2021年5月4日

ラスト・デイズ

(原題:Los Ultimos Dias)(スペイン,2013)

建物の外へ出られない。実際は出ることができるのにただ単に出られないというだけの心理的な問題(恐怖症)ではなく,実際,外に出ると心臓発作を起こしたり耳から血を流して絶命するという,恐ろしい症状が世界中に蔓延する。未知のウィルスによる伝染病なのか,地球外生命体か何かによる超科学的攻撃なのか,原因は全く分からない。しかし,徐々に世界中で同様の症状が広まっていき,やがて世界は機能停止する。そんな中,会社の入っているビルに閉じ込められたプログラマーのマルクは,遠く離れた自宅にいるはずの妻を探しに行く決意をする。

AIの暴走や宇宙からの侵略者やゾンビウィルスによるアポカリプスを描いた映画だと,ロボットやエイリアンやゾンビを相手に地上で繰り広げられる戦闘を中心に描かれることが多く,その日常性(そもそも水や食料や服はどうやって確保してるのかとか)はどちらかというと後景に追いやられます(説明が割愛されます)。これに対して,この『ラスト・デイズ』では,ロボットやエイリアンやゾンビといった明確な敵がいるわけではありません。単に自分たちが「外へ出られない」という症候群にかかってしまうといった,具体的な解決策(敵)が見当たらない不条理で絶望的な状況なのがポイントです。

この症候群の場合,地下鉄や下水道経由で移動できるぐらいで,あとは建物内や地下で暮らし続けるしかありません。コンクリートで覆われた都市であれば,やがて食料や水は底をつくことになります。なので,鳩やネズミを生け捕ったり,雨水を集めたり,当然ながら手持ちの食料の奪い合いになったり,といった日常性が丹念に描かれます。つまり,災害が起こって都市機能が完全に麻痺したときに人はどうなるか,文明的な都市に住む現代人がそんな混沌とした世界でどうやってサバイバルしていくかという,まさに「末世」の世の中を描いた映画ということです。

ただ,人類という種はなかなかしぶといと思うので,もし本当にこういう状況になったら,私のような体力のないひ弱な人間はすぐに息絶えると思いますが,タフな一部は生き残り,地下鉄や地下道を巡らせた地下都市を築いて,そこで農業や畜産をし始めるだろうなと想像します。

と,色々と想像が膨らむこの「外へ出られない症候群」というヘンテコな設定は,今まで観たことのない設定だったので,面白かったです。ロボットやエイリアンやゾンビに飽きた人は是非。

★★★


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