(日本,1979)
新聞少年・吉岡(本間雄二)。和歌山から上京して住み込みで働き,ときどき予備校に通う浪人生。毎朝配達する先のことごとくに不満と怒りを抱き,配達区域の精密な地図を書いて,×印を入れ,電話帳で番号を調べていたずら電話をかけまくってうっぷんを晴らしている(昔は,個人情報保護なんて感覚はなかったから,分厚い電話帳に名前と住所と電話番号,全部書いてあったもんね)。同部屋の紺野は,うだつの上がらない30男(蟹江敬三)。「どうやって生きていけばいいのか分からない」と嘆きながら,ケチな窃盗までして,好きな女に貢ぐダメ人間。その女もまた,生きるより死んだ方がましだと思いつつ,死ねないで底辺で暮らしている。
1979年(昭和54年)の映画。原作は中上健次『十九歳の地図』(1973年,昭和48年)。昭和48年は2歳,昭和54年は8歳でした。小さい頃の昭和の空気と景色。街と人。住宅と家具。服と髪型。舗装している道としてない道。公衆電話。
何かこうなんとなく全体的に上手く行かず,鬱屈した怨念のようなエネルギー(あるいは攻撃性)を,どう扱っていいか分からずに悶々としている,という絵は昭和的な香りがして,おそらくイマドキの令和の若者であれば,こういうとき,早々に諦観して守りに入り,仙人みたく悟るんだろうなぁと感じています。
しかし一方で,電話口で相手をボロカスに脅して文句を言って一時的にスカッとしている姿は,今だったらネット上で匿名で悪口や差別的なことを書いてスカッとしている人たちに重なります。いつの時代も同じと言えば同じか。
でもね,この吉岡もね,最後,ガス会社に「ガスタンク爆破するぞ!コノヤロー!」って脅迫電話をかけていきがってるんだけど,そんなことをしてる自分,言ったところで爆破なんかできない自分,何も変えられない自分がだんだん情けなくなってきて,最後は部屋で泣き崩れるだよね。そうなんだよなぁ。結局,悪口並べてうっぷん晴らしたところで,何にも変わらないし,何にも生まれないだよね。
★★★