2022年5月9日

複製された男

(原題:Enemy)(スペイン・カナダ,2013)

監督はドゥニ・ヴィルヌーヴ,主演はジェイク・ギレンホール。ヴィルヌーヴといえば,『DUNE/砂の惑星』(2020),『ブレードランナー2049』(2017),『メッセージ』(2016)と最近メジャーな(予算豊富な)映画を作っている監督。『メッセージ』は良かった。言語体系は違うけど飽くまで記号によるコミュニケーションをするところがちょっと強引な気がしますが(そもそも異星人がいるとして,かつその異星人が音声や記号によるコミュニケーションをすること自体,かなり低い確率だと想像するから)。『DUNE』はまだ観てません。リメイクなので,前作(デヴィッド・リンチ監督,カイル・マクラクラン主演)と色々比較されてますね。『ブレードランナー2049』は『ブレードランナー』の優等生的な回答,なんて言われたりしてますが,確かに謎が明かされてしまったようで,逆に残念と言えば残念。

主演のジェイク・ギレンホールは好きな俳優の一人で,あの悲しそうな弱々しそうな顔が良い味を出してます。『ミッション:8ミニッツ』が良かったし,若いとき(子役?)の『ドニー・ダーゴ』も良かった。その他,主役脇役で,えらいたくさん映画に出てます。

今回の主人公も,なんだか鬱々とした歴史学の大学講師(准教授)アダム。猫背のネガティブなやつ。日々,大学と自宅の往復と彼女との情事の繰り返しで,平凡な暮らしをしている。ふと,大学の同僚との会話でなんとなく観た映画に,なんと,自分そっくりの男が脇役で出演しているではないか!興味をそそられたアダムは,その俳優アンソニーを探しに行くことに。

映画冒頭の闇サロン的な描写も謎。二人がうり二つなのも謎。母親も何か隠しているような様子も謎。結末も大いに謎。ギレンホールが謎な映画に出てることが多いので,ホントこの人,いろいろややこしい謎に見舞われるなとメタに思ってしまうわけですが,しかし,ヴィルヌーヴの最近の映画のバターンからすると,複雑ないわゆる「パズル映画(パズル・フィルム)」系統がお好みなのか,今回もそういう系統。しかし,謎だけいろいろふりかけておいて,ちっとも回収されてない。おじさんに分かるように,もうちょい説明してくれ。

ちなみにパズル・フィルムとは,「断片化された時空間のリアリティ,時間の循環構造,異なったレヴェルのリアリティの間の境界の曖昧化,分裂したアイデンティティや記憶喪失を伴う不安定な登場人物,多元的な迷路状のプロット,信頼できない語り手,そしてあからさまな偶然性」(Warren Buckland)と定義されるそうです(木下,2017)。

★★


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