2021年9月3日

屋根裏の殺人鬼 フリッツ・ホンカ

(原題:the Golden Glove)(ドイツ,2019)

第二次世界大戦敗戦の影をまだ残した1970年代前半のドイツはハンブルグ。フリッツ・ホンカは,近所の安いバー「ゴールデン・グローブ」で日々,飲んだくれている。自宅は安アパートの最上階にある狭い屋根裏部屋。冴えない容姿のフリッツは,抑えきれない性欲を抱えてゴールデン・グローブで娼婦(売春婦)を漁るが,誰からもまともに相手にされず,誘いに乗るのはいつも「熟女」というよりもむしろ「老女」の娼婦ばかり。自宅に誘って事をなそうとするのだが,フリッツは不能で,結局,何もできない。やりたくてもできないフリッツは,酒にくらんで誘いに乗って部屋までやってくる老娼婦を,カーッとなって次々と殺しては,始末に困った末に,切り刻んで(屋根裏部屋の)屋根裏に隠していた。

ヤバい映画を観てしまった。これ,実在した連続殺人鬼の映画です。始終アルコールで息が荒く汗をかいているフリッツ・ホンカは,強い猫背で,斜視で,遠視用眼鏡をかけていて,前頭部がはげ上がっていて,鼻が大きくて,歯並びが悪くて・・・と,とにかく見た目がひたすらよろしくない。絶対にもてないであろう孤独な男の部屋には,壁中にびっしりヌードポスターが張ってあることから,かなり強い性欲がうかがわれる。部屋は酒瓶だらけで,トイレは使うのがはばかられるぐらい汚い。それでも一度,車にはねられて大怪我をしたのを機に改心して,酒を断ち,仕事も変えたのだが,気に入った女を前にやっぱりまた飲んでしまう。

エンドロールで本物のフリッツ・ホンカの顔や部屋の写真,屋根裏部屋の見取り図,犠牲となった娼婦の顔写真,実際のバーの写真などが流れますが,二度見したくなるほど極めて再現度が高い。映画本編を見終わった後,エンドロールでこの再現度を知るわけですが,余計に気持ち悪くなりました。性欲と狂気に満ちた連続殺人鬼フリッツ・ホンカを演じるヨナス・ダスラーのメイクと演技に脱帽。ヤバいです。

★★★


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