2021年8月16日

実験哲学入門

鈴木貴之(編著) 2020 勁草書房

実験哲学。まずもってなんとも甘美な名前である。なにせ,実験する哲学なのだから。そして,本書を読んでその魅力に震えました。これは面白い。

通常(伝統的には),哲学的な問題を考えるに辺り,様々な事例に関する思考実験における「直観」を頼りに論を進めることが多いわけですが(こういう方法論を「事例の方法」と言うそうです),この哲学者の「直観」はそもそも信頼の置けるものなのか。つまり,我々一般人の直観と同じものなのかどうか,言い換えれば,哲学者の直観に一般性はあるのか,ということですね。こういう素朴な疑問に真正面からアタックしたのが,実験哲学(の始まり)というわけです。

知識や自由意志や行為や道徳といった問題に関する実験哲学は,主に質問紙調査を用いた研究なので,基本的に,我々心理学者には馴染みやすい。近年では,実験的手法や神経科学的な手法も採用されているようで,今後の展開が期待されます。

2000年代に入ってから盛んになってきた分野なので,教科書や専門書の類いは,我が国では本書が最初です。哲学が好きな心理学者は,是非一度読んでみると良いと思います。ワクワクすること必至。きっとこれから類書が出てくると思うので,実験哲学は追っかけていきたい。


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