2021年11月15日

ミッドサマー

(原題:Midsommer)(アメリカ・スウェーデン,2019)

「ヘレディタリー」のアリ・アスター監督作品。「ヘレディタリー」がものすごく怖かったので,大いに期待してたけど,うううむ,なんだか全体的に「映画のセット」感というか「作り物」感がありすぎて,全然入れなかった。こういう因習もの?民俗もの?って,リアリティが肝なんじゃないかと思うんだけど,スウェーデンの奥,ヘルシングランドに住むホルガという共同体のリアリティがなさすぎる。

もしかしたら意図的にリアリティのないぐらい吹っ飛ばして作ったのかもしれないけど,もしそうなら,それが逆に裏目に出てる感じな気がします。期待してた分,あんまり面白くなかった。もっと逆なでするような怖さがグイグイ迫ってくるのかと思いきや,なんかのっぺりしてるし,共同体の儀式とか動作や行為のわざとらしさが鼻についてしょうがなかった。アリ・アスターの名作的な評価もあるけど,これ,けっこう失敗作なのではないかと思います。賛否両論あるでしょうね。

夏至祭だからみんな労働もせず,祭りを祝ってる,って設定も分かるけどね。村全体に生活感がなさすぎる。どうやって成り立ってんのよ,この村(むろん,映画内のセリフに説明はあるけどね)。なんか全部,小道具感高すぎて,もうちょっと何とかならなかったのかなぁ。

ちなみに,原題の「midsommer」はスウェーデン語でミッドソンマルと読むそうです。「夏至」って意味ですね。

【追記】あとから思い返して思ったのが,本作は,わざと全体に「(舞台)演劇的」にやってるのかも。例えば,主人公のダニーが泣き叫ぶ場面で村の娘達が一緒になって泣くのだが,そのときのカメラワークと娘達の位置が演劇的(テレビドラマ的)。俳優さん達の顔や演技が全部ちゃんとカメラに写るように,カメラ側に俳優がいない。映画なのに不自然。若者たちを村に迎えるときの迎え方。生活感のないミュージカル風な俳優の動き。儀式のときの村人達の立ち位置。部屋から部屋へ移動するときのカメラワーク。カメラは壁を無視して(横切って)移動。スタジオセット感まるだし。だから,建物がハリボテ感満載だったり,共同体の風習を描く絵画が安っぽかったり,死体がオモチャっぽかったりするのは,もしかして意図的なのかな?いやきっと,そうにちがいない。これは実際に存在する村ではなく,虚構ですよ,という暗示。虚構の中で問う家族とは何か人間とは何か生死とは何か。そういうことでしょうね,きっと。

★★


0 件のコメント:

コメントを投稿