『ヨガを科学する』という翻訳書を読みました。(僕の書評ブログ「本と知」にも書きましたので,興味のある方はご参照を)
ヨーガの歴史や流派(スタイル)が分かり,また,タイトル通りに,ヨーガをすることによってどういう効果があるのかについて,科学ジャーナリストが徹底的に調べている本です。勉強になりました。
マインドフルネスストレス低減プログラム(MBSR)の中に,ヨーガ(ハタヨーガ)が組み込まれています。マインドフルネス・ヨーガ瞑想。なんでカバットジンはヨーガを組み込んでいるのか。まぁ,もともとカバットジンがヨーガをやっていて,そこからMBSRに行き着いた,というのはあるから,「なんで」というのも難しい問いかもしれないけれど,当然の答えとしては,やはり,マインドフルネスを養うため,でしょう。
なぜヨーガがマインドフルネスを養う瞑想法として採用されるのか。それはだから,カバットジンが元々やってたから,ってのは置いておいて,技法として,ヨーガでなくてはならないのかどうか,ということ。
そうではないと思う。
ヨーガがマインドフルネス瞑想に適しているのは,身体を使って様々なポーズをするので,必然的に四肢への意識や身体バランスへの意識が維持される。かつ,ヨーガは呼吸を重視する。
つまり,要は,身体と呼吸への気づきを半ば必然的に維持させるような技法であれば,基本的には何でも良いのだと思う。だから,気功でも太極拳でも空手でも,もちろん,良いのだ。
加えて,ヨーガにはストレッチングの要素もある。リラクセーションにつながりますね。また,ポーズによっては軽い筋トレの要素もある。これは基礎代謝を高める効果があるでしょう。そして,こうした効果は,気功も太極拳も同じ。
『ヨガを科学する』を通して読む限り,メッセージとしては,ヨーガの本来性は,身体(と心)を静める,緩める,リラックスさせる,落ち着かせる,新陳代謝を低下させることであり(ただその鎮静の後に覚醒[性的な覚醒を含む]が来るらしいけれど。これを著者は「ヨーガのパラドックス」と呼んでいる),いずれにせよ,昨今のヨガフィットだとかパワーヨガなどの代謝を高めて痩身効果を狙うとするフィットネス(あるいは有酸素運動)系ヨガってのは,ヨーガとは本質的には相容れない矛盾したイロモノもしくは邪道だ,と暗に示唆してます(僕にはそう読めました)。
そういう意味では,ヨーガに近いのは,気功あるいは太極拳。それから坐禅。坐禅は,ヨーガの,蓮の華のポーズ(パドマ・アーサナ,蓮華坐)ですね。一方,空手は,稽古の仕方や段階にもよるけれど基本的には,筋肉を瞬間的に強く締めたり,突いたり蹴ったりするので,ヨーガや太極拳のように,身体を静める方向ではない。だから,空手と太極拳は,緊張と弛緩という陰陽の関係に位置づけることができる。
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