2021年4月30日

10 クローバーフィールド・レーン

(原題:10 Cloverfield Lane)(アメリカ,2016)

2008年に『クローバーフィールド』という映画がありました。これは,エイリアン・パニック映画ですが,いわゆるモキュメンタリー映画でして,斬新で面白かった。今回のこの『10 クローバーフィールド・レーン』はその続編・・・なのかと思いきや,別の映画です。実際のところ,「全く」別の映画ではないのですが,99%別の映画です。どちらも,『スター・ウォーズ』新三部作エピソードⅦとⅨを監督したJ・J・エイブラムスが製作。

運転中,追突されて事故を起こしたミシェルは,気がつくとそこは地下の部屋。足を骨折しているようで,しかも錠でつながれている。これは明らかにおかしな状況であり,誘拐されたと焦っているところに,太った壮年の髭男が現れる。男は,ここは自分の農場にある地下シェルターだ,外に生存者はいない,おとなしくしろ,生きていただけ感謝しろ,俺の言うことを聞け,とミシェルに迫る。

普通,この状況なら誰でもパニックになります。頭のおかしな男に誘拐されたと思うのは当然です。ちなみに,もう一人,この地下シェルターに逃げ込んできた男がいます。一体,外では何が起こっているのか。それは本当なのか嘘なのか,この先どうなるのか,という具合に謎だらけなわけですが,話はここから二転三転します。

個人的には,実は,『クローバーフィールド』の続編だと思って昔,ちょっと冒頭だけ見たのですが,全然違う話なので「何じゃこりゃ!?エイリアン・パニック映画じゃなくて,誘拐・監禁映画なの?」と思って,すぐに観るのを止めてしまったのです。今回,たまたま,また観る機会があって,さて,ちゃんと観てみようかと思って観直してみた,というわけです。

そうやって改めて観直してみると,これはこれでなるほど,面白い設定だと思いました。でも何だろう,けっこう面白い設定なのに,その面白さが爆発するかしないかのところで中途半端にしぼんでしまうような感じがあります。なんかもっとあれこれ,小さなエピソードを盛り込んで,地下シェルターの謎を,つまり,どこまで本当なのか嘘なのか,どんどん分からなくしていけばいいのに。また,最後はバッドエンドにしても良かったと思います。タイトルは一応,最後に分かります。

しかし,出演している役者はたった3人(+途中でちょっとだけ1人),ほぼ全編通して地下シェルターのセット撮影のみでこれだけの映画を作ってしまうんだから,それはすごいと思いました。

★★


2021年4月29日

テルマ

(原題:Thelma)(ノルウェー/フランス/デンマーク/スウェーデン,2017)

田舎を出て都会の大学に来たテルマは,入学早々,図書館で癲癇様の発作を起こす。かたや,プールで会ったアンニャに少しずつ惹かれていく。厳格なキリスト教の家庭に育ったテルマは,奔放なアンニャに惹かれるが,お酒やタバコを飲んでしまったり,アンニャとの同性愛に悩む。

とこう書けば,思春期の女子の悩ましきキャンパス生活を淡々と綴ったような,北欧の青春映画のように聞こえますが,そう一筋縄ではいかないのがこの映画。まずその癲癇様の発作はいろいろと検査した結果,心因性のもので(いわゆる「ヒステリー発作」であることが示唆されます),そこから(現実的にはありえませんが,しかし,昔は信じられていた)超自然的な力との関連が暗示されます。そう,これ,あえて分類すればファンタジー・ホラー映画でしょうか。

映画は,仲の良さそうな父娘・・・なのに,父親がその幼い娘を猟銃で後から撃とうとする(が撃てない)場面で始まりますから,いきなり不穏なスタートで,一体これどういう映画なんだ!?と目が離せません。掴みは完璧です。

恋人,葛藤,家族,自立・・・込められたテーマは王道といえば王道です。個人的には,大学で教えている私としては,こういう大学生が主人公でキャンパスが舞台の映画は好きです。

★★


2021年4月27日

タクシー運転手:約束は海を越えて

(原題:A Taxi Driver)(韓国,2017)

