2015年2月27日

武術と健康

しかし,最初から「これは武術です,哲学です」と言ったところで,人は集まってこない。だから最初は健康の維持・増進を志向した人たちが集まればそれだけでもありがたい。そうしてそのうち,その中で,太極拳の本当の意味,本来的な良さ,本質的な奥深さが分かれば,場合によってはそれがある人の稽古へのモチベーションとなり,徐々に志向が変化していく。

ただ,こういう変化は一部の人でしょう。基本的には最初の動機(健康の維持・増進)のまま続けることが多いのだろうと思います。

なかなか「武術です」と言っても,いまどきあまり人は集まってきません。空手なんていうと,普通の人にとっては抵抗があるのでしょう。武道をやりたい,武術をやりたい,という動機のある限られた人しか門を叩きません。ハードルは高い。

その点,太極拳や気功というと,まずは健康志向だから,人は集まります。実際,以前に「空手」の研究会を大学でやったことがありますが,ほとんど人は集まらず,早々に解散しました。しかし,今やっている気功や太極拳中心の研究会は,ぼちぼち続いています。

だから,陳師の「陳氏太極拳協会」の会員の多くの方が健康体操目的であっても,その中で陳師の本当の意図を理解して稽古する人がわずかにでもいれば,それでよい,ということなのだろうと思いました。だから,全員が『太極拳「超」入門』に書いてあることを理解して欲しいとは決して望んでいないのだろうと思いました。

空手も,こういうアプローチでやれないものかなと,思ったりします。

2015年2月26日

陳氏太極拳

陳沛山師の,『太極拳超入門』を読みました。太極拳をする人なら流派を問わず,また,他の武術をされている人も,太極拳の目指しているところを分かりやすく知るためには,とても良い本です。

この中で陳師は何度も,太極拳は単なる健康体操ではない,太極拳は単なる表演競技ではない,と書いています。ところどころ,書き方に配慮していますが,そうした競技の太極拳(制定の套路で競い合う太極拳)や健康目的の体操太極拳とはっきり区別したい,それらと一緒にしたくない,という思いが滲み出ています。

まさにその通り。

太極拳は動きの綺麗さ・正確さを競うものでも,単なる健康維持・増進のためのものでもない。本書にもあるように,太極拳は,武術であり哲学です。

陳師は,日本で,「陳氏太極拳協会」という団体を主催されています。とても大きな団体で,かなり多くの教室と会員がいます。でも,この陳師の思いの本質や,本書に記されているレベルでの身体操作の意味が果たしてどれだけ会員一人一人に浸透しているかは,なんとも微妙な気がします。

というのも,おそらく会員の多くはご年配の方々で,失礼ながら多くは単に健康体操として,多くは意味も分からず表面的な動きをなぞっているだけ,なのではないかなぁ。まぁしかし,人それぞれ目的が違っていても良いですからね。仕方ないです(でももったいないですが)。

この本は非常に良い本です。会員の人たちはここに書いていることをみなさん実践しているとすれば,それは本当にすごいことだし,素晴らしいことです。

2015年2月24日

拳と掌

手を握ると,自然に力が入る。手を開くと,自然に力が抜ける。

空手は握ることが多い。外の筋力を使って闘う外家拳だからだろう。一方,太極拳はほとんど握ることはない。内的な感覚を重んじる内家拳だから。

ただ,空手にも手を開いて練る形はあります。珍しいところでは,横山雅彦先生と摩文仁賢雄先生に教えていただいた,宗家に伝わる「開手ナイファンチ」というのがあります。

「気を練る」には,ほどよい緊張とほどよいリラックスが必要かな。外側(の筋肉)はリラックス。そうなると手は握らない方が良い。内側からの感覚。でも,外側もsensitiveにattentiveにalertに。

力を入れずに握る。これもまた必要か。締めながら緩める。西田先生はそう言っていました。

2015年2月20日

スワイショウと站椿

スワイショウをやると,軸が決まります。

日常生活では,体重の偏りに癖があります。右足に偏っている人もいれば左に偏っている人もいます。それは,Wuji Standing(無極で立つ法)というのをやると分かります。(ただまっすぐ立つだけなんですが,立つときにもいろいろポイントがありまして,詳しくは拙訳書『タオ・ストレス低減法』をご参照ください)

