下がり始めた。これを調査すべく,人類の未来をかけて,科学者グループが宇宙船「マーズ1」に搭乗して火星探査に出発する。

「レッド・プラネット」つまり赤い惑星とは火星の通称ですね。赤く見えるのは地表面の酸化鉄のせいで,実際に火星の北極のクレーターに氷の湖があるようです。ちなみに,漢字の「火星」という呼び方は,五行説(世界は木火土金水の五要素からなるとする東洋思想)から来ているそうです。赤いから火を連想したのでしょう。

実はこれ,鑑賞は二度目でした。以前,どこかで見たのですが,見たことを忘れていて見始めたところ,見たことに気がつきました。そういうのはときどきありますね。同じタイトルから惹かれるのは,昔も今も自分があまり変わっていない証拠でしょうか。

この映画はいわゆる「テラ・フォーミング」の話です。テラ・フォーミングといえば,漫画原作の邦画『テラ・フォーマーズ』がありますね。アニメやゲームにも展開しているメディア・ミックスの人気作品です。テラ・フォーマーズも火星は(予想を遙かに超えて)とんでもない状況になってたわけですが,『レッド・プラネット』も,計画通り藻類が全然増えていないカラッカラの赤い土ばかりで全く地球化していない火星で途方に暮れます。

★★


2021年7月26日

犬鳴村

(日本,2019)

清水崇監督の,2年前にかなり話題になった作品。いつか観たいなと思っていて,ようやくAmazon Primeで観ることができました。

犬鳴村。それは,地図に載っていない村。日本国憲法が通じない村。犬鳴トンネルから通じている心霊スポットだが,実際,どこにあるのか分からない。物語は,そこに通じるトンネルを発見して犬鳴村に辿り着いてしまった心霊YouTuberな女子とその彼氏の異変から始まる。

村の入口に立つ「この先,日本国憲法通用せず」という看板が立っているとされる犬鳴村は,日本地図からは抹消されていて,携帯電話の電波は圏外。村に入れば凶悪な村人たちに襲われるという,福岡県犬鳴峠周辺にまつわる都市伝説。福岡県宮若市犬鳴には,犬鳴川の上流に実際に「犬鳴ダム」がある。映画「犬鳴村」の物語は,このダムとも無関係ではない。

「この先,日本国憲法通用せず」とか「地図に載っていない」とかは,グッと来る設定。でもそれはそもそもの元ネタの都市伝説の方のコンセプトです。映画として,ホラーとして,果たして秀逸かというと,物語に怖さや緊迫感やキモが冷える感じはあんまりない。これはもう,好き好きなので,人によって評価は全然違うでしょう。最近観た心霊映画でいえば,洋画の『ポゼッション』の方が恐かった。Jホラーといえば,『リング』が良すぎたのかね。なんとなくそれの反復な気がしてなりません。といっても,そんなにJホラーをよく観て研究しているわけではないですから,あんまり偉そうなことを書いてはいけませんね。きっと好き嫌いだと思います。

しかし,やっぱり,前にも書きましたが,邦画は俳優がバラエティとかCMとかに出ているのを観ているせいで,どうにもやっぱり感情移入できません。「演技している感」が先に立ってしまう。子役の演技も微妙でした。そうは言いながら,清水崇監督作品『樹海村』は観てみたい。

★★


2021年7月15日

現代「只管打坐」講義

藤田一照 2020 佼成出版社

藤田師が曹洞宗永平寺の寺報である月刊『傘松』に連載していた,座禅に関するエッセイ『「只管打坐」雑考』(全60回)を一冊の本にまとめたものです。なので,何かについて系統的に書き下ろしたものではなく,藤田師本人も書いておられるように,その都度その都度(原稿の〆切の都度),考えていることを綴ったもの,ということになっています。ただ,そうは言いながらも,書きたいことは数ヶ月に渡って書いているという具合に,それなりにまとまりがあります。

最後の回(第60回目)で著者自ら,自分が書きたかったことの柱をまとめていますので,それはそれで読んでいただくとして,私が読んで思ったのは,やはり,『現代坐禅講義』のときからそうですが,一貫して身体から入る,身体から読み解く,身体で練る坐禅の話であり,その意味で非常に興味深く面白く読めました。

身体論としても坐禅論としても仏教論としても,藤田師の話は前から好きでよく読んでいますので(要するに藤田一照ファンなので),本書も基本的な立ち位置や主張はこれまでと変わらないのですが,今回読んで一番心に残っているのは,「帰家穏坐」という言葉です。