泣けるな~,この話。主演はソン・ガンホ。いわゆる「光州事件」の話ですが,実話に基づくようです。1980年,ドイツ人記者ユルゲン・ヒンツペーター(トーマス・クレッチマン)が光州で起こっている出来事を報道するために,東京からソウルに向かう。記者を乗せてソウルから光州に向かう送迎が10万ウォンだと食堂で盗み聞きしたキム(ソン・ガンホ)は,先回りして記者を乗せて光州へと向かう。しかし,そこで見た光景は,軍が民衆を無差別に虐殺するという,悲惨な現状だった。

と,光州事件については実はほとんど何も知りませんでした。映画の冒頭でも触れられますが,かいつまんで書きますと,朴正熙大統領が暗殺され独裁体制が終わった後,全斗煥将軍(後,大統領)が起こした軍事クーデターと戒厳令下で起こった民主化・反軍部デモで,民間人の死者数154名・行方不明者数70名(5.18記念財団)と,民衆デモとしてはかなり凄まじかったことが想像されます。

だって,これ,1980年の話ですからね。私はすでに9歳,小学校3年生です。ちょうど1980円のミッキーマウスの腕時計を買ってもらった年です。毎日,ドッチボールに明け暮れていました(「ぱろぱろエブリディ」という当時の名古屋ローカル番組で,「さすらいのドッチャー」っていうコーナーがありました。そのくらい,ドッチボールが流行ってました)。そんなノホホンとした平和な日々でしたが,お隣の国では「自国の軍隊に国民が殺されてた」とは,夢にも思いませんでした。子どもだったし,全く記憶にありません。

これを思うに,現在のミャンマーがほぼ同じ構図の状況であり,報道では民間人が700名以上も死亡しています。私は大学院の時の先輩にミャンマーの女性がいて(彼女は現在も日本に住んでいますが),その意味でなんとなく昔から親しみのあるこのミャンマーの現状に毎日,心を痛めています。国軍の蛮行も許せないですし,そういう惨状をなんともできずにただ様子を見ているだけの国際社会にも憤りを感じます。

メディアや通信が制限されたり,日本人記者も逮捕されたりして,当初は入ってきた国軍の残虐な行為も,最近は流れてきません。これもすべて国民の民主化デモを封じ込め,国際社会からの批判を避けるための情報統制です。

そういうことを考える意味でも,また,冴えないタクシー運転手の主人公がこの惨状を見過ごせずに勇気を振り絞って侠気を見せるところも,良い映画です。色んな意味で,今こそ,この映画を観るべきかもしれません。今,アジアの一国で,リアルに,同じ事が起こっています。

★★★


2021年4月26日

イエスマン:’YES”は人生のパスワード

(原題:Yes Man)(アメリカ,2008)

ジム・キャリーのコメディ。リラックスして観ていられる楽な映画です。自分や人生をネガティブに(否定的に,消極的に)生きてきた銀行員のカールは,離婚したり,友人に愛想を付かれたりしている。そんなとき,偶々出会った知り合いから,とある自己啓発セミナーに誘われる。そこでカールは,選択に迫られたらとにかく「YES」と答えろ,と迫られ,渋々受け入れることに。

と,ここから色々と人生が好転していくという話。最後にピンチも訪れるけどハッピーエンド,全編通して楽しく観ていられます。やっぱりジム・キャリーは観てるだけで面白いし切ない。日本で言えば誰だ?大泉洋か?

物事をネガティブに捉えるよりは,ポジティブに(肯定的に,積極的に)捉えて,一歩踏み出していくと違った世界が見えてくるよ。そういうメッセージです。ただ,それだけじゃこの映画に出てくる,ちょっと怪しげな自己啓発セミナーの「表面的な」教えと同じで,映画にもちゃんと描かれますが,そう単純なことではなくてね・・・とこの辺りは映画を観てもらえれば分かります。

★★


2021年4月23日

知覚と行為の認知言語学:「私」は自分の外にある

本多啓 2013 開拓社

認知言語学の中でも,特に認知意味論的なテーマについて,生態心理学的な観点に基づいた様々な角度からアプローチする,読み物として非常に面白い傑作です。認知言語学,認知意味論に興味のある人には是非オススメの一冊です。私は,全体通してものすごく楽しく読めました。

