2021年4月20日

透明人間

(原題:The Invisible Man)(アメリカ,2020)

なかなか良かったです。透明人間というと,H.G.ウェルズ原作の映画『透明人間』(1933)なわけですが,それはつまり,透明になる薬を開発した科学者が悪さをする,例の包帯グルグル巻き人間です。

ずっと近いところで記憶にあるのは,ケヴィン・ベーコン主演の『インビジブル』(2000)です。この映画は,やっぱり科学者が透明になる研究を進めて,自分で実験体になる,という話。で,最初はちょっとしたイタズラ(性的なものを含む)で済んでいたけれど,だんだんと,実験の副作用なのか,凶暴になっていくというもの。このときは,包帯グルグルではなく,人体が徐々に透明になっていく描写が圧巻でした。確か,肉がなくなって骨になって・・・みたいな感じ。

今回の『透明人間』は,同じく科学の力という設定を踏襲していますが,また違った角度からの透明化で,なかなか面白いし,あり得そうだし,けっこう気持ち悪い。

ただ,今回の特徴はもちろんその透明化にもあるのですが,それともう一つ,透明人間に狙われる方の視点から観た恐怖を丁寧に描いていることです。なにせ,相手は見えません。見えない相手に敵うわけがないのはもちろん,「見えない相手に脅かされている」という訴えは,他者からすれば妄想の類いと解釈されてもしかたのない文脈なわけです。

だからこの映画は途中まで,主人公の女性は妄想や幻覚に脅かされる人(夫のDVによるPTSDから,被害妄想・関係妄想まで発症してしまうようになった統合失調症患者)という扱いを受けます。確かに,相手は見えない(いない)わけですから,本人がどう訴えようと,何の証拠もないわけで,結果的にそういう扱いとなるのは必然でしょう。

このように,この映画は,ホラーというよりもサイコサスペンスとしてよく出来ています。ブラムハウスは面白い映画を作りますね。ただ,ラストは賛否両論あるだろうなぁ。僕はもうちょっと違った幕引きでも良かった気がします。

★★


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