2022年9月28日

錯覚の科学

菊池聡 2020 放送大学教材

菊池先生の,放送大学の科目「錯覚の科学」の教科書。知覚や認知の錯覚から社会心理学的なバイアスまで含めて(さらには絵画芸術との関わりまで含めて),幅広く「錯覚」を解説。菊池先生の研究と本は昔から好きで,何冊か読みましたが,これもたしか,戸田山先生の『教養の書』で紹介されてたから購入したような記憶が。いずれにせよ,これもまたとても勉強になりました。



2022年9月26日

遠野物語remix

京極夏彦・柳田國男 2014 角川ソフィア文庫

京極夏彦が,柳田國男『遠野物語』の中の話を並べ替えて再構成し,(原本をできるだけなぞりつつも京極風に)現代語に変えた,まさにリミックス版。これを読めば,遠野を舞台とする『遠巷説百物語』が『遠野物語』をベースにしていることが分かって,さらにまた楽しい。単行本は2013年発行で,この文庫版には柳田の『遠野物語』も付録でそのまま付いている。



2022年9月21日

ピーターラビットの謎:キリスト教図像学への招待

益田朋幸 (1997) 東京書籍

戸田山先生の『教養の書』で紹介されていたので読みました。西洋美術史の中の「キリスト教図像学」について,楽しく知ることができました。知らないと分からないことがある(知っていると分かって面白いことがある)ことが分かる,非常に良い例だと思いました。

ピーターラビットは見たことはありますが,読んだことはなく,キャラクターだけ知ってました。この本は,シリーズ最初の絵本である『ピーターラビットのおはなし』に出てくる挿絵の分析を通して,西洋美術,特にビザンティン美術の特徴について解説しています。




2022年9月20日

ホラーマニア VS 5人のシリアルキラー

(原題:Vicious Fun)(カナダ,2020)

人体破壊場面がグロいけど,定番ホラーのパロディでもあって,面白かった。痛快でテンポも良いから,もう一回観たくなる。

マニアックなホラー雑誌のライターをしているジョエルは,鯨飲して寝込んでしまい,本物のシリアルキラーたちの会合に紛れ込んでしまった。適当にごまかそうとするがすぐにバレて,あわや殺されそうになるが。

★★★



FREAKS フリークス 能力者たち

(原題:Freaks)(カナダ/アメリカ,2018)

『Xメン』シリーズもそうですが,「ミュータント」とか「フリーク」とか,超能力を持つ者が一般の人々から恐れられ迫害されるという設定の近未来ものは多い。見たことのあるものでいえば,『PUSH 光と闇の能力者』は,超能力描写とそのバトルの描写が良い。『CODE 8』では,能力者は社会的弱者か反社会的勢力。今回の『フリークス』も,なんとかばれないように隠れて生きる父と娘の話。超能力の描写や設定いずれもグッド。

★★★


2022年9月14日

バッド・ヘアー

(原題:Bad Hair)(アメリカ,2020)

時は1989年。直毛に憧れる黒人女性のアナ。黒人音楽専門のチャンネルを製作しているテレビ局に勤めているが,白人の上司がやってきて番組構成を刷新することに。番組の司会をやりたいと願っていたアナは自分の企画を伝えるが,ウィッグをつけてまるで白人のような黒人女性の上司からも,「サラサラヘア」にすることを暗に迫られる。従わないと会社をクビになる。意を決して紹介された美容室にいき,縮毛矯正ではなく,地肌に直接縫い込むキツいウィッグを「施術」される。

人種と文化。見た目と中身。都市と民俗。美と醜。ホラー映画ですが,いろいろと考えさせられるところはあります。

★★


「トランプ信者」潜入一年:私の目の前で民主主義が死んだ

横田増生 2022 小学館

端から見ればドナルド・トランプとその信者の妄想的な陰謀論は空虚で滑稽であり,分かりやすいほどに虚構的(フェイク,バーチャル)なのですが,しかし,アメリカ合衆国という国はその虚構が現実となっていた(そして今も,そのままなっている)ことを思うと,ものすごく奇妙であるとともにそら恐ろしく感じます。経済力・軍事力ともに大国ゆえに,そのトップが独裁的な陰謀論者となれば,世界規模での平和と安全が揺らぎます。ウクライナでは現実に,隣国である大国のトップの独裁(妄想?)により,その平和と安全が侵害されています。

