2021年6月15日

第9地区

(原題:District 9)(アメリカ/ニュージーランド,2009)

だいたい宇宙人ものは,超高度な科学技術を備えた宇宙人が地球にやってきて,地球の軍隊や最新メカや特殊能力者なんかが,人類の運命を賭けて知恵と勇気を振り絞って戦う,というのが定番ですね。エイリアン=侵略者。

この映画はまず,ここから違います。やってきたのは南アフリカ共和国のヨハネスブルグ。ニューヨークやロンドンや東京ではない,ってところから(侵略にしては)すでに外している(と冒頭でディスられます)。しかも,ヨハネスブルグ上空に巨大な宇宙船でやってきた宇宙人たちは,何かの事故か不具合でもって全員栄養失調状態。人道的な判断から難民扱いにして,ヨハネスブルグ近郊を難民キャンプに指定。これが「第9地区」。ここに宇宙人たちは住むことになるわけだが,街に出ていろいろ悪さをしたり,面倒を起こしたりして,地球人(南アフリカ人)たちからは煙たがられる。

宇宙人の見た目は「エビ」。だから,「エビ」とディスられる。そんな中,犯罪の温床となっている第9地区を一掃するため,ヨハネスブルグからずっと遠い「第10地区」への移送計画が実行されることに。

主人公は,この移送計画の遂行を任された男。ただし,奥さんの父親のコネによる大抜擢であって,決して能力が評価されたわけではない。ただのおしゃべりの文化系事務系男が,ハードな移送計画を遂行しようと四苦八苦するが・・・。

異文化摩擦と人種差別,難民と人道支援,人間の欲望,そんな重いテーマをブラックジョークで描く分かりやすい映画ではありますが,宇宙人の造形や動きが非常によくできていて,違和感なくリアルに観ることができます。主人公も,本当に軽薄な男で,その軽薄さ故にしくじって,そこからとんでもなく大変な目に遭いますが,最後の最後は男気を見せます。

★★★


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