2014年10月16日

空手と太極拳 その二

以前にも空手と太極拳について少し書きました。昨日の研究会(後半)で両方やりましたが,身体感覚としては,両者はやっぱり違います。

空手は外側からも見える筋肉を使って(もちろんインナーマッスルと言われるようなところも使っているのだろうけれど),呼吸とともに身体を締めます。受けたり突いたりするときに締めます。締めるということは,筋を緊張させるということ。また,力あるいはエネルギーを身体の中心軸に集めます。そしてその集めたエネルギーを相手(敵)に出します。このとき,呼気とともに出します。口から息を吐きます。受けるときも突くときも,筋を瞬間的に緊張させて,エネルギーを相手にぶつけます。そうしないと,相手の強い攻撃を受け切れないし,そうすることで,相手に効果的にダメージを与えられる。空手はそう考えます。

一方で,太極拳は,使う筋肉は太股ぐらいで,後は全身リラックスして行います。もちろん,受け流したり推したり蹴ったりする動作のときも,身体を締めることはありません。太股以外は筋を緊張させない。力あるいはエネルギーは全身に万遍なく循環させます。呼気は鼻から出すので,そうすることでエネルギーが身体内に蓄積される感じになります。つまり,気を外に出さないわけです。技も多くは受け流して推す,という柔らかい動作が多い。強く受け返して強くダメージを与えようという空手の理念とは,だから,違うわけです。

さて,現実的には,手足の届く距離で瞬間的に相手の攻撃を裁こうとすれば,ガチンと攻撃を受けなければならないことが多いと考えると,空手の術の方が断然,至極まっとうなアプローチですね。素早く突いてきたり蹴ってきたりする相手を体裁きで柔らかくかわすのは,アクション映画なら成立するけれど,現実場面でそんなに綺麗に上手くいくとも思えない。実際試しに突いてもらうと分かります。

ただ,柔らかくかわす術も持っていることは,体術として確実にプラスになるようにも思う。現実には難しいけれど,柔らかく受け流し推すことを知っている身体で動くことで相手のバランスは崩れ,より効果的にダメージを与えるために有利な体勢やポジションを得ることができる。そんな気がします。

空手は白鶴拳や詠春拳といった少林拳に端を発する南派の外家拳系統の術であり,太極拳はいわゆる内家拳だから,身体操作の方法が陰と陽の関係のように,異なっています。だけれど,ここのところをうまく融合していく,身体的(実践的)にも理論的にも統合していく。そんなことができないかと,できるのではないかと,できるはずだと,日々,考えています。

日々考えているせいで,だから,研究会(や授業)では,毎回,言ってることが変わるかと思いますが,どうかお許しを。

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