2020年12月7日

マンディンゴ

(原題:Mandingo)(アメリカ,1975)

「町山智浩のVIDEO SHOP UFO」で紹介されていたので,録画しておいたものをようやく観ました。町山氏の解説付きで観た方が良いと思います。例えば,『泳ぐひと』という映画は以前から知っていましたが(「カルト映画」?として),町山氏解説付きで観たからこそ,その本当の?面白さと深さに脳髄が打たれました。この『マンディンゴ』も同じです。映画の舞台となっている時代背景だとか,映画監督の経歴だとか,公開された当時の反応だとか,そういうのって,情報として貴重だと思うからです。

一方で,何の先入見もなく鑑賞する,というのも映画の見方の一つだと思います。ただ,この『マンディンゴ』に関しては,鑑賞前の関連情報は重要な気がします。南北戦争前の,奴隷制がまだ存在しているときの話なわけで,当時のアメリカのことを果たしてどれだけ知ってるかというと,世界史や近代史をサラッとなぞったことがあるぐらいで,その筋の書籍や研究を読み込んでいなくては,きっと分からないであろうことが多い気がするからです。つまり,アメリカ人じゃないから,実感として(つまり肌感覚として)奴隷制や黒人差別がどういうことかって,たぶん,日本人の我々にはイマイチ分からない部分が多いと思うからです。まず,『マンディンゴ』というタイトルの意味を知るだけで,ものすごく不愉快で嫌な気持ちになります。

最近のBLM運動も,別に今に始まったことではなく,黒人差別は昔からずっと根強くあるわけで,その差別っぷりも尋常ではないわけで,それに対する抗議運動・改革運動は色々な形で続けられているのですが,その根底というか,もともとの経緯・歴史をアメリカに住んでいない我々が知る上では,こういう映画は一度は観ておくべきだという,そういう映画でした。

奴隷制肯定の時代の話なので,全編,人権を無視した(当時は黒人を「人間」とみなしていない!)観るに堪えない嫌な差別(というか虐待)のオンパレードなのですが,決して途中で観るのを止めたくなるようなものではなく,人の愚かさに気づかせてくれる,そういう映画です。

奴隷牧場(奴隷を増やして売る商売)を営む白人親子の家は奴隷売買で金持ちで,大きな屋敷なんだけど,全体にみすぼらしくくすんでいたり,窓も汚れていたり,ベランダや庭先も荒れていたりします(観ていると,すご~く気になります)。家というのは,そこに住む人の心あるいは人間性を表している,ということですね。金持ちなのになぜか家を綺麗に直さない(映画の中では,新築を建てるとか改装するとか言ってるけど,結局しない)。そうすることで,そこに住む人の心の卑しさを表現している,ということでしょうね。

★★★★


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