2022年3月8日

杖道の面白さ

杖道は地味です。しかし,この地味な中にこそ深さがあって,じわじわとその面白さが広がっていきます。

まず,勝ち負けという意味では,杖道は,大会でその技の出来具合を競うことはありますが,普段の稽古は基本的に二人で行う形稽古で,基本動作十二本と形十二本。これだけ。このシンプルさゆえ,技一つ一つを深く練ることが求められます。そういうところに魅力を感じます。技の上手下手はありますが(そのために,自分はあの人より上手いとかこの人より下手だとか思う人もいるかもしれませんが),競い合うことが主要な目的ではないので(競技大会を目的にしている人もいるかもしれませんが),あくまで自分の中での上達を日々,味わうことができます。

武道の形は,少ない方が良い。なぜなら,その形を丹念に(つまり,自己の身体と向き合って対話しながら)練ることができるからです。空手は,特に糸東流は宗家摩文仁賢和先生の研究熱心さゆえに,首里手と那覇手両方からなる多くの形を稽古します。このため,どうしても形の流れを覚えるので精一杯になってしまいます。一つ一つの形も,中国武術に比べれば短いですが,一般的な日本武道の形に比べると,それなりに長い。なので,糸東流に伝わっている形は非常に多いわけですが,個人的には,稽古する形はその中のわずかで良いと思っています。何でもかんでも形ができれば良いというものでもありません。流派を伝承することを目的とすれば,形を覚えておく必要はありますが,空手を稽古することが目的であれば,例えば,ナイファンチとサンチン,テンショウ,それからパッサイとセーサンぐらいで十分でしょう。あとは好み。好きな形だけで良い。

杖道の形一つ一つは,動きの手順としてはどれも短いです。これを二人一組で行う,つまり,二人による形になっています。太刀VS杖。合気道のように,二人で行う形,というところが魅力の一つです。実際に太刀を打ったり受けたりします(なお,もちろん,相手の身体を直接思い切り打つことはありません)。このとき,相手と技を合わさなければなりませんから,間や呼吸が大切になります。相手は一人一人違いますので,呼吸も間もそれぞれ個性があります。制定の形として,そういう呼吸や間の個人差も含みながら,全体としては統一した身体操作を修得することを目標としています。

杖VS太刀ですが,杖道ですから,杖が太刀に勝つ流れになっています。だから,「杖道」という武道は,実は杖の操作だけではなく,太刀の操作も身に付けなければなりません。ここもまた魅力の一つです。太刀が上手く使えないと,杖の稽古にならないからです。

それに杖道は,剣道のように激しく打ち合う試合(空手で言うところの自由組手)はないので,息も切れ切れ,なんてことはありません。だから,生きている限り,このままじいさんになってもできそうなので,50歳を機に始めてみました。体力のない私にとっては,ちょうど良い運動量です。講習会に行くと,高齢になっても続けている人の多いことが分かります。これはたいへん心強い。

あんまり熱を入れすぎると,それはそれですぐに冷めやすいかとも思うので,入れ込みすぎないようにと思いつつ,まぁ,やりたいようにやっています。


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