2022年4月13日

『映画秘宝』またしても休刊。そして復刊を強く祈る

マニアックな映画雑誌『映画秘宝』が,ふたたび休刊になってしまった。当時の版元(洋泉社)の消滅で一度休刊したものの(このときはショックだった),数ヶ月後には双葉社から復刊して喜んでいたのもつかの間,それから2年あまりでまた休刊。今回はショックというより,「またか」と「やっぱり」。

1年ほど前に,当時の編集長の恫喝DM問題が起きて,編集部周りでいろいろとゴタゴタしていたのは,一般読者である私にも聞こえていました。今回の休刊も,これと無関連ではないでしょう。なにせ,秘宝読者は一定数いるだろうから(というのも,数ある映画雑誌の中でも,この,変化球ばっかり投げる雑誌は他にない),出版業界が厳しいと言われて久しいですが,ビジネス的には十分成り立つだろうと思うからです。

いや,とにかく,残念。早くFujisanで定期購読できないかと思っていたので,余計に残念。定期購読どころか休刊。毎月発売日を楽しみにしていたのになぁ。

というわけで,諸行無常。世の中,ずっと続くものなど何もない。毎月発売するものだと思っていたら突然終わることもある。今生きていると思っていたら突然死ぬこともある。そんなことを思う『映画秘宝』の休刊でした。

大半の人たち,主流の人たちが見向きもしない,まるで評価しない映画をあえて取り上げたり,一般的にはものすごくどうでも良いと思われるポイントにスポットを当てて特集したり,それが「あざとい」感じのするときもありましたが,そういう脂っこさ(しつこさ)も含めて,『映画秘宝』は発行し続けるべきだと,僕は思う。

世の中,みんな同じことを言い出したら終わり。同じこと,同じものを評価しないと馬鹿にされたり,無視されたり,排除されたり,逮捕されたりする世の中は怖い。大半が価値を見出さないものに価値を見出したりすることは,この世の中に価値のないものなどないのだよ,無駄なものなどないのだよ,ということを忘れないためにも,そして世の中を健全な状態に保ち続けるためにも,必要です。

っていうか,人と同じで嬉しいか。同じ価値観と評価軸で生きることって楽しいか。つい人間は他者におもねる傾向があります。それは僕自身も例外ではない。ついつい他者からの評価を気にしてしまうのが人間という生き物です。でもやっぱり,何でもかんでも人と同じ価値基準で生きるのって,息苦しいし,つまらないし,気持ち悪いでしょう。なので,多様な価値を許す世の中の方が,まぁ,どう考えても健全だと思う。

『映画秘宝』のような類のメディアは,だから,一つの安全装置なのだと思います。復刊,切に願います。日本の健全な未来のために。


追記1:しかし,改めてDM問題以降の経緯をネットで見てみましたが,まだゴタゴタは続いていて,なんとも混沌とした状態でワケワカランことになってました。責任のなすりつけあい。初期対応を間違えると結局こうなる,の良い例。これだけこじれれば,双葉社も手を引きたくなるよね。残念。

追記2:ざっくりと対立構図を「町山氏ら」勢力と「元編集部の方々ら」勢力に分けたとして,どっちの誌面内容(コンテンツ)が面白いかといえば,個人的にはやっぱり町山氏。読者は結局,面白い方を選ぶ。どっちの言い分が正しいかはどうかとは無関係。


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