2022年4月19日

教養の書

戸田山和久 (2020) 筑摩書房

名著です。学生自身は当然ながら,学部教育を担う人も読んだ方が良いと思います。教養とは何か,学部教育とは何か,学部生に何を学ばせるか。

専門教育は大学院でやるものであり,多くの学部生は大学院には進学しないのだから,学部教育とは教養教育である。だから,学部のカリキュラムに「教養」と「専門」を分けるのは変。全部「教養」だろう。激しく同意。

学部で専門家になれるわけがないのだから,4年で卒業して就職する大半の学生たちに向けて,教員は何を提供できるか,何を提供したら意味のある4年間となるか。そこんところの軸というか枠組みというか基準というか方向性というか指針というか,そういうものを常に意識して学部教育に携わるべきでしょう。

大きな国立大学なんか,教育よりも研究重視,教員のプライドも高く,自分たちの研究のことしか頭にないから,ついつい大学院教育(研究指導)が中心になり,結果,学部生なんか眼中にない。名前も顔も一切覚えないとか,学部の授業も学部生のケアも二の次三の次(=どうでもいい),なんて教員も多い。そういう趣旨のことを公言して憚らない人もいます。これホント。

もちろん,そんな(学部をおまけと考えている)国立大学にもまともな教員は(ほんのわずかですが)いて,学部教育に真剣に取り組んでいます。

大半の学生が大学の「学部」に求めるニーズと,一応その学部のスタッフである教員の思惑がズレているのが元凶でしょう。大きな国立大学がなんかチグハグになるのはそのせい。その辺りの理由も,本書を読んでみれば分かります。

まぁ,だから,端的には,学部教育(教養)をする人と大学院教育(研究指導)をする人を分けた方が良くて,欧米はそうなってるんじゃないでしょうか。


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