2021年12月31日

コンスタンティン

(原題:Constantine)(アメリカ,2005)

キアヌ・リーブス主演の悪魔払い(エクソシスト)の映画。天国と地獄と,それに挟まれた人間界のバランスが崩れつつある。末期の肺ガンで余命1年のコンスタンティン(キアヌ)は,刑事アンジェラとその謎を追う。死にたくないのか死にたいのが,ガンなのにもう,ひっきりなしにタバコを吸ってます。

とにかくキャラクターがどれも良い。天使のガブリエルも,悪魔のバルサザールも,元祈祷師のバーのオーナーであるパパ・ミッドナイトも,みんな味がある。その中でも一番良かったのは,最後に登場するサタン(ルシファー)。ものすご~く良い味。その顔,動き,声。目が離せない。ずっと観ていたい。何度も観たい。そう思える良い味。

★★★

トロール・ハンター

(原題:Troll Hunter)(ノルウェー,2010)

トロール(トロル)とは,「北欧の伝説に登場する妖精。巨人または小人の姿で描かれる」(デジタル大辞泉)とあります。

僕はこの映画,好きです。モキュメンタリーのPOV映画。まぁ,ド直球のフェイクドキュメンタリー映画なので賛否両論ありそうですが,トロールの生態と描写が深くて凝っていて,観ていてワクワクしました。

★★★

ヨンガシ 変種増殖

(原題:Deranged)(韓国,2012)

最近,韓国映画が面白くて良く観てる。この映画も,面白い。すると,だんだんと韓国の俳優さんの顔を覚えてきた。あ,あの映画のあの人だ,なんてのがときどきあります。

ヨンガシ=ハリガネムシ。腸に張り付いて成長する寄生虫の変異種が発生し,韓国内大パニック。このパニックで,仕事ばかりで家族を顧みない男が,家族への愛を取り戻す。デジャブか?このパタン,韓国映画の定番?でも,まぁ,分かりやすくて良い。

★★

セラピーのためのポリヴェーガル理論

デブ・デイナ(著)花丘ちぐさ(訳) 2021 春秋社

トラウマ臨床には必要な知識と,クライアントとのいくつもの具体的な実践技法が,繰り返し繰り返し,手を変え品を変え,書かれている。トラウマの研究や臨床をしている人は,絶対に読んでおく必読書だと思います。


2021年12月14日

バッド・マイロ!

(原題:Bad Milo!)(アメリカ,2013)

ホラー?ホラーですね。ホラーコメディ。仕事や家庭・家族で色々とストレスを抱えて,このところ著しく腹の調子が悪く,毎日90分もトイレに入っているダンカン。ある日,猛烈な腹痛に襲われると,気絶している間に,なんとお尻(肛門)から何かが出てきて,ストレスの元であるダメな同僚を惨殺してしまった。やがてこの小さいけど凶暴な怪物は,ダンカンのストレスが頂点に達すると腹痛とともに出てきて,ストレスの原因を次々と殺戮していく。

なにせお尻から出てくる「あれ」ですから,汚くてアホな映画ですが,そのアホらしさが面白い。要するに無意識の願望達成の具現化であり,人間の攻撃性の体現であるお尻の怪物。翻れば,誰もが怪物を飼っているけど,なんとかそれを抑制している。けど,抑制も限界を超えると,外に出てくる。出てくる前に,上手にその攻撃性と付き合っていかなければならない。そういう,徳の高~い映画です。

★★


2021年12月13日

タイチー

映画『太極』を観たので,ずいぶんやっていなかった太極拳(タイチー)をやってみました。やっぱり,気の流れる感じは心地よい。

膝(特に左膝)を悪くしてもう随分経ちます。膝を曲げる方向が良くなかったのか,稽古をすればするほど膝の痛みが悪化したので,タイチーをやらなくなっていました。

久し振りに動いてみて,まぁ,ぼちぼち動けました。でもまた膝の痛みが悪化するのは嫌だなぁと思いつつ・・・。

ただ,いつもはナイファンチばかりやっていましたが,先月ぐらいからパッサイもやってみたところ,意外と猫足立ちの締めが内転筋に効いて,それでいて膝の痛みも悪化せず,なんとなく良い感じでした。だから,つま先の膝の方向さえ気をつければ,タイチーもできるかもしれません。