トランプに話を戻せば,我々日本人からすれば,なぜこれほどまでに明らかな虚偽の陰謀論を語り続ける彼を支持する信者が多数(それもアメリカを二部するほどの多数)いるのか,不思議でなりません。アメリカ人は陰謀論に親和性が高いことは研究者の知見の引用として本書にも書かれていますが(キリスト教的背景と合理主義的背景によって,自分にとっての不合理さを解決する妙案として「闇の政府」などの陰謀論に帰結する),それはそうとして,そもそも「なぜトランプはアメリカ人(の多く)に人気があるのか」の秘密が,本書を読むと分かります。

特には,第七章が重要です。ここを読めば,人気の源泉が分かります。トランプ人気への根本的な疑問が解消されます。ああ,なるほど,だから人気があるのねと,納得できます。あの変わった髪型の攻撃的な暴走老人であるトランプがなぜこれほどまでに根強い人気があるのか,日本人にはイマイチぴんとこないのはなぜなのかの理由が分かります。そもそもの始まりにおいて,長い年月かけて,かなり脚色された虚構を現実だと思い込んでしまっている人が,アメリカ人の中に多数いる,ということですね。これは相当に根深い。

トランプ信者をただの暴徒や狂信者とみなすのではなく(つまり,個人の特性に帰すのではなく),様々なメディア(虚構)による影響がいかに人間の認知や感情を変容させるか,またそうした虚構にすがりたくなる原動力となっている不平や不満がいかに醸造蓄積されているのか,についての壮大な社会実験場となってしまっているアメリカ合衆国という国を,文化的社会的心理的に分析していく必要があるかもしれません。

トランプ禍は,これからも当面続きそうですから,アメリカという国がどこに向かっていくのか,対岸の火事とは思わないようにしつつ,観察を続けたいと思います。


2022年9月13日

WE GO ON ─死霊の証明─

(原題:We Go On)(アメリカ,2016)

死後の世界は存在するのか。幼いころに父親を亡くしたマイルズは,バス以外の乗り物に乗れないし,一人で外も歩けない。自分で車を運転して事故を起こす夢を何度も見る。とにかく死を連想させるものが怖い。そこで新聞広告に「自分に,死後の世界があることを証明することができたら3万ドルの報奨を与える」と出す。

マイルズの母親役は,けっこう年取ってるけど,ずいぶん綺麗な人だなぁと思ったら,この人,昔,「スーパーマンⅢ・電子の要塞」の恋人役やってた人なのね。アネット・オトゥール。

話としては,まぁまぁ悪くなかったけど,ただ1点だけ,決定的な凡ミス。それが気になって頭から放れなくて。あそこであれがなければなぁ・・・。もったいない。話の筋として,ものすごく重要な,肝心なところであの凡ミスは痛い。編集してて気が付かなかったのかなぁ。

★★


2022年9月6日

私はあなたのニグロではない

(原題:I am Not Your Negro)(アメリカ/フランス/ベルギー/スイス,2016)

ジェームズ・ボールドウィン(1924-1987)の『Remenber This House』を基にしたドキュメンタリー映画。ナレーションは,サミュエル・L・ジャクソン。公民権運動指導者のメドガー・エバース,マルコムX,マーティン・ルーサー・キングについての回想を通して,アメリカにおける黒人差別問題の本質を見せる映画。

★★★


将棋は面倒くさいゲームである

将棋は面倒くさいゲームである。

とりあえず,将棋を始めて,日本将棋連盟公認の2級まではたどり着きました。初段まではと思って,何冊も定跡書を読んだり,棋譜並べをしたり,詰め将棋をしたりして,それなりに指せるようにはなったと思います。