「帰家穏坐」は坐禅のこと,つまり,坐禅の別名だということです。きっと前から書いていることなんだと思うんですが,今までそんなに引っかかることはありませんでした。しかし,今回読んでいて,この言葉が一番心にじんわり来ました。本や言葉や教えというのは,読む側聞く側に準備ができていないと染み込まないというか,チューンが合わないと伝わらないわけですが,私にとって今ようやく,「帰家穏坐」という言葉がスウーッと身に浸みた,ということです。ああそうだ,坐るって,そういう感じか,そうかそういう感じだよね,うんそうそうそういう感じだ,と。

坐禅というのは,家に帰って穏やかに坐ること,なのです。もちろん,ただ物理的に自分の所有している建物に帰って,そこでただ物理的に坐る,ということではありません。坐禅というのは苦行でも義務でも心のトレーニングでもなく,あたかも一番くつろげる自分の家に戻って,そこでゆったり安心して心地よく坐るようなものなのだ,ということでしょう(私の言葉が足らないので,適切に表現できていないかもしれませんから,藤田師の考えを適切に理解していただくためにも,興味関心のある方は本書を読んでください)。

私は原則毎朝,15分間坐るというのを続けてかれこれ15年ほど経ちますが,ついつい義務的になったりトレーニング的に頑張ったりしてしまいがちです。藤田師の本を読んだり,禅の本を読んだりしてはハタと我に返って肩肘張らないゆったりした自然な坐りに一時的になるのですが,繰り返している内にまた力を込めたり我慢したりするようになってしまいます。そういうときは,面倒だな,早く終わりにしたいな,次のことがやりたいな,と思うわけですが,それこそもったいない時間です。坐禅は,本来,やれば安らぐものだし,実際,ホッとする時間なわけです。

そう思って坐ると,本当に安らぐ。何も「安らごう」としなくても,坐禅ってそういうものだと思って力を抜いて坐れば,15分間はあっという間,なんとも落ち着くホッとする時間になります。でも人間,だんだんとそんなことを忘れてつい,力みはじめ,力み始めると早く終わらせたくなる。なんともせわしない動物です。

そんなことを思うきっかけになって,また坐禅を続けたくなるので,ときどき,藤田師の本や禅の本は,読むべきですね。ハタと我に返るために読む。気づくために読む。だから,ときどきこうして藤田師の本が出るのは,私としては本当にありがたいです。


2021年7月13日

マン・オブ・スティール

(原題:Man of Steel)(アメリカ,2013)

クリプトン星から一人地球に送られてきたクリプトン人の赤ん坊が「スーパーマン」になるまでのビルドゥングスロマン。クリストファー・ノーラン制作・原案,ザック・スナイダー監督。

クラーク・ケントは,超絶的な聴力・視力・筋力など超人的な能力を持っているが,それをひた隠しにしている。父親から「今はその力を見せるべきではない」と諭されてきたからだ。普通の人とは違うクラークは自分の力を呪い悩むが,助けが必要な人がいると放っておけず,つい,力を使ってしまうのだった。当然,力を垣間見せてしまう度に,怪しまれてしまうクラークは,居場所を転々とする放浪生活を送っていた。

そんな中,北極圏に謎の物体が埋まっていることを知り,探りに行くと,それは巨大な宇宙船(かつてクリプトン人が宇宙中に送り込んだ探査船の一つ)であり,本当の父ジョー=エルの意識体と再会し,超人的な能力を持つ自分の出生の秘密をようやく知ることができたのだった。

単なるヒーローの活躍をひたすらCG満載で観るよりも,こういう,面倒くさいこんがらがった青春を解きほぐしていくような,ちょっと青臭くて痛いヒーロー映画の方が人間的で面白い。欲を言えば,もっとこんがらからせても良かった。

ちなみに,アメコミ映画ファンの人は当然知ってることなんだろうけど(私は「ファン」というほどではないです),クラーク・ケントを演じているヘンリー・カヴィル版のスーパーマンはその後,ジャスティス・リーグに参戦してシリーズ化してるわけですね(2016,2017,2021)。それは良かった。マッチョぶりや四角い顔は,「鋼鉄の男」っぷりがよく出ていて,ピッタリだと思います。

★★★


2021年6月29日

ドニー・ダーコ

(原題:Donnie Darko)(アメリカ,2001)

変な映画を観てしまった。「ドニー・ダーコ」。ドニー・ダーコは,主人公の高校生の名前。映画は,高校生ドニーが山腹の道ばたで裸足・寝間着姿で起きるところから始まる。オープニングから奇妙奇天烈です。

