2022年5月22日

フェイクニュースを科学する:拡散するデマ,陰謀論,プロパガンダのしくみ

笹原和俊 (2018) 化学同人

フェイクニュースがなぜ拡散するかは,単に良識が無いとか情報に疎いとかではなくて,人間に伴う有限な認知資源や認知バイアスなどの元々の特性と,SNSなど現在のネット環境の特性(エコーチャンバーやフィルターバブルやパーソナライゼーションなど)との相互作用によって生じるからである,という話。こういう状況を「情報生態系」と言い,これを著者の計算社会科学によって紐解いています。

アンケート調査やシミュレーションによる多くの研究データに基づいて議論していますので,大いに納得することができます。昔から陰謀論や都市伝説はいっぱいあったけど,現代のソーシャルメディア環境はこれを大幅に増強する構造になっています。

私は,ツイッターもフェイスブックもやりませんから(やると,なんだか色々なものに巻き込まれそうで嫌なので),フェイクニュースの拡散具合をイマイチ実感できませんが,前アメリカ大統領とその周辺の人々の様子や事件を見るにつけ,ただ事ではないことは確かです。現在のウクライナ戦争でも,情報戦は凄まじいものになっています。

自分の信じたいことだけが事実となる「ポスト真実(Post-truth)」の時代の仕組みが良く分かりました。


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