2021年11月17日

感情の哲学 入門講義

源河亨 2021 慶應義塾大学出版会

感情とは何かという問題,そして,感情にまつわる問題について,神経科学や心理学などの知見を元に解説している本。「感情の哲学」なんだけど,感情だけをテーマにしたら(講義する順番はともかく)僕ならほぼ同じような話をすると思うので,「感情の心理学」の本だとも言えます。大学での授業をベースに作っている,ということで,一般教養科目として大学生1・2年生対象の入門レベル。基本的には,感情に関する問題にまつわる標準的な理論や考え方,立場を紹介している内容なので,一つのテーマに踏み込んだものではないし(著者もそのようなものではないと宣言しているし),感情といえばこういう話があるよね,という基本事項をさっとなぞるには良い本です。

感情に興味があれば,こういう問題群があります,という意味で,心理学や神経科学をやりたい人は読んでおくと良い本だと思います。逆に言えば,この辺りを全然押さえないで自分のテーマだけの感情研究をやってる心理学者や神経科学者がいるとしたら,それは専門家としてちょっとどうかと思うので,感情研究者だと自負するならこのぐらいは知っておいた方が良い,そういう本でもあります。だから,テーマの網羅性という点でも,有意義な本と思います。

ただ,文末に「でしょう」が多くて,それがちょっと気になりました。


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