無極で立って,足の裏に意識を向けて感じてみますと,自分が右に重心が偏っているかそれとも左かが,分かります。

スワイショウをすると,この偏りがなくなり,両足でバランス良く(centered)しっかりと(rooted)立つことができます。

スワイショウをした後に再び無極で立ち,足の裏を感じてみれば分かります。站椿を1分でも2分でもやれば,同じように,足の裏で立つ感じが増します。站椿をした後に,無極で立ってみれば分かります。

CenteringとRooting。Feel centered and rootedですね。

2015年2月11日

書評掲載

『タオ・ストレス低減法』の書評が,雑誌『臨床心理学』(金剛出版)に掲載されます。

http://kongoshuppan.co.jp/rinshin/rinshin.html

掲載は次号辺りでしょうか。書評は,琉球大学の伊藤義徳先生に書いていただきました。ありがとうございます。本書の帯の推薦文は春木豊先生に書いていただき,書評は伊藤先生に書いていただきと,日本におけるマインドフルネスの大御所と第一人者お二人からのお言葉,何ともありがたい限りです。

発行は隔月(奇数月の始め)なので,3月の始め辺りではないかと思います。ご興味ご関心のあるかたは,『臨床心理学』誌ともども,是非,一度お手に取っていただければと思います。(『臨床心理学』誌は,毎巻のシリーズ特集,毎号のテーマ特集,実証研究,事例研究,連載記事等々満載で,非常に勉強になります)

2015年2月6日

心身技法研究会

昨年の9月から,心身技法研究会というのを,毎週水曜日の夜にやっています。

おかげさまで半年続けてこられたので,参加者のみなさんには感謝感謝。ありがとうございます。そこでというわけではありませんが,ウェブサイトを独立させました。ご興味ご関心のある方,お暇なときにご覧くださいませ。

http://mindfulness-meditation-martialarts.blogspot.jp/

今は主に学部生・院生中心に,同僚の先生にも来ていただきながら,1時間の練習をゆるくやっています。

それで,特に筑波大学関係者のみに限定しているクローズドな研究会ではありませんので,ご興味のある方はメールでご一報ください。学外の方,一般の方,病院や学校等で臨床や教育に携わっている方など,興味関心があり,やってみたいという方,どなたでも歓迎です。

マインドフルネス実践の研究会ですので,マインドフルネスを養うことが目的ですが,単に運動不足解消,リラクセーション,ストレッチングとしても効果的ですので,それだけのためでも全くOKです。

ぜひどうぞ。お待ちしております。


2015年2月2日

こける

昨日,子どもと甥っ子とサッカーをしたら,早々に二度,こけました。つるりと二度。

先日の雪のせいで足下がぬかるんでいたとか,手に子どもの上着やら荷物やらを抱えていたとか,靴がコンバースで滑りやすかっただとか,言い訳はいくらでもありますが,こけたことは事実。それも二度(笑)。うううむ,まだまだ修行が足りません。バランスをもっと練らないと。Feel rooted and centered.

お義母さんには「運動不足だ」と言われ,奥さんには「有酸素運動が足りない」と言われてしまいました(笑)。ははは・・・。反論はいたしません。

これを理由に,ますます修行に励もう。

ちょうど先日,Steveからもらったメールに,まさにこのgroundedの話がありました。推手(Push Hand)は,やった方が良いかと思うんだけどどうか(SteveはPang先生に習ったか),という僕のメールへの答えとして。

結論を簡潔に言えば,やって損はないけど(武術的には少しはプラスだろうけれど),本質的には必要ない,ということでした。推手競技なんかはgroundedしてるかどうかで勝負が決まるけれど,それは套路をどれだけ練っているかによるということです。逆に言えば,推手競技をすれば,いかに自分がgroundedしてるか知るくらいはできる,と。他にもいろいろなエピソードを教えてくれました。納得。

一にも二にも,套路(形)を,練ることですね。こけないためにも(笑)。