僕はかなりO脚なので,つま先を外側に開くよりは締めた方が良いのかもしれません。タイチーの師匠のスティーブが,外側に開けと言うので結構開いてやっていましたが,そこが良くなかったのかも。

一方で,内側に向けるサンチン立ちもまた結構膝に来ます。だから,ちょうど良いところを探らないといけないことは確か。難しい。ナイファンチも,サンチンのように絞りすぎると膝にチリチリと電気が走ります。

しかしながら,膝の調子の良さは,もしかしたら杖道のおかげかもしれません。杖道を始めて半年ほど経ちますが,全体的に良い方向に行っている気がしています。武術で膝を悪くして,整形外科(のヒアルロン酸)でも理学療法科(のリハビリ)でもあんまり効果がなかったのですが,結局,武術が効くというのは皮肉なものです。

いやいや,もしかしたら,靴のせいかもしれません。長年,靴が合わなくて悩んでいましたが,比較的合う靴が見つかって,それで外出時の歩行に無理がなくなって,膝への負担が減ったのかもしれません。

また悪化するかもしれないので,身体と対話しながらですが,那覇手よりも首里手の形の方が,僕の膝には合ってるのかもしれません。タイチーも,気の流れを感じるのは心地よいので,ぼちぼち対話しながらやれれば良いかなと思います。


太極(TAI CHI)ゼロ

(原題:Tai Chi Zero)(香港,2012)

超シンプルで分かりやすい,アニメ的なカンフー映画。主人公は,おでこに角のある異形の男・楊露禅。生まれつきの戦闘能力で天理教の戦士として重宝されていたが,軍医からは死が近いことを告げられ,体内の気の流れを調えるべく,陳家溝に伝わる秘拳「陳家拳」を学べと諭される。なんとか陳家溝に辿り着くが,秘拳ゆえ誰も露禅に拳法を教えてくれない。宗家・陳長興に弟子入りすべく,粘りに粘る露禅。果たして・・・というお話。

楊露禅は,実在する人物であり,「楊家太極拳」の創始者。諸説ありますが,楊露禅が陳家溝に伝わる拳法を学び,それをもとに編み出したのが,いわゆる「太極拳」です。だから,現在でも「陳家太極拳」というのがありますが,厳密に言うとあれは「陳家拳」であり,楊露禅の創始した拳法を「太極拳」というのが正しい・・・という説です。

実際,陳式と楊式は,確かに似ていますがいろいろと違います。一般的に知られていて,多くの人がやっている二十四式簡化太極拳は,主に楊式の動きに基づいていますから,「陳式(陳氏,陳家)太極拳」というのは,ちょっと違ったニュアンスの太極拳です。まぁしかし,一般の方から見ればほとんど同じですが(笑)。

僕がハワイで習ったのは楊式です。楊露禅の孫・楊澄甫の弟子,董英傑の弟子であるT.Y.Pangがハワイで太極拳や八卦掌を教えたのですが,そのときの弟子の一人がスティーブ・ヤング。この人が僕のタイチーの師です。

ただ,この映画で出てくる陳家溝の秘拳は,もう全然,すっかり楊式です。陳式っぷりは全くありません。その方が一般的に分かりやすい太極拳だからだと思うし,タイトルも「太極(タイチー)」だし。

★★


2021年12月11日

キャビン

(原題:The Cabin in the Woods)(アメリカ,2011)

なんだこれ(笑)。ありがちなホラー映画の文法通りに始まるこの映画。都会の若者達(大学生)が湖畔にある小屋(キャビン)に遊びに行く。現地到着前にガソリンを入れようと立ち寄るスタンドの親父は暗示めいたことをしゃべって怪しい。辿り着いた先は,森の中にたたずむおどろおどろしい古ぼけた小屋。まぁでもいっか,とにかく湖へGO!でも,観てるこっちからすると,この映画,ちょっと何か違うぞ。何かハイテクな研究所然としたところで,何かが同時に進行している。

というわけで,観てもらえればすぐ分かるわけですが,コンセプトとなるアイディアは良かったし,前半部分の物語構造でもってもっと徹底的に突き詰めてもらいたかった。なんとなく尻すぼみ感は否めない。映画は,どう風呂敷を畳むかが難しいし,そういう意味で最後のクライマックスはやっぱり重要だと思います。なんでクライマックスってドタバタになることが多いんだろうなぁ。最後の最後で,シガニー・ウィーヴァー。これはこれでメタ的に確かに面白いけど,ここは黒スーツを着たトミー・リー・ジョーンズが良かったんじゃないか?