まずこの,本多先生の語り口が非常に軽妙です。ものすごくフランク。しかし,このフランクな語り口(書きっぷり)を,開拓社の編集者はよく了解したなぁと思いますが(笑),私としては,このフランクさがものすごく良かった。開拓社の編集者は凄い。開拓社万歳。

本書のポイントは3つ。「世界を知覚することは同時に自己を知覚することである」「世界を語ることは同時に自己を語ることである」「言葉には視点がはりついている」の3つです。このポイントに基づいて(常にこのポイントに戻ってくることで),いろんな角度から色んな言葉を取り巻く現象を紐解いていきます。

<あとがき>でも,「当たり前を発見」したい,ということを書いています。当たり前だと思ってること(普段,あんまり気にしていないこと)に,当たり前でないこと(言われてみれば不思議なこと)があって,それを発見したときの面白さは痛快です。そんな痛快な話が全21章に詰め込まれています。ですから,<はじめに>にも書いてある通り,本書は,じっくり考えることが好きな人,幅広い観点から考えることが好きな人,に向いています。


2021年4月20日

透明人間

(原題:The Invisible Man)(アメリカ,2020)

なかなか良かったです。透明人間というと,H.G.ウェルズ原作の映画『透明人間』(1933)なわけですが,それはつまり,透明になる薬を開発した科学者が悪さをする,例の包帯グルグル巻き人間です。

ずっと近いところで記憶にあるのは,ケヴィン・ベーコン主演の『インビジブル』(2000)です。この映画は,やっぱり科学者が透明になる研究を進めて,自分で実験体になる,という話。で,最初はちょっとしたイタズラ(性的なものを含む)で済んでいたけれど,だんだんと,実験の副作用なのか,凶暴になっていくというもの。このときは,包帯グルグルではなく,人体が徐々に透明になっていく描写が圧巻でした。確か,肉がなくなって骨になって・・・みたいな感じ。

今回の『透明人間』は,同じく科学の力という設定を踏襲していますが,また違った角度からの透明化で,なかなか面白いし,あり得そうだし,けっこう気持ち悪い。

ただ,今回の特徴はもちろんその透明化にもあるのですが,それともう一つ,透明人間に狙われる方の視点から観た恐怖を丁寧に描いていることです。なにせ,相手は見えません。見えない相手に敵うわけがないのはもちろん,「見えない相手に脅かされている」という訴えは,他者からすれば妄想の類いと解釈されてもしかたのない文脈なわけです。

だからこの映画は途中まで,主人公の女性は妄想や幻覚に脅かされる人(夫のDVによるPTSDから,被害妄想・関係妄想まで発症してしまうようになった統合失調症患者)という扱いを受けます。確かに,相手は見えない(いない)わけですから,本人がどう訴えようと,何の証拠もないわけで,結果的にそういう扱いとなるのは必然でしょう。

このように,この映画は,ホラーというよりもサイコサスペンスとしてよく出来ています。ブラムハウスは面白い映画を作りますね。ただ,ラストは賛否両論あるだろうなぁ。僕はもうちょっと違った幕引きでも良かった気がします。

★★


2021年4月15日

仮面ライダーアマゾンズ

(英語版タイトル:Amazon Riders)(日本,2016,2017)

これは映画ではなく,Amazonプライムビデオで配信されていたオリジナルビデオです。2016年にシーズン1(全13話),2017年にシーズン2(全13話)が配信されました。前々から知っていて,観たいと思っていましたが,Amazonプライムビデオで観ることができたので,ようやく全話観ました。

結論から言うと,個人的にはシーズン1の方が面白かったです。面白かったのでシーズン2も観ましたが,内容的にはやっぱりシーズン1でしょうか。何でも「2」は難しいですね。「1」による期待分が上乗せされるからでしょうか。

元々の「仮面ライダーアマゾン」(1974~1975年放送)はもう,そのまま僕はドストライクの世代です。母親がよく話していたのは,幼稚園の入園試験(面接)のとき(当時3~4歳。まさにアマゾンを毎週視聴中),先生から「何か一つやってみて(自分なりに自己表現せよ,という指示だったのだと思います)」と言われて,おもむろに「あ~,ま~,ぞ~~~ん!!」と変身ポーズを決めたらしいから,そうとう入れ込んで観ていたはずです。

