2021年4月5日

心と他者

 野矢茂樹 2012 中公文庫

1995年出版の『心と他者』(勁草書房)の文庫版です。文庫化にあたって,師である大森荘蔵氏の書き込みコメントを併記しているところが,文庫版の良いところ。さらに,大森荘蔵氏直筆メモも掲載されています。

本書の続編というか,拡張版といえる『心という難問』を先に読みました。『心という難問』は,2017年に和辻哲郎文化賞を受賞しています。なので,本書で書いてあることはほぼそのまま『心という難問』に発展的かつ明快に継承されているので,時間のない人は『心という難問』を読んだ方が良いです。他者問題(他我問題)に対する考察も,より踏み込んでいます(本書は,最後,そこんところがあんまり踏み込まれていない)。

私の場合,『心という難問』で取り上げているテーマに強く関心があるので,野矢氏がその前にどういうことを考えていて,それがどう発展してそうなったのかを知りたくて,読みました。上述の通り,他我問題への踏み込みが,こっちの方が甘い。というか,今後の考察に委ねる,という形で終わっています。なので,その約束を『心という難問』で果たしているわけです。

本書のタイトル通り,私のここ10年ぐらいの大きな興味関心の一つ(二つ?)は,「心」と「他者」です。なので,ここから,今度は,大森哲学に少しずつ手を広げていこうかと思っています。




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