話としては,いわゆるメタ映画で,そこは面白い。クライマックス前まで存分に笑える。だから,タイトルもThe Cabin in the Woodsで,題字もいかにもホラー映画。謎がはっきり明かされるところまで良い。でも,その後はもうスッチャカメッチャカ。なお,ホラー映画のメタ視点で言えば,『タッカーとデイル 史上最悪にツイてないヤツら』も面白かったね。

★★


ランボー ラスト・ブラッド

(原題:Ranbo: Last Blood)(アメリカ・スペイン・ブルガリア,2019)

「ランボー」シリーズの第5弾で,たぶん最後の作品。御大シルヴェスター・スタローンは1946年生まれなので,公開時はなんと76歳!!そうか~,76歳でこのアクションか~。信じられん。

シリーズ最初の作品『ランボー』は,邦題こそ「ランボー」だが,そもそもの原題は「First Blood」。だから今回の副題は「Last Blood」。first bloodは直訳すれば「最初の血」という意味ですが,これはボクシング用語で”Who drew first blood?”(最初の血を引き出したのは誰だ?→先に手を出したのはどっちだ?)から来ているみたいです。『ランボー』が,まさにそういう話ですからね。先にちょっかいを出したのは警察の方だ,というわけです。実際,映画の中でも"They drew first blood, not me"と言っています。

今回のラスト・ブラッドも,せっかくアリゾナの牧場で静かに暮らしてたのに,子ども(孫?)同然の娘をメキシカンマフィアに誘拐されたジョン・ランボー老人は,娘奪還に突入するわけです。

老人だと言っても,数々の受勲歴を持つ最強の元陸軍特殊部隊(グリーン・ベレー)。ただの老人だとなめてたメキシカンマフィアの末路は悲惨です。映画としても,観る側はもう,よくよく知っているランボーですから,とにかく,そこんところを徹底的に描いています。人体破壊殺戮描写が半端ない。

★★


死霊館 エンフィールド事件

(原題:The Conjuring 2)(アメリカ,2016)

『死霊館』の続編。エドとロレインのウォーレン夫妻の心霊調査を描いた第二弾。監督は同じくジェームズ・ワン。この「死霊館」はスピンオフというか,違う監督による派生話がいくつも出ていて(ジェームズ・ワンは製作・原案などで関わってる),それぞれ人気のようです。その中でも,ジェームズ・ワン本人が監督した作品が,これと,あと『死霊館 悪魔のせいなら,無罪』(2021)。この邦題,どっかで聞いたことのあるリズムと思ったら,やっぱり。同じワーナーブラザーズジャパンでしたね。

心霊研究家なので,決して教会の神父ではないから,悪魔払いはできない。つまり,二人はエクソシストではない。映画の中では,スタンスとしてはあくまで教会に依頼された事前調査をする,もしくは個人的に依頼のあった場合に調査をして教会に悪魔払いを進言する,という感じです。

ポルターガイスト現象は世界各地で起きていて,たいがいは何らかの自然現象が関係していたり,建物の構造上の問題だったりして,物理的客観的に説明できたりする。そのことは前作でも今作でも触れられています。だから,そういう物理的説明を越えて,何らかのはっきりした具体的証拠(音声や映像,写真など)が得られれば,悪魔払い(エクソシスト)が来てお祓いをしてくれる,というシステムになっている。

そういう状況だから,この「エンフィールド事件」と呼ばれるポルターガイスト現象も,当時,マスコミで取り上げられ,科学者(心理学者)からはでっち上げ(狂言)だと指摘される。現実は,確かにその通りだし,まぁ,僕でもそうすると思います。

が,しかし。それが映画。悪魔は本当にいるのです。人間を欺き,人間を少しずつ貶めていく邪悪な存在は,確かに存在するのです。そういう映画です。だから怖い。

★★★