ドニーはどうやら夢遊病のようであり,精神的な不安定さから,精神科医のカウンセリングも受け,薬も処方されている。夜な夜なある声に起こされて無意識に外へ出ると,不気味なウサギの着ぐるみをした「フランク」という男が現れ,世界の終わりまであと,「28日と6時間と42分と12秒」だと告げられる。

まったく目が離せませんでした。全体に奇妙ではありますが,まったく筋が通っていないわけではありません。この世の中は大人の都合と欺瞞ばかり。自分が狂気なのか世界が狂気なのか。色んな事が伏線(縁起)となって,ドニーを翻弄します。

世界が終わると告げられたドニーはやがて,タイム・トラベルに惹かれていきます。未来を知り,過去に戻るタイム・トラベル。28日後にどうなるのか。世界が終わる時まであと○○日,とカウントダウンされていくので,果たしてどうなるのか,結末はどうなるのか,すっかり目が離せませんでした。

★★★


2021年6月28日

ブレイド

(原題:Blade)(アメリカ,1998)

ちょっとスカッとしたアクション(何にも考えないで観ていられそうな映画)を久しぶりに見てみたいなと思って,ブレイドを観ました。ブレイドというキャラクター(ヒーロー)は知ってましたが,そういえば,ちゃんと映画を観たことなかったなと思ったので,ちゃんと最初から最後まで観ました。

アクションはキレがあって無駄がない。もっとアクションの尺を伸ばしても良いと思うぐらい。ストーリーは,まぁ,アクションを見せるために作ってるようなものでしょうか。深くはありません。

すでに「2」や「3」もありますが,きっと話を深めるというよりは,いかにブレイドのキレのよいアクションを深めるかで,シリーズ化してるんだろうなと予測。ウィズリー・スナイプスのしぐさや動きや決めポーズはかっこいい。

アクションが見たくなったときには,機会があったら「2」や「3」も見てみたいと思います。


JIDAIさんの新刊

BABジャパンから,JIDAIさんの新刊を送っていただきました。タイトルは,『再創造する天性の「動き」!』(BABジャパン,税込1540円)。

JIDAIさんについては,身体表現や身体技法やボディーワークの業界ではもはや説明の必要もないぐらいですが,ご存じでない方にご紹介すると,とにかく超絶的に「すごい人」です。世の中,「すごい人」というのがときどきいるわけですが,「すごい人」,あるいは達人や名人のような人は自身の感覚や努力を言語的に説明できないイメージがあったりするかもしれません。なぜなら,身体的な感覚は,究極的には言語で説明することを拒むというか,どれだけ精緻な言葉を使っても言葉で伝達しようとした時点で微妙にズレるからです。

JIDAIさんは天才ですが,しかし,努力の人でもあります。学生の頃,ひたすら黙々と練習に打ち込むJIDAIさんを見ていましたから,この人は天才的な努力家なのだと思うわけです。

そしてこうして世にJIDAIさんが望まれる理由は,その天才的な身体性を言葉とイラストを尽くして説明しようとするその姿勢だと思います(イラストはすべてJIDAIさん本人によるもの)。その辿り着いた身体観を少しでも他者に伝えようという熱い思い(本人は極めて物静かで温厚な人ですが)が,これまでの著書から伝わってきます。

もうかれこれ5年ほど前ですが(2016年),日本感情心理学会の年次大会にて,マイムの先輩後輩のよしみで,講演とワークショップをしていただきました。JIDAIさんの提唱する,「エモーショナル・ボディワーク」を,大会に参加された会員のみなさんと一緒にやりました。それは,いつになく(子どもの頃以来の?)新鮮な体験だったことを今も覚えています。

さて,今回の新刊『再創造する天性の「動き」!』のテーマは,「身体=感情」であり,これまでの著書よりも「エモーショナル・ボディーワーク」について多く書かれています。とりあえず,送ってもらったので早速,<宣伝>がてら書いていますが,これからゆっくり読ませていただきます。

みなさんも,身体や感情に興味関心がありましたら,こういう身体技法やボディワークの本も読んでみると良いかと思います。心理学の人は心理学の本しか,武術の人は武術の本しか読まなかったりするわけですが,こういう,違う分野や領域の本も読んでみると,ときに発見があろうかと思います。是非。


2021年6月22日

沖縄島建築:建物と暮らしの記録と記憶

岡本尚文・普久原朝充 2019 トゥーヴァージンズ

沖縄の建物は独特なわけですが,それがなぜなのか知りたくて買いました。その期待に十分応えてくれる本であるとともに,そこに住む人々の思いや,沖縄の歴史(特に昭和~現代にかけての,戦争や米軍との関わりの歴史)が垣間見える本でした。また一つ勉強になりました。そして,また沖縄に行ってみたくなりました。