2023年2月13日

ANIARA アニアーラ

(原題:Aniara)(スウェーデン/デンマーク,2018)

環境破壊により人類は火星へと次々に移住する時代。地球から火星へと向かう定期便である巨大宇宙船アニアーラは,いつものように3週間の航行に出た。巨大宇宙船には21ものレストランがあり,デパートやホールやバッティングセンターまである。地球よ,さようなら。さあ,みなさん,3週間の優雅な旅をお楽しみください。

だがしかし,順調に思えた航行中,宇宙デブリとの衝突を避けるために航路を変えたところ,わずかなデブリが燃料タンクに衝突,そのまま制御不能となり,火星とはまったく違う方向へとひたすら進むことに。その先進路を変えるあてもなく,ひたすら宇宙の果てまで航行することになる。

いやぁ,なかなかいい感じの変な映画でした。

食料や電力など資源はそこそこあるけれど,しかし,永遠にあるわけじゃなし。いつかその資源も枯渇するであろう中で,外を見ればそこは深淵の暗闇。何千人もの人々を乗せた巨大宇宙船は,暗闇の中をひたすら突き進む。何年も何十年も・・・・。こうして宇宙船に閉じ込められていることを「囚人」だと思い,そこから解放されることを求め,かたや宗教を生み出して神に願い,かたや現実的な技術を考えて少しでも癒しを求め,一方で,希望をなくして自ら命を絶つ人もいる。

でもこれは,今現在,我々がいるこの地球のアナロジーであり(ありきたりな喩えでいえば「宇宙船地球号」か!),その地球上の今ここにいる私は永遠にここにしかいないのだから,どこかにいつか行くわけでもなく,死ぬまでずっとここにいるのだ。つまりは,私は今,巨大宇宙船アニアーラに乗っているのと同じなのだ。

ではなぜ,どこへとも知れずひたすら宇宙をつきすすむ巨大宇宙船だとこんなに絶望的になるのだろうか。行先なんてないところ,資源もいつか枯渇するところは,地球とアニアーラと,なんら違いはないのにね。

★★★★


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