2025年7月28日

十九歳の地図

(日本,1979)

新聞少年・吉岡(本間雄二)。和歌山から上京して住み込みで働き,ときどき予備校に通う浪人生。毎朝配達する先のことごとくに不満と怒りを抱き,配達区域の精密な地図を書いて,×印を入れ,電話帳で番号を調べていたずら電話をかけまくってうっぷんを晴らしている(昔は,個人情報保護なんて感覚はなかったから,分厚い電話帳に名前と住所と電話番号,全部書いてあったもんね)。同部屋の紺野は,うだつの上がらない30男(蟹江敬三)。「どうやって生きていけばいいのか分からない」と嘆きながら,ケチな窃盗までして,好きな女に貢ぐダメ人間。その女もまた,生きるより死んだ方がましだと思いつつ,死ねないで底辺で暮らしている。

1979年(昭和54年)の映画。原作は中上健次『十九歳の地図』(1973年,昭和48年)。昭和48年は2歳,昭和54年は8歳でした。小さい頃の昭和の空気と景色。街と人。住宅と家具。服と髪型。舗装している道としてない道。公衆電話。

何かこうなんとなく全体的に上手く行かず,鬱屈した怨念のようなエネルギー(あるいは攻撃性)を,どう扱っていいか分からずに悶々としている,という絵は昭和的な香りがして,おそらくイマドキの令和の若者であれば,こういうとき,早々に諦観して守りに入り,仙人みたく悟るんだろうなぁと感じています。

しかし一方で,電話口で相手をボロカスに脅して文句を言って一時的にスカッとしている姿は,今だったらネット上で匿名で悪口や差別的なことを書いてスカッとしている人たちに重なります。いつの時代も同じと言えば同じか。

でもね,この吉岡もね,最後,ガス会社に「ガスタンク爆破するぞ!コノヤロー!」って脅迫電話をかけていきがってるんだけど,そんなことをしてる自分,言ったところで爆破なんかできない自分,何も変えられない自分がだんだん情けなくなってきて,最後は部屋で泣き崩れるだよね。そうなんだよなぁ。結局,悪口並べてうっぷん晴らしたところで,何にも変わらないし,何にも生まれないだよね。

★★★


都大会を振り返って

まぁしかし,いろんなところで何度も書いていますが,武道は試合(での勝ち負け)が目的ではありません。もし試合での勝ち負けを目的にしてしまったら,その瞬間に「スポーツ」となってしまいます。武道は,スポーツ的要素もありますが,やはり,スポーツではありません。勝ち負けを目的としていません。だから,勝とうが負けようがどうでも良いのです。

ただ,勝つ,ということは日頃の稽古の中身が間違いではなかった,ということの一つの証であり,当然,武道愛好家としてその証を1つでも2つでもいただけるのはありがたい。負けたら負けたで,日ごろの稽古が足りなかったのだ,どこかに間違いがあるのだと反省し,工夫を重ねて,また稽古に打ち込めば良い。だから,できる限り,日ごろの稽古を丹念に丁寧に誠実に十分に行って試合に臨むことが望ましい。

つまり,年に一度の大会(試合)に出ることを毎年の「目標」(「目的」ではない)として,1年間の稽古をしっかりと行う。武道は,稽古が主で試合が従,とはそういう意味です。メインは稽古なのです。いかに稽古を充実させるかの一つの目安,手がかり,区切りとして大会があるということです。

ここんところは,すぐに本末転倒しやすいので,武道をしている人は気を付けた方が良い。気が付くとつい,「目標」にしている試合が「目的」化してしまい,普段の稽古を「目的」を達成するための「手段」とみなしてしまいがちです。これは大いなる間違い。そういう意味では,武道の目的はあくまで「稽古」であり,その稽古を充実させるための手段が「試合」です。

Y君とK君は,試合に出るからにはと(いつもよりも気を入れて)稽古に励んだために,やっぱり,見違えるように上手くなりました。試合には,そういう効果があるので,出られるなら出た方が良いし,出るからには稽古をする。その方が,稽古も試合もより一層,面白くなります。でも,結果(勝ち負け)は関係ありません。武道稽古は,楽しくなくてはいけませんから。

逆に言えば,ほとんど稽古もしないで単に試合にだけ出るのは無意味な気がします。なぜなら,出る理由がよく分からないからです。稽古もせず,試合にも負ける。当然です。一体,何が楽しいのか。一方,試合に出なくても充実した稽古ができている(稽古が楽しい)と思っている人は,あえて試合に出なくてもまったく問題ありません。主(=目的)は稽古であり,あくまで試合は従(=手段)だからです。


別な面で言えば,試合をしに同じ愛好家が一堂に集まる大会は,ハレの場であり,お祭りです。普段はいつもの仲間内だけで稽古をしていますが,この時ばかりは,いろんなところからいろんな人が集まって,互いに技を演武して,日ごろの稽古の成果を出し合います。

高段者の技を見て,また,段位に関わらず上手な人の技を見て,こうやってやるのか,ああするのかと,いろいろ勉強になります。多くの人が見ている中で,緊張しながら演武をするというのも,自分の技を磨く上で良い経験になります。ここのところが上手く行かなかったな,もっと稽古しよう,そんな風に感じれば,ますます稽古は楽しくなります。

愛好会の学生が,大会を通じて,こういういろんな経験を楽しんでもらえれば一番良いなと思っています。

まぁしかし,人それぞれ,武道の楽しみ方というのはあるので,これは正しい,あれは間違っている,というのはないわけですが,しかし,どうせやるならばこうある方が良いのではないかという理想は私なりにあるので,それに倣うかどうかはともかく,そういう私なりの理想を学生には提案していきたいなと思っています。


言語学バーリ・トゥード Round 2:言語版SASUKEに挑む

川添愛 2024 東京大学出版会

相変わらず面白い。Round 3が出たら即買い。


2025年7月26日

ブライトバーン/恐怖の拡散者

(原題:Brightburn)(アメリカ,2019)

また見てしまった。やっぱり面白いわ。

『オーメン:ザ・ファースト』見てて,続編もあるんじゃないかと考えてたら,この映画を思い出して,また見ました。特別な力を持つ子ども。力の使いようによってはとんでもないことに。

改めて見て,何が怖いかって,この主人公のブランドン・ブライアを演じているジャクソン・A・ダンです。無垢で綺麗な色白の顔して,でも暗い陰りもあって,表情や感情表出も少ない。大人びているようで子供臭い。最後の場面,旅客機を自宅の農場に墜落させた事故現場で,救急車のハッチバックに座って(たぶん,警察官か消防士にもらった)クッキーを平然ともぐもぐ食ってる姿がものすごく怖い。

★★★★


2025年7月25日

オーメン:ザ・ファースト

(原題:The First Omen)(アメリカ,2024)

ダミアンが生まれるまで。

オーメンシリーズは全4作(他,リメイク作品1作)。2作目以降は見てないと思います。リメイク版は見ました。666は悪魔の数字。

ところで,本作,あわよくばダミアンとの戦いを描く続編,狙ってるね~。商売上手だよね~。リリースされたら,見ちゃうだろうな。

★★★


2025年7月20日

第37回東京都杖道大会「三段の部」優勝

おかげさまで,今年の東京都大会,「三段の部」で優勝することができました。写真は,ペアを組んだ服部明さん(杖心会)と杖道部会会長・小林正明先生(左),それから私の師匠の藤崎興朗先生(右)です。

また,今大会から,団体戦も導入されました。「白鴎大学杖道会」として大学の愛好会の学生とともに出場しましたが,惜しくも緒戦敗退。来年の都大会も,なんとか大学として出場できたらなぁ,と願っています。

先鋒は教育学部4年生のY君,中堅は教育学部卒業生のK君,大将には北区剣道連盟杖道部会の南毅さんに助っ人に入ってもらって,私が打太刀兼監督。先鋒は1~3本目(着杖,水月,引提),中堅は4~6本目(斜面,左貫,物見),大将は7~9本目(霞,太刀落,雷打)を演武。なんとか大将の南さんが勝って1ー2でした。(下の写真は,Y君の3本目・引提の場面)

Y君とK君は団体戦では残念でしたが,しかし,この団体戦の後の個人戦で,初段の部に出場し,なんと3回戦(準決勝)まで進出しました!あと一つ勝てば決勝戦!惜しかった~。でも本当によく頑張りました。


2025年7月14日

了巷説百物語

京極夏彦 2024 角川書店

やっと買って読めました。なんたって4400円だもんね(笑)。京極ファンなら新刊即買いして読めよ,というところですが,すみません,ようやっと,ちょっと安く,中古で買って読みました。圧巻の厚さ5.5センチ!!

今回の中心軸となる新しいキャラクターは,嘘か真かを見破る「洞観屋」稲荷藤兵衛。これに,御行の又市とその仲間たち,そして中禅寺秋彦の曽祖父である「陰陽師」中禪寺洲齋。

洲齋は,歌舞伎とのコラボ「狐花」の主人公。去年,歌舞伎座に観に行ったぜ~。


2025年7月7日

ゲットアウト

(原題:Get Out)(アメリカ,2017)

久しぶりにまた観ました。あれ?エンディング,変わってるぞ。それに,全体に細かいところをかなり編集し直してるよね。

前に観た時は,最後にパトカーでやってくる警官は白人。ああ,終わった。最悪のバッドエンドです。で,今回観たバージョンだと,やってくるのは航空警察のパトカーに乗った友人のロッド。ああ,良かった。ハッピーエンド。個人的には今回の方が好きかなぁ。バッドエンドの方は,もう,救われないもんなぁ。

でも,アーミテージ家の使用人のジョージナ(ベッティ・ガブリエル)のセリフが減ってたかも。前の方は,もっと尺が長くて,何かをセリフで訴えてたような気がしましたが,気のせいか。あのシーンがすごく印象に残ってて怖かったから,もしカットしてたら,カットしなくても良かったんじゃないかなぁ。

他には例えば,クリスが,パーティにいた若い黒人男性の握手の仕方が違う,ブラザーはあんな風には握手しないから怪しいとか何とか,そういうことをロッドに電話で話してた気がするけど,そんなセリフはなかったし。

そう思うと,以前のオリジナルバージョンの方が不気味でおぞましいインパクトはあったか。

★★★★