しかし,将棋は勝負のゲーム。勝ち負けを競うボードゲームなので,勝つときもあれば,必ず負けます。これまで何度もこのブログに書いてきましたが,やっぱり負けると悔しい。勝ち負けよりもいまここの駒のやりとりに集中する(ことを楽しむ)マインドフルネスの良い練習だと思うけれど,結局,負けるとトホホな気分になります(笑)。

特に「トホホ」な気分になるのは,集中しきれずに自らのミスで自滅するとき。そう,将棋は集中力がものすごく必要なゲームなのです。ちょっとしたスキマ時間や仕事の合間の気分転換にぼんやりしたいときなどに,直感的にサクサクやるような反射神経重視のゲームではない,極めて高度な認知的処理を要する,ものすご~くエネルギーを使うゲームなのです。

(これはたぶん,勝ちたい,あるいは,負けるとしてもミスはしたくない,という思いが強いからだと思います)

さて勝負するぞと,気合を入れて盤に(タブレットやスマホに)臨み,一手一手集中して指す。最上手を指そうと思って考えすぎると時間切れになるので,残り時間との(つまり自分との)勝負でもある。これは疲れます。気分転換にと思って,あるいは,合間の時間つぶしにと思ってやるゲームではありません。そうやってぼんやり集中せずにやれば,だいたいミスをして負けます。負けると気分は当然良くない。気分転換に不愉快になるという,最悪の循環。時間を無駄遣いした気分。

ちゃんとやろうとすればエネルギーをかなり必要とし,一方,適当にやればミスを連発して負ける。これじゃ,右に行っても左に行ってもなんだかよろしくない。だから,このところ,将棋は確かに娯楽であり単なるゲームなんだけど,これってあんまり生半可にやるもんじゃないような,そんな気がしてきました。

世の中,将棋愛好家はたくさんいます(600万人ぐらいらしい!)。みなさん,いろんな気分で将棋を指しているんだろうと思いますが,その中でも,高段者(もちろんアマ)の人って,本当にすごいと思います。確かに僕は将棋に不向きで,世の中もっと簡単に昇級昇段していくのかもしれませんが,どうやったら一体,初段になるのか,まったく想像がつきません。なぜなら,相当な集中力を相当な時間注ぐための時間とエネルギーが必要であると,つくづく思うからです。

人間,得意不得意はあるでしょうね。何事も,それなりの努力にそれなりのポジティブなフィードバックがあることで,継続できるし,さらなる工夫や努力を重ねることができます。なかなかフィードバックがなかったり,フィードバックがネガティブであれば,やがてその行為から離れていくのが自然です。なんだってそうだと思います。

このとき,「それなりの努力」として注ぐエネルギーが,現状の様々な活動の中でどのくらいを占めるか,の問題でもあります。必要なエネルギーの分量は個人の力量(得意不得意)と比例関係にあるでしょう。プロでない限り,誰しも仕事やそのほかの活動がある中で,それに注げるエネルギーは限られているわけです。将棋は,その限度を超えるような気がする。少なくとも自分の場合は。

つまり,要するに,最近改めて「将棋って,面白んだけど,面倒くさいゲームだなぁ」と思い始めています。その面倒くささって何だろうなぁと思って,上記の通り,分析してみました。

「だったら,遊びだと思って,適当にやればいいじゃん,ゲームなんだし,単なる暇つぶしでしょ」というご助言があるとすれば,それはまさにその通り。でもね,繰り返しますが,適当にやるとミスをして負けるんですよ(笑)。面白くないんですね,勝敗を競うゲームだけに。負けを見込んでやるゲームって,やる意味ありますかね。


このように,面倒くさいゲームなのですが,ではなぜエネルギーを要するかというと,当然ながら,将棋は盤上の駒の展開がものすごく複雑だからです。だからこそ,様々な囲いや戦型が考案されているのであって,その戦い方もいろいろです。その割に,自分ぐらいのレベルだと,まだまだどうしても固定的な(つまり,得意な)囲いや戦型でしか勝負できず,ついワンパターンになりがちです。ならば,定跡書を読んだり棋譜並べをしてもっと研究すればいいじゃん,新しい戦型を覚えればいいじゃん,となりますが,結局,そういう努力をするために,またさらに時間と労力がかかります。

あと,スポーツと一緒で,数日間やらないだけで勘が鈍ります。それは自分が年を取ったからかもしれないですが,展開や読みは,常日頃(つまり毎日それなりに)やっていないと,それこそ上達は見込めません。ここまでやってきたのだからと思って,なんとなく離れにくいのも(コンコルド効果!),こりゃ面倒くさいゲームだなと思う一因です。

要するに,深すぎるんスよ,将棋って。深すぎ。


ならば,気分転換にちょうど良いゲームってないかなと思って,最近,オセロを始めました。オセロも奥が深いと思いますが,オセロの良さは,マスが埋まれば必ず終わるし(時間が読める),やってみる限り定跡も将棋ほど複雑ではないしょう(きっと)。適当に直感的な打ち方をしてもそれなりに楽しめるし,集中して打てば展開によっては上級者にも勝てる場合もありそう(まぁ,相当にうまい相手にはそんなうまくはいかないと思いますが)。

将棋でうんうん悩むよりも,いっそ,オセロに鞍替えした方が良いんじゃないの?そんな風に感じております。

でも,まぁ,好きこそものの上手なれ,って言いますからね。高段者の人は,やっぱり,心底好きなんでしょうね~,このゲームが。僕ももちろん将棋は好きですが,それほどじゃないってことなのかもしれません。好きであることとエネルギーを注ぐことって,比例してるでしょうからね。

追記:オセロもやっぱり,ある程度のところまで行くとなかなか勝てません。というか,やっぱりオセロも奥が深いわ。



2022年9月2日

教養のグローバル・ヒストリー

北村厚 2018 ミネルヴァ書房

戸田山先生の『教養の書』で紹介されていた本書。副題は,「大人のための世界史入門」。読んで感動しました。自分が知ってる断片的な世界史の知識(それも,けっこうあいまいな断片的知識)が,グローバル・ネットワークという観点から一つにまとまっていく面白さ。ほほう,なるほど,そういうことか,ははん,そういう風につながるのね,これはこれと関係があったのか,などなど発見多数。

カバーにはこう書いてある。

「高校世界史Bの教科書にある内容をもとに,地域や文化をつなぐネットワークを俯瞰したグローバル・ヒストリーの通史。日本史,西洋史,東洋史の枠組みを突破し,世界中が結びあう歴史を学ぶ。地図や図版を多数収録,大人が学び直すための世界史入門」

まさにこの通りです。今の高校は「歴史総合」という科目になって,こういうグローバルな歴史学習が当たり前の時代になっているようですが,30~40年前の自分が中学や高校のときに習った歴史に関する拙い知識が新たな視点と新たな情報で結びついていく快感は,なかなかのものなので,今時の中学生や高校生がとってもうらやましい。こうやって教わってたら,もうちょっと歴史が面白いと感じられたかもなぁ。


エクストロ

(原題:Xtro)(イギリス,1983)

変な映画を観てしまった。夢に出てきそう。いろいろと気持ち悪いし,グロいし,不気味だし。エイリアン的なもの,ゾンビ的なもの,超能力的なもの,なんかいろいろてんこ盛り。

★★


サマリタン

(原題:Samaritan)(アメリカ,2022)

清掃員のスミスじいさん(シルベスター・スタローン)は,実は死んだとされているスーパーヒーローなのではないか?と勘繰る少年サム。ヒーローの復活を願うサムは,しつこくまとわりつく。

スタローンのアクションもキレがあって良い。

★★★