アマゾンの前はX(エックス)で,後はストロンガーですから,記憶的にはやはりXはおぼろげで,アマゾンからストロンガー辺りはよく覚えています。アマゾンは南米から来た野生の人(半裸)で,野生で育ったから言葉が話せません。これ自体,子供心にどう判断して良いのか分からなかったような感覚が残っています。バッタの改造人間である1号・2号・V3・Xと違って,トカゲ?ピラニア?の改造人間だし。次のストロンガーはカブトムシでしょうから,アマゾンのモチーフはそもそも昆虫でさえない。そしてあの顔や姿と戦闘スタイル。ヒーローは変身前の人間の姿(=俳優)がスマートな男前なのが定番なわけですが,アマゾンのこの落差はすさまじいインパクトでした。

というわけで,このAmazonプライムビデオ全26話のアマゾンは,この元祖アマゾンライダーの顔と姿と戦闘スタイル「だけ」を継承した,まったく別のお話です。「アマゾン細胞」は人食い細胞。シーズン1は,アマゾン細胞から作られた人型の実験体4000体が事故により脱走。これを駆除する特殊部隊と,そもそもアマゾン細胞を開発した男(自分でアマゾン細胞を移植してアマゾン化),特殊な実験体として軟禁されていた男(主人公)の物語。シーズン2は,このアマゾン細胞が病原性細胞として人に感染するようになり,そこからアマゾン化した人間が増えていくことに。主人公はやっぱり特殊なアマゾンであり,死体からアマゾン化して兵器として使われている少女との間で,いろいろと物語が展開されます。

とりあえず,全26話観ることができたので,それなりに面白かったです。

★★


2021年4月13日

ヨーガ

ご縁があって,塩澤賢一師の『いのちが目覚める原初のヨーガ 開設と実技』(新泉社)をいただきました。本書の製作にあたって,塩澤師への取材と本書構成をした高山リョウさんから送っていただいたものです。高山さんとは月刊『秘伝』の取材で何度かお会いした方で,塩澤師のお弟子さんでもあります。本書をお送りいただき,ありがとうございました。



いただいたばっかりでまだ読んではいませんが,塩澤師のヨーガを紹介した本書は,きっと色々な発見があるのだろうと,今から読むのをたいへん楽しみにしているところです。

塩澤師は,知る人ぞ知るヨギーで,たしか,メディアにはあまり出たがらない方だったと思います。それでも,本書の帯分文(推薦文)を書いてらっしゃる藤田一照師の『現代坐禅講義』で対談されていました。特にシャバアーサナ(死体のポーズ)を重んじられていて,塩澤師のヨーガをもっと知りたいとずっと思っていました。

読んだらまた改めて,レビューしたいと思います。今月4月上旬に出たばかりですので,興味関心のある方は,まずは検索してみてください。

2021年4月12日

スター・ウォーズ:善と悪の哲学

ジル・ヴェルヴィッシュ(著)永田千奈(訳) 2019 かんき出版

別に『スカイウォーカーの夜明け』を観たから読んだわけではなく,読むために積んである本の順番がたまたまこれでした。

スター・ウォーズⅠ~Ⅵを題材に(なので,Ⅶ~Ⅸは出てきませんから,Ⅶ~Ⅸのネタバレは心配無用),哲学の古典的な問題から,政治的あるいは社会的な問題まで,主には倫理的な観点から扱っています。

著者はフランスの高校の哲学の先生。普段,スター・ウォーズをネタに授業してると想像すると,さぞ人気の面白い授業してるんだろうなぁと思います。フランスの高校生がうらやましい。きっと日本にも似たような先生がいると思うけど,高校で倫理って,受験科目としてメインじゃないから,あんまりいなさそう。うちの高校(愛知県立旭丘高校)は,今から30年前ですが,あったかなぁ。たしか記憶では政経って授業があって,その先生が破格で面白かったけど(3年生のとき,毎週の授業で,教科書なんて読まずに,リアルでディープな政治問題を生討論してた気がします),倫理の授業って,選択肢になかったような気がします。

ただ,各問題はそんなに掘り下げられることなく,サラッと表面をなぞる程度で,読んでいて深まることはありません。こういう議論もあるし,こういう意見もあるよね,っていう賛否両論・総論各論まぜこぜに並んでいる感じです。なので,スター・ウォーズを題材にして,世の中の倫理的な問題に触れる,そういう糸口にはなると思いました。だから,大学1年生の教養科目か,高校の授業として,ベストな内容だと思います。



2021年4月7日

スター・ウォーズ:スカイウォーカーの夜明け

(原題:Star Wars: The Rise of Skywalker)(アメリカ,2019)

完結編。皇帝パルパティーンはやっぱり生きてました。映像や展開は面白いし,よくできているけれど,なんだろう,この「もう一歩」感。たぶん,期待が大きいからだと思います。Ⅳ~ⅥとⅠ~Ⅲが良すぎたのかもしれません。

Ⅳ~Ⅵは,ベイダー卿の黒いマスクとヘルメットと呼吸音がいきなり異様だし,皇帝パルパティーンの見た目も恐すぎるだし,この人たちの残忍さと冷酷さは徹底しています。その恐怖の象徴であるベイダー卿が,なんであんなに恐ろしい人になっちゃったかを説いたⅠ~Ⅲが,面白くないわけがない。観客は知りたいから。

難しいのは,Ⅵでクライマックスを迎えているわけで,構造からするとここからもう一回持ち上げていくのは至難の業でしょう。走りきったと思ったマラソンが,あと20キロ残ってました,という展開なのだから,さてどうやって走る?

Ⅶ「フォースの覚醒」は,なつかしキャラ再登場映画という点で良かったし,Ⅷ「最後のジェダイ」もそこそこ面白いんだけど,結局,このⅦ~Ⅸの3部作は何がテーマで,Ⅰ~Ⅸを通して何が言いたかったのか(どういう位置づけなのか),そして最終的に着地点は何なのか(別にそんなのはない?),その辺りのピントがよく分からないⅦ~Ⅸだなぁと,思った次第です。SWファンの人からすれば,もっと色々言いたいことが,賛否両論含めてたくさんあるんだろうけれど。

物語の深みは,ストーリーはもちろんだけれど,それを支える世界観の広がりと深みだと思います。それは,サブキャラや建造物,道具,会話,衣服,食事,景色,武器,乗り物,動作など,いろいろ仕掛けられるはずです。今回も色々仕掛けているけど,なんだかどのポイントも小手先な感じがして「もう一歩」感が否めません。Ⅰ~Ⅵでやり尽くしてるから?いや,きっと,期待が大きいのでしょう。

でも,まぁそのうち,じわじわ来るのかもしれません。師から弟子へ,フォースを継ぐ物語として。完結編と言いながら,あと何年もしたら,続編が出るかもね。それはそれで期待して観てしまうと思いますが。

★★


2021年4月5日

心と他者

 野矢茂樹 2012 中公文庫

1995年出版の『心と他者』(勁草書房)の文庫版です。文庫化にあたって,師である大森荘蔵氏の書き込みコメントを併記しているところが,文庫版の良いところ。さらに,大森荘蔵氏直筆メモも掲載されています。

本書の続編というか,拡張版といえる『心という難問』を先に読みました。『心という難問』は,2017年に和辻哲郎文化賞を受賞しています。なので,本書で書いてあることはほぼそのまま『心という難問』に発展的かつ明快に継承されているので,時間のない人は『心という難問』を読んだ方が良いです。他者問題(他我問題)に対する考察も,より踏み込んでいます(本書は,最後,そこんところがあんまり踏み込まれていない)。

私の場合,『心という難問』で取り上げているテーマに強く関心があるので,野矢氏がその前にどういうことを考えていて,それがどう発展してそうなったのかを知りたくて,読みました。上述の通り,他我問題への踏み込みが,こっちの方が甘い。というか,今後の考察に委ねる,という形で終わっています。なので,その約束を『心という難問』で果たしているわけです。

本書のタイトル通り,私のここ10年ぐらいの大きな興味関心の一つ(二つ?)は,「心」と「他者」です。なので,ここから,今度は,大森哲学に少しずつ手を広げていこうかと思っています。