2021年2月19日

免疫力

「コロナに負けないよう,免疫力を付けましょう」

この1年,こういう言葉をよく耳にします。しかし,そうやってよく「免疫力を付ける」とテレビやラジオなんかで言う人や,「免疫力を高める」なんていう宣伝文句が書いてある商品や食品なんかを見かけるけれど,そもそも「免疫力」って何だ?

免疫力を付ける(上げる,高める)

 =免疫機能の働きを正常な状態にする

ということでしょうね。理屈から考えると,機能が正常に働いている限りそれをさらに高める,ということはないでしょうから(なぜなら,「正常な状態よりさらに高い状態」というのが,言葉の上ではあり得るけれど,実質的には「<より>正常な状態」というのはあり得ないから),やっぱり,それなりの状態を維持する,ということでしょう。

その上で,「付ける(上げる,高める)」と言うということは,普段我々は,正常な状態でないことが多い,ということになります。そうでなければ,「付けましょう(上げましょう,高めましょう)」という主張が当てはまらないから。

では,どういう場合に正常な状態でない(働きが鈍くなっている状態)かというと,良く言われるのが「生活習慣」と「ストレス」ですね。したがって,「生活習慣」を調えて,「ストレス」を避けたり低減したりすることが求められるわけです。私たち現代人は,生活習慣が乱れていて,ストレスに曝されている,ということです。

私の研究テーマは広い意味での感情制御だと思っていますが(狭い意味での感情制御研究はGrossとか鹿児島大学の榊原さんのような研究だとして),それは感情を制御してストレスフルな状態の長期化を抑える,つまり,ストレスの低減を志向した研究です。

つまり,免疫機能がストレスによって弱まっている(鈍っている)状態から,ストレスを低減することによって正常な状態へと戻すという方向性が,相対的に「上げる」「高める」と表現されるわけです。別の面で言えば,免疫系は自律神経系と内分泌系とも連動していますから,それらのバランスを調えましょうということになりますが,これらもストレスによって変動しますから,要は「ストレス」の低減が肝要,ということになります。

気になるのは,「免疫力を付ける(上げる,高める)」運動とか習慣とか食品とかですが,これらは要するに「生活習慣」を調える,ということなんでしょうね,きっと。生活習慣の乱れは免疫機能を低下させる,現代人は生活習慣が乱れている,したがって現代人の免疫機能は低い,ということです。だから生活習慣を調えて,免疫機能を正常な状態に戻しましょう,ということか。

つまり,適度な運動,バランスの取れた食事,十分な睡眠。そういうことですね。だとしたら,何も特別なことをしたりお金を掛けたりする必要は全くなく,そういう基本的なところを気をつけながら毎日を丁寧に過ごすことが,たぶん,「免疫力を付ける」ための最良で最短の道ということになるでしょう。つまり,

「コロナに負けないよう,毎日を丁寧に過ごしましょう」

ということね。納得。

なんとなく,「付けましょう」と言われると何か特別なことをしたりしないといけない気持ちになりますが(何かしていないと「付けていない」のではと感じてしまいますが),要は,基本的なところを丁寧にやればいいわけです。何かを<足し算>していくのではなくて,もうすでにやっている(やろうと思えばできる)ことを一日一日できるだけ丁寧にやっていく。そういうことですね,